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弱スキルと☆1つのクソダンジョン

 どこの学校にも、どのクラスにも、カーストは存在する。

 そして――佐藤 智樹という男は、その頂点に立っていた。


「――おい、陰キャくん。ジュース買ってこいよ」


「断る」


 智樹が陰キャと呼んだ男――黒宮 健は、カーストの最底辺にいた。


「聞いたか? “断る”だってよ」


 佐藤は黒宮の声真似をしながら、壊れたレコードのように“断る”を連呼する。

 取り巻きの男女四人は、ケタケタと下品に笑った。


「ウケるんだけど」


「めっちゃ似てるし」


「やば〜」


 ホームルーム前の隙間(すきま)時間。

 彼らは相変わらず騒がしい。

 佐藤は背が高く、顔もそこそこ整っている。

 体を鍛えていて、体格も良い。

 まるでサル山の大将のように、このクラスの頂点に君臨していた。


(……結局、見た目かよ)


 そんなことを考えていると、担任が教室へ入ってくる。

 見慣れない、3人のスーツを着た男を引き連れていた。


「はい、みんな静かにして。これから“鑑定”を始めるからな」


 その言葉に、クラスメイト達が色めき立った。

 60年前。

 不景気に苦しむ世界に突如として、ダンジョンが現れた。

 地下に広がるその特殊空間は、魔物がいて、レベルアップがあって、不思議な素材やアイテムが獲れた。

 特にエネルギー源となる“魔石”は環境問題など、あらゆる分野への貢献(こうけん)を果たす。

 各国はダンジョン攻略をする探索者の育成に、力を入れることとなった。

 ダンジョン攻略に必須な異能“ステータス”は18歳にて覚醒する。

 そしてそのステータスを見破る“鑑定”によって出る結果は、17歳から調べることが出来た。

 日本は高校3年生になるとこの“鑑定”を受ける義務が発生する。


「よっしゃあ! オレ、最初にお願いします!」


 佐藤がはしゃぎながら、他の生徒を押しのけるようにして、列の前に並ぶ。

 まるで小学生のガキ大将である。

 しかしこの男、どうも才能があるらしい。

 職員は関心したように息をもらした。


「素晴らしい! 初期の平均値は“3”なのですが、どれもその数値を大きく上回っている。あなた、探索者の才能がありますよ」


「やったぜ! オレ、金持ちになれるじゃん! 配信もやって、人気者になるぜ!」


 佐藤のテンションが上がり、彼の取り巻きも「さすが」「いいな~」「あーしと結婚してよ~」なんて、よいしょしていた。

 だが、彼のはしゃぎようは、自然なことだ。

 探索者は危険のある仕事だが、獲れる魔石や素材は需要が高く、稼ぎが良い。

 強い探索者ならば、年収〇億だ。

 さらに昨今はエンタメ化も進んでおり、“ダンジョン配信”が人気である。

 人気になれば、さらなる年収アップにつながる、夢のような仕事なのだ。


「……よろしくお願いします」


「はい。えっと……」


 黒宮も職員の鑑定を受ける。


――――――

黒宮 健 LV1


攻撃 4

防御 4

魔力 4

精神 4

俊敏 4

スキル:捕獲

――――――


「バランスが良く、中々に優秀な能力ですね。では、次の方」


 あっさりと流されてしまう。

 悪い結果ではないようだが、佐藤のようにすごい結果というわけではないようだ。

 特別な才能はない。

 そういうことなのだろう。

 だが、諦めたくなかった。

 探索者が夢のある仕事だから……というのものあるが、人によってはレベルアップで容姿が良く可能性があるのだ。

 自分の見た目を良くしたい……社会人ではイケメンになって、モテモテに……という野望が、胸の奥に眠っている。


「あ、あの。このスキル“捕獲”というのは?」


 職員が、きまずそうな表情を浮かべる。


「魔物を一時的に操るという、かなり珍しいスキルですが……残念ながら“弱スキル”です」


「えっ……」


「魔物を操れる時間はたった3分。しかも対象は、Eランク……初心者向けの魔物が限界です。なので、ベテランや中堅冒険者になるとほぼ“死にスキル”となります」


 ぷっ、と佐藤が笑ってきた。


「陰キャくんらしくて、良いスキルじゃん。オレと一緒にパーティー組まねー?」


「嫌だ」


「おい、聞いたか? “嫌だ”」


 佐藤が声マネをすると、取り巻きがゲラゲラ爆笑した。

 職員が慌てて「で、ですが、数値は平均以上ですよ? 落ち込まないでくださいね」とフォローしていたが、佐藤達は壊れたサルのオモチャのように、手を叩いて笑っていた。





 佐藤がイジめてくるようになったのは、去年だ。

 アプリで登録した日雇いバイトで、たまたま数日間、現場が一緒だった。

 佐藤はかなり要領(ようりょう)が悪い男であった。

 勤務態度も悪い。

 しかも配属された現場は、ハードな場所だった。

 現場の人間に怒られたりしていた。

 そんな中、黒宮は無難にこなし、仕事についていっていた。

 また何故か、現場の年上のお姉さんたちにちょっとだけ気に入られていた。

 どうも黒宮は年上キラーなようだ。

 しかし佐藤はプライドが高いので、クラスで地味な黒宮がチヤホヤされているのが、ムカついた。

 この出来事をきっかけに、佐藤は黒宮をクラスでイジるようになったのだ。





 そんな地獄のような鑑定が終わり、夏休みとなった。

 自分には探索者の才能がない。

 そうとわかっていながらも――黒宮は、とあるダンジョンへと足を運んだ。

 そこはネットのレビューで“☆1つ”のクソダンジョンであった。

 ダンジョンは現在、国内に100以上が確認されている。

 しかし中には、色んな事情で“冴えない”ダンジョンもある。

 それがこれから入るダンジョンであった。

 何故人気がないのかというと、狭くてEランクモンスターしか出ないからだ。

 初心者ならまだ行く価値はあるが、それだけ。

 レアアイテムの類も確認されていない。

 特に冒険のしようがない、チュートリアルみたいなダンジョンなのだ。


「うわ、本当に無人だ」


 駅の近くにある、白い清潔感のある平屋。

 そこがこのダンジョンの受付だが、無人だ。

 中は白い床と、簡素なカウンターが設置。

 監視カメラはついているが、なんともガバガバなセキュリティだ。

 人気のないクソダンジョン感がすごい。


(でもここなら、佐藤達は来ないだろうしな)


 佐藤は探索者になる気満々で会った。

 入場年齢である、18歳も満たしている。

 ダンジョン配信もやると、宣言していた。

 万が一にも、彼らとすれ違いたくないので、ここを選んだ。


「ええっと、ライセンス……」


 別の日に探索者協会支部へ寄って、発行してもらったライセンスを端末にかざす。

 駅の入場みたいなものだ。

 奥の重々しい金属の自動ドアが、ぷしゅっ、と開く。

 中へ入ると、部屋の真ん中の床が階段になっていて、地下へと伸びている。

 壁は土壁で、階段も途中から土に変わった。

 ダンジョンは元々、階段がついているらしい。

 まるで人間達を招いているかのようだ。


「よし。行こう」


 ほとんど人のいない、クソダンジョンへと黒宮は入っていった。

 そしてそこで――スキル“捕獲”の真の力を、知ることになる。

本作の閲覧ありがとうございます。


もし内容がよろしければ、★★★★★評価・ブックマークをいただけると、とても助かります。


何卒、よろしくお願いします!

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