story;1.5 公園デビュー
公園デビューとは?
幼児を公園に連れ出し、近隣住民の母子と交流することを言う。
1歳半になった俺は母さんに連れられて近所の公園に来ていた。
このころの記憶はほとんどないが、このくらいの時期から体作りをしたいと思っていたからだ。
声優になることが自分自身の将来として決定した今、体力づくりを早めに始めるに越したことはないだろう。
さらに言えば、友達を作りたいと思っていた。
母さんは心配性だ。俺に友達がいないと分かれば心配して余計な気をまわしかねない。
俺は公園につくとすぐさま目的のために行動に移った。
しかし、俺は忘れていた・・・人見知りであることを。
元気よく遊ぶ子供たちに声を掛けようするものの…あえなく失敗。
一人とぼとぼと歩いていると、森の奥から声が聞こえてくる。
「私の台本返して!」
「はっ、こんなところで何もないところにしゃべりかけてて変な奴。返してほしかったら俺から取り返すんだな」
「うっ、うう・・・」
森の木陰で俺より少し上の男の子たちが女の子とのものと思われる本を取り上げ、女の子はそれを取り返そうとするものの、身長が足りないのと男の子たちが次々と本を回すののに惑わされていた。
あれは・・・台本?
少女のものと思われる本には『テレビドラマ:フラワーガール〈台本〉』と書かれているのが見えた。
その瞬間、俺は走り出してた。
「・・・おい」
「ッ!?・・・なんだ、おまえ。こいつの友達か?」
俺は、今出せる一番どすの効いた声で全員に声をかけた。
俺の声を大人の声と思ったのか、慌てて振り返った3人は安心したように俺と少女が友達であるか聞いてきた。
「いいや。でも、嫌がることをされているように見えたからね」
そういって俺は少し特殊な歩き方をした。
すると気づけば廉次が消えており、少女と少年達の間に立っていた。
「これ、返すよ」
「あ、ありがとう・・・」
俺は彼らの持っていた台本を取り返し、少女に返した。
それを見ていた少年たちは自分たちの持っていた本がとられてことに気づいた。
「お前、いつの間に!」
「俺たちに勝てると思っているのか!?」
「変なことしやがって!」
俺は、その声にゆっくり振り返る。
「失せろ」
「「「ッ!」」」
俺が再び、殺気を彼らにぶつけると彼らはひるむ。
その瞬間、少女が俺の袖をつかんできた。
俺はその手が少し震えているのを見て、自分の過ちに気づく。
「・・・ふぅ。早くどこかに行かないとお前たちのお母さんに言いつけるからな」
『子ども限定超ド級必殺技:親へ言いつけるぞ』はうまく聞いたようで彼らは「覚えてろよ」と言い残して公園へと戻っていった。
「だいじょ・・・「うぅ・・・ありがとう・・・」お、おう」
大丈夫か問おうと振り返ると彼女は俺に飛びつき涙を流しながらお礼を言ってくる。
その言葉を聞きながら俺は優しく彼女の頭をなでて泣き止むのを待つしかなかった。
「うぅ・・・ひっぐ・・・」
「落ち着いてきたか?」
「・・・うん。」
「疲れたんじゃないか?」
彼女はそう聞くと黙ってうなづいた。
「近くにお母さんはいるか?」
「いない。おうち近いから一人で来たの。たまにはお外で練習したいと思って」
「えっ、・・・まてよ。まさか・・・」
自分と同じくらいのこんな幼い子を一人で公園に来させていったいどういうつもりなのだろうか?と思ったが、この子意外とやばいかもしれない。
だって・・・
『『『『『じー』』』』
いつの間にか黒服に囲まれている。
「えっと・・・とりあえずつかれたなら家に帰ろうか?家までの道わかる?」
「・・・うん」
彼女はうつむき、何か言いたそうに返事をした。
「どうしたの?」
「あのね・・・おうちまで一緒についてきて?」
「えっ!?・・・あー、うん。ついていくよ」
彼女が家についてきてほしいといった瞬間、母さんの目からあまりに長時間離れていることが気になったが、周囲の黒服の『連れていけ』という空気にOKしてしまった。
すると彼女はとてもうれしそうな笑顔で「ありがとう」と言った。
その顔はまぶしく、少し見惚れてしまった。
※※※
彼女を送る途中でいろいろと話を聞いた。
先ほどの台本のこと。
家族のこと。
使用人で彼女に何でも教えてくれるおばあさんのこと。
遊び相手がいなくて寂しいこと。
気づけば彼女の家の前についていた。
彼女の家は豪邸だった。
彼女が門の前に立てば、ブザーが鳴り老婆の声がする。
『お嬢様ですか?おかえりなさいませ。今そちらに向かいます』
先ほど言っていた使用人だろう。
門が開き彼女が中へと歩き始める。
俺はこれ以上、進めない。だから、俺は彼女の手を放す。
その瞬間、彼女は驚いたように振り返る。
「ここは君の家だ。これ以上、俺は進めない」
「なんで?家に上がって一緒におやつ食べよう?」
「・・・ごめんね。公園でお母さんが待ってるんだ」
「・・・いや」
「いやだ、いやだ、いやだ!もっと君といたい!もっと君とお話ししたい!」
「ごめんね・・・」
俺がそういった瞬間、ブザーが鳴り、門が閉まる。
「待って。ばあや、この門を開けて!待って、まだ名前も知らないの」
そういわれて、俺は気づく。
彼女に名前を教えていなかったことに。
「俺の名前は・・・藤堂 廉次。レンジでいいよ」
「ッ!・・・私の名前は、千恋 和沙。カズサって呼んで!」
「わかった。次に会ったときはそう呼ぶ」
「!」
俺の言った次という単語に彼女はとてもうれしかったようだ。
彼女は門をつかみ、俺をまっすぐ見る。
「また明日、あの公園のあの木の下で!」
「ああ・・・また、あした」
俺はそういって公園に向かって戻っていった。
戻ると母さんが心配しており、俺はその心配を払うように新しい友達ができたことを自慢する。
母さんは心配性だから、自慢するぐらいが安心させるのにちょうどいい。
翌日、母さんにお願いして再びあの木の下に行くとそこにはカズサがいた。
本を抱え、静かに眠るカズサが。
俺は彼女の隣に座ると、彼女が崩れて俺の肩に頭をのせる。
「レンジ・・・」
彼女のかわいらしい寝言に俺は優しく返事をしながら頭をなでる。
すると、彼女は俺に気づいたようで俺に抱き着いてきた。
「ちょ、かずさ・・・「会えた。本当に会えた。昨日は夢じゃなかった・・・」」
彼女は泣いていた。僕はそっと彼女を抱き寄せてまた優しく頭をなでてあげるのであった。
その日から俺はカズサが公園にいる日は相手をするようになった。
カズサはこの間の一件で男の子が少し怖くなってしまったようで、仕方ないので女の子と遊べるように働きかけた。
やがてカズサと仲良くなった俺は彼女に家にお呼ばれするようになった。
初日はカズサのお父さんとお母さんもおり、カズサは嬉しそうだった。
なので、それとなく子供口調でカズサが父さんとお母さんにあまり会えなくてさびいしいことを伝える。
すると二人は顔を見合わせて、申し訳なさそうにする。
そこにカズサがフォローを入れるも、かえってそれがカズサの寂しがっていることへの証明にもなった。
二人はありがとうと僕とカズサの両方に行った。
二人の顔を見て意識改善は成功と言えるだろう
俺はカズサと家の中のいろいろなので遊んだ。
気づけば、日も暮れかけ、母が迎えに来てくれていた。
俺は眠い目をこすりながらカズサにあいさつをし、帰っていくのであった。
それからカズサの家に泊まらせてもらったり、泊まってもらったりしていくのであった。