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コミュニティ再編

 結局、あの戦いは勝利者など居なかったよ。


 コミュニティにも多数の死傷者が出たし、公安警察の部隊も壊滅。

 変異ヒグマなんか、未だ消息も分からない。


 一度空中通路も見に行ったけど、煙が多くてよく見えないんだよね。

 冬が終わるまでに、確認はしたい所だ。


 だから病院に残った人間で、今後の事とコミュニティ運営について話し合った。


 話合いの初めに、金森達が逃げた事を話すとその場は紛糾。

 当たり前だよな。信じてた人多いから。

 俺達は何も言わず見てたけど。


 タケシ達が制服警官と一緒に調べたところ、金森は石川と丸川先生も連れて逃げたらしいよ。

 それ以外にもコミュニティの幹部連中もね。


 きっと賛同者の元へ行ったんだろう。

 そこまでは俺も予想がついてたから、驚きは無かったんだよ。

 ただ、タケシから気になる事を聞いたんだ。 

 捕らえていた食人鬼達がいないってさ。

 誰かが扉を開けないと、外には出られないはず。


 だとすると、俺にはあの人の仕業としか考えられない。

 一体何を考えて連れて行ったのか?

 嫌な予感しかしないよ。

 

 紛糾した話合いは何とかタケシ達が抑え、皆が冷静さを取り戻す。

 歪みあっても仕方ないしな。

 先ずは、しっかり立て直す事が先だ。


 この話し合いで、新しいリーダーとしてタケシが選ばれた。

 俺の名前も挙げてくれる人もいたけど、柄じゃ無いし丁重にお断りした。

 まぁグイグイ意見を言ったの委員長だし。

 後でちょっとお話したけどな。


 それから罪人についてだ。住民の中には、怖いと感じている人も居たんだよ。

 ただの犯罪者だと教えてられていたらしい。

 それは仕方ない事だと思う。

 でもそう言う意見に対し、タケシは毅然と対応したんだ。


 仲間を守る為にやった事だとね。

 外の現場や危険な場面に出くわさないと、理解は出来ないと思う。

 日本では、襲われるって身近にないしな。

 あってもニュ-スで聞くだけで、他人事でしか無いだろうし。


 でもあの日々には、もう戻れない。

 俺も変わったから。

 意見が合わなくても、一緒に過ごす以上は協力はして欲しい。 

 

 タケシもそう言う風に話して、理解を求めてたよ。

 ただし本当に自分の欲求に従う奴らは別。

 事前に調べはついていて、そいつらは何らかの対応があるらしい。


 気にはなるが、俺が口出す問題でもない。

 話し合いの場に居ないのが答えなんだろう。


 この話合いの中で、取り締まる側にも変化があった。

 あの女、レイの事だ。

 彼女はコミュニティに残ってたんだよ。


 それでこの話合いの場で、俺の事を猛烈に罵倒した。 

 コイツは犯罪者だの、危険人物だの言いたい放題だったよ。

 タケシはレイに、事の詳細を確認した。


 レイはペラペラ都合の良い内容を話したんだけど、アホなのか? 1人で隠れていた事が露呈。

 普段から住民に対し高圧的だったらしく、その場で吊し上げられたんだよね。

 同じ警官からも彼女に対し、鋭い質問が飛んだんだ。


 もう必死に取り繕っていたけど、一度暴かれた仮面は元には戻せない。

 結果、他の制服警官が誰も擁護する事なく、職務放棄で拘束されたよ。

 彼女を庇えば、住民達からも厳しい目で見られるしな。

 今は俺達が入っていたフロアに軟禁状態だ。


 もう彼女が警官として戻る事はないだろう。

 自業自得だと思うけどな。


 俺と仲間達は、完全なコミュニティの一員にはならない。

 病院には残るけど、扱いは客人としてもらった。

 タケシ達はコミュニティの運営側に、誘ってくれたんだけどさ。

 やっぱり人間関係が煩わしんだよ。


 部屋は借りるし、その分はしっかり働くけどな。

 

 とにかく、俺達の新しい生活は始まったんだ。






◇◇◇






 一度壊れたコミュニティを立て直すのは、大変な努力が必要だった。

 建物の修繕や補強、遺体の処理。

 毎日忙しくてさ。それらをこなすだけで、1日が終わっていったよ。


 それでも皆が協力して頑張ったから、何とか普通に生活出来る様にはなった。

 しかし困ったのは、食糧なんだよ。

 金森達が、備蓄を大量に持ち出していた事がわかったんだ。


 だから俺を中心に、温泉街を隈なく探索。

 使えそうな物は根こそぎ集めた。

 それでも今後を考えると不安しか無い。


 そんなタイミングで、タケシが俺の元へ来た。


「とうま。お疲れ様。今少し良いか? お前に見てもらいたい物があるんだが」


「ああ。何を見せたいんだ?」


「とにかく病院へ入ろう。見せたい物は、金森が使っていた部屋にある」


 俺はタケシと一緒に最上階へ向かった。

 案内された部屋は元々病院長の部屋だった様で、置かれた机等も作りが良い。

 ソファーも座り心地良さそうだ。


「とうま? こっちだ」


 俺は慌てて、タケシに続く。

 この部屋には別室があるんだよ。


カチャ。


 部屋の中央には大きなテーブルがあり、椅子には調べものをする制服警官が数人座っていた。

 でも俺の目は、ある物に釘づけだ。

 

 それは、ホワイトボードに貼られた日本地図。


 その地図は色分けがされ、パニック後の日本の状況がハッキリわかる様になっていたんだ。


「これどうやって調べたんだ? 携帯もパソコンも使えないのに」


 思わず呟いた俺に、制服警官の1人が言った。


「金森は衛星回線を利用する手段があった様だ。ほら、ここに連絡をとったメモがある」


 今が何月なのか俺は分からなかったが、警官から3月だと聞いた。

 もう随分前に腕時計もブッ壊れたし、日付も曜日も意識すらしてない。

 メモの日付は、2月10日。確かに新しいな。

 そこに書かれていたのは、〇〇県、エリア確保。人員の補充求む。と言う簡素なもの。


 それを貼ってある地図と照らし合わすと、青に塗られた部分に該当した。

 と言う事は、青が金森達の陣営になる。

 赤はたぶん、生存者がいない場所。

 基地は緑かな?

 まだ確認が取れない地域には、色は塗られていない。

 ならこの黄色は、公安警察の確保した地域だろう。


 あれ? ここって基地がある場所だよな?


「とうま。何か気になるか?」


「いや。この緑色に塗られた場所が自衛隊基地のある場所だが、米軍基地と同じ色で塗られてるだろ?  でもここ。この基地だけは黄色なんだよ」


 何か俺の悪い予想が当たったみたいで怖い。

 黄色で塗られた基地は、米軍基地だったはず。

 ここから距離はあるけど、公安警察と同じ指令系統だとすると......。

 

 まぁ俺が国の心配をしても、何も出来無いけどな。


 それでもパニックの原因は知りたい。

 この世界を終わらせる様な出来事の真実を。


 情報がこれだけじゃあ、想像ぐらいしか出来無いけどさ。

 

 今はそれより、タケシは俺にコレを見せて、何が言いたかったんだろ?


「とうま。いつでもここに来ていいから。お前に見てもらいたいのは、ここなんだよ」


 そう言ってタケシが指を挿した場所は、地図上で真っ赤に塗られた自衛隊基地だった。

 距離的に歩いて10日はかかる。

 近いと言えば近いけど......まさかここを狙ってるのか?


「驚くよな。でも今の人数に必要な食糧を確保出来る可能性は、ここしか考えられない」


「移動手段は? 徒歩で移動したって、物資は持ち帰れ無いぞ?」


「基地になら、動く車両もある。なぁ片桐警部補」


「ああ。とうま君と言ったね? 実は私が、ここから逃げて来たんだよ」


 少し年配の警官は、自身の経緯を俺に話してくれた。

 パニック時に勤務していた警官達の行動をね。

 彼らは当時、市民の避難誘導をしていたらしい。


 向かったのは、先程話に出た自衛隊基地。

 しかし大人数での移動は時間が掛かり、ゾンビに襲われてしまった。

 それでも何とか基地まで辿り着くが、基地内の避難民から発症者が出る。


 自衛隊員も奮戦したが、彼らには国民を守る使命があった。

 簡単に言うと、人だった者を撃てなかったんだよ。

 彼らって攻撃命令が無いと、弾一発も撃てない。

 ホント変な法律だと俺は思う。現場を知らないから、危険さが分からないんだろうな。

 だから本来のポテンシャルが、発揮されなかったんだ。

 

 こう言う時は、警察官の方が機転が利くよな。

 身を守る為に発砲できるし。

 今はゾンビの存在も認知されてるはずだから、自衛隊員も武器で戦ってると信じてるけど。


 片桐警部補は自衛官と協力し、一時は安全な場所に隠れた。車庫だったらしいよ。

 でもそこには食糧なども無く、手に入れる為には外へ出るしかない状態に。

 危機的状況だから、避難民からも協力者が出る。


 そして......外へ出てた片桐警部補達は、食糧保管庫に辿り着く事なくって話だった。


「大変でしたね。でも他の自衛官は生きている可能性もありませ......いや。赤色ですもんね」


「生きていれば、かなりの戦力になってくれるだろうがな」


 この後、時間をかけて話をしたよ。

 基地へ向かうにしても、この冬が終わるまでは待ちたい。

 それに今のコミュニティは、金森と同じやり方はしない。


 議題を挙げて、全員の意見を聞く必要もあるんだ。

 面倒だが、そうしないと不満が溜まって行くから。

 俺はそう言った事が苦手だよ。


 もうサッサと決めて、決めたら即行動したいし。

 ここはタケシの顔を立てるけどさ。


 食料が必要なのは当たり前だから、この議題は満場一致で承認されたけどな。


 俺は基地へ行くメンバ-に選出。この場所を守る人員も必要だし、妥当な判断だな。

 悩みは......うちの女性陣が全員行くって言ってる事だ。

 タケシたちが渋い顔してるけどな。


 でも離れて心配するより、一緒に居た方が良いだろ?

 

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