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68.素材の秘密

「はぁ〜。冷たくて甘くてプチプチしてて。最高です〜」


一口目を食べたシルネが頬に手を当て、悶えている。

スプーンでゼリーを一掬いし、それを目の前で揺らしながらゼリーに魅了されている。

どうやらお気に召したようだ。


「はい。本当ですねシルネさん!ゼリー美味しいです」


「これは本当に美味しいね。砂糖を使った料理かい?」


濃厚な甘さがゼリーを舌に乗せた瞬間、口いっぱいに広がる。こんな甘味の強い食べ物は確かに砂糖を使ったと思っても不思議じゃ無い。


「いいえ。このデザートには砂糖は全く使ってないですよ。砂糖は高いですから。材料があれば、サラムさんにも簡単に作れるんです」


わざわざオレンジジュースを一度濃縮させて糖度を高める。

こんな一手間はこの迷宮都市では絶対にしないし、しようとも思わないだろう。

幸いなことに、スライムゼリーはまだまだ豊富にあるし、6階層以降に出てくるスライムからも取れるんじゃ無いかと思う。

またいつでも作れそうだ。今度はオレの実(オレンジ)じゃなくて、他のフルーツでも作ってあげよう。


「へ〜。不思議だねぇ。ユウはほんと、私らじゃ想像も出来ないような事をやってくれるねぇ」


「はいっ引っ越してもまた作りにくるので、味見お願いしますね。料理は食べてくれる人がいるから楽しいんですから」


「はいっ! はい!はい! ユウさん私も味見します!お手伝いします!」


レムが手を挙げてアピールしているが、手を挙げて軽くジャンプするのはやめて欲しい……。跳ねるたびにあるところが上下に…。


「痛て!痛いよシルネ!」


視線が胸の辺りにいった瞬間。シルネが脇腹をつまんでくる。

うん。確かに視線があからさま過ぎたね。ごめんなさい。。。


最後の一口を全員食べ終わり、おやつタイムも無事?に終わり部屋に戻った。



「……」


部屋までの道中、シルネは何かを考え込み終始無言だった。レムの胸を直視したのがそんなに気に入らなかったのか?

真剣な顔をしているシルネに視線を合わせると、ゆっくりと口を開いた。


「ユウ様?あのゼリーという食べ物ですが。ポーションが入っていたのですか?キハクちゃんの時みたいに」


「え?なんで?」


確かにキハクを保護した時にポーションを入れてご飯を作った。どうしてシルネは今そんな事を考えたんだ?


「いえ。ユウ様のご指示通り、ユウ様が迷宮に行かれてから今まで料理の道具作りに魔術の鍛錬と、相応の魔力を使っていたのです。ちょうどキハクちゃんが呼びに来てくれた時も樹木魔法で種を発芽させる訓練をしていましたので、魔力を回復

させるタイミングがなかったのですが……」


あぁ。何が言いたいかわかった。さすがシルネだ魔力が回復した事を感じたな。


「魔力が少し回復した?」


「!はいっ!やはりユウ様がポーションを使ってゼリーを作られたんですね。食べ終わったと思ったら魔力が少し回復して驚いたんです。食べながら回復しなかったので間違いかと思ったんですが。よかったです!」


驚いた表情の後、疑問が解けた事でホッとしたのか可愛らしい笑顔に戻るシルネ。今はギルドのシルネさんではなくエルフのシルネさんだ。この顔はさすがにドキっとさせる破壊力のある笑顔だ。


「ん?ポーションだと徐々に回復するの?」


「はい。ポーションは飲んだ量だけ回復するので、口にした時に効果を発揮します。今回はゼリーに加工したからポーションの効能が変わったんでしょうか?」


「いや。違うんだ。シルネ。あんまり驚かないで聞いてね」


僕の真剣な表情になにかを察したシルネが真剣な表情になる。

この主人はまた何をやらかしたんだろう……。という顔に見えなくも無いが、まぁ覚悟は出来てるだろう。


「魔物の素材なんだよ……。今日のゼリー」


「………」


「…………」


「…………………はい?」


「ゼリーの材料 魔物 OK?」


「!!!!!!!はい?!いやいやいやOK?がまだよくわかりませんが、どういう事ですか?私たち魔物を食べたんですか?どういう事です?魔物は凄く美味しくなくて……私だって一度は口にしてそれでも駄目で……えっユウ様も食べてましたよね?ユウ様お加減は?お加減は大丈夫ですか?」


おぉシルネは混乱したようだ。?がめっちゃ多い…。


「だっ大丈夫だよ。シルネ落ち着いて、落ち着いて。はい。深呼吸 ヒー ヒー フー はい!ヒー ヒー フー」


「はぁはぁ。はぃ……ヒー ヒー フー ヒー ヒー フー ?ユウ様!これなんか絶対違う気がします!はぁはぁでっ…でも落ち着きはしました。説明してくれますね ユウ様」


シルネのノリツッコミって新鮮だなぁ。なんて思っているとシルネの目が一段と鋭くなった。


「あぁ勿論だよ。まぁ簡単に言えば《料理》スキルだよ。僕の熟練度が上がって魔物が食材に出来るようになったんだ。まだ検証が必要だけどね。あぁまだ内緒ね。混乱すると思うから。それでねさっき食べたゼリーって、ゼラチンて呼ばれる液体を固める材料が必要なんだよ。今回倒した5階層のボスは【ビッグスライム】それから取れた素材が食材になったんだ。」


これ以上は怒らせるかと思い、両手を上げて降参のポーズをしながら答える。

真剣な表示で、僕の説明を聞いていたシルネは驚きの表情のままブツブツとなにかを言い始めたが、全く聞こえない。

大丈夫か?


まぁしばらく置いておこう。暫くすれば復活するだろう。

今のうちに作って貰っていた道具を確認しようか。机の上には4つの道具が並べられている。どれもマロニの木で出来た木目の美しい、工芸品のような仕上がりになっている。


手に取ればその完成度の高さがよく分かる。どれも全くと言ってよい程凹凸はなく、しかし持ちやすいようにわずかな心地よい抵抗感と樹木魔法によって密になった木材が滑らかな手触りをその手に伝える。


【計量スプーン(大さじ)(小さじ)】【計量カップ】【菜箸】【木ベラ】この4つの道具がさらにこの迷宮都市の料理レベルを上げてくれるだろう。


「ユウ…様」


次はどんな道具を作って貰おうか。そんな想像を膨らませていた時、放心状態だったシルネが復活した。




読んで頂きありがとうございます。

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