表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/35

第二十五章:消えた協力者

渋谷。


スクランブル交差点から数ブロック離れた商業地区。


すでに避難指示が出され、人々は退避している。


空になった街に――


エイリアンが、立っていた。PASの装甲を纏った、異形の怪物。その姿は、まるで悪夢のようだった。


「来たぞ!」


桃源の声が、無線に響いた。地響きとともに、二機のp2hmが現れた。


1号機と2号機。


桃源と巽が、それぞれ操縦している。


「また、おまえか……」


桃源が呟いた。


エイリアンが、二機のp2hmを見た。


そして――


咆哮した。


「ギャアアアアアアアアッ!」


エイリアンが、1号機に向かって走り出した。その速度は、凄まじい。


「来るぞ、巽!」


桃源が叫んだ。


「了解です!」


巽が応える。1号機が、防御姿勢を取る。エイリアンの拳が、1号機の装甲に叩きつけられた。


ゴオォン!


凄まじい衝撃。


1号機が、後退する。


「くそっ、やっぱり強い……!」


桃源が歯を食いしばった。


その時――


2号機が、エイリアンの背後に回り込んでいた。


「今です!」


巽の叫び。


2号機の腕が、エイリアンの両腕を後ろから掴んだ。


拘束する。


「よし!」


桃源が、チャンスとばかりに1号機を前進させる。


そして――


全力で、拳を振るった。


ドゴォン!


エイリアンの腹部に、直撃。エイリアンが、苦しそうに唸る。


「もう一発!」


桃源が、再び拳を振るう。連続した打撃。エイリアンの装甲が、歪む。


「巽、ショットガンだ!」


「了解!」


2号機が、エイリアンを地面に押さえつけた。


1号機と2号機の肩部ショットガンが、展開される。二つの銃口が、エイリアンの頭部に向けられる。


「撃て!」


ドォン!ドォン!


大口径散弾が、同時に発射された。


エイリアンの頭部が、破壊される。装甲が割れ、内部が露出する。


「今だ!引きちぎれ!」


桃源の叫び。


1号機の腕が、エイリアンの頭部を掴んだ。2号機の腕が、胴体を掴んだ。


二機が、全力で引っ張る。


メキメキメキ。


ブチィィィッ!


エイリアンの首が、引きちぎられた。


動かなくなる。


「やった……」


桃源が、息を吐いた。


「勝ちました……」


巽の声が、安堵に満ちていた。


だが――


桃源は、エイリアンの遺体を見下ろした。


「また、こいつか……」


p2hmから降りた桃源が、遺体に近づく。損壊した頭部の一部が、まだ原型を留めていた。


「森田健太……」


桃源が呟いた。


二番目の被害者。


森田健太がエイリアン化したものに、PASの装甲を装着したもの。


「また、偽物か……」


桃源が拳を握った。


華田凛と榎本大輝、そしてPASが融合した最強のエイリアンは――


まだ、姿を現さない。


なぜだ。


なぜ、偽物ばかりを送り込んでくる。桃源の脳裏に、一つの考えが浮かんだ。


時間稼ぎ。


本物は、何か別の目的のために動いている。そして、偽物を使って警察の目を逸らしている。


「くそっ……」


桃源が悪態をついた。


同じ頃。


真秀は、車を走らせていた。助手席には花山が座っている。だが、真秀は渋谷には向かっていなかった。


「係長、本当にいいんですか?」


花山が心配そうに言った。


「渋谷のエイリアン、桃源さんたちに任せて」


「ええ」


真秀が頷いた。


「桃源なら、大丈夫よ」


真秀の目は、前方を見据えている。


「それより、私には確認しなければならないことがある」


車を運転しながら、真秀は先ほどのことを思い出していた。


デスクに置かれた、芹沢の大学時代の集合写真。


その中の一人。小太りの体格。若い頃の顔。


そして――


榎本重工で会った、甲本隆。


あの顔は――


同一人物だ。


真秀は、確信していた。


芹沢幸次郎の大学時代の友人。それが、甲本隆。そして、甲本は榎本重工の技術者。PASの開発に関わっていた。


すべてが、繋がった。


甲本隆が、芹沢の協力者だ。


「急いで」


真秀が、アクセルを踏み込んだ。


車が、加速する。


目的地は――


榎本重工の研究所。研究所に到着した真秀は、花山とともに施設内に入った。


受付で身分を示し、大道寺博士を呼び出す。


数分後――


大道寺が、現れた。


「真田刑事、どうされました?」


大道寺が尋ねた。


「甲本さんは、いますか?」


真秀が、単刀直入に聞いた。大道寺の表情が、曇った。


「甲本が……?」


「ええ。すぐに話を聞きたいんです」


真秀が続けた。


大道寺は、首を振った。


「それが……甲本は、今いないんです」


「いない?」


真秀の目が、鋭くなった。


「どういうことですか?」


「前回、あなた方が来られた翌日から……」


大道寺が言いにくそうに続けた。


「甲本が、出勤してこないんです」


真秀の背筋に、冷たいものが走った。


「連絡は?」


「取れません。携帯も、繋がらない」


大道寺が答えた。


「自宅にも行きましたが、不在でした」


真秀は、拳を握った。


所在不明。


前回の訪問の翌日から。


ということは――


甲本は、自分たちが訪れたことで、逃げたのだ。


「甲本さんの自宅の住所を教えてください」


真秀が言った。


「それと、彼の経歴、交友関係、すべて」


「わ、分かりました」


大道寺が、資料を取りに行った。真秀は、花山を見た。


「花山、本部に連絡して。甲本隆の捜索を依頼するわ」


「了解です」


花山が、携帯を取り出した。


数分後――


大道寺が、資料を持って戻ってきた。


「これが、甲本の情報です」


真秀が、資料に目を通す。甲本隆、三十四歳。国立大学工学部卒業。


卒業大学――


真秀の目が、止まった。芹沢幸次郎と、同じ大学だ。


同じ学部。


同じ年度。


間違いない。


甲本隆は、芹沢幸次郎の大学時代の友人だった。


「大道寺博士」


真秀が顔を上げた。


「甲本さんが、最後に研究所で何をしていたか、分かりますか?」


「最後……?」


大道寺が考え込んだ。


「確か、PASのデータを整理していたと聞いています」


「データ?」


「ええ。設計図や、制御プログラムなどです」


大道寺が答えた。真秀の脳裏に、嫌な予感が走った。


「そのデータ、確認できますか?」


「はい、すぐに」


大道寺が、真秀たちを研究室に案内した。


コンピュータの前に座り、ログを確認する。


そして――


大道寺の顔が、青ざめた。


「これは……」


「どうしました?」


真秀が尋ねた。


「PASの設計データと制御プログラム……すべて、コピーされています」


大道寺が、震える声で言った。


「甲本が、最後に出勤した日に」


真秀は、拳を握りしめた。


甲本隆。


芹沢の協力者。


彼は、PASのデータを持って逃げた。


そして――


おそらく、今も芹沢の計画に協力している。


「すぐに、本部に戻ります」


真秀が立ち上がった。


「ご協力、ありがとうございました」


真秀と花山は、研究所を後にした。車に乗り込み、エンジンをかける。


「係長、どうします?」


花山が尋ねた。


「甲本隆を見つけ出すわ」


真秀が答えた。


「彼が、すべての鍵を握っている」


真秀の目に、強い決意が宿っていた。


車が、発進した。


甲本隆。


芹沢幸次郎の友人。


榎本重工の技術者。


そして――


この事件の、もう一人の黒幕。


真秀は、必ず彼を見つけ出す。そして、真相を明らかにする。


事件は、最終局面に入ろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ