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星空の小夜曲~恋する乙女は世界を救う〜  作者: 由希
第2章 中央大陸編
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第166話 家族会議

 私達は一度、アウスバッハ領へと戻る事にした。サークの怪我が深いのもあったし、これからの事も話し合わないといけなかった。

 家に戻るとすぐにかかりつけのお医者様と教会の神父様を呼んで、サークの治療を行った。怪我をして時間が経ったせいかすぐには治りきらなくて、今はいつもサーク用に空けてある客室で休んでもらっている。


「……それじゃあ、レオノが狙われる事はもうないのね……?」


 私達の説明にそう安堵の声を漏らしたのは、お母様だった。すっかり馴染んでしまった目の下のクマが、少し申し訳ない。


「うん、兄様はもう安全だと思う」

「しかし、その……敵の言う事なのだろう? 本当に信用しても大丈夫なのか?」


 そのお父様の疑問はもっともでもある。けれどそれを否定したのは、私ではなく兄様だった。


「いえ、父上。あの者は卑劣な手段を行使してはきましたが、嘘だけはただの一度も()く事はありませんでした。であれば、恐らく信用しても良いものと」

「う、うむ……お前がそこまで言うのなら……」


 兄様にそう言われ、渋々納得するお父様。……兄様が私よりずっとしっかり者なのは解ってるけど、この差はちょっとモヤッとするなあ、もう。


「……でも、それでも、クーナはまだ狙われている……のよね?」


 兄様の説明に、一旦は明るい顔になったお母様だけど。そう言うとすぐにまた、表情を曇らせた。


「ねえクーナ、もういいでしょう? 旅なんて止めて、私達の側にいて」

「そうだクーナ。強くなるなら、ここでだって出来るだろう。各地を回って対抗手段を探すのは、サークさんに任せておけばいい」

「私もそれには賛成だ、クーナ。ここにいれば、私もお前の力になってやれる。もしもお前がまた旅立ち、それが今生(こんじょう)の別れとなりでもしたら、お前の兄として悔やんでも悔やみ切れない」

「み、みんな……」


 ひいおばあちゃま以外の家族みんなの目が、一斉に私の方に向く。う……困った。兄様も元々、私の旅には反対してた側だし……。

 みんなの心配な気持ちは解る。色々解決する為に、必ずしも私が動く必要がないって事も解ってる。

 でも、それでも私は。私が行く事で手を差し伸べられる人がどこかにいるなら、行きたい。

 旅を始める前にはなかった思い。この二年で色んな経験を積んだ事で、生まれた思い。

 私にも出来る何かがあると知った今だからこそ、私は——ここで、歩みを止めたくないの。


「……全く、あなた達ときたら」


 と。そこで口を開いたのは、ひいおばあちゃまだった。


「クーナを一体何だと思っているのですか。この子はもう十六歳。自分の判断で行動し、その責任も取れる立派な大人なのですよ。それをあなた達ときたら、いつまでも子供扱いをして」

「で、でもおばあ様……!」

「クーナ、あなたはどうしたいのですか。その気持ちが、一番大事ですよ」


 ひいおばあちゃまがそう言って、私の目を見つめる。……答えなんて、もう決まっている。


「私はこのまま、サークと旅を続ける。……私は、冒険者だから」

「それが、あなたの意思なのですね?」

「うん。私は、ひいおじいちゃまみたいな冒険者になりたい。……ううん、ひいおじいちゃま以上の冒険者に、なりたい」


 そう、小さな頃漠然と抱いていた夢は、もうただの幼い夢じゃない。

 私の目の前に今確かにある、ハッキリとした目標なのだ。


「……成長しましたね、クーナ。この二年間の旅は確かに、あなたにとって良い経験になったようです」

「ひいおばあちゃま……」

「家族の事が心配な気持ちは解ります。ですがここは、クーナを信じてみようではありませんか。この子は少なくともこの二年、サークの指導もあったとは言え、立派に旅をやり抜いたのですから」

「……」


 みんなが無言で、私をジッと見つめる。私は出来るだけ胸を張って、その視線に応えた。


「……一つ、条件がある」


 やがて深い息を吐きそう言ったのは、お父様だった。


「最低でも一月(ひとつき)に一度は、無事の手紙をよこしなさい。いくらサークさんがいるとは言え、この先どうなるかは解らないのだから」

「お父様……!」

「メニとレオノも、それで構わないか?」


 お父様が、お母様と兄様を振り返る。二人は躊躇(ためら)いがちにではあるけれど、こくりと頷いてくれた。


「……父上がそれでよろしいのでしたら」

「クーナ、本当に本当に手紙をくれる? もうあなたがどうしているか解らずに、ずっと落ち着かない日々を過ごすのは嫌よ? あなたときたら、私がどれだけ心配してるかなんてちっとも……」

「解った、解ったよお母様! お父様の言う通り、手紙はちゃんとマメに出す! だからそんな、泣きそうな顔しないで!」

「これで話はまとまったようですね?」


 ひいおばあちゃまがその(しろがね)の目で、私を見つめる。私はそれに、大きく頷き返した。


「うん! 私、絶対にサークと一緒に、世界を救って帰ってくる!」

「ふふっ、でも無茶はいけませんよ? それは私も、(みな)と同意見です」

「うん、約束する! ありがとう、ひいおばあちゃま、お父様、お母様、兄様!」


 みんなにお礼を言って、頭を下げる。……うん、本当にいい家族に恵まれたと思う、私。

 みんなを守る為にも……必ず、サークと世界を救うんだ! やるぞ、私!

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