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人魔のはみ出し者  作者: 生意気ナポレオン
第三章:時は過ぎ去り別れ編
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第五十三話:惨勝

今話は若干残酷な描写を含んでおります事を、先に注意させていただきますm(__)m

 ルフトは顔には余裕とも取れる笑みを張り付け、両足でしっかりと地面に付け、こちらへと歩いてくる、その様子だけを見るとおよそ先程まで死に体とは思えない。だがそれは間違いなく虚勢、その証拠に顔には粘り気を帯びたような汗、手先からも汗が糸を引いて垂れ落ちている。

「組長、何を言っ!」

 ルフトが口を開いたジャンを睨み付け黙らせる、その険しい顔も一瞬で直ぐに柔和な笑みを作り男へと歩いて行く。

「なぁあんたこの前の新人大会で優勝してたりしてないかぁ?」

「ええ、そうですが?」

「道理でルフト=ゼーレ、聞いた事のある名前だと思った。"心残者"の連中に随分と恨まれてるぜ、あんた。まぁお陰であんたの首で俺はも一つおまけに稼げるがな、棚から牡丹餅とはこの事だなぁ」

 せせら笑いながら男が腰に付けた不揃いな双短剣に手を伸ばす。右の刃からは雫が垂れ、、左の刃は(いびつ)な形状、暗殺者に相応しい"殺す"事に特化した双短剣だった。

「一対一。良いぜぇ、そっちの方がこっちの方も顔を傷つけなくて済む。こっちの業界も本人確認とかが厳しくてなっ!」

 右の刃が飛沫を飛ばしながらルフトへ迫る。だと言うのにルフトは何を思ったか、その場から動かずどころか膝を曲げ、屈んだ。

 眉根を寄せつつ男は刃の軌道を修正し、右腕を下げルフトの首を狙う。

 右から来る刃をルフトは勢いのまま左に流す、刃に付いた毒により煙を上げる右手の動きと連動させる様に左足を伸ばして前に傾いた体を宙に浮かせる、そしてそのまま立ち上がる勢いのままかち上げる。

「くふっ……なろぉ!」

 己の鳩尾に突き刺さる腕を逆手に持った右剣で男は狙う、それを予見していたのかルフトが前から倒れる様にして男を投げようとする。

「くそっ!」

 だがしかし、ルフトの手から男がすっぽ抜け、男は後ろに転がる様にして受け身、距離をとって構えを作る。

「どうしたぁゼーレ。顔色が一層悪くなったように見えるが?」

 男がステップを刻み始める、不規則なそれは何時その足を此方へと向けるか予想が付かず、自然気が逸る。

「傷つくなぁ、これが何時もの顔色なんだが」

 ルフトは虚勢を止めない、いっそ惨めに見える程に。しかし、少しでも力強く、僅かでも部下の、商人の心の支えに、そう思うルフトの精いっぱいの虚勢を笑う者はへらへらと笑うあの男だけだ。

「強がり言わずにさっさと死ねよ!」

 急加速。言葉は荒くとも、体に馴染んでいる暗殺者としての歩法は静かで速く本当に接近しているのかと疑問に感じられるほどだ。

 左剣が真っ直ぐに突かれる、ルフトが行光に手を伸ばし剣を逸らそうとする。タイミングは間一髪間に合うと言う所だろう、だが男は行光に逸らされる寸前剣先を下に変える。

 行光が男の手首に当たるも金属音が鳴るのみ、反して男の剣先はルフトの太ももを貫き抉る。

 それでも男は満足しない、右剣が唸りを上げルフトの右胸を狙う。

「ぐえあっ!」

 ルフトは一歩前に踏込み。切れ味が鈍い刃元を右肩にくい込ませつつ、喉へ左貫手、続けて弾かれる様に手首を曲げ手首で男の顎を打つ。怯んだ男の左腕を行光で斬りつけようとするも、男は左剣を手を放し回避、どころか行光を手刀で叩き落とす。

 男が引いた右剣を袈裟に放とうとするも、ルフトが先んじて腹を蹴り飛ばす。

 男は後ろに跳んで衝撃を逃し、ルフトは足を地面に下し、さらにぎこちなく笑みを浮かべる。

「えほっえほっ! ったく、腿突き刺したってのに一切動じないのかよっ!」

 ぼやきながら左手を前に付きだし、何かを引くように拳を握る。体を捩らせ手の先から――射線からルフトが外れる

 思った通り暗器から矢が放たれ、背後の木に突き立つ。その音を聞いた瞬間、男が凶悪な笑みを浮かべる。

 薄暗い森、陽が僅かに差し込み男の笑みの訳が晒される。矢を放った袖口からは、伸びる一筋の糸が煌めく――鋼線だ。

「ひゃはあっ!」

 先程と同じ歩法を持って男は急加速、鋼線が張りルフトの体を横断せんと迫る。

 体を捩らせた体勢からの跳躍では回避不可能、そもそもあの疾走に"重蹄脚"無しで跳ぶなど向こう見ずにも程がある。

「くっ!」

 追い詰めたらた表情をし、ルフトが強引にブリッジの体勢を取る。結果、鋼線はルフトの制服を僅かに切り裂き通り過ぎる。

「けけっ!」

 避けれはしたがその体勢は最悪。男は表情を崩すことなく、地面を削る様にして軌道を曲げ、ルフトへと足を向ける。

 体勢を変えれる間なく男は自分の手のかかる範囲にルフトを入れる。

 男は短剣を逆手に持ち替え、身体ごと地面に突き刺さんと言わんばかり、空いていた左手を柄に当てルフトの腹に突き立てる。

[万変流格闘術:"飛んで火に居る夏の虫"っ……!]

 ルフトがその中心に突き立てられる力を利用し、両腕と両足を貝の様に閉じる。両肘と両膝で男の足を、伸びた足で体を挟み打つ。

「痛っでぇ!」

 男が予想だにしない攻撃に怯む。瞬間、ルフトの目がぎらつく。

 腹に突き立ったを短剣を抜いて無造作に投げつけ、両手をそのままレガースの裏――短剣を忍ばせるのその場に伸ばし、反動をつけて立ち上がる。

「ぐぅ!」

 投げた短剣が脇をかすめ煙を上げ男が呻く。

 その声が終わる間なく、ルフトが反動のまま両手に持った短剣を足に突き刺し男を地面に縫い付ける。

 間髪入れる事無く、ルフトが骨を鳴らす様に指をぎゅっと握る。ルフトの手が離れるとそこには、宝石の代わりに二つの刃を付けた指輪――角指が現れる。

 自らの身に隠していたその刃を手のひら側に向け、男の脹脛をしっかりと掴み、立ち上がると同時に(すじ)を切り裂く。

「ぎぃあぁぁ!」

 男が激しい痛みに半狂乱で腕を振るう。その手を鉄の牙をもつ獣が喰い捕える、そしてそのまま――手から肩口に掛けてを――切り裂く。

 痛みに喚く声が一層高まり、その音を止める様にルフトが首に手を掛け、下に倒れ込むようにその軟らかい皮膚をずたずたに裂く。

 朱色の水が、命が流れ落ち滝を作る。

 男が何かを訴える様に口をパクパクと開けるが、喉からヒューヒューとか細く息が漏れるだけで音にはならない、そしてそのまま無念を訴えれること無く、地面に崩れ落ちる。

「勝った……んですよね?」

 始めてみるであろう凄惨な勝利にレオナルドの声は震え疑問を称えている。

 目の前のこれを勝利と感じて良いのか? そんな疑問を。

 だから、私は師匠として答えねばならないだろう、これは間違いなく勝利で、疑いも無い生存だと。

 そう思った時にはもう、意識は黒く塗りつぶされていた。

今話は活動報告にて細かい補足させていただきます、まぁ補足と言っても大したことはありませんので、読まなくても支障なく続きは読めますのでご安心を(汗)

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