章間
うららかな昼下がり。
本を片手にまったりと過ごす。温かな日差しが眠気を誘う。ほんの小さなあくびが自然と出てしまう。
「お疲れでしたら、少しお休みになられますか?」
その様子に気づいたドリーが微笑み、声をかけてくる。
恥ずかしくなり頬を染めた。
「最近は忙しくて、ゆっくりと休む時間もなかったですからね」
「そうね……」
結晶が採掘できるようになってからというもの、ここ最近では目まぐるしい日々を送っていた。
南部の実家と連携を取り、北部から出荷する手はず。
それに加えて結晶にせっせと魔力を注ぐ日々。
確かに働きすぎかもしれない。
「ですが、もうここまでくれば北部の発展は約束されたようなものですよね! それもシャルロット様のご活躍があったからこそ!!」
ドリーは顔を輝かせ持ち上げてくるが、私はクスリと笑う。
「それは北部に可能性があったからよ。王は北部の発展を見越していたのよ。私はただ、王命に従っただけ」
王命結婚だったがイザークとはなんだかんだ、仲良くなれたと思う。
最近ではなるべく時間を合わせて、毎食一緒にとってくれたり。不器用ながらも言葉を選んで声をかけてくれる。
ただ時折、なにか言いたげな視線を感じることがある。
彼は私に南部に帰らないで欲しいと言った。でもそれはどうして?
もとより責任感の強い人のことだから、王命に忠実に従う気になったとか?
「これでいつでも南部に戻れますね」
「えっ?」
ドリーの発言に心を見透かされたような気がして、心臓がはねた。
「だってシャルロット様、そのつもりでしたよね?」
ドリーは顎に手をあて、不思議そうに首を傾げている。
私だって最初はそのつもりだった。イザークに婚姻関係を拒否されたあの夜から。
でもイザークは私に帰って欲しくないと言った。
もう少し彼と話をしないとダメだわ。それでなければ本心がわからない。
でも彼はなにか言いたげな視線を投げてくるが、私と目が合うと、サッと逸らすことが多い。
これじゃあらちがあかないと思ってある時、自分から切り出してみた。
「今度、お話が――」
全部言い切らないうちにイザークの頬がピクリと動く。
「疲れているだろう? 源泉につかって体を癒してくれ。俺は使わないから」
「いえ、そこまで――」
「あの源泉は疲れが取れるから、入った方がいい」
……うまく話を逸らされた気がする。
しまいには源泉を私専用に改築するとか言い出した。
その他にもなにか欲しいものはあるかとか、好きな食べ物を聞いてきたり、すごく気を遣ってくれる。
本当、最初の態度とはえらい違いだわ。
思い出すと自然と頬がゆるむ。
だからこそ、彼と話をする時間を取らなくてはいけない。
帰って欲しくない、それに私と最後まで添い遂げたいと言ったのは、私の力が北部の発展に欠かせないから?
それとも――。
その時、ノックされる音が響き、ハッとする。
返事をすると静かに扉が開き、執事のガルドが顔を出す。
対応したドリーは一通の封書を手にして戻ってきた。そこに押された紋章を見て、読んでいた本を閉じた。
ドリーに渡されたペーパーナイフで封を開け、中を確認する。
手紙を確認すると同時に、勢いよく顔を上げた。
「大変だわ、私、行かなくては……!!」
驚きに目を見開いたドリーに手紙を見せる。
「まあ……。では、今すぐ準備をいたします!」
ドリーはクローゼットからトランクを取り出すと、手際よく荷物を詰め始めた。
でもイザークが……。
彼は今、魔物討伐で留守にしている。
仕方がない。事情を説明すれば、きっとわかってくれるはずだわ。
それよりも急がないと……!
はやる気持ちを抑え、唇をギュッと噛みしめた。




