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魔王の、その後。  作者: 灰猫
2/2

二話

┏( .-. ┏ ) ┓←特に意味は無い

 自由の効かない空間をふわふわ漂う。

 己のいた星が砕けてからどれ程時が過ぎたのか分からない。


 数年?数百年?数万年?

 だがそんなものはどうでもよかった。

 なぜならどれ程経とうが己は変わらず独り。

 何も変化など無いのだから。


 一際輝き、燃え盛る巨大な星へと落ちた。死ねない。

 漂う岩や星を喰らう漆黒の渦へと吸い込まれた。死ねない。

 空間ごと砕き、無数の星々を塵とする創世の爆発に身を委ねた。………死ねない。



 死ねない。

 死ねない。死ねない

 死ねない。死ねない。死ねない。死ねない。





 死ねない、死ねない、死ねない、死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死ねない死にたい死にたい死にたい死にたい死に死に死に死に死に死に死に死に死に死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死死死死死死死死死死死死死死死死死死……………………

 










 いつしか目の前に青々とした星があった。

 他の茶色や灰色の星とは明らかに違う。

 

 あれは水なのか?

 

 ヒビだらけの心がピクりと動く。

 近くに漂う岩を蹴り、軌道を青い星へと変える。


 やがて星へと墜ちると巨大な水柱が上がった。


 そこは水で満たされた星だった。

 水泡が視界一面に広がる。

 そこに一瞬違和感を感じた。

 

 砂……?……いや、違う……


 目を凝らす。徐々にピントが合うとその砂粒の様なものには脚があった。



 「っっっっ!!??」


 驚きに息を吐き出し、水泡が砂粒のようなモノを攫っていってしまった。


 


 水面から顔を出す。


 「ぁ、れハ……いき、モ…ノ、なの……カ?」


 小さいが紛れもない生命体だった。


 濡れた髪が雫を落として波に攫われた。

 同時に目からも雫が零れ落ちたがそれがなんなのかはもう忘れてしまっていた。


 

 


 一通りこの世界を泳ぐ。陸地は一切なく全てが水、海の星だった。

 生命体も砂粒よりも小さなモノしかおらず少しの落胆、そして希望というものが生まれた。


 このまま宙を巡れば……もしかしたら


 心に浮かんだその思い。続く言葉は出なかったがそれでもそこに何かがあると信じて海の星から飛び立った。







 

 それからまた気の長くなるような旅を続けた。


 そして赤く、紅く燃える星の命が尽きた。


 それは周りを漂う無数の星を燃やし、そして引き寄せ黒点となり、最後は眩い閃光が全てを無と返した。


 全身が弾けたのが分かった。

 だがそれでも己は死というものから嫌われているらしい。


 己の一欠片。それが徐々に膨らみ元の形へと戻っていく。

 元通りになった身体を見て掌を何回か握る。違和感など一切なかった。



 周りは全てが無となった。黒い空間、岩も星も何も無い空間。僅かに芽生えた希望が粉々に砕け散った。


 「は、ハは………ハハはハは……」


 乾いた笑い声が響く。それが己の口から出ている事に気付いたのはしばらくしてからだった。

 

 漂う。ピクリとも動かずにただただ漂う。

 身体は死なずとも心が死んでしまったのかもしれない。だがそんな事を考えている己の心は死んではいないのだろうなとぼんやりと考え目を閉じた。

  


 




 気付けば無となった空間からいつの間にか複数の星々が浮かんでいる空間にいた。


 おかしい。確かに全てが無だった筈。

 己は移動すらせず此処に蹲っていただけなのにいつの間にか知らない所にいる。 

 疑問だらけだがここにいる以上考えても仕方がないと再度星を巡る。


 幾度と無く巡る。そしてやがては燃える星が全てを飲み込み、無へと誘う。

 だが今度は目を閉じなかった。そしてわかった事があった。

 最初は塵、そして燃え尽きた星が残したガスだった。

 

 渦巻く。ソレは徐々に他の塵やガスを取り込み大きくなり、やがてその身を膨れ上がらせ小さな核となった。生まれたのは新たな燃える星。


 そして理解する。あの全てを巻き込む滅びの爆発は星々の死と再誕を同時に行っていたのだと。

 

 燃える星はいくつかあった。そのまま炎を弱め、その身に岩を引き寄せて纏うもの。小規模な爆発を起こしガスを纏うもの。

 そしてその炎を一際大きくし無数の新しく生まれた星々を明るく照らすもの。


 その光景をジッと見ていた。

 終わりと始まり、そしてその終わり。

 繰り返す。そして生まれた星々の中にごく希に生命体が宿る星があった。そしてその生命体が年月が経つと共に大きく、複雑な形になる事が分かった。


 虫の様な生命体がいた。軟体の身体を持つ生命体がいた。水の中で森を形成する生命体がいた。


 だがそれは言葉を交わすことなく燃える星の最後と共に消えてしまう。

 そこでようやく自分の心に気付く。気づいてしまった。




 言葉を交わしたい。




 ただそれだけだったのだ。

 寂しかったのだ。独りはもう嫌だった。


 「ァあ………」


 そして気づいてしまえばその感情は泉の如く湧き出て来る。それは無自覚の頃とは比べ物にならない程辛く、更なる苦しみとなった。


 巡っては終わり。生まれてはまた巡る。

 繰り返し繰り返す。


 余りの辛さに再び砂粒の様な生命体が生まれた星に留まりその姿を見て多少の気休めを得ようとした。


 「…………?」


 宙から水中へ漂う場所を変えて気付く。

 生命体の形が一番大きいのだ。

 以前は見つけても己の下半身程だったが生まれて間もないこの星は既に膝を超える大きさへと変わっていた。


 そしてそれは魚の様な形になり、隕石の衝突で出来た陸地へと長い年月をかけて生やした手足を使って上がる。


 このままいけばもしや……


 砕けた希望が再生して膨れ上がる。

 だがやはりその希望は打ち砕かれた。


 きっかけは一つの大きな隕石だった。

 それは瞬く間に星を焦土と化し生まれた生命体を燃やし尽くした。己を残して。

 僅かに残った希望を掻き集めて再び巡る。


 星を変えて再び観察。滅びてはまた探す。

 そして導き出したのは一つの仮説。


 己が降り立つとそこで生まれた生命体の進化が早まるのだ。


 それは何故か、と考える。

 ほどなくしてそれにも仮説をたてた。


 己の膨大すぎる魔力。それが進化を促しているとしたら……


 とある星でソレを試してみることにした。

 生命体がいる星を見つけ、降り立った瞬間から意識して魔力を溢れ出す。

 またその逆に降り立つ前に完全に魔力を己が内から漏れ出さないよう遮断する。


 効果は絶大だった。

 魔力を溢れ出した星は見る見る間に生命体を大きく複雑で珍妙な怪物へと進化し、反対に魔力を封じて降り立った星の進化は穏やか過ぎた。


 ただ問題が一つ出てきてしまった。

 魔力を溢れ出した星の生命体が異常な程凶暴なのだ。そしてやがて進化に耐えきれず徐々に脆弱に、そして自然崩壊して滅びてしまったのだ。


 実験を繰り返すが自然崩壊を止めることは出来なかった。

 考える。幾度となく燃える星の命が尽きる。


 仮説を立ててはその全てが失敗。失敗。失敗。

 会話所かその前段階で全てが滅びてしまっていた。


 掻き集めていた希望が磨り減りその規模を小さく変えていく。


 やがて星で最初の生命が生まれる瞬間を見た。

 今迄は生命体がいる星を探していた。

 

 だが何も無い星に降り立ち留まったのは初めてだった。

 それはたまたま。降り立った時に見上げた宙が微かに故郷の星を幻視したから。それだけ。


 星が落ちてきた。己は避けもせずにその衝撃を浴びたが死ぬ事は無いと諦めていた。衝撃が大地を割り空へと土埃を巻いあげる。

 やがてそれは雷を伴い滝の様な雨を荒廃した大地に降り注ぎ海となった。

 小規模な隕石が幾度か降り注いだ。

 高温になる海、嵐となる空。

 雷、雪、雨。絶えることなく海へと降り注ぐ。


 そしてそれが暫く続くと砂粒の様な生命体がいつの間にかいたのだ。

 驚いた。生命体がいる星は幾度と無く見つけたが何も無かった星からいつの間にか生命体がいたのだ。


 思い当たる原因は隕石の衝突と続いて起きた様々な天変地異。その過程の何処かでこの生命体は誕生した。

 溢れ出す魔力を調整して観察をするもやはり生命体は自壊した。

 だがその自壊スピードが今までで一番遅かったのだ。


 考える、考える。


 そしてたてた仮説に残った最後の希望を託した。

 




 燃える星が全てを飲み込み新たに星を生む。

 魔王はその身を丸めてただ漂う。

 だがそれは諦めたのでは無い。


 魔力を溢れ出して漂う。

 やがてその身を中心に岩が取り囲みガスが周りを覆う。


 引火、爆発、だが魔力を操り規模を調整、炎を消さぬ様に岩を引き寄せる。


 魔王を芯とした岩の塊は徐々に大きく、やがて星となる。


 燃えたぎる星の中心で魔王は目を閉じて魔力を操る。


 引き寄せた無数の隕石を衝突させて天変地異を引き起こす。

 やがて芽生えた生命体。

 その身は徐々に大きく、複雑に進化を促す。


 微生物が生まれた。魚が生まれた。植物が生まれた。


 陸地がせり上がる。微生物は海と陸に。魚は海と陸に。植物も海と陸に上がり独自に進化を派生する。


 進化は続き空へと手を広げる。虫が生まれ、鳥が生まれる。


 ユグトラシル。魔王の故郷に伝わる全ての根源の木とも云われた大樹を思い出す。

 無数の枝を持ち、それぞれに違う種を生む樹と教えられた。


 誰も見た事はないが伝説で伝わるその大樹は進化の派生を現していた。

 目には見えない進化の大樹。それがユグドラシルであった。


 目を瞑り、魔力のみで様々な生命体のその姿を捉えていた魔王はその伝説の樹を視た。


 生命体の自壊は起こらない。

 やはり最後の仮説はあっていたと確信に近づく。


 星の誕生。その根源に魔力を混ぜてやることで星に、それにより生まれる生命体に魔力の耐性、適応を持たせる。魔力を持つ己が身を核に理を作ったのだ。


 前回までの星では魔力とはあくまで外から齎されたモノであり、ある程度の適応は出来ても元はその星になかったモノなのだ。

 それにより魔力をある程度内部に取り込んだところで星自体が拒絶反応を起こし、それがそこに息づく生命体にも降り掛かった。コレが魔王の立てた仮説である。


 ならばソレを防ぐには?

 簡単である。己が星の核となり予め魔力を星の構成に使用すれば拒絶反応など起こりようもない。


 但し、そうそこには但し書きが入ってしまう。

 核になれば己は此処から動く事は叶わない。


 話したい。触れ合いたい。独りになりたくない。

 その願いはどれも果されない。

 ただ星の中心で魔力を使いそこに息づく命を感じるだけなのだ。


 だがそれで良しとした。

 それは封じていた願いが、“人“をもう一度見たいという己がなにより願ってはいけない願いが浮き出てしまったからだ。


 己で滅ぼして虫が良すぎるなんてレベルでは無い。

 自嘲に口端が歪む。

 だがそれでも出てきてしまったのだ。

 今、魔力で感じている進化の先に可能性が生まれてしまったのだ。


 






 時は巡る。


 それは魔王が星々を巡っていた時と比べれば些細な時間だがそこに住む生物にはそんな事など知りえない。

 



 「おっと〜!今年の麦は豊作だっぺ〜!!」

 

 「おー、んだなー!これで今年も飢えずに済みそうだべー!」


 「んだ!おっかぁもいっぱい食って早く元気な赤ん坊産んでもらいてぇな〜!」


 黄金色の絨毯の様な畑を親子が顔を綻ばせながら収穫に取り掛かる。


 


 「おい、聞いたか?また隣国との戦が中止だってよ」


 「またか。小競り合いとかなら晴れる日もあるのに大戦になると必ず天変地異が起きるってなんでだろうなぁ」


 「知らんよ、ていうかそれでも懲りずに何度も戦争をしようとする国々が信じられんよ。お、そうそうこの間面白い商品を仕入れたんだが……」


 商人とその客が昨今の世情を世間話を混じえて語る。




 魔王は星の中心で世界を視る。

 営みを、争いを、笑顔を、悲しみを。


 己を糧に世界に触れる。

 育む命に、新たな種に、悲哀の元に。


 



 「………………」


 一人の少女が祈りを捧げる。

 魔力の残滓を漂わせてゆらりと舞う。


 その身は新しく生まれた種であり魔力をより感じられる進化の派生。


 ゆる、ゆら、ふわり。


 やがてその舞は静かに終わり地へと頭を垂れる。


 「神よ……今年も私達をお守りいただき感謝致します」


 神。この少女から産まれた新たな概念であり空想。

 父や母はかろうじて感じられるこの魔力の根源であり、それ以外の人には分からない。


 だがこれから先、この少女の子孫からはその根源をより強く感じられるだろう。そしてその先、更にその先では……


 垂れた頭を上げると少女の瞳に映るのは不格好だが丁寧に彫られた人形の像。



 



 角が生え、僅かに微笑みを浮かべるその顔は何処かの魔王の姿によく似ていた。

 

 

 

 

取り敢えず完結です。

超短編です(;´Д`)

誤字脱字その他色々ありましたら教えて貰えたら幸いでございますです。ハイ。

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