異世界から故郷(ふるさと)へ。(4月17日)
日比谷花壇によれば、ユスラウメ。
花言葉は『ノスタルジー』です。
https://www.hibiyakadan.com/hanakotoba/m04.html
『異世界から故郷へ』
そう書き始めた手紙は、地球にいる家族へのものだった。
別に、これを書いたところで、皆の所まで届けられるわけじゃない。
それでも書かずにいられなかったのは、いよいよ明日に迫ってきたからなんだと思う。
オレが異世界に来たのは中二の夏で、もう三年も前の事になる。
ラノベでよくある勇者召喚ってやつで、まぁ主人公最強系の作品を、適当に思い浮かべてもらえれば問題はない。
俺の場合はユスラ、俺を召喚した姫巫女さんだけで、特にハーレムは作らなかったけどな。
普通にオッサンとか、パーティーメンバーにいたし。
まぁ、三年かけて魔王を倒し、平和が戻ってきたというわけさ。
戦勝パレードも終わって、戦時中から婚約してたユスラとの結婚式も、いよいよ明日だ。
だから幸せなのは幸せなんだけど……その日が近づくにつれ、寂しくもなってきた。
独身が終わるとか、恋人気分じゃいられなくなるとか、そういうのも有るけどさ。
やっぱり、両親に見せたかったなって、思うんだよ。
突然いなくなっちゃったから、心配させてるだろうし……もう諦めてるかも知れないけど。
父さん、母さん、妹の小梅、一緒にバカやったりしてた友人たち。
遠方に住んでたから、中々会えなかったけど、どっちの爺ちゃん婆ちゃんも優しかった。
みんなに向けて、これまでの事を書き綴っていく。本当に、色々有った。
楽しかったこと、悔しかったこと、辛かったこと、怖かったこと。そして、嬉しかったこと。
本当に色々有った三年間だった。
みんなも、この三年間は、きっと色んな事が有っただろう。
父さんは、禁煙に成功しただろうか。母さんは、今でも髪を染めたりしてるだろうか。
小梅は、彼氏が出来たりしただろうか。彼女欲しいと一緒に嘆いてたやつらにも、彼女ができただろうか。
爺ちゃん婆ちゃんは、今でも健康に暮らしてるだろうか。
書いても書いても書き終わらない手紙は、決して皆に届く事はない。
したがって、それらの事が返信される事もない。
それでも、懐かしい日々やその延長線を想って、手紙を書き綴っていく。
無意味だけど、意味があると思うから。
きっと、これからも、地球の事を考えては寂しくなるだろう。
皆の事を想っては、泣きたくなる日も有るかも知れない。
そう、今この瞬間のように。
だけど、それでも、オレは召喚されて良かったと思ってる。
そうじゃなかったら、ユスラとは絶対に会えなかった訳だからさ。
たまには、後ろを振り向く日が有ったって良い。
立ち止まる時が有っても良いだろう。
だけど、それだけじゃ終わらない。
後ろ髪をひかれつつでも、前に向かって生きていく。
だから。
やっと書き上げた分厚い手紙を、オレは鍵のかかる引き出しにしまった。
こんなもの、ユスラに見せる訳にはいかないからな。
そういう気分の時に、読み返して過去を想う。
それだけの為に、置いておこうと思うんだ。
いよいよ、明日。とうとう、明日。
ユスラの笑顔を思い浮かべると、ほんの少しだけ、この寂しさも無くなっていくような気がした。
Wikipediaとか見て、色々と考えましたが、正直難産でした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%A1




