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夢占い亭 霞の館  作者: ゆう
第二夢
6/37

~ねぇ、あなたは誰?~2

結局、千奈美は漠がサボった分を三人掛かりで手伝う事になった。


「すみません、千奈美さん…客人だというのに…。」


「いえいえ!それにしても凄い量の本ですよね…何の本なんですか?」


膨大な量の本を眺める千奈美は、これだけの本の中身が気になった。


「んー…私も全ては把握していませんが昔の歴史や専門書、あとは…あらゆる宗教の書物ですね。」


そう有村は答えると、淡々と書物を本棚に収めていく。


「宗教?」


「はい、私の先祖の存在がどのように人間に伝わっているか、漠さんの伝説がこの世にどのように広まっていったかなどが最初のきっかけで…。」


気付けばこんな量に…と本棚を眺めながら有村は呟いた。

まるで有村や漠が人間ではないかのような口ぶりだが、この二人、実はただの人間ではない。


漠は悪夢を見させる原因、『睡魔』と呼ばれるものを食べる伝説の生き物、『(バク)』なのだ。

現代では良い夢を食べて悪い夢を見させるといったフィクションが多いが、本来の獏は悪い夢を食べて幸せを運ぶといった生き物らしい。


そして有村の先祖は神に反逆を翻した堕天使、『アリエル』と人間の間に生まれた子の子孫で、神に逆らった罪を夢の中で戦う漠の武器『夢装神』となって手伝う事により罪滅ぼしをしている。有村の本名は、アリエル・冴子なのだが、本人は何故かその名を恥ずかしがり、自らを有村と名乗っている。


過去に千奈美はこの二人に悪夢から助けられ、それからというもの、この店、『〜夢占い亭 霞の館〜』に入り浸るようになったのだ。


「なるほどねー…確かに自分自身がどんな風に伝わったか気になりますよね…。…って、ちょっと気になったんですが…。」


有村の話に千奈美は一旦納得した後、新たな疑問が生まれた。どうされましたか?と有村は首を傾げて千奈美の言葉を待つと、千奈美は少し躊躇うと、


「あの…えっと……漠さんって…何歳なんですか?」


千奈美はおそるおそる尋ねた。そんな中、書物を片付け終えた漠はのんびりした足取りで千奈美達の元に戻ってくると、二人の話に混ざる。


「んー?何の話してるのー?」


「いや、あの、その…。」


「千奈美さんが漠さんの年齢が気になるって話です。」


「ちょっと、有村さん!もうちょっとオブラートに…。」


まごまごする千奈美に代わって有村がハッキリ伝えると、千奈美は慌てて有村に手を振る。有村はそんな千奈美に不思議そうな表情をする中、んーと唸りながら顎をさすると漠はしばらく考えた。


「えーと…何歳だっけかなー?四百歳くらいまでは覚えてたんだけどなー?」


「よっ?よん…ひゃ…く?」


「うん、それより歳重ねてるよー、超おじいちゃんなんだよー?」


だからもっと敬いなさいっ、と言って頬を膨らませた。

予想外に桁違いな年齢に千奈美は目を見開いて絶句した。見た目はだらしないが、どう見ても二十代半ばにしか見えない。


「ちーちゃん、何だか驚いてるけど、ありむーだって人間からしたら、凄く年寄りなんだよー?」


僕より年下だけどねっ、と言って漠はウィンクすると、続いて有村も恥ずかしそうに説明する。


「私の身体には邪の道に外れたとは言え、曲がりなりにも先祖の…天使の血が僅かに流れてます。なので通常の人間よりは長生きします。私で今…ちょうど六回目の成人式を迎えた年齢ですね。」



「え…?二十歳が六回って事なら…ひゃ、百二十歳…?!」


驚きのあまり、千奈美は目を見張る。確かに漠の言う通り、有村は漠よりも年下に見えるが、それでもせいぜい二十歳過ぎ程度にしか見えない。いや、大学生だと言われても納得してしまう若々しさだ。


「あ…改めて、人間じゃないって思え…ました。」


千奈美の言葉に漠はえっへん、とポーズを取り、有村は何だか顔を赤らめていた。


そんなやり取りの中、


(キィィ…。)


「ごめんくださーい…。」


店の扉がゆっくりと開いた音がすると、誰かの訪ねる声が店の奥まで聞こえてきた。


「ん?お客さんかなー?ありむー、よろしくー。」


漠の声に有村は小さく頷くと入り口まで向かい、しばらくして有村が戻ってきた。

その有村の後ろには上品な着物を着た御老人の姿がそこにはあった。


ーーーーー


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