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終末に向かう世界に希望なんて見つかるのだろうか?  作者: 早寝早起き
第5章:集団闘争サバイバル編
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予想できぬ結末

 身体に入った薬が抜けるまでの間、俺はこれまでの事を思い返していた。


 俺が初めにキララを疑ったのは、カズヤ達との会話を聞いた時だった。

 キララの方はヘラヘラした演技をしていたけど、カズヤはそれを気にする様子も無かった。

 普通なら公安のカズヤが高圧的に出てもおかしくないだろ?


 キラリと姉妹とは言え、一般人相手なんだしな。

 そこでこの二人は何か繋がりがあるんじゃないかと疑ったんだよ。

 まぁ隙を見せないから、その疑いも確信に至る事は無かったんけどな。


 次はあの作戦時の高木の態度だ。キラリを抱えるようにしながら、キララと対峙していた場面。

 あの時の高木は本当に動揺していた。あの男がただの女性に怯えるはずが無い。

 だとすると既に面識があったと思う方が自然だ。

 だからこそ、あの動揺と怒り具合だったんだよ。

 

 これはあくまでも想像だけど、あの時点で初めてキラリが薬漬けな事を知ったんじゃないかな。


 それに怒ったキララが高木を襲い、高木がキラリを人質にしたんだと思うんだ。

 それならあの高木の表情も納得が出来る。

 俺も正直その事は忘れてたんだけど、思い出すと自分の不甲斐なさに凹むよ。

 もっと早く気付いて居たら、上手く立ち回れていた可能性もあるし。


 キララが俺に選択を迫った時、男達に連れて行かれた場所に見覚えのある顔がいたんだよ。

 作戦時に市役所で見た男がさ。だから俺は疑いが確信に変わった。

 キララもまさか俺が覚えてるとは思わなかったんだろうけど。


 権藤が先に繋がりを持ったのはキララのはずだ。

 確かキララが高校生の時にドラッグに手を出したと言う話だから、もう10年近い付き合いなんじゃ無いか?


 勿論、権藤もキララとキラリの関係性は知っていたはず。

 公安警察が秘匿性のある組織とは言え、キラリは友人であった元市長の娘だしな。

 本当に友人だったのかも俺は疑っているけど。


 何か恨まれる事でもしたんじゃないのか? キララ達の父親が。

 そうでもないと友人の娘に手を出したりはしないだろうよ。

 だからこそキララの怒りは本物だ。


 でも自分を慕っているグル-プのメンバ-に、興奮剤の様なドラッグを使ったのはやり過ぎ。

 あんなに興奮した状態では、普通の判断も出来ないだろうに。

 やはり今のキララは危険だ。


 だから稲垣だけでも助けたい。

 本当はもうこの件と関わりたくないんだけどな。

 どう性格が変わっても、俺の大切な友人だし。


 殴ってでも引き離すべきだと俺は思ってる。

 恨まれるかも知れないけどな。


 さて。

 

 どうなるかは分からないが、先ずは俺の荷物を返してもらおうか。






◇◇◇





 

 隠れていた建物から出て工場へ戻る道は、未だに多くのゾンビが徘徊していた。

 本当によくこの状況で生きてたよ俺。

 武器も無いのにさ。


 拳銃の弾なんかとっくに無くなってるし。

 この数のゾンビ相手に使えても、無いのと同じだったかも知れないけどさ。

 仕方ないから遠回りで工場に向う事にしたよ。


 その道中、動きの遅いゾンビを選んで素手での格闘もしてみた。

 やっぱり俺に才能は無いわ。

 1対1でも時間が掛かって仕方がない。


 足を潰す様に立ち回るのが精いっぱいだった。

 金属バットの有難みをひしひしと感じたよね。

 それでも諦めずに続けるんだけどさ。


 幸いな事に工場近くにはゾンビは居ない。

 キララ達が始末したのかも知れないな。

 俺は注意深く工場の敷地へ近づき、フェンスの隙間から中を観察する。


 あれだけ騒いだ工場内がとても静かだ。

 

「おいおい。まさかあの後直ぐに、市役所へ向かったのか⁉」


 俺は警戒はしつつ、敷地内へ侵入。

 先ずはキラリが居た建物へ向かう。

 あそこなら警備もそれ程厳しく無さそうだからな。 

 

 そう思ってやって来た建物の周囲に男達の姿は無い。

 念の為に中を調べに入ったら、キラリの居た部屋で物音が響いたんだ。


カチャカチャ。


 まさかまた誰かが捕まったのか?

 俺はそう考え、慎重に部屋へ近づく。

 おかしな事に警備が居ない。


「気のせいか? まぁ念の為、中も見てみるか」


 そう思って扉を開いた俺の前に、それは無言で立って居た。

 さっき聞いた音はこれだったのか。


「何でキラリがゾンビ化してるんだ? それにこの首の鎖は......」


 キララはこうなるのを知っていた?

 どう言う事なんだよこれ。

 ゾンビ化するという事は、何かにウイルスが入っていたんだ。


 問題は何故キララがその事を知っていたのか?

 ん? もぐりの医者が居るんだよな?

 そいつらの仕業? 可能性としてそれが一番高いのか。

 いかん。

 あまり時間が無いんだった。


 俺はそれ以上考えるのを辞め、何もせずに部屋を出る。

 太い鎖だったから、無闇に部屋に入らない限り危険は無いだろう。

 そのまま建物を出て、俺が生活していた部屋へ向かった。


 その道中にも誰一人居なかったよ。


 俺の荷物も無事だ。

 その事に安堵しつつ、軽く傷の手当をしてから装備を確認。

 市役所は恐らく戦闘中だと考えられる。


 キラリの事を考えると、死んだ人間がゾンビ化している可能性もあるだろう。

 念の為に対ゾンビ用に、手足にいつもの防具もつけておく。

 防具なんて言ったが、ただの薄い本をテープで巻いた物だけどな。


 これで準備は出来た。

 後は混乱する現場で、如何に早く稲垣を見つけられるかだ。






◇◇◇







 正直な話、俺は工場を出た時から嫌な予感を感じている。

 俺を始末する様に命じた時のキララの表情。

 何かを覚悟した強い意志を俺は感じたんだよ。


 市役所までの道は、多くの戦闘の跡が残っていた。

 ゾンビの損傷が打撃や拳銃よりもかなり激しい。


「まさか機関銃とか持ってるのか?」


 ゾンビの身体に残る銃創は、複数の穴が空いていたんだ。

 散弾銃よりも穴が大きく数が多い。

 となると連射が可能な銃を所持している事になる。


 こんな兵器じみたものを所持しているなら、普通に都市を制圧できたんじゃないか?

 とは思ったんだが、銃の数が少ないのかもな。それに弾薬も必要だし。

 今回は虎の子を出して来たんだろうな。


 色々と考えながらも俺は慎重に市役所へ向け進む。


 市役所に近づくにつれて、焦げ臭い匂いが強くなってくる。

 もしかして? と思い建物が見える位置まで急いだ。


「おいおい。火を着けたのか⁉」


 市役所は入り口部分から炎が噴き出すほど燃えている。

 明らかに人為的に熾された物だろう。

 その燃える火が周囲のゾンビを集めても居る。


 俺は急いだよ。

 この逃げる事を考えない、作戦とも言えない狂気を感じる行動。

 明らかにあのウイルスの影響だろう。


 出入り口の殆んどは使えそうも無いが、俺は自分が襲撃に参加した際の地図が頭に入っている。

 侵入するなら脱出に使うはずだったあそこしかない!

 俺はゾンビをいなしながら、その場所へ走る。


 もう間もなく扉に手が届く。

 その時。




ドガァアアアア―――ン!!




 凄まじい爆発音が周囲に響いたんだ。

 その直後、熱風が俺を襲う。


 もう必死で建物の陰に転がり込むしか無かった。


ガシャ―――ン!


 上から瓦礫の様な物が落ちて来る。 

 俺のすぐ近くにも落ちて来て、此処で生き埋めになる事も覚悟したんだ。

 奇跡的に無事だったんだけどな。


 辺りは土煙で覆われ、下手に動くのは危険だった。

 周囲が見えない状況で、ゾンビに襲われたら危険すぎるし。

 俺はじっと煙が晴れるのを待った。


 救いだったのは、周辺に高い建物がある為、吹き降ろしの風が強かった事。

 完全に晴れるまでは行かないが、比較的早く視界は確保出来たんだ。


「嘘だろ⁉ 何を使ったらこんな事になるんだよ!」


 5階建ての市役所は、2階部分から上が吹き飛んでいたんだ。

 俺は爆弾などの知識は無いので、こんな想像は出来なかったんだよ。

 

 キララの安否など、どうでも良い。

 稲垣は? アイツは何処に居るんだ?


 俺は必死で瓦礫を退けるが、もう俺1人で捜索できる状況じゃない。

 何とか1階の出入り口付近まで進んだが、中に入る事が出来なかったんだ。

 入り口が瓦礫で完全に塞がれてしまって、重機でもないと取り除けない。


「稲垣ぃ!!! 生きてるなら返事をしてくれぇええ!!!」


 俺は声が出る限り叫び続けた。

 ゾンビが集まろうが関係ない!


 こんなどうしようもない結末は無いだろうよ!

 何で1人の女の狂気に稲垣まで巻き込まれないといけないんだ!


「ウォオオオオオ」


 俺には泣き叫ぶ事しか出来なかったよ。


 

 


 


 

 

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