第七十三話:開幕
『い、いや……!』
弱々しい拒絶の声は常闇に包まれた都では無きに等しい。
聞く者が居なければ、聞く意思がその者に無ければ、声はただの音に過ぎない。
だがもし、聞く者が居り、聞く意思があるのならば、音は声となり意味を持つ。
『ちょっと待った!』
僕がこの場に現れたように。なんて、格好つけすぎだな。
『な、なんだお前は!』
『しー! あまり大声出さないでほしいね、近所迷惑だ』
人差し指を唇に当てた後、軽く振って野太い声の人影を諫める。
似合わない真似をしてると思うが、こうでもして注意を僕に向け、時間を稼いで事態を正しく把握する必要がある。
八割この男の僕的悪人判定は覆らないだろうが、二割は女性に何らかの原因がある可能性がある。
仮に女性に原因があろうとも男は善人とは判定できないだろうが、喧嘩両成敗ぐらいに落ち着いてくれればありがたい。
『大体さ、人に聞く前に自分でよく考えるべきだと思うよ僕は。
暴行、強盗、誘拐どの罪状かはともかく、見た目犯罪者な君を呼び止めるのは衛兵以外ではそう居ないと思うね』
はぐらかす様な言葉でお茶を濁し、路地裏の闇に目を凝らす。こうも暗いとお日様とは言わないが、せめてお月様をくれと言いたくなるね。
男の姿はぼやっとではあるが確認できた、あまり柄の良くない服装、ちらつく白はナイフだろうか?
無論、外見だけで判断するのは危険だが偏見を持たれるのは覚悟していて欲しい所、万が一勘違いだった時はその旨を伝えて逃げよう。
こちらは一層良く見えないが、先ほどの声、そしてこの細身の影からして女性だろう。
尻餅をつき足腰立たずと言った様子で酷く怯えている、自力で逃げることを期待しないほうがよさそうだ。
『左手目隠しの男……!』
『その通り! 良く出来ました、花丸でもやろうか? お前には縁遠いものだっただろ?』
内心ではノリがいい相手でよかった、これで何も言われなかったら恥ずかしかったななどと思う。
『ちち、近づくんじゃねぇ!』
『おいおい、傷つくなぁ。そりゃあ昨日は部屋干しだったけど、そんなに臭わないだろう?』
軽口に乗じて少しずつ歩を進めていたが、どうやらここらへんが限界らしい。
少し近づかれただけでこれだ、あまりに肝が太いタイプじゃない、が気が長いようにも見えない。
となれば、いままでの経験則からして
『くそっ! なめやがってぇ!』
案の定、人質を取りに行った。男と女性間の距離は歩数にして五歩あるかないか。
これで万が一も逃げられる事も無くなった、驕るわけでもなく抑揚なくそう思う。
武器所持法違反、婦女暴行未遂及び諸々の嫌疑……面会謝絶からの杖、動けなくなったところを監獄で締めだな。
『"面会謝絶"――』
<音声認証:追放刑ディレクトリ内、面会謝絶を発動準備>
最近やっと慣れてきた脳内に響く無機質な声。そんな冷えた声に改めて冷静さを保つ事を意識しつつ、目の前を見据る。
その場からは動かず赤銅色のコートに埋まる左手を軽くスナップ。
『執行』
不可視の小槌は打ち振るわれ、罪人への罰が確定する。
『おごぉ?!』
女性のところまであと一歩、という所で男が足を滑らせ尻餅を着いた――ように、女性には見えたのだろう。
だが、男と僕、二人の囚人に確かに見えていなくて、見えていた。
即ち、
『な、なんでいきなり"壁"がぁ!?』
囚人を阻む壁が見えており、被害者の女性はもう見えていなかった。
いきなり天にも届こうかという壁が現れた男の心中は察するに容易い、何故、なんで、どうして、疑問符の楽園だ。
『いや、地獄かな?』
懲りず軽口を呟き、内の衝動を押しとどめる。まだだ、まだ残りの執行には早すぎる、勧告する義務が僕にはある。
執行の儀は厳かに行われなくてはならない。人目につかずとも罰が与えられたという事実が重要なのだ。
無駄なショック、下衆な愉悦、どちらであろうとそんなものを他者に与える訳にはいかない。
『……そこの人!』
『は、ははい!』
しくじった、壁が見えるからついつい声を張り上げてしまった。仮面の下で顔を顰める。
だけどまぁ、こっちのほうが指示にすぐ従ってくれてそうだから結果オーライとしておこう。
『目を瞑っておく事をお勧めするよ、これから先の視聴は生ではちょっと過激すぎる』
『ヒ、ヒィィィ!』
野太い悲鳴のお陰で女性の返事が耳に届くことはない、こちらの声は聞こえてたはずだから後は自己責任と言う事で進行させてもらおう。
『く、ひつ、ふあぁぁ』
悲鳴とともに疑問を放り捨てたか、男はナイフすら捨てただ只管に後ずさり、一心に自分の背を壁にこすりつける。
随分と追い詰められている、もしかしたら今後心的外傷が残る可能性もある。
『けど、同情の余地はない』
ぼそり、吐き捨てるように呟く。元々の気質か、それともこの異能による補正なのかは分からない。
分かっているのは、
『胸糞悪いって感じる事だけだ』
『ゆ、ゆゆ許してくれ、もうこんな事は……!』
『"打擲刑"執行』
<音声認証:身体刑ディレクトリ内、打擲刑を発動準備>
小槌が二度振るわれる音がした。一度目で無数の棍棒が男の周囲に現れ、二度目で棍棒の群れによる私刑が始まった。
『ちっ……!』
執行してから猿轡をするの忘れていたことに気づく。
囚人の嘆きが漏れて良い事など一つもない。慌ててその類の刑を処そうとするが、すぐにその必要がないことに気づく。
男は白目をむいて気絶していた、全身から血を流し所々妙な方向に骨が曲がっていた。
そんな男を叩き起こそうと現れた水桶を想像の小槌を振り払って止める。
万が一にも起きることが無いよう、音を立てないように歩き、落ちていたナイフを遠くへ蹴り飛ばす。
起きられてもこれなら大丈夫だろうと、足を速めて男の枕元に立つ。
『念のため、罪状も言っておくか……』
袖口の仕込みポケットから木でできた小槌を取り出す、ある程度以上の能力を使う時には要実物、これが意外に厄介なんだよな。
『罪人を暴行未遂及び諸々の嫌疑にて自由刑に処す』
周囲に聞かれないよう声を落として告げ、
『"禁錮刑"一時間執行』
<音声認証:自由刑ディレクトリ内、禁錮刑を発動準備>
左手を掲げ小槌を男の胸へと振り下ろし、すぐさま飛び退く。
瞬きを一つした後には、壁は消え去り囚人に相応しい牢屋だけがその場に残る。
『ふぅ……』
何度も行なって来た事は言えやはり慣れない。こうして牢屋に閉じ込める度に安堵で力が抜けてしまう。
『あ、あの……』
『あー、動揺してるとこ悪いけど衛兵さんへの連絡はお任せしていいかな?』
壁の向こうだった声を遮り本業の方への連絡を頼む、僕がしてもいいのだが声が録音されるのは避けたい。
『は、はい』
『それじゃ、もうこんな夜中に出かけないでね』
適当な警告をさよならの代わりにその場を立ち去った。
『はぁ……』
あの場からしばらく走り人気がないことを確認してからお手製の仮面を取り外す。顔との間に溜まった生ぬるい空気が去り、代わり夜の冷気が顔を撫でる。戦闘のお陰で熱く強張った筋肉が少しずつ冷却されていくのを感じる、心地良いと。
そうしてふと冷静なって頭を過るのはやはり先の戦闘の事。
『また……』
『やり過ぎてしまった、か?』
夜の暗がりから聞き慣れた声が鳴り、その方を向けば街灯の薄明かりの下に黒いコートを着た男が表れた。
『レウスさん、今日は確認日んですね』
僕の異能が暴走しないか、自制心を忘れていないか、そういう意味での確認の日。
『必要ないとは思うんだがな。まぁ自覚があるならお小言を言う必要もないだろう』
『自覚、ですかこの事ばかりは"死刑囚"の能力に感謝するやら、恨むやらですよ』
傲慢や憤怒、七大罪の内二つも犯している罪人だ、そのお陰で自惚れや自己陶酔に浸らずに済み、その所為で罪悪感が募り精神が磨り減る。
『感謝の言葉もまともに受けれませんしね』
人のためにやってるのではなく、異能を抑える為に僕はこんな事をしているのだ。
『それは死刑囚抜きでも君は受け取らなかったと思うがな。なんにせよ、今日はもう興行終了のお時間だろう?』
『ええ、こっちは副業、本業は学生。もう少しで実力テスト、業務成績を残さないと先生との関係悪化は避けたいので』
憂鬱だと頭を振りつつ手に下げていた仮面をコートの裏に突っ込む。
『こっちにも随分慣れたようだな』
それこそバイトの先輩の様な口調。コートの裾軽く叩いて汚れを落とす、思えばこのコートはレウスさんから譲って貰った物だ先輩というのもあながち間違いではないのかもしれない。
『一ヶ月でやっとですよ、始めた当初は良くご迷惑をお掛けしました』
何度か右の手袋に手が掛かったことを思い出せば、今でも冷や汗がどっと出る。何度挫けそうになったことか、その度にレウスさんから叱咤されたものだ。
『しかし、なんでここまでやってくれたんですか? 等価交換至上主義者のレウスさんが』
『質問に答える前に大いにその呼称には文句をつけたい所だが……まぁいい』
笑みを軽くひきつらせてレウスさんが踵を返す、歩きながら話そうということだろう。確かに、こんな夜の郊外近くで話し続けるのも馬鹿らしい。
『とは言ったもの、前も言ったろう君の小父さんから相談を受けたからだよ』
『相談、ってことは依頼された訳ではないんでしょう?』
『された訳ではないが、君と一緒に行った時、加えて屋敷に足を運んだ時に歓待されているものでね、それには報いねばならない』
『結局、主義主張は変わってないんですね、これで納得がいきました』
頭に引っかかていた疑問が解け、思わず本音が口を滑り出る。
『……一度君ともたっぷり相談しないといけなさそうだ』
『と、所でレウスさん、そのコートはどうしたんですか?』
危なげな会話方向を回避、
『話題転換が下手だな、テオドール』
出来るはずもなく呆気無く捕まる。
『が、まぁ今日は乗っけられてやろう。今日は気分が良いんだ、それこそこのコートのお陰でね』
と、着色料無添加、誤魔化し一切なしの黒染めコートをヒラヒラと揺らす。鮮やかな金髪との対比で似あっては居るのだが、フードに付けられた"特価!"と書かれたシールがそれを台無しにしていた。
『確かにコートが無くて寒いって、うんざりするほど何度も恨めしげに僕を睨んできましたけど……そんなにコートが欲しかったんですか?』
『仕事あがりは随分と毒を吐くな、テオドール。……話題転換が下手だったのは私だったようだ』
僅かに体を固めつつも、聞かなかったふりをしてレウスさんが話を続ける。
『実はこのコート、質の良い布地を使ってるにも関わらずかなり安かったんだ』
『それは、良かったですね』
それは知ってる、と言いかけてこれ以上話の腰を折るのもなと咄嗟に修正をかける。
『割のいい仕事に就いてるとはいえ、家賃を考えると余りは少ない。それに、フード付きとなると中々手が届き難くてね』
肩をすくめるレウスさん、その背で揺れるフードを見つつ口を開く。
『それは家賃を下げろと言う回りくどい要求ですか? ベーコンとコーヒーが食卓から消えていいなら考えますが。それはともかく、フード付きが良いとはどういう事なんですか?』
『豚も豆も私の大事な体の一部、特に豆は君での紅茶譲る訳にはいかないね。それはともかく、このフードがお仕事に役立つのでね』
お仕事……どうにも言い方が胡散臭い、何か隠している臭いがする。
『でしたら、陳情は却下ですよ。にしても聞いていれば仕事の為ですか? 最近また夜な夜な出掛けることになった事と関係が?』
『元々ダメ元、却下でも不服はないが私と違い財布は変わらず寒いままか。にしても、どうも私の仕事に不信感があるようだな?』
顔だけこちらに向けてレウスさんが笑う。
『顔を隠すフード付きコート、しかも色は夜闇に紛れるような黒。生憎そんな制服で夜勤な仕事を暗殺者か泥棒、人さらいぐらいしか知らないもので』
『ははは、私がそんなことしていたら、お互いバッタリ遭遇することになりそうだね。仕事中の知人を見るというのは互いに気まずい、その時は互いに見て見ぬふりをしようじゃないか』
それを人は見逃すという、仕事中の知人が悪人ならばそういう訳にもいかない。
『実は今日もそうだったとか? もしかして確認日だなんて言い出しのも、そのお仕事が原因だったりして』
詰ってみる。
『あながち間違いじゃない、けれど後ろくらいと所はないとキッパリと言っておくよ。何なら仕事の斡旋者に尋ねてくれてもいい』
笑いを消さず、種明かしというようにレウスさんが最後に一言付け加える。
『斡旋者? ……もしかして、小父さんですか?』
だとしたら、まず間違いなくまともな仕事だ。
『正解。よく分ったね』
パチパチパチと嬉しくない拍手が僕に送られる。
『レウスさんの狭いコミュニティから仕事を斡旋できそうな人といえば小父さんしかいませんから』
『何時になくキツイ、私に何か恨みでも?』
『くどい言い回し、無用な軽口、過剰な挑発、あと保護者顔されるのが嫌ですね。子供なのは認めますが、一、二歳上の人にそんな顔されるのはちょっと』
からかわれた腹いせに歯に衣着せず羅列する。
『もう少し悩む素振りを示してほしいな、テオドール。それに、私は一、ニ上ではない今年で二十四歳だ』
レウスさんが左手で指二本、右手で指四本をつくり、見せびらかすように振る。
『……嘘ですよね?』
『本当だ、童顔だから間違うの無理は無いが、次からは保護者顔して構わんな』
『いや、それとこれとは』
別だ、ときっぱりと言い切る。
『君が死刑囚で心底良かったと思う。その性格が少しも矯正されなかったらと思うと怖ろしいからな』
『冗談にしても、酷いですよ』
『と言いつつ、君もその程度の口は叩ける様になってるだろう。君の精神を徹底的に鍛え上げた私のお陰だな、恩を感じているのなら君の小父さんに頼んでこのコートを経費で落としてるよう頼んでくれ』
たしかに昔なら怒り出していたと思うが、それを流せるようになったのはレウスさんのお陰とは思うが、
『恩は感じてますけど、小父さんには負けてますので却下の方向でお願いします』
どう考えてもそれは意図した所ではなく、本人の悪癖だったと思う。故に恩は感じるけれど、報いる気にもならない。そのことで左手がどうこうする様子も今のところはない。
『……どうにも鍛えすぎたようだ』
肩をすくめるレウスさんに畳み掛けるように言う。
『師匠が良かったんですよ』
『そいつの顔が知りたいな』
唸るような声に内心してやったりと思う。たまには、こうあるべきだとも。
『鏡を見てくださいよ』
『家に帰ったらそうす――』
と不意にレウスさんが話すのを止め、訝しげに顔を歪める。刺すような目付きで近くの路地裏を睨み、やがてゆっくりと全身から力を抜いた。
『一体どうしたんですか?』
その隙に疑問を差し込んだ、先ほどの表情"何か"があったに違いない。恐らく、コート裏の面を取り出す必要のある何かが。
『いや何、ちょっと悲鳴が聞こえ……口が滑った』
どうやら僕も随分油をさすのが上手くなったようだ、するりと聞きたい答えが出てきた。
『あの路地の方からですね?』
となれば、やることは一つ左手も答えを聞いてやる気十分。素早く面を手に取りずれたりせぬようきっちりと固定する。
『興行終了じゃなかったのかね?』
ぼやいて頷くレウスさんがすっとコートの中に手を伸ばす、もしかして"あれ"を持ってきているのか! そんな期待が心で踊る。
『悲鳴が聞こえちゃ、幕を下ろすわけには行かないでしょっ』
観客を待たせるわけには行かない、喋りつつも僕は路地裏へと駆け出す。
『ヒーローショーは何時まで保護者同伴だと思う?』
その横に難なく並びつつレウスさんがぼやき続ける。
『大人になるまで』
全力疾走している都合上、短い台詞しか紡げない。
『君は大人かね?』
『貴方が子供といったはずだっと』
路地を通りぬければ、僕の耳にも人の声が聞こえて来た。
抵抗する女性の声たちの声だ、襲っている奴らの声は聞こえない。少しでも様子を知りたいとこっそり顔を覗かせてみてみれば、黒いコートの男たち(見た目だけでの推量だ)が囲んでいた。 魔術による懸命の抵抗も、手慣れた様子の男たちには通用していない。捕まるのも時間の問題だろう。夜の黒コートに善人なしという僕の偏見が加速しそうだ、近くにいる黒コートもおよそ善人とは言い難いし。
『仕事と君は言ったはずだ』
『今日は二代目だけじゃ悪役にやられてしまいそう』
確かに僕の異能は強力だが、操る本人は脆弱もいいところ、体は鍛えていたもののお世辞にも戦闘向けとは言い難い。
『聞こえません? 先輩(初代)を呼ぶ子供達の声が、どうやら今宵はヒーロー二代で共闘するみたい』
『サプライズ演出のためならやむ無しか……今月の家賃は結局どうなるんだったかな?』
レウスさんが渋い表情を浮かべ、濁った目でこちらを見る。左手がわずかに疼くが、我慢しよう。
『確か半額になるんじゃなかったかな?』
『豚と豆は』
『はぁ、人から葉っぱ同然の物を奪うわけにはいかないでしょ?』
溜息と一緒に言葉を吐き出せば、レウスさんが目を隠す右手の絵が描かれた面を取り出していた。
『了解、行くぞ二代目左手目隠し』
色んな過程を飛ばしてその言葉が聞きたかったですと内心で毒づきながら、レウスさんの言に乗る。
『行きましょう。初代目隠しの男、右手目隠し』
『にしても、冗談で作ったそれが役に立つ日が来るとは思いませんでしたよ』
二人で気を伺いつつ、正気に戻る。
『私も、もしものために持ってきておいてよかったよ』
たしかに、それはありがたいかったのだけれど。
『これも二つセットをセールで買ったんでしたよね』
軽口を叩き飛び出ないよう自制する、今はその時じゃない。
『二人合わせて両手目隠しの男たち……深夜とはいえ、何をやっていたのやら』
声色から手で顔を覆う姿が用意に脳裏に浮かぶ、あの時は僕もどうかしていたと思う。
何時だって男の子はヒーローに憧れるものなのかもしれない。
『お陰で今こうして役に立ってるんですから、昔の自分たちに感謝しましょうよ』
『今こそ昔の私は他人だと言いたいね。っと、そろそろ女性も魔力切れらしい』
女性からしたら絶望の瞬間かもしれないが、僕達からすれば好機。助けにはいろうとしている僕らも彼女からしたら自分を狙う連中の一人と思われかねない。狙われた厄介だし、そのうえ手を出せないとなればもう最悪、それで仮面になにかあったら……考えたくもない。
『それじゃあ』
『ああ』
『英雄ごっこと行きますか』『英雄騙りと行くとしよう』