何が真実なのか?
今回の作戦は、至極単純。
だけどハッキリしているのは、無茶を通す必要がある事だ。
監視を掻い潜り、高木、権藤まで辿り着かなければ失敗。
当然、生死がかかっている。
どこまで内通者であるキラリが、敵の内部情報を得ているのか?
俺は作戦当日になっても不安が拭えなかったよ。
「では事前の打ち合わせ通り、とうまさんは単独で行動してもらいます」
どこまで信用されているのか分からないが、俺は撹乱を主として作戦に参加するんだよ。
敵の本丸にはカズヤ君達、公安警察が突入する。
まぁ俺は部外者だから、そこは任せたいので異論は無い。
現在、高崎市内を移動中。
事前に打ち合わせたルート上に敵はいない。
巡回のルートを事前に把握しているが、情報に誤りは無かった様だ。
俺はこのまま敵本部から離れた場所で騒ぎを起こす。
出来ればゾンビを誘導して、敵にぶつけたいところ。
「さぁ。ここらで始めようか」
ヒュ―――ン!
バァ―――ン!
俺はロケット花火をセットし、空に向かって打ち上げる。
撹乱するにあたり、俺の意見を採用する事になったんだ。
1番目立つしな。花火が手に入るかが問題だったが、運良くマンション上階の一室で見つかったらしい。
無ければ連絡用の照明弾を、使う必要があったので助かったよ。
権藤なら照明弾でこちらの正体が分かるだろうし。
響いた破裂音は、ゾンビの集団と巡回の男達を呼び寄せた。
一体何処に隠れていたのか、至る所からゾンビが出てくる。
こちらに向かってくる男達の足止めも出来ているし、この場所での仕事は成功だな。
俺はここで準備していたロケット花火に着火。
ヒューン! ヒューン! ヒューン!
パァーン! パァーン! パァーン!
発射された花火が男達のいる付近で破裂。
その音で大量のゾンビがそちらへ向かう。
それを確認した俺は直ぐに移動を開始。
次の作戦ポイントへ指定されたルートを進む。
ここまで順調だと、逆に不安なんだよな。
俺は自分の感覚を信じ、周囲を探る事を怠らなかった。
すると......おかしい。
本来なら公安の部隊を援護するはずの人員の姿を確認。
これがただの監視なら、俺が信用されて無いだけだが。
あまり不自然な行動は出来ないので、ルートを守りつつ進み続けたんだ。
◇◇◇
俺は次のポイントでも同様に花火を打ち上げ、敵グループの足止めを成功させた。
そろそろ本隊が敵本部へ突入を開始したはず。
これだけ騒げば権藤の部下以外は浮き足立っていると思う。
所詮は訓練も受けていない素人だしな。
ゾンビに囲まれた敵グループも無事では済まないと思うし。
自分で誘導しながら、エグいやり方を選んだものだ。
監視があるから手は抜けないんだけどな。
明確に敵対されて無い相手だから、思う所がない訳じゃないんだよ。
撹乱が無事に終わったので、最後のポイントへ向かう。
そこは失敗した時、逃げる為に使う抜け道なんだ。
安全に移動出来るようにゾンビの排除が目的。
状況次第で俺も本部へ向かいたいんだけどさ。
監視が俺に張り付いてるから鬱陶しい。
そんな暇があるなら、本隊を手伝えば良いのに。
パァーン! パン! パン!
移動する俺の耳に拳銃の発射音が聞こえる。
時刻は午前1時30分。
予定よりもかなり遅い。
「トラブルか? どうするべきなんだ?」
予定が狂っているなら、失敗の可能性が高い。
なら助けに向かうより退路の確保に動くべきなんだよ。
これが普通の作戦なら。
でも俺が取った選択は、敵本部へ向かう事だった。
嫌な予感がするんだよ。
急に方向を変えた俺の周囲に、監視者達が集まってくる。
行かせない気かよ!
この作戦は何かおかしい。
俺は監視の追跡を巻く為に、ビルやマンションへ入りながら移動する。
本部に近づくに連れ、更に俺の予感が現実になって行くんだ。
侵入者があったはずなのに、警備の人間がそのまま配置されている。
普通なら慌てふためくはずだろ?
どっちだ? どっちが裏切ってる?
俺は市役所正面から突っ込んだ。
その方が警備の動きが狂うはず!
「オラァ!」
一瞬怯む相手をバットで横なぎに払う。
直ぐに応援が来るが遅いっ!
俺は敢えて向かってくる相手へ走る。
そのまま手前へスライディング。
股の下を潜り、急所へナイフを突き立てた。
「ギィヤァアア⁉︎」
俺は振り返らず上階を目指した。
やはり反応が鈍い。
本来、先に侵入があれば、もっと警戒してるだろ?
こんな脆い筈がないんだよ。
一体何なんだこれ?
俺を騙したのか? 意味が分からない。
俺は走りながら今の状況への対応を考える。
どうせこのままなら、俺は捕まる。
そうなれば生きて帰れないだろう。
だけどそのつもりなら、最初から俺を本部へ向かわせたら良かったんだ。
なら何で揺動などさせるのか?
......ん? 前提がおかしいのか?
俺は今の状況を公安警察の仲間割れだと考えていた。
どちらかが裏切り、権藤達へ情報を売った?
いやそれなら動く前に潰せただろ。
あっ⁉︎ 予想外の展開か。
ヤバいな。
思惑無視で突っ走る奴が1人いるじゃん!
俺は囲まれない様に右へ左へ進路を変えながら走る。
いちいち相手にしてられないが、相手も必死。
でも階を上がると、厄介な奴らが出てくる。
ちっ! 警官だ。
格闘は無しだ。接近したら投げられる。
くそっ。流石にプロは違う。
パン!
え? 誰が援護を?
「とうま! そのまま走れ! ここは任された!」
「おまっ......何で此処に⁉︎」
まさかの人物からの援護に、思考が止まりそうになる。
俺は話したい衝動を必死に抑え、前に進む事を優先したんだ。
生きてたよ!
良かった。
本当に良かったよ。稲垣。
稲垣が外部協力者だと知っていたら、別の動きも出来たのに。
個人情報の保護なんていらないっての。
馬鹿のキララを確保したら、絶対後で合流しよう。
気合いの入った俺は、一切止まらず走り続けた。
◇◇◇
情報通りなら、間も無く高木や権藤のいるフロアだ。
「キラリを離しなさい!」
「無駄な抵抗は辞めろ! 全く余計な手間をかけやがって」
俺は声の方へ走ったが、やっぱり居たよ暴走娘が。
アレが高木か?
少し小太りな男が、キララとよく似た女性を羽交締めにしている。
その前で銃を構えるキララ。
それを囲む様に距離をつめる制服警官達。
カズヤ君達は権藤の方か。
選択を迷ってる時間はもう無い。
なら此処はこれしか無いだろ!
「キララ! 目を閉じろ」
パァ―――ン!
激しい閃光がフロアに走る。
俺が作戦終了時に使う筈の閃光弾を撃ったんだ。
パン! パン!
そこに2発の銃声。
「ぐぁああ」
撃ったのはキララだ。
俺は肩を押さえ唸る高木を蹴飛ばし、キラリとキララを確保。
強引に警官の包囲を突破した。
「キララ! このまま妹を連れて走れ! 俺が警官を引きつける」
「わ、わかった!」
俺は急停止し、腰からナイフを抜いて警官へ投げる。
勿論、当たらないが、怯んだ所をバットで殴りつけた。
「貴様! 先にこいつを取り押さえろ!」
パァーン! パァーン!
突然鳴り響く銃声。
俺の目の前で警官が倒れる。
呆気にとられる俺に、声をかけるのはアイツだ。
「全く。詰めが甘いぞ。とうま。変わって無いなぁ」
「ははは。稲垣が何時もタイミング良すぎるんだよ」
「まぁな。積もる話もあるが、時間は無さそうだ」
「ああ。今はとにかく逃げるべ」
俺達のいるフロアへ、次々と足音が近づいて来るんだよ。
俺と稲垣は苦笑いした後、一緒に駆け出した。
持つべきものは、やっぱりずっ友だ
稲垣は俺を誘導する様に前を走る。
どうしよう。キララ達が気になるよ。
「とうま! 俺の連れが、さっきの子達を保護してるはずだ! だから気にせず走れ!」
「了解だ!」
全く。ヒーローかよ。
俺の考えなんて、丸わかりなんだよなぁ。
どうしても顔のニヤケが治らん。
稲垣は俺の知らないルートで市役所を出ると、そのまま待機していた車へ向かう。
俺も考える事を辞めて、それに続いたんだ。
車の中には知らない男達。
稲垣の知り合いみたいだな。
車内は未だ緊迫した空気だから、俺も喋らず静かにする。
何処へ向かうんだろう?
車は高崎市の外へ進路をとる。
そしてそのまま出入り口へ突っ込んで行った。
バリケードをぶち壊し、ブレーキもかけなかったよ。
俺は絶対顔が引き攣っていたと思う。
心臓はバクバクだよ。
そのまま30分ほど走り続け、到着したのは古ぼけた工場だった。
「悪いなとうま。此処が俺達のアジトなんだ」
「そうか。ちゃんと色々聞かせてくれるんだろ?」
「ああ。その前にご対面があるけどな」
「そうだな。ちょっとあのアホに説教しないと」
車は敷地内へ入り、シャッターの閉まった建物の前で止まる。
さて。
どう言う事か、聞かせて貰おうか―――




