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【書籍化】この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第二章 北部の発展を目指して

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20

その後、ドリーと西門に向かい、用意されていた馬車に乗り込む。ロゼールは馬にまたがり、馬車の後ろをついてきた。


 街について馬車から下りると青空が広がっていた。


「珍しくいい天気だ」


 空を見上げてロゼールが太陽のまぶしさに目を細めた。


「そうなの?」

「ええ、この時期に太陽が姿を見せる日は、そうありません。どんよりとした曇り空が多いので」


 それは幸運に思えた。幸先がいい。


「それで、今日はどこへ行きますか? ドレスや装飾品など見に行きますか?」


 ロゼールの申し出にゆっくりと首を横に振る。


「昨日、あなたにお願いした件はうまく見つけられたかしら?」

「見つけましたけど……。裏路地に近くて」

「なおさら好都合じゃない!」


 私が昨日ロゼールに頼み込んだのは物件探しだった。ロゼールを見て、ふふふと微笑む。

 ロゼールは顔に疑問符を浮かべている。すぐに表情に出て、わかりやすい。きっと嘘をつけない人だろうと思えた。


「さあ、行きましょう!!」


 呆けた顔をしてたたずむロゼールに声をかけ、案内するように言った。


 案内されたのは裏路地に近く、昔は食堂だったという建物だった。


「ここなら、条件にぴったりね。いい物件を見つけてくれてありがとう、ロゼール」


 ロゼールは胸元から鍵を取り出し、建物の扉を開けた。


「良かった、道具はそのままだったみたい。これなら、すぐに始められるわね」


 中は広く、椅子やテーブル、大きな鍋や食器などもそのまま残されている。

 きっと食堂を辞めてから、そう日は過ぎていないのだろう。思ったよりもほこりなどたまっておらず、簡単に掃除をしたら、すぐに始められそうだ。


「よし、ロゼール。あなたは求人を出してきて」

「今からですか?」

「ええ。年齢、性別問わないわ。やる気があって職を求めている人よ。何人でも構わない。集められるだけ集めてちょうだい。賃金は一日、一万バーツから始めましょうか!」

「えっ、そんなにですか!?」


 これにはロゼールが驚きの声を上げた。人々の平均賃金よりも高めだったからだ。

 だが信頼もなにもない私がやろうと思っても、怪しんで人は近づかないだろう。それならば論より証拠。賃金で示すのが手っ取り早い。


「いったい、なにをする気か、お聞きしても……?」


 ロゼールがおずおずと切り出す。

 そこで私はにっこり微笑む。


「食堂よ。お腹が空いた人が無料で食べられる場所にするの」

「む、無料ですか?」


 ロゼールは目を白黒させている。


「ええ、そうよ。昨日の子供も見たでしょう? ここには食に困っている人がいるみたいだから。裏路地の再建はそれからよ。まずはお腹をいっぱいにしてもらわないと、頭も働かなくなるでしょう」


 ロゼールはまだ半信半疑なのか、突っ立っている。


「大丈夫、昨日も言ったけど、お金ならあるから!!」


 ドリーは深くうなずくと、持っていたバスケットから、ずっしりと重い袋を差し出した。

 私は袋の口を開けて見せると、キラキラと輝く金貨が姿を現す。


「ね、言ったでしょう? だから心配せずともいいから、人を集めてきてちょうだい」


 父が持たせてくれた持参金、こうなったら、有効活用させていただきましょ!


 やがてロゼールは十人ほどだろうか。人を集めてきた。


「まあ、最初にしては上出来ね」


 私はほくそ笑んだ。賃金につられて集められ、様々な人がいた。子供を背負った母親、足を引きずっている強面の男性、そしてその中に知った顔があった。


「あら、あなた……」


 私が声をかけるとビクンと体を震わせた。


「あ、ちゃんと働きたくて……。ここなら仕事をくれるっていうから……」


 それは昨日、私に体当たりしてきた少年だった。


「ええ、来てくれてありがとう。もう、お腹を空かせることはないと誓うわ」


 なによりも少年がやる気を見せてくれたことが嬉しい。


「あなた、名前は?」

「あっ、トビー」

「トビーね、これからよろしくね」


 にっこり微笑む。


「よし、そろそろいいかしらね」


 私は周囲を見渡す。皆の視線を浴びながら、中央に移動する。そこで初めてフードを脱いだ。


 皆が私を見た途端、緊張が走ったのを感じた。


 ここ北部で私のような髪の色は珍しい。南部出身だと気づかれたかしら。

 スッと息を吸い込んだ。


「はじめまして、皆さん。私、ここ北部を統治するイザーク・カロンの妻のシャルロットです」


 自己紹介をすると皆が息を呑んだのがわかった。

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