67.宝石のような……
宿へと帰ると、時間は15時を少し回ったところを指していた。
サラムさんもレムさんも、仕込みも清掃も終わって休憩を取っているようだ。
「この時間なら、シルネは魔術の練習中かな」
『シルネ様頑張っているです』
ちょうど良い時間帯だな。このまま部屋に戻らずに少し試してみよう。
「さて、用意しますは【スライムゼラチン】!これが食べられるのかが、最大の疑問だ……。しかもゼラチンって」
メニューに関しては、迷う事はないのだろうな……。
〜オレの実のゼリー〜
使用包丁:陽炎【薄刃包丁】
材料(1人前)
オレの実 3個
レモネ1/3個
スライムゼラチン 4g
※ オレの実果肉使用分 1個(5人前)
① オレの実1個の上部を切り取り、包丁とスプーンを使い中をくり抜く。この皮の部分は器にするためにとっておく
② オレの実2個を半分に切り取り皮を剥き、1個目と合わせて手搾りで、汁を搾り取る。
※苦味を抑えるために、なるべく白い薄皮や綿の部分を搾り取らないようにする。
③搾り取ったものを布で濾し、オレンジジュース(約300ml)にする。
④出来たオレンジジュースを鍋に入れ加熱し、アクを取りながら濃縮させる。
⑤濃縮させたオレンジジュース(150ml)を冷やす。
⑤ゼラチンを70〜80のお湯(50ml)で溶かしておく
⑥冷やした鍋のオレンジジュースに溶かしたゼラチンとレモネの搾り汁を入れ、よくかき混ぜる。最後に果肉だけにし、バラした実を入れ、もう一度かき混ぜる。
⑦①で作ったオレの実の器にいっぱいいっぱいになるように入れ、4〜5度で1〜2時間、冷やし固める。完成
勿論分量は5人分で作ったが、今回は貴重な砂糖を一切使わずに、オレンジジュースを濃縮させて糖度を上げてみた。
この世界で広めるためには、高級なものをなるべく使わない方がいいだろう。
1つのゼリーにつき、オレの実3個は贅沢だが、この都市は非常に安価で果物が手に入る。
3個使ってもコスト面では、問題ないのだ。
攪拌している時に、【木べら】があるとやり易いだろうなぁと思ってしまった。
やっぱりシルネに【木べら】を作ってもらって正解だった。
《どうぐ》内の環境を4℃に設定し、現在の熟練度で6倍まで時間加速が可能になり10分程の冷却でプルンとした硬さのゼリーが完成した。
なんとも爽やかな柑橘系の香りと、濃縮させたことによりしっかりと甘い香りも強くなっている。
《しらべる》
オレの実のゼリー :食用 オレンジゼリー MP回復(小)
しっかり出来てる。
これで食用じゃなかったらどうしようかと思ったよ。
それでも、こればっかりは初めての挑戦だったため、余ったもので別に作ったゼリーを口にする。
ゆっくりと口に運び、舌先にゼリーを付けてみる。
「うん。美味しい。」
リーフラビットを食べた瞬間のような、あの吐き気をもようすような不味さはない……。
ちなみにあの毒々しいままのスライムの破片は、舐めた瞬間吐き出した。あれは口にしちゃダメなやつだ。
「いくぞ……」
勢いよくゼリーを口へと運ぶ。
!
「美味い!これは美味い!濃厚なオレンジゼリーだ。甘さもちょうどいい。オレンジの果肉を入れたことで、食感もプチプチと本物のオレンジを食べてるみたいだ!」
砂糖を使わず作って正解だった。これなら十分デザートとして通用する。一気に試食分をかき込む。
「あっ」
体の奥にある何かが増え、体の疲れではなく精神の疲れが少し楽になったような気がした。
【魔力回復(小)】
おそらくは、この効果の一部が発動したのだろう。
HPやらMPはない。ただレベル同様、確かにダメージを負えばなにかを消耗している気がするし、魔力を使えば減っている感じはする。
だからこのゼリーを食べて、魔力が10回復!のような事にはならないが、確かに感じた回復の実感。
「ははは これはやばいな」
たぶん魔力回復だけじゃ無い。この先様々な効果を持った魔物が出てくる。
それを調理して、すこしずつ世に広める準備をする。まずはそれが目標か……。
【ネルーツ】:食用
1m程先にあるネルーツに視線を向ける。
まぁこれが一つの目安なんだろうな……。
数日前、突如触ることなく食材を見て、料理を意識するだけで浮かび上がるようになった表示。
魔物に対しては熟練度が足りないのか、触るまで分からなかったが、たぶんこれが魔物の食材化の最低熟練度なんだろう。
まぁ検証はこれからか。
それよりも
「キハク。シルネを呼んできてくれるかい」
さぁおやつの時間だ。
「3時のおやつの時間です!」
テーブルの上に並んだ、オレンジをくり抜いた器に入ったゼリーが、キラキラと光を反射している。
そして、それ以上に目を輝かせている女性3人の姿……。
「ユウさん ユウさん ユウさん!」
レムに袖を引っ張られながら横を見ると、期待を込めた目で「何これ 何これ」と訴えているレムがいた。
いや。サラムさんもシルネも同じみたいだ。
「これはねオレの実のゼリー だよ。簡単に言うとオレの実のジュースを冷やして固めたものだね。スプーンで掬って食べてみて」
「ゼリー!キラキラでプルプルですね。この器も可愛い!」
「うんうん。本当にキレイ!宝石みたいです!」
レムもシルネも初めて見るゼリーに興奮している。サラムさんも態度には表さないけど、ゼリーに興味津々だ。
こっちのデザートなんて、フルーツをパンに練りこんだものくらいだし、当然か。
これ以上待たせても可愛そうだ
それでは!
「さぁ召し上がれ!」
読んで頂き有難うございます。
ブクマに評価に本当に有難うございます。




