表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第四章 ネザークロウの洞窟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/55

42

 グルルルルと低い唸り声をあげたホーングリズリーが、いきなり身を起こした。


 とっさにイザークは剣を取り出し、私を背にかばう。


 その横で疾風のごとく駆け出した人物がいた。――ドリーだ。


 たくしあげたスカートの下、ガーターベルトから素早く二本のダガーを引き抜くと、恐れも知らず、ホーングリズリーへと向かっていく。


 鋭い爪で前をかくホーングリズリーに、高く跳躍したかと思うと真上から一気に、ダガーを振り落とす。


 ホーングリズリーの額には深々と刺さったダガーが輝いていた。

 耳をふさぎたくなるような断末魔の咆哮をあげ、ホーングリズリーはドサリと倒れ込んだ。


「ふぅ……。ホーングリズリーはしぶといぐらいの生命力に、命の危機を感じると一時的に仮死状態になります。そして周りの目を欺き、反撃をしかけます。確実にとどめを刺すには額にある、真ん中の目を潰さねばなりません」


 一瞬の出来事だったので、状況を把握できない周囲に淡々と説明をしたドリー。


「ドリー!!」


 私は駆け出して彼女に近づく。


「大丈夫? 無茶をしないで」

「平気です」


 返り血を浴びたドリーは袖でグイッと頬の汚れを落とす。


「ドリー早く着替えましょう。そしてイザークはケガの手当てを」


 あっけに取られている周囲をよそに、テキパキと指示を出した。


 ドリーは着替えに行き、部屋でイザークと二人きりになる。


「言ったでしょう? ドリーは強いって」


 私はフフフと微笑んだ。


「彼女は何者なんだ?」

「ドリーはドリーですわ」


 彼女がなんであれ、私の大切な友人だ。


「出会った時は大変でしたが、それ以来、ずっと一緒です」


 話せば長くなるので割愛すると言うと、それ以上、追究はされなかった。もっと親しくなったら私の大事なドリーのことを、話してもいいかもしれない。


 でもまずは――。


「腕を見せてください」


 イザークはケガをした箇所をそっと前に出す。


「……ッ……!」


 ホーングリズリーの爪痕がくっきり残っている。


「動かないでください」


 手をかざし、祈りを念じると手のひらから温かな光が降り注ぐ。

 見る見るうちに閉じていく傷跡に、イザークは感嘆の声を上げる。


「これでもう大丈夫」


 イザークは腕をさすり、信じられないといった表情を見せた。


「念のため、しばらくは包帯を巻いておいてください」


 私の力は周囲には秘密にしておきたいからだ。


「この力を使ったことで、とんでもなく体力を消耗するとか、寿命が縮まるとか、そんなことはないよな?」


 なぜか焦っているイザークに目をパチクリさせた。


「ああ、あまりにも使いすぎると疲れますけど、これぐらいなら問題ありません」


 実際、そこまで派手に力を使ったことはなかった――今はまだ。


 両手を振って説明すると、イザークはホッとしたようで頬が緩む。


「これが癒しの力……。素晴らしいな」


 右手を振ったり、さすったりしているイザークは感心した声を出す。


「あと、私のことを考えてホーングリズリーを退治したのかもしれませんが、危ないことはしないでください」


 今回のことは、はっきり言っておかなければ。


「私だっていつまでも甘やかされて北部にいるわけじゃないので」


 胸を張り、きっぱりと言い切る私をイザークはジッと見つめていた。


「――あんたはたくましいな」

「あら、今さら知りましたの?」


 イザークは肩をすくめ、苦笑する。


「華奢で可愛らしくて、春の女神か花の妖精と見間違うほど可憐で魅力的なのに……」


 え? この発言をしているのは本当にあのイザークなの? 褒めすぎよね。


「ドリーも只者じゃないだろう。彼女があそこまであんたに忠誠を誓っているなんて、どうやったんだ」

「あら、興味がおありでしたら、今度語ってあげますわよ。ドリーとの感動的な出会いを」


 軽口を叩くと、イザークは声を出して笑った。


 これは――。


 内心の動揺を悟られるまいと、ゴクリと喉を鳴らす。


「私のこと、見直しました?」

「ああ、そうだな。予想もつかない行動に出て……目が離せない」


 ジッと熱い視線を送ってくるイザークに思わず、目を見開いた。


「今、認めましたね? 私のことを見直したと」


 イザークは口を小さく開け、ハッとした。


 やったわ、言質を取ったわ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ