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訳も分からず落ちました。  作者: 滸 いろは
2/2

【後編】

 

「せーいーめーいーっ‼」


 どたどたと廊下を走ってくる音に、清明は軽く額を押さえた。

 この邸でこんな元気に駆け回るのは一人しかいない。


「見つけた!清明!」


 ききーっ!と音が聞こえそうな勢いで廊下を滑りながら止まるその姿に猫の急停止を重ね、清明は苦笑した。


「透理。何度言えばわかるんだい?女性がそんなに…」

「あぁ、もう説教は聞き飽きたってば」

「……」

「それより!玉ちゃんと一緒なら外に出てもいい⁈」


 昨日、危ないからと外出禁止を言い渡された透理は、今朝目覚めと共に思い付いて、朝餉が終わるなり、清明の部屋に駆け込んできたのだった。


「玉若は了承したのかい?」


 あの人間嫌いな妖狐が了承するとは思えないが…と思って、清明は読んでいた書物を畳んで、透理に向き直る。


「これから説得する!そのためにも清明のお墨付きが必要!」


 びしり、と人差し指を清明に叩き付け、仁王立ちする透理。


「透理はそんなに外に出たいのかい?」

「出たい!」


 さてさて。困ったものだなぁ、と清明は腕を組んで考える。

 このままでは、彼女は邸を抜け出し兼ねない。

 もちろん幾重にも複雑に編んだ結界に守られたこの邸から、そんな簡単に出れるとは清明も思わないが、無自覚の霊力がどう作用するかわかったものじゃない。

 かと言って、玉若に今以上透理のお守りをさせるのも少しだけ、ほんの少しだけ申し訳ないとも思う。

 というか、清明とて玉若の逆鱗にはあまり触れたくない。


「じゃ、透理。こうしよう?今日から護身の訓練をしよう。僕が町に出ても大丈夫だと判断するとこまで上達したら、外出してもいいよ」


 ようは透理に暇潰しを与えておけば良いのだ。

 護身の訓練ついでに、ダダ漏れしまくりの高出力な霊力を操れるようになってもらおう。

 うまく扱えるようになれば、自分の仕事を手伝わせても良いかもしれない。

 うむ。なかなか良い案だ。

 清明がにっこり笑えば、透理が警戒心も露わに、一歩後ずさった。


「な…… なんか今、悪寒が…」


 なかなか勘も鋭いらしい。これは鍛え甲斐がありそうだ。

 清明はほくそ笑んだ。

 昼餉が済むと、早速清明は透理に稽古を付け始めた。

 透理は動き易いように着物から水干姿になっている。


「じゃ、まずは呼吸法からね」

「はーい」


 訓練次第で外出出来るとなって、透理のやる気は十分だったのだが

 ーー 三十分後。


「ぅだぁーーーっ」


 透理は息も絶え絶えに、転がった。

 きつい。…なんてもんじゃない。

 吸って吐いての行為を意識的に行うことが、こんなにしんどいなんて聞いてない。


「おやおや。もう音を上げるのかい?」


 同じ時間、同じことをしているのに、清明はけろりとしているのが無性に腹立たしい。


「くっそぉー。絶対完璧にこなしてやる」

「そ?じゃあ、もう少し頑張ろうか」


 にやにやと面白そうに、大の字に転がったこちらを見下ろす清明に、透理の負けず嫌いがメラメラと燃え上がる。

 身体を起こして、胡座を組むと、両手はそれぞれ膝の上で軽く拳を握る。

 目を閉じて、腹筋を意識しながら鼻からゆっくり息を吸って、その倍の時間を掛けて口から緩やかに吐き出す。

 思考は閉じる。

 しかし、この思考を閉じる作業が曲者だった。

 呼吸を意識すれば思考は閉じれないし、思考を閉じれば呼吸が乱れる。


「呼吸が乱れてる」

「吐き出すのが早い」

「思考が閉じてない」


 少しでも乱れれば、容赦無く清明の声が指摘してくる。

 そんなことが夕方、日暮れ前まで続いた頃だった。

 清明は目を見張った。

 突如、透理の気配は空気に溶け始めた。

 透理を包んでいた気配がそれまでの騒々しく波立ったものから、静止した水面のようにぴんと、張り詰めたものに変わった。

 これは、ひょっとすると逸材を拾ったかもしれない。

  いくら霊力が高いといっても、この呼吸法を身に付けるには、少なくとも3日は掛かると思っていたのだか、どうやら透理はこの半日でコツを掴んだようだった。

 清明は我知らず、微笑んだ。

 それから暫く清明は透理の様子を伺いつつ、心地良い静寂に浸っていたのだが。

 この時代、日暮れ前イコール夕餉の時間。


「透理!夕餉の支度はどうした⁉」


 物理方式を無視して突如現れた玉若に、それはあっさりと打ち砕かれた。

 ぱっと目を開いた透理が、あわあわと清明に助けを求める視線を送る。

 その気持ちは清明にもわかる。

 玉若は怒らせると本当に怖い。


「あぁ~。玉若?あまり透理を責めないでおくれ?透理は自分の力を正しく使う努力をしていたんだ」


 若干弱腰な清明の弁明に、玉若はにっこり微笑んだ。


「それとこれは別じゃ。人にとって食事は生命活動の最重要項目であろうが!修練だのなんだの前に、料理を覚えるのが先であろう!」


 すぱっとぶった切る玉若様。

 それは確かにその通りと言えばその通りなのだが。

 なんだろう?

 透理は青ざめつつも不思議に思う。

 人間は嫌いと豪語しつつ、なんでこんなに玉若は人間に詳しいのだろう、と。

 玉若が妖狐であることは清明から聞いている。妖狐が妖の中でも特に強いということも。

 そして高位の妖ほど人間に興味がないということも。

 なのに玉若はそうは思えないほど人間に詳しい。

 首を傾げたものの、今重要なのはこの場をどう切り抜けるか、だ。


「透理、早よう来やれ!夕餉の支度を怠るなど居候の片隅にもおけぬわ!」


 好きで居候してるんじゃないわっ!

 と、透理は思ったが、玉若に逆らう勇気もない。

 清明は?と視線を送れば、すでにどこ吹く風。


「すいませんでした」


 不条理だ。と思いつつも透理に残された選択は、素直に謝って従うことのみだった。

 私、何も悪くない。

 そんな言葉を飲み込んで、透理はすごすごと玉若に従った。

 いつかごめんなさいと言わせてやる!と胸の裡で密かに決意を固めつつ、項垂れて炊事場へ向かおうとすると。


「玉若。明日から昼餉と夕餉の支度から透理を外せ。コレにはやらねばならぬことがある」


 それまでの飄々とした態度から一転、清明が有無を言わさぬ、厳しい口調で言った。

 空気さえも、張り詰めたものに変わって、透理は小さく身震いした。


「居候が主の世話をしない道理があるかえ?」


 玉若がジロリと睨むけれど、清明は表情を変えるどころか、さらに厳しい表情を見せた。


「玉若。これは命令だ」


 厳しい清明の表情と声睨む玉若さえも息を飲んだように清明を見つめていたが、やがて小さく溜息を付くと言った。


「清明がそこまで言うとは意外じゃったの。まぁ、それほど気に入っているのなら妾とてやぶさかではないよ。せいぜい逃げられぬようにしっかり見張っておくことじゃの」


 にやり、と酷く意地の悪い笑い方をした玉若に、清明も何を考えてるのかわからぬ笑みを返し、何がどうなったのかさっぱりわからない透理ははてな?と頭にクエスチョンマークを浮かべるだけだった。

 とりあえず、明日から昼餉と夕餉の支度の手伝いがなくなったということだけはわかった透理だった。



 ####



 昼間の訓練で疲れ切って、その夜は早々に眠りについた透理。

 その一方で、清明は自室で盤を相手に星読みに精を出していた。


「ふむ…あまり良い星回りとは言えぬなぁ。暫くは経過観察するしかないなぁ」


 今上帝からの依頼で、春宮の元服日を占っていたのだが、どうにも春宮の星回りがあまり良くない。

 元服後の名はしっかり考えなければなるまい。

 しげしげと盤を見つめていた清明だが、ふと慣れ親しんだ空気に顔を上げた。


「玉若か」

「気付いておったくせに白々しいな、清明よ」


 ふらりと何もない空間から現れたのは、本性を露わにした玉若だった。


「何の用だ?透理のことなら異論は受け付けぬぞ?」

「そんなことはどうでも良い。清明。いつまで遊んでいるつもりかえ?」


 皮肉な笑みを浮かべながら、玉若が近寄った。


「この京の有様はもう手の施しようがない。今の帝とやらの悪政ぶりには感心さえする程じゃ。いつまであの阿呆に付き合ってやるつもりじゃ?」


 やや呆れたような表情の玉若に、清明は星読みを中断した。


「悪政とは、またずいぶんだねぇ?人間の政事なんて妖からみればそんなものなのかもしれないがね」

「たかが人間ごときに清明が頭を下げる必要がどこにある。そなたは大妖、葛葉の血を引く者ぞ」

「そうは言ってもね。そりゃ普通より寿命は長いかもしれないけど、身体は人間なんだから、働いて金を稼がねば食べていけないだろう」

「それくらいわかっておるわ」


 ふん、と玉若が拗ねたようにそっぽを向いた。

 理解はしても納得はできない、ということはままあること。

 清明は苦笑して、玉若を宥めた。


「まあ、今上帝は先の帝より遥かに聡明な方だよ。僕の母の件もどうにかすると言ってくれている」

「ふん。先の帝とやらが暗愚すぎるのであろう。葛葉の件、妾は許してはおらぬ」

「僕だって許してないよ。でもそれとこれとは別だよ。母に害を成したのは先帝で、今上帝じゃない」


 清明の母である妖狐葛葉は、先の帝の執拗な執着の末、騙し打ちのような手段で捕らわれた挙句、その命を奪われ、美しい白い毛皮を剥がれた。

 その毛皮は、内裏の宝物庫に奉納されたという。

 清明はその毛皮の返却を何度も要請し、先帝は清明が自分に仕えることを条件に返却を約束したが、結局のところ先の帝はのらりくらりとその要請を無視し通した。

 故に、清明も玉若も先帝に対する心象は最悪だった。


「まあ良い。清明が構わぬのなら妾が口を挟んだとこで、何にもならんからの」

「わかっているならいいよ。まあ、僕も母の形見さえ返してもらったら、さっさと隠居するつもりだよ」

「隠居できれば良いがの」


 しっしっしっ、と酷く意地の悪い笑みを浮かべて、玉若は出てきた時同様にその姿を一瞬で消した。

 残された清明は、何事もなかったように再び星読みに集中した。

 けれどその胸の裡は先程とは違い、ずいぶんと乱れており、暫くして、清明は自身の動揺に星読みを諦めた。

 こんな精神状態では、読み違えを引き起こすだけだ、と。


 ####



 透理が清明の元で修行を初めてから数日が経ったある日。

 朝餉の準備を免除された透理が充分に惰眠を貪り、いい加減に起きろ!と玉若に蹴り起こされ、寝ぼけ眼を擦りながら身を起こせば。

 目の前には玉若が用意した朝餉。

 そして、朝イチで目にするには神々しいばかりの、笑顔のどえす男がいた。

 朝餉の席に清明が同席していたことに、透理は目を見開いた。


「どうしたの?珍しいね」


 清明は普段、透理とは別に食事を摂っている。

 これまで透理の朝餉に清明が同席したことはない。

 これは単純に活動時間帯の違いによるものだが、だからこそ、透理の朝餉に清明が同席することは珍しい以外の何物でもない。


「清明、仕事行かなくていいの?」


 お膳の前に座りながら、透理が首を傾げると、清明に実に爽やかに笑った。


「……清明。絶対なんか企んでるでしょ」


 透理はひくりと、身を引いた。

 そんな透理を見た清明は、やはり相変わらず爽やかな笑顔のままに


「おはよう、透理。ずいぶん遅い朝だね?」


 嫌味以外の何でもない言葉を吐かれ、ぴしり、と透理の眉間に皺が寄る。


「清明。朝からわざわざ嫌味を言いに来たわけ?そりゃまたずいぶんと暇なのね」


 透理は汁物がよそられた腕を手に取り、敢えてゆっくりと口に含んだ。


「嫌だなぁ?君に稽古を付ける約束だろう?出仕なんかよりそっちのほうがよっぽど大切だからね」


 しれっと答える清明に対し、透理は大切じゃなくて面白い、の間違いだろうと、内心で全力で突っ込んだのは秘密だ。


「そりゃどーもご迷惑おかけして申し訳ありませんね」


 憮然として答えると、これまた清明は爽やかに笑う。


「いやいや。誰かに稽古を付けるのがこんなに充実した時間だとは思わなかったよ。まさしく透理の才のおかげだね」

「そんな胡散臭い笑顔で言われても有り難みなんか微塵も感じないわ」


 ばちばち。

 二人の視線に火花が飛んだ。

 そんな二人の無言の対決をぶち破ったのは、もちろん玉若。


「さっさと食べりゃ!冷めてしまうじゃろ」


 室温が一気に下がる程の冷たい声で玉若に促され、二人は静かに腕を手に食事を進め始めた。

 この邸の主は僕なんだけどなぁ…と、清明はしょぼしょぼと汁物を啜った。


「ところで清明。透理の修行とやらの進み具合はどうじゃの?」

「うん?」


 先程、極寒を与えた玉若は、そんなことは知る由もないという様子で尋ねた。

 汁物を置き、蕪の漬物を突いていた清明は、それを食わえながら顔を上げ。


「清明、行儀が悪いっ!」


 ぴしゃり、と晴明が玉若に怒られた。

 そこで透理はふと疑問に思う。


「あのさ。清明と玉ちゃんって、どっちが強いの?」


 透理にとっては至極素朴な疑問だったのだが、途端に二人が目を剥いた。


「僕!」

「妾に決まっておろう」


 勢い込む清明と、そんなの当たり前の顔の玉若。


「うん。両者譲る気なしってことね」


 ここは下手に突かない方が身の為のような気がした透理は、苦笑で誤魔化した…つもりだった。

 しかし、透理はこの時既に、この邸で最大の禁則事項に触れてしまっていた。

 注意事項ではなく禁則事項である。


「譲る譲らぬの問題ではない。妾の方が強い」

「いや!僕の方が強いに決まってるだろ!僕の方が強いからこそ、肝心な所では僕に逆らえないじゃないか!」

「勘違いするでない、清明!そなたは我が敬愛する葛葉の子。妾はそなたに甘いだけじゃ!」


 突如始まった二人の譲らぬ戦いに、透理は箸を咥えたまま、ぽかん、となった。

 普段ならここで玉若の教育的指導が入るのだが、今の玉若はそれどころではないらしい。


「甘い⁉玉若のどこが僕に甘いって言うんだい⁉僕は玉若に手酷くしごかれた記憶しかないよ⁉」

「何を言うか⁉葛葉亡き後、そなたに術を教えたのは誰ぞ⁉」

「父上だっ!」

「その父を亡くし、途方に暮れたそなたを拾って育てたのは妾ぞ!」

「そんなの頼んでない!」



 もはや二人の舌戦に透理が割り込む余地はなく、黙って経過を見守る他、透理にできることはない。

 話からするに、清明は子供時代に両親を亡くし、その後玉若に育てられた…らしい、ということだけは理解した透理。

 清明って玉ちゃんには随分と甘えてるんだなぁ……と思った。

 もちろんそんな事を口にすれば、火の粉がこちらに飛び火してくるのは明白。

 故に透理は、未だ舌戦を続ける二人を他所に、粛々と朝餉の消化に務めた。

 大人の理屈も事情も、子供が下手に首を突っ込んではいけないのである。

 清明と玉ちゃんを競わせてはいけない、と頭に禁則事項として刻んだ。

 しかし、見て見ぬ振りというのもなかなかに難しいものだな、と思う透理だった。

 透理が朝餉を綺麗に胃の中に収めた頃、二人の舌戦は透理が思わぬ方向に向かった。


「わかった。それならどちらが上か、1番公平な透理に決めてもらおう!」


 押し問答に飽きた清明が、とんでもないことを提案した。しかも玉若も頭に血が登っているのかなんなのか。


「良かろう!しかしただ勝負するだけではつまらぬ。負けた方は勝った方の望みを一つ叶える、ということでどうじゃ?」


 にんまりと笑う玉若。

 いやいや、私、めっちゃ無関係ですよね⁉

 透理は目を剥いた。

 ここは抗議しなければ!このままだと無駄に責任を問われ兼ねない。


「ちょっと待て!今の話のどこに私が出てくる要素があるの⁉大体、私の保護者は清明なんだから、その時点で公平な訳ないでしょ!」


 言ってみれば、玉若が居なくてもどうにかなるが、清明という財布が居なくては透理の生活が成り立たない。


「私は清明に味方するに決まってんでしょ!私は清明がいなきゃここで生きていけないんだから!」


 何が楽しくて他力本願を自分で宣言しなきゃならないのよ。

 しかし、情けないことに透理にとって、これは歴然とした事実。

 視線を二人に戻せば、清明も玉若も毒気を抜かれたような、呆れたような、憐れむような目で透理を見ていた。

 私だって、こんなこと胸張って言いたくないわいっ!

 ちょっと泣いていい?


「という訳だから。玉若。ニ対一でここは僕の勝ちだよね」


 清明が勝ち誇ったように宣言すると、玉若は清明を睨んで、きぃっ!と鳴いた。


「おのれ、この怨み覚えておれ!」


 そう言い捨てて、玉若が消えた。

 玉ちゃんって、結構激しい人だったのね。…いや、なんとなく日常生活の中で気付いていなかったわけじゃないけど…。

 とはいえ、玉若の怒りが自分に向いてこなかったことにホッとした透理。


「清明。これ以上厄介事に私を巻き込むのはやめてくれる?」


 改めて、心の底から清明に抗議した。はずなのだが、清明にその心は伝わっていなかった。


「えー?厄介事に巻き込んでるなんて心外だなぁ。僕はキミに少しでもここでの生活に慣れてもらいたいだけなんだけど」

「そんな建前みたいな屁理屈は聞いてない」

「建前でも屁理屈でもなく、本音なんだけどな」


 じっと睨む透理とにこにこ笑顔の清明。

 二人はじっと無言のまま、互いの主張譲らない。

 どちらが根負けするかの意地の張り合いになるのかと思いきや。


「清明!大変じゃ!」


 捨て台詞を残して消えたはずの玉若が、血相を変えて、顕現した。


「玉ちゃん?どしたの?」


 滅多に見れない慌てた様子の玉若に、透理は驚いた。


「ええい?この馬鹿清明!何故気付かんかった!あの馬鹿が来たのじゃ!」


 玉若は綺麗な顔をこれでもか、というくらい歪めていた。


「あの馬鹿……ああ、道長様?」


 こてん、と首を傾げるのは清明の癖なのかな、と透理は思う。


「結界が反応しなかったから気付かなかった。透理。君は部屋に戻って。君を見られると色々と面倒だ」

 玉若とは真逆に落ち着いた様子の清明は、透理にそう指示すると、自分は至極面倒そうに立ち上がった。

 しかし。

 来訪者があの、歴史に名を残す藤原の道長となれば、この目で実物を見てみたいという好奇心が透理を刺激した。


「嫌。あの藤原道長なら、この目で見てみたいもーん」


 つん、とそっぽを向けば、清明がため息。


「わがまま言わないで、部屋に戻って」

「いーやーだー!」

「透理!」

「私は清明の婚約者なんでしょ!だったらご挨拶くらいするのが礼儀じゃないの?」


 偽物かつ不本意な立場設定だけど、この際使えるものは何でも使ってやろうじゃないの。

 透理に引く気がないことを見て取ったのか、清明は目を閉じてこめかみを軽く押さえた。

 玉若に言って、強制的にここから透理を連れ出させることはできるが、そんなことをすれば透理が臍を曲げるのは確実。

 透理の才能を伸ばして、自分の補佐にしたいと思う清明としては、修行に支障がでるようなことは避けたい。

 なんだって僕の周りの女性は、こうも跳ねっ返りばっかりなのかなぁ…

 僕、女難の相はないはずなのに。

 全て清明自身が選んで側に置いているのだから自業自得なのだか、清明にその意識はない。


「わかったよ。ただし御簾越しの上、几帳の影から絶対出ないこと!これだけは絶対譲れないからね」


 それじゃ何も見えないじゃない!

 透理が抗議すると、その問題は玉若があっさり解決してくれた。


「鏡を使えば良かろう?あそことあそこに鏡を置けば、透理の場所からでも顔が見える」

「……仕方ないから、それで手打ちにしてくれないかな、透理?」


 玉若の指差した二箇所に鏡を置いて観察する、という事で互いに納得した透理と清明は、清明の部屋で道長を迎えた。

 しばらくすると、萌黄色の狩衣姿小男がパタパタと歩いてきた。おそらく本人は胸を張っているつもりなのだろうが、ふんぞり返っているようにしか見えない。

 歴史に名を残す偉人のはずなのに、実物にそんな威厳的なものを何ひとつ感じないんですけどー?

 教科書で見た絵と似てるのって、服装とずんぐりむっくりな身体だけじゃん。


 なーんだ。がっかりー。期待ハズレー。


 道長からすれば、後世で自分がそこまで有名だなんて知ってるはずもないし、勝手に期待して落胆するな、というところだが、幸か不幸か、道長は透理のそんな感想は知らない。

 世の中、知らない方が良いこともある、という見本である。

 透理の存在に気付かないまま、道長は清明の正面にどかりと胡座を搔いた。


「久しいな、清明よ」


 胡座を掻いて、なお胸を張っている道長が、どうにも滑稽過ぎて、透理は吹き出しそうになった。

 見張り役の玉若に至っては、道長と必死に笑いをこらえる透理を見比べ、ケラケラと爆笑している。

 もちろん、玉若の爆笑は道長には聞こえていない。

 妖怪ってずるい。

 一方、久しいと声を掛けられた清明。

 はて?久しいとはまだ面様な。

 一昨日、殿中で顔を合わせたばかりの筈だ。

 しかし、清明はそんなことは一切表に出さず、にっこり微笑んで、頭を下げた。


「右大臣ともあろうお方に、わざわざご足労頂いては、この清明、明日以降殿中でどんな謗りを受けるか分かったものではありませんな」


 アポなしで来訪した道長への皮肉にしか聞こえないぞ、それ。

 透理は権力者にそんな言い方して大丈夫なのかなぁ?と、一応心配する。

 だって、清明が無職にでもなったら、透理の生活だって危うい。

 しかし、道長は清明に皮肉られたことに気付いているのかいないのか、かっかっかっ!と笑った。


「殿中に清明を謗ろうという肝の座った猛者などおるものか。皆、そなたからの報復を恐れて口を噤んでおるさ。そなたはその程度で報復するような男ではないのだがな」


 ふむ。頭の悪そうな外観とは別に、意外とちゃんと見てるらしい。

 まあ、そうでもなきゃ藤原一門の栄華なんて築けないか。

 第一印象を、爪の先程度には改めた透理であった。

 でも一つ訂正が必要だと思う。

 今朝の玉ちゃんとの一件もそうなんだけど、清明って、たぶん…というか結構わがままで意外と子供っぽいとこがある。謂われの無い誹謗中傷に対しては、結構笑顔で報復的な何かをすると思う。

 その横で玉若がぼそりと


「やはり馬鹿はどこまでいっても馬鹿か」


 なんて言うから、透理は笑いを堪える余り、腹筋が引きつった。


「た…玉ちゃん!私、もう無理!なんとか私の笑い声が聞こえないようにして!」

「ほう?透理。どうやら馬鹿に関して妾とそなたの意見は一致したようじゃの」


 にんまり笑った玉若は、右腕をさっとひと振りした。

 その瞬間、透理は自分の身体が宙に浮いたような感覚に陥った。

 いや、実際に宙に浮いたことなんてないので、あくまでも、こんな感じなのかな?程度の認識だが。


「几帳からこちらを別空間に転移させた。まあ、結界のようなものじゃな。ここならば様子を見つつ、存分に笑えるぞ」


 ……脱力した。

 そんなことができるなら、最初からそうしてよー!

 腹筋が引きつったときの、あの悶絶寸前の痛みを返してもらえませんか?

 玉若の怖さを十分に承知している透理が、あくまでも穏便かつ下手に抗議すれば、玉若はカラカラと笑った。


「頼まれなかったからの」


 誰に?…って、もちろん清明だ。

 なんのかんの言って、清明に言われない限り動かない玉ちゃんって、無自覚で清明に使役されてるんだろうなぁ…と、透理は口にしたらその場で八つ裂きにされそうなことを思った。

 もちろん、玉若にである。

 そんな傍観者達には構わず、清明と道長の話は進んでいた。


「それで道長様。本日は随分と急な訪れですが、如何なるご用件でございましょうか?」


 あの、清明が、謙っている!

 マイペースかつ腹黒い清明しか知らない透理は、几帳の裏で盛大に吹いた。


「まあ、いくら希代の陰陽師と騒がれる清明とて、殿中での位は決して高くはないからのぉ…。禄を得る為には表向きくらい上司を立てる必要かあるということじゃな」


 くつくつと、玉若が面白そうに喉を鳴らして笑った。

 日頃、清明の傍若無人な言動に悩まされている透理からすれば、少しはこちらの気持ちも分かっただろー!

 あっはっはっ!と高笑いしたくなる気分だった。

 あの清明がどんな顔で謙っているのか?と無邪気な好奇心と、後で笑ってやる!という企みから、つい鏡を覗いた人間の女と妖の女。

 透理と玉若は、清明の背後の几帳に隠れているため、清明の表情は二人からはその背に隠れて見えていない。

 しかしながら、仕掛けた鏡には清明のにこやかな笑顔が映っている。


 …………。


 透理、玉若共に、不本意ながら暫し無言で硬直。


「た、玉ちゃーん。アレって、清明絶対怒ってるよね…?」


 一見人畜無害のような人好きのする穏やかな笑顔だが、それこそが清明が腹を立てている時に見せる、鬼の笑顔。

 それは透理が安部邸に世話になるようになってから、最初に知った清明の取り扱い注意事項だったりする。


「……ちと悪ふざけが過ぎたかの?」


 笑顔とは裏腹に、透理と玉若の目の前にある男性らしい肩幅のある背中から、ひしひしと感じる殺気。


「……やっぱりアレって、道長さんじゃなくて、私達宛ってこと?」


 私、何もして…なくはないけど、でも笑えるから笑っただけじゃないか!そんなんで玉ちゃんすら青褪めるような殺気とか‼‼

 清明って、なんとなく感じていたけど!何か凄く今更な気もするけどっ‼

 ……プライドが高いって、面倒。

 几帳の裏で、人間どころか妖狐さえも怯えさせておきながら、清明と道長の会話は続く。


「おお!そうであった‼我が一の姫の入内が正式に決まったのじゃ。そこでその日時をそなたに占って欲しくてな」


 道長が満面の笑顔で用件を伝えた瞬間、清明が苛っとしたように目を細めた。


「……そういった用件であれば、帝から陰陽寮へ勅命、というのが正式ではありませんか?私が占う必要はないはずです」


 背後で見守る二人は、更に身を硬くする。透理は玉若の袖をきゅっと握った。

 だって怖いんですってば。

 ってゆーか、道長さんに表立って怒れないからって、こっちに殺気飛ばすのは止めてもらえませんか⁉

 透理、涙目。

 玉若も、涙目。

 八つ当たり反対ー。


 唯我独尊を絵に描いたような清明も、やっばり時の権力者には従うしかなかったようで。

 道長の頼みを引き受けた清明。

 しかし。


「なんで私なのっ⁉」


 透理は星の動きを記した盤を前に、真っ青になっていた。


「これも修行のうちだよ?」


 ざっと、それこそ興味のない本を読み飛ばすかのように、占術の説明をした清明は、頭にハテナ?を浮かべたままの透理に


「じゃ、頑張って占ってね」


 満面の笑顔がこんなに怖いのは、清明だけだと思う…。これ、絶対さっきの仕返しだとしか思えない。

 透理はすがるように、横で様子を眺めていた玉若に視線を送った。


「透理。玉若に頼るのは無しね。ーーそうだな。上手く読み解けたら、君の外出を許可してあげるよ」


 ……許可なんていらないから、こんな横暴な修行は二度とやめて欲しいです。

 このときばかりは、透理は心底そう思った。

 だって相手は時の権力者。

 間違えようものなら、どんな罰を受けるのかわかったもんじゃない。

 清明から渡された書物は、以前、役に立つはずもなく。

 だって、相変わらずミミズが手繰ったような文字なんだもん。

 読めないっての。

 とりあえず、盤と睨めっこしてみるけれど、付け焼き刃でどうこうできる問題じゃないなぁ…と。

 盤を眺めるものの、心は遠くに飛び立っていくのですよ…。

 こくりこくりと首が前後に振れるのは、自分でも思った以上に早かった。

 どれくらいそうしていたのか。


「ほほう?舟を漕ぐ程度には簡単だったようだね、透理?」


 額を指で突かれて、夢現の状態から現実に引き戻された。

 目の前には、清明の美しい顔があった。ただし、その顔には果てしなく背筋が凍るような冷たい笑顔が咲いている。


「あ、あーーっと…?これはですね、その夢で未来を見ることが出来るかなーっていう実験で……」

「へぇ?透理は夢見が出来るのか。それは初耳だね?」


 怖い!本気で怖いっ。清明からますます冷気が立ち昇ってる気がする。


「じっ…、実験なの!!」

「実験って予想に基づいて、その予想を確かめるためにするわけだよね?つまり透理には出来るかもしれないっていう仮定があったってことだよね?」


 ひぃぃぃっ!!

 鬼だ……鬼がいるーーーーっ!

 透理は星読みの盤をすっと前に押し出した。

 三十六計、逃げるに如かず。


「すいません。ごめんなさいぃぃっ」


 触らぬ神…もとい、触らぬ鬼に祟りなしというもの。透理は平身低頭という言葉通り、土下座した。

 身を小さくして震える透理に、清明は嘆息すると、伏した透理の頭を撫でた。


「透理。そんなに怯えないで欲しいな」


 それは酷く優しい声と手で。和らいだ空気に、透理は自然と顔を揚げて、後悔した。


「可愛い過ぎて、ますます虐めたくなるだろう?」


 ひくり、と透理の頬がひきつった。

 玉若さん。

 私、貴方を心から恨んでも良いでしょうか?

 何をどう育てたら、こんな鬼畜属性が身に付くんですか…。

 遠い目をした透理に、清明は容赦ないひと言が追い打ちを掛ける。


「んー。透理は表情が豊かだから、虐めると本当に面白いよねぇ」


 声に出して笑う清明に対して、透理が殺意を抱いたのは言うまでもないが、ひとまず透理には片付けなければならない目先の問題がある。


「すいません。わからないので教えてください…」


 屈辱

 その二文字が透理の頭と心を支配したが、そんなものを持っていたところで何の足しにもならない。

 恨み辛みだけで生きていけるほど、透理は野生化していない。


「おや?ずいぶんと素直だねぇ?」

「私はいつも素直よっ!」

「僕が困っているのを楽しんでいたのに?」


 やっぱりかーーーーーっ‼

 何が「これも修行」よ!やっぱりあからさまに仕返しじゃないの!清明の陰険野郎!

 透理の胸中を嵐が荒れ狂うが、そんな事を言ったら最後、状況が悪化するのみ。

 となれば。


「すいませんごめんなさいもう二度としません」


 ううう……哀しきかな居候。

 諸悪の根源が清明であろうも、結局衣食住の全てを面倒見て貰っているわけで。


 古今東西、家主最強。


 透理が必死で謝れば、清明も気が済んだらしく、わざとらしく溜息を一つ。

 ……天才陰陽師っていうより、人の神経を逆なでする天才なんじゃないの?

 そうは思っても、透理は口には出さない。


「まあ、今回は僕も大人気なかったね。じゃ、最初から教えるから一緒にやろうか」


 ようやく清明の機嫌は直ったらしい。


「初心者なので。優しくお願いします…」


 こうでも言っておかないとスパルタ授業になりそうだし?

 うん、保身は大事よね。

 私、結構小狡い人間だったんだなぁ…なんか情けなくなってきたわ…とほほ…

 透理はがっくりと肩を落とした。

 しかし、それから始まった清明の説明は、とてもわかりやすいものだった。


「つまりね、星の位置から導き出される答えは現在の状況なんだ。ここから空の動きを予想することが1番大切なんだ」


 最後に清明はそう締めくくったのだが、千年以上の未来からこの時代に来た透理にすれば、星の動きで未来を決められてたまるものか、とも思うわけで。


「星の動きが人の未来を示唆するなんて、そんなの納得できないわ。運命を否定するわけじゃないけど、人は自分で進む道を選べる生き物だと思うけどな」


 透理が正直に言うと、清明は驚いたように目を瞬いた。


「……それは僕も考えたことがある。だけど、殿上人はそうは考えないんだよ」


 人は容易く楽な道を選ぶ。誰だって辛いのも苦しいのも嫌だと思う。

 現に、今の透理はそんな状況で。


「誰かに示唆されたことなんて簡単に諦められるし、責任転嫁もできる。だけど自分で選んだなら誰のせいにもできない。自分で責任を負うしかないわ。だいたい、星の位置で未来がわかるとか、そんなの私はどーなるのさ?って話なんですけど?」

 清明は何度か目を瞬いた後、それからくっと喉を鳴らし、堪らない、というように腰を折って笑い出した。


「あはっ…あはははっ」

「ちょっと⁈何で爆笑⁉」


 せっかく良いこと言ったつもりなのに、なんでこんなに盛大に笑われなきゃいけないんだろ。

 というか、人の親切を無下に扱うような奴は犬に噛まれてしまえばいい!


「あははっ…いや、だって!」

「清明。いつか元の時代に帰る時は100倍にして返してやるから、覚えときなさい」


 ぐっと拳を震わせて透理は、清明を睨んだ。


「あー……いや、馬鹿に、したんじゃないよ?」


 笑い過ぎて涙を浮かべる清明は、その涙を指で拭いながら、それでも収まらない笑いを堪えようとしていた。


「どこからどうみても馬鹿にしてるじゃないのよっ!」


 透理はむぅ!っと眉を潜めて、さらに強く睨んだけれど、清明がその程度で怯むわけもなく。


「僕もまだまだだなぁ。あぁ、そんなに熱く見つめられると、さすがの僕も照れるんだけど」

「見つめてんじゃないわよ。睨んでるの」


 もうイヤだ。

 清明との会話はいつもこんな感じに、大事な所は隠されて気付けば向こうのペースにはまって、はぐらかされて終わる。


「透理」


 ようやく笑いが治まったらしい清明。


「何よ?まだなんかあんの?」

「いや?あぁ。何か、といえばあるかな?」


 その秀麗な顔に意地悪そうな笑みを浮かべる清明に、透理の頭が警鐘をならす。

 よくわからないけど、逃げろ、と脳が告げているようで、透理の足は素直に後ろに下がった。

 だけど、少し遅くて。

 清明の手が伸びたかと思うと、後ろ首にその手が回った。


「君は本当に面白い」

「……ちょっ⁉」


 耳元で囁く清明の声が酷く甘くて、今度こそ脳が全力で逃亡指示を出すのだけど。

 う……動けないーーっ‼

 がっしり掴まれた後ろ首。


「ち……近いから!清明近いっ!」


 ああ、もう!

 こんな綺麗な顔を間近で見せられて、動転しない女子がいるわけない。


「透理?顔が赤いけど熱でもあるのかな?」

「ないっ!」


 明らかにわかっていて、そう言う清明の腕を引き剥がすべく、腕を伸ばし、身体をひねり。


 ぐぎ。


「いっーー!」


 首がっ……!


「ぶっ…」

「痛い……」


 これはあれだ。俗に言う寝違えた、ってやつだ。

 いや、起きてるけど。


「ごめんごめん。ちょっと意地悪しすぎたかな?大丈夫?」

「大丈夫じゃないわいっ!絶対いつか仕返ししてやるから覚え…痛っ…」


 筋違いを起こした私の首筋に清明の手がさらりと触れる。


「なぁっ⁉」

「はいはい。おとなしくしてなさいな…………」


 清明は何やらもごもごと言葉を唱えているようだったけど、私には聞き取れなかった。

 しばらくして、清明の手が離れた。


「どう?少しは痛みも和らいだんじゃないかな?」


 清明に言われて、自分で首を動かしてみれば。

 あら不思議。


「痛く…ない?」

「禁厭が効いたみたいだね」

「まじない?」

「そ。さて。それじゃあ引き続き勉強に戻ろうか」

「う…うん」


 まじないって何?現代で言うところのおまじない?

  痛いの痛いの飛んでいけー!みたいなもん?

 よくわからないまま、盤を覗き始めた清明を見つめると、清明が苦笑した。


「そのうち透理にも教えるから。今は星読みに集中しようか?」


 そう言いながら手を伸ばして、透理の右頬をぶにーっと引っ張った清明。

 初心者なんだから、もう少しくらい優しくしてもいいんじゃないだろうか。


「ひゃめれーーーっ!」


 清明邸に透理の悲鳴が響き渡った。


 清明邸は、なんのかんの平和な日常が今日も続く。

 この不思議な日常に慣れて行くのは不本意だけれど、まぁ、こういうのも悪くないかな。

 心の中の気持ちに透理は少しだけ、蓋をした。



 fin.












































これにて終了です。

活動報告にも載せましたが、本当は晴明と透理の恋も絡めた作品です。

読み返してみても「だからなに?」と自らツッコミたくなった……。


まるで神様の如き超人さを語られることの多い晴明ですが、そんなの彼の人間臭さを書きたいな、と思ったのかきっかけだったかもしれません。


透理、晴明、玉若の三人は、これからも賑やか賑やか暮らしていくことでしょう。


お読みいたたきありがとうごさました。

誤字脱字、各種ご感想は、随時歓迎です。



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