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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第六章 再会

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「子供はたくさんいた方がにぎやかで楽しいぞ」


 初夜もまだの関係なのに、子供が産まれるなど、到底ありえないことだ。


「なっ……! お父さまってば……」


 シャルロットの頬が赤く染まっているのに気づくと、つられて自分も熱くなってきた。


「あなた、人にはタイミングというものがあるのですから」


 笑顔のセバスティア侯爵夫人にピシャリとたしなめられる。


「む、それもそうだな」


 セバスティア侯爵は目に見えてシュンとした。


「いや、すまなかったな。そう急ぐ話でもなかった」

「そうよ、お父さま。早すぎるわ」

「いや、いつかは、の話だ。今は忘れてくれ」


 シャルロットは腰に手を当て、父であるセバスティア侯爵に説教している。


「今は二人で過ごす時間が楽しいに決まっているわ。イザーク殿がシャルロットを迎えにくるということは、少しでも離れていたくないという、心の現れでしょう!」


 セバスティア侯爵夫人の言葉が、見透かされたようで、タジタジになる。

 セバスティア侯爵夫人はにっこりと微笑むと、俺の腕の中から赤ん坊を抱きあげた。


「さあ、そろそろあなたのお母さま、ローズのもとへ戻りましょうね」


 そして部屋から出て行った。


「それでイザーク殿、今夜は身内で軽く祝いたい。ぜひ、夕食を一緒に食べてくれ。部屋も皆の分、用意させる」


 セバスティア侯爵の申し出を受けることにした。

 そうだ、俺はシャルロットに話がある。


 そもそも、彼女は俺と一緒に北部に帰ってくれるのだろうか――。


 拳をギュッと握りしめた。


 ***


 夜の晩餐会はとても豪華だった。

 北部から連れてきた部下も丁寧にもてなされ、皆がご馳走になった。

 何種類もの料理が出てきたが、どれも絶品、北部で味わったことがなかった。


「さあ、どうぞ食べてくれ、イザーク殿」


 セバスティア侯爵はワインを片手に上機嫌だ。


「イザーク殿も飲んでくれ、私には娘ばかりだから、君のような息子が欲しかった」


 シャルロットの屈託のない明るい性格は父親譲りなのだろうか。真っすぐな性根と明るく周囲を照らすのは。

 この南部の雰囲気そのものを現しているように思えた。


 それに比べて北部は――。


 途端に卑屈になりそうになるが、慌てて止める。

 北部には北部の良さがあり、何より俺が育ち、守らねばならぬ場所だ。


 シャルロットは共に帰ってくれるのだろうか。

 今夜確かめねばならない。


 セバスティア侯爵の陽気な声で続くお喋りを聞きながら、心は違うことを考えていた。


「――ごめんなさい、父が飲みすぎてしまって」


 晩餐会も終わりに近づいた頃、セバスティア侯爵が酔い潰れてしまい、先に退席した。


「いや、構わない。それだけ孫の誕生が嬉しかったのだろう」

「でも、あなたも同じぐらい飲んだのに大丈夫?」


 出されたワインは口当たりが良く、後味がすっきりして飲みやすかった。そのせいかいつもより多く飲んでしまったが、これしきでは酔うことはなかった。


「ああ、俺は大丈夫だ」


 これから大事な話をしなければいけない。酒に酔ってなど、いられなかった。


「――話があるんだ」


 ゴクリと喉を鳴らし、口を開く。


「話? どうぞ」


 シャルロットは不思議そうに首を傾げる。だが―――。


「ここではちょっと……」


 のちほど落ち着いて話をしたいと告げると、シャルロットは小さくうなずいた。


「じゃあ、後からね」


 食事を終えるとあてがわれた部屋へ案内する、メイドのあとをついていく。


「こちらになります」


 広く、豪華な調度品に囲まれ、贅沢の尽くされた部屋に足を踏み入れた。


 ここは――。


 鼻をスンと鳴らすと甘い香りがした。これはシャルロットの匂いだ。


 もしや……。


 バッとメイドに顔を向ける。


「こちら、シャルロット様のお部屋になります。本日はこちらを二人で使用して欲しいと、旦那様からの言伝になります」


 お、同じ部屋に……!?


「では、失礼します。ごゆっくり、お休みください」


 頭を下げたメイドは、そのままパタンと扉を閉めた。


 シャルロットと同じ部屋!?


 ゆっくり休めるわけなんてないだろう!!


 喉まで出かかったが、グッとこらえた。


 花柄のカーテンに趣味の良い調度品。

 チラリと視線を向けると天蓋レースつきの大きなベッドが視界に飛び込んできた。


 その瞬間、自分でもわかるぐらいに全身が熱くなった。


 いやいや、話をしたいと思っていたから、ちょうど良かったじゃないか!


 頭を大きく横に振り、冷静さを取り戻そうと必死になる。


 まずは、心を落ち着かせるため、湯を浴びよう。

 部屋から続く扉を開けると、浴室が飛び込んできた。


 かわいらしい猫足バスタブに、棚にはいくつもの香油が並ぶ。


 シャルロットは、いつもここで湯を浴びていたのだろうか――。


 なんだか緊張してしまうが、気にしないように努める。

 湯を浴びてガウンを羽織ると、さきほどよりは少し気が落ち着いた。

 気を取り直して部屋に戻る。


「あ、イザーク」


 ベッドに腰かけていたシャルロットの姿を視界に入れると、心臓がドクンと音を立てた。

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