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筋肉は魔法世界を制す  作者: 清正
筋肉の夜明け
7/7

第七話 筋肉、電気を帯びる

 マハトは以前、テイトス魔法具店で無理やり買わされたガントレットを見つめていた。

 どこかで見覚えが……ない。全く知らない。

 しかしマハトの常人離れした太い腕にぴったり合うのだ。

 不思議に思いながらもとりあえずは装着しておくことにした。

 手の甲部分は金属のような硬い物質でできている。そこから肘の前までにかけて、つまり前腕部分は肌に密着するような不思議な素材で作られている。一般的なガントレットとは少し違う作りではあるがなかなかかっこいい。

 マハトは何故か懐かしさを憶え、気に入った様子だった。

 


「ほっほ、じゃあはじめるかの」

 今日の授業は雷魔法だ。先生はチャンドラ。おじいさんだ。こう見えて昔は凄腕の魔法使いだったらしい。

 雷魔法は2年生から習い始める魔法である。生徒たちは呪文を唱えるが ポフッ っと空気が出るだけだ。

「ええか。雷魔法はイメージが肝要じゃ。電気の流れを意識するんじゃ」

 大事なことなのだろう。今の台詞はこの1時間で20回を超えた。

「うぅ、意識って言ったって難しいよ……」

 そう言ったテオに限らず、みんな四苦八苦している。

「雷は自然の産物じゃ。起こそうと思って起こすものではない。起きているものなんじゃ」

 抽象的すぎる説明を、マハトは飲み込もうとしていた。

 


 ギルドサンドラ支部。世界でも有数の登録者を誇るギルドだ。魔物の討伐や調査・調達、護衛や身近な探しものまで請け負い、依頼する場所である。

「ハリー。今帰ったわ」

「あぁ、サラ。」

 彼はサンドラ支部の支部長ハリー・シーン。サラを応接室に迎え入れた。

 

「で、どうだった?議会は」

「まだ気付かれてはいないみたいね。いつもどおり、調整の話よ」

「そうか……。彼は、戦力になりそうか?」

「まだまだね。でも、以前の力を取り戻したらもしかすると……」

「そうか、楽しみに待ってるよ。救世主の復活を」

「……長くなりそうね」

コンコン

「支部長!あぁ良かったサラさんまで!」

 ギルド職員が勢いよく入ってきた。

「どうした?そんなに慌てて」

「それが……ま、魔王の使いと名乗る者が入り口に……!」

 その瞬間、職員は切り裂かれ血塗れで倒れた。

「! なにっ……!?」

「おやっ、貴女はサラ・リベル理事長。大物が二人も揃っているとはタイミングの悪い」

 そこにはピエロのような風貌の男が返り血を浴びて立っていた。

「貴様……!なぜ……!」

「何故って、魔王様からのプレゼントだよ。わかるだろ?」

 ハリーは怒りで今にも飛びかかりそうな勢いだ。

「……ハリー、気持ちはわかるけど落ち着きなさい。まだ建物には人が残ってるわ。奴も私達2人には手を出せないでしょう」

「くっ……!」

「まぁ、今日はここまでにしておきますよ。感謝してくださいね」

 そう言うとピエロは一瞬で消え去った。

「……サラ、もう奴らを看過できない」

「……まだ早いわ。彼の覚醒には時間が必要なの」

 ハリーは冷たくなった同僚を抱えて佇んでいた。



「どれ、そろそろ試してみるかの」

 生徒たちは悪戦苦闘しながらも電撃を発することに成功しつつあった。

「これに向かって撃つんじゃ」

 チャンドラが指さした先には時計のように000000という数字が並んだ大きな避雷針があった。

「これは電撃の威力を計ってくれる機械じゃ。"ザイカス"!」

バシャアァー!

 チャンドラがいきなり呪文を唱えると避雷針に雷が落ちた。地面を伝って生徒たちがビリビリと痺れる。計測器の画面には100000という数字が並んでいた。

「ちょっ、先生!撃つなら言ってくださいよー!」

 生徒たちからブーイングが起きる。

「ほっほ。すまんの。びっくりしたじゃろ?」

 天才とは無邪気なものである。

「では最初は誰からいくかの」

 

 少し見渡しチャンドラはテオを指名した。

「イメージじゃぞ、イメージ」

 一般的に雷ははるか上空にある雲の中で作られる。雲を形成する氷の粒が擦れることで電気がた溜まり、雲は雷雲となる。雷雲の中に蓄えられたマイナスの電気が地表にあるプラスの電気に向かって飛んでいく。これが落雷と呼ばれるものである。

 テオはこの流れを頭の中に描き、唱えた。

「"ザイカ"!」

ピッ

 杖の先が少し光ったかと思うと避雷針の計測器が2500の数字を示す。

「で、できた……」

「ほう、筋がよろしい。静電気以下の電力じゃがな。精進あるのみじゃ」

「は、はい!」

 テオは嬉しそうな表情で戻ってきた。

 

 マハトはというと、電気のイメージをより鮮明に描いていた。まるで瞑想しているかのようだ。

「最後は……おぬしじゃな、身体の大きいの」

 順番が回ってきたマハトは立ち上がり、おもむろに装備していたガントレットを擦り始めた。

パッ パチッ パリパリッ

 するとどうだろうか、彼の腕に電気が集まり始めた。肉眼でもわかるほど帯電している。

 

 セーターは一般的に静電気が起きやすいと言われているが、これは羊毛やウールがプラスに帯電しやすい素材だからである。逆にマイナスに帯電しやすい素材の代表はポリエステルだ。下着やシャツとして着ているポリエステルと上着のセーターが擦れることによって静電気が起きる。マハトはこのメカニズムをガントレットの素材で再現したのだ。

 

「……フンッ!」

ズッッッガアァァァン!

 マハトが目にも留まらぬ正拳突きを放った瞬間、辺りを照らしながら避雷針に大きな雷が落ちた。

 プスプスと音を立てながら煙を出す避雷針の計測器はERRORの文字を示している。

「なんと……!」

 チャンドラは小さい丸いサングラスから目を飛び出して仰天している。

「先生、運ぶのを手伝ってくれ」

 マハトは感電した生徒を担ごうとしていた。

「ふむ、心優しき戦士よ。ワシが治してやろう。……"メディシオレ"!」

 チャンドラが唱えると辺りを優しい光が包み込む。

「う~ん……ここは」

「う、うぅ、なんか痺れてる」

 感電した生徒たちはたちまち目を覚ました。回復したようだ。

「……感謝する」

「なあに、恩を売ったまでじゃよ。皆の者、今日の授業は終わりじゃ」

 老練の魔法使いはそう言って去っていった。

 


「魔王様、ゼルクラウン只今戻りました」

「……ご苦労であった。成果はどうだ」

「はい、間が悪いことにサラ・リベル、ハリー・シーンが揃っていたため手を下すことはできませんでした」

「……」

「しかし彼の部下を殺害し、人々に恐怖を植え付けることには成功しました」

「……そうか、まぁよい。貴様には期待しているからな」

「はっ!」

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