表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/151

争い始める人々と逃げる俺達

 朝になって確認すると、子供達の熱は下がっていた。

 でもエリから、もう1日休ませて欲しいと言われたんだ。

 俺も病み上がりで無理をさせる気は無いので了承。


 特に予定も無いので、ケイコさんと情報共有をする事になった。

 大半は俺も知っている話だったんだが、興味深い話も聞くことが出来た。

 食料不足になり避難所同士が争っていると言うのだ。


「私とメグミは移動しながら、その地域の避難所に寄っていたの。そこで聞いたんだけどね。違う避難所の人達ともめているって話を」

「食料の取り合いかぁ。あのドラマみたいに人間同士で戦うんですかね?」

「ええ。実際に暴力沙汰もあったらしいわ。調達に出た人が襲われたって」

「それはどの辺りで? ケイコさん達の移動距離なら近いんじゃないですか?」

「そうね。バイクで30分程度の距離かしら」


 それを聞いて、俺は危機感を覚える。

 その集団が車などを使用していれば、この葬儀場も安全とは言えない。

 今日のうちに準備を整えて、明日出来るだけ早い時間に出発するべきだろう。


 俺の考えをケイコさん含めリーダ-にも伝え、動ける人間で荷物の積み込みを行った。

 燃料は放置車両から拝借。でも車にあまりスぺ-スは無い。

 なので燃料を入れたタンクは、バイクの後ろに積んでもらう事に。


 食料とかその他物資は、俺の車で運ぶから文句は出なかったけどな。

 こう言った準備も人数が多いとあまり時間が掛からず終了。

 そこで余った時間で、近辺に探索に出る事にした。


「なら私がバイクに乗せて行くわよ。何かあっても逃げやすいでしょ?」

「助かります。じゃあ行きましょうか」






◇◇◇





 ......どうしよう。

 バイクの後ろに乗ったのは良いけど、女性に掴まって良いんだろうか?


「どうしたの? ほら此処に持つところあるでしょ?」

「え? あ、ああ。此処を持てばいいんですね」


 あはは。シ-トにベルトみたいな物が付いてた。

 邪な考えを持った俺が恥ずかしすぎる。


ブロロロロ。


 身体に風を受けながら、飛ばされないように耐える俺。

 バイク乗った事無いから、落ちそうだし怖いし寒い。

 夏なら気持ちいいかも知れないけど、今は冬だし風も冷たいんだよ。


「ねぇ! どの辺りまで行く?」

「こ、この辺で大丈夫です!」


 もうね。1分でも早く止めて欲しかったんだ。

 普通の住宅なら無理なく入れると思うし。


 俺とケイコさんはバイクを適当な電柱の陰に止め、近辺の探索に歩いて向かう。

 何軒か回って少量のお米やカップ麺などを手に入れた。

 しかしこの探索中、ガラの悪い集団を見つけたんだ。

 ゾンビを警戒していたので、見つかる前に隠れる事が出来たよ。


「ケイコさん。直ぐに此処を離れましょう」

「そうね。あの連中あまり素行が良く無さそう」


 俺とケイコさんは静かに距離を取る。

 でもその際に、集団の話す声を聞いた。


「おっかしいなぁ。バイクの音聞いたんだけど」

「それ絶対子供連れのバイクだろ? まだこの辺りに居たんだな」

「バイクはやるよ。女は俺がもらう。子供はまぁ......」


 ケイコさんも聞こえたようで表情が硬い。

 やっぱりバイクは音が大きいから目立つよな。

 帰りは押して行った方が良いだろう。


 何とかバイクまで戻り、エンジンはかけずに二人で押して帰った。

 もう明日出発とか言ってる場合じゃない。

 戻ったら直ぐにでも葬儀場を出た方が良い。






◇◇◇





 俺とケイコさんは無事に葬儀場へ到着。

 エリ達に話をし、急いで皆を車へ乗せてもらう。

 病み上がりの子には申し訳ないが。


 子供達が車に乗った事を確認し、出入り口の車両を退かす。

 そして俺の車が先に出て、ケイコさんのバイクがそれに続いた。

 ルートは決めていたが、あの連中と距離を取りたいので変更。


 もう速度は出せるだけ出して、先を急いだんだ。

 と言っても重量オ-バ-のワゴン車だから、時速60キロが限界なんだけどな。

 今いる近辺は比較的道幅が広いので、ゾンビが出て来ても問題ない。


 そのまま暫く走ると、中央分離帯のある4車線道路に出た。

 この道路は分離帯に網目のフェンスがあって、交差点以外は反転出来ないんだ。

 しかし事故車両が多い。それは反対車線も同様だ。

 パニック時に一斉に避難して襲われたのかも知れないな。


 そんな事を考えながら少しスピ-ドを落とし、放置車両を縫うように走行する。

 よそ見して事故とかシャレにならないからな。

 たまにゾンビの姿も見るが、襲われる前に通過出来ている。


 バックミラ-で後ろを確認すると、ケイコさんも巧くゾンビを避けているようだ。

 

「あそこに人が居る!」「ホントだ!」「車に乗ってるね」


 車内で数人の子供が叫ぶ。

 念の為に窓をカ-テンで閉めていたんだけど、コッソリ覗いていた様だ。


 それを聞いて俺に緊張が走る。

 何処だ? 何処に居る?

 見つけた!


 はっきりとは見えなかったが、ドアミラ-に反対車線で動く車両あり。

 今の所、距離はだいぶ離れている。

 すると後方を走っていたケイコさんがバイクを加速。

 運転席の横まで来て、何かを叫んでいる。


 直ぐに運転席の窓を下す。


「どうしました!?」

「私達を追って来るつもりよ! 急いで逃げないと!」

「分かりました! 出来ればケイコさんが先に行ってください!」

「わかったわ。隠れる場所があれば、そこに入るから!」


 ケイコさんはそう言った後、加速して車の前へ出る。

 俺もアクセルを深く踏み込み、バイクを見失わないように続いた。

 追って来るにしても、あの辺りは暫く分離帯に隙間は無かった。


 追いつかれる前に姿を隠せばやり過ごせるはず。

 必死に運転しつつ、バックミラ-を何度も確認。

 今の所相手の車は見えない。


 ヤバい。ケイコさんが早すぎる。

 ん? 今バイクが曲がった?

 豆粒にしか見えないぐらい離されてしまったんだが、前方のバイクが道路を外れた様に見えたんだ。


 俺はその地点へ向かって急ぐ。

 するとケイコさんがバイクを降りて、こちらに手を振っているのが見えた。

 そして腕を使って方向を示し、走って何処かへ行った。


「あそこを曲がれって事か」


 ケイコさんが居た場所は、丁度歩道が切れていた。

 俺は出来るだけ速度を落とし、ハンドルを左に切りながら切れ目へ車を突っ込む。

 すると数メ-トル奥に、倉庫の様な建物が見える。


 ケイコさんは建物の出入り口にある鉄の門を動かし、車一台分のスぺ-スを空けてくれた。

 俺はそのまま車を中へ入れ、外から見えない位置に車両を停車。

 直ぐに運転席を降り、ケイコさんを手伝う為に入口へ走る。


 丁度ケイコさんがバイクを入れるタイミングだったので、俺は鉄の門を動かして閉めてから車へ戻る。


「はぁはぁ。よくこんな場所見つけましたね。車なら見落としてますよ」

「私もたまたま見えたのよ。一旦行き過ぎて戻ったわ。多分ここなら見つからないと思う」

「ですね。まだ追いつかれて無いですし。しかし此処は倉庫ですよね」

「うーん。見た感じはそうよね。でも建物の中は入れないかも。ほらシャッターが閉まってるし」


 落ち着いて敷地内を見ると、シャッターが下りた場所が電車のホ-ムの様になっている。

 そこに均等な幅で白線が引いてあるので、荷物の受け渡しをする場所だろう。

 という事は中に物が置いてある可能性が高い。


 そう思って建物の周囲を確認に回る。

 駄目元でシャッターを上げてみるも動かない。

 なので扉を1つ1つ確認していく。


 しかしどの扉も鍵が閉まっていて開かない。

 扉のピッキングは出来ないし、壊せるような道具も無い。

 もう諦めようか。そう思っていた時。


「きゃあ! こっちに来るな!」


 ⁉ その声の方向を見ると、1体のゾンビが足を引き摺るように歩いているのが見えた。

 ゾンビが向かっているのは子供達が居る車だ!

 速度が遅いのが幸いだが、何人かの子供が恐怖で立ちすくんでいる。

 

 俺も武器は持っていないが、ゾンビ目掛けてダッシュ!


 その勢いのまま、ゾンビの胴体へ飛び蹴りを放つ。

 ゾンビはその場で倒れるが、動き自体はまだ止まっていない。

 ああ。ちょっと失敗だ。

 ズボンに変な汁が飛び散った。


 夏が暑かったし、ゾンビの身体が脆いんだよな。冬でも臭いし。

 這いずるゾンビの頭を、何度も踏みつけ頭を潰す。

 それでも動くから不思議だよなぁ。


 もう噛まれる心配は無いが、念の為に腕も折っておく。

 体液も出来るだけ避けてるし、ズボンは後で履き替えて捨てる。

 靴は勿体ないから洗うけどな。

 

「ふぅ。コイツ何処から出て来たんだ?」


 あっ⁉ もしかしてコイツって警備員?


 入って来た門の方を見ると小さな小屋がある。

 なら持ってるかも?

 俺はゾンビの服を探る。

 おほほ。あった!

 これは自動販売機のパタ-ンやで!


 ニコニコ顔で皆のいる方へ振り返る俺。

 え? どうした?

 ヒソヒソしながら遠巻きに見るの辞めて!


「えっと。皆どうした?」

「とうまさんさぁ。ゾンビと戦ってる時、笑ってたんだよ。何時もそうなの?」

「え⁉ 俺、必死でしたよ⁉ 今笑ってるのは、これを見つけたからで」


 俺はそう言って皆に鍵の束を見せる。

 あちゃ~。ドン引きされてるっぽい。

 普段なら、ちびっ子が走って来るはずなのに。

 トホホ。


 俺は皆に近づくのは辞め、出入り口から見えない場所の扉へ向かった。

 

カチャリ。


 何本か試すと扉の鍵は開く。

 多分本当は警報でも鳴ると思う。今は電気が止まってるから鳴らないけど。

 そのまま中へ入ると、のれんの様なビニ-ルが垂れ下がっている。

 それを押しのけ更に進むと、だだっ広いスぺ-スがあり、大きな棚が整然と並んでいた。

 

 高さは俺の身長の5倍ぐらい。

 普通なら届かない位置にも、ダンボ-ルが置かれているのが分かる。

 これが食品なら最高だな。それにこれだけ広いなら、ここで寝泊まりも出来そうだし。

 そんな事を考えながら、倉庫内の安全確認をする。

 ラックの後ろは見えないので、慎重に歩いて一周。


 ゾンビの姿は無し。

 最低でも今日、明日はこの場所から動かない方が良いだろう。

 俺は皆を呼びに戻り中へ案内した。


 皆が入った後、手分けしてダンボ-ルを調べて回る。

 隅の方にリフトが数台あったが、残念ながらバッテリ-が上がっていた。

 まぁ登れなくも無いんだけど、一番上とか取れないよ。


「あ! ポテチ!」「こっちのクッキ-あるよ!」「これお水?」


 そんな子供達の声が聞こえる。

 まだ天は俺達を見放していない様だ―――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ