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神様からのいらない贈物  作者: ケンケン
夏の出会い
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第8話

 八月も終わりが近づいてるそんなある日、真は街の一角で茫然と立ち尽くしていた。


 「何でこんなことになった……」


 太陽が真上あたりに照りつける中呟いた独り言は流れる風にさらわれてすぐにかき消される。

 時間は正午になろうかと言う位の時間。

 真の今いる場所は良く人との待ち合わせによく利用される場所で、そして今真は人と待ち合わせしているところなのだ。

 まあ、待ち合わせの目印となっている場所の傍からは離れた場所で待っているのではあるが。

 その顔は変な汗を流しながら引き攣った顔をしている。

 よくよく見ればそれなりにお洒落な格好でなのではあるのだが、いかんせんモデルとしてはいささか不釣合いな格好になってしまっている。

 

 「はぁー」


 何回目の溜息だろう。もう数えるのもイヤになるほど溜息をついているのだ。

 待ち合わせをしている男女が数人が待ち合わせの人が来たのであろう、次々といなくなっていくが、目印の傍から人がいなくなることはなく次から次に人は絶える事はない。

 自分の周りに女性が近づいてこないよう気を張り巡らせながら周りを見渡している。


 そもそもなんで真がこんな所にいるのかというと、例には漏れず待ち合わせをしているからだ。

 気を張りながらも待ち合わせしている人物を待っている。

 だが、目当ての人はまだ来るわけがないのだが。なぜかと言うと実は真は待ち合わせの時間よりも一時間も早くにこの場所にいたからだ。

 なんでこんな早くにきてしまったのかというと、今日は女性と待ち合わせしているのだが、女性と待ち合わせすることなど人生で初の体験なのだ。

 何をどうしていいのかもわからず極度の緊張のあまりこんな時間に来てしまったというわけなのだ。

 

 三十分位忙しなく周りを気にしているとある方向からちょっとした喧騒が聞こえてきた。

 そちらのほうに目を向けると一人の女性が歩いており、待ち合わせをしている人達の視線を一身に集めている。

 視線を送っている人達はみな顔を緩ませその女性に見とれているようだ。男性はなめるような目つきでその女性を見ては茫然とし、女性は羨望の眼差しでみている。

 歩いてくる女性を見たことのある真は頭が痛くなるような錯覚に

とらわれ、頭を抱えて溜息をついてしまう。


 そこに歩いてきていたのは蒼空だったからだ。

 その格好は魅力的で、白いミニのワンピース着ており、下はジーンズのホットパンツ、そしてその下は黒いオーバーニーソである。

 ただでさえ顔が魅力的でスタイルもよくそれで格好までともなると見とれてしまうのも無理がないであろう。

 特に周りにいる男性たちはその格好に釘付けだ。彼女といるであろう男性達は彼女に耳を引っ張られたり、頭を叩かれたりと様々な

非難を浴びている。

 どんどん近づいてくる蒼空。近づく距離に対比してどんどん顔を曇らせていく真。

 

 「来るの早いんだね真?」


 真の目の前で止まり確認してくる蒼空。それを見ていた周りの人達、特に男性からは痛いほどの視線感じる真。

 そんなことなどまるで気にしてない蒼空を見て溜息を一つ吐く。


 (本当に何でこんなことになったんだ……)


 空を仰ぎ途方に暮れる真。目の前にある光り輝く太陽がいつも以上にまぶしく感じながらもしみじみと思い出す真であった。





 遡る事、三日ほど前。

 真は自分の部屋でのんびりといつも通りの一日を過ごしていた。


 夕方にそろそろさしかかろうかという時間に部屋のインターホンが

鳴った。

 ドワホンで来客者の確認をすると、そこにいたのは慧だった。

 いつもであれば来る前に連絡をしてから来るはずの慧に疑問を

抱きつつも、ドワホン越しに声をかける。


 「どうしたんだ慧」


 「いや、近くに来たからちょっと寄ってみただけなんだけど、今大丈夫か?」


 「大丈夫だぞ」


 オートロックの解除をして慧を招き入れる真。

 数分後部屋の階に上がってきた慧が入ってきた。


 「ただいまー」


 いつもどうりの挨拶をして、勝手知ったる何とやらで自分のポジションに納まる慧。


 「急にどうしたんだ?」


 普段とは違う慧を感じ取った真は警戒心を湛えた顔で慧に問いかける。

 慧の顔はあからさまにおかしな笑顔で真を見ている。

 そんな顔を見れは警戒するのはおかしなことではないだろう。


 「なんか、あからさまに嫌そうな顔してるけど……」


 「自分の顔を見てから言うんだな。気持ち悪いくらい何か企んでるような笑顔だぞ」


 「マジ!?」


 自分の顔を触り表情の違いを確認しようとする慧。

 そんな事をしてもわかるはずはないのだ。なぜならば……


 「嘘だよ、バーカ。けど何か企んでるのはこれでわかったな」


 人が悪そうな笑みを慧に向ける真。

 どう見てもその顔は悪役顔です、と言わんばかりだ。

 

 「嵌めたなお前! どう見てもおまえのほうが企んでるような

顔だろうが」


 「うるさいよ。おまえが先に何か企んできたんだろうが!」


 「……」


 言い当てられたのであろう、何も言えなくなってしまう慧。

 そんな慧と見て真は盛大な溜息をこぼす。

 どう考えても碌でもないことだろうと予想をしたからだ。

 長いつきあいだ、顔の変化一つで大体わかってしまうところが幼馴染と言うのは納得と言ったところだろう。


 「でっ? 何の用があってきたんだ?」


 「……そこまでわかっているなら単刀直入に言うわ。おまえデートしてみる気はないか?」


 「はっ??」


 何を言っているのかわからず、目をパチクリさせてしまう真。

 実際、いきなりそんな事を言われればほとんどの人は真と同じようになってしまうだろう。

 

 「おまえ、前に言ったこと覚えてないのか?」

 

 「……何が?」


 「二人で出かけてみればどうかって言ったろ?」


 「…………そういえばそんなことも言っていたな」


 すっかり忘れていたのだろう、言われてすぐには思い出せなかったのだが何とか覚えていたようだ。

 実のところ、あんまり実現して欲しくなかったので忘れたかったのだが、言われて思い出したところ、少しは考えていたのかもしれない。

 

 「それで、そろそろどうかなと思って今日は来たんだけど」


 「言ってたことは思い出したけど、なんで急にそんなことそんな事を言い出したのか俺にはさっぱりわからないいんだけど……」


 「まあ、急なのは否定しないわ。けど、あれから日にちも経ってるし、そろそろどうかなと思って今日来たんだが」


 「おまえの提案には悪意しか感じられないのはなぜなんだろうな」


 怪訝な瞳で慧を睨みつける真。

 昔から慧の突然言ってくることには碌なことにはならないことしか思い出がない。

 二、三回程度なら大した問題ではないが、言うことの九割が碌なことになっていないのだから睨みつけるのは仕方がないことであろう。

 何があったのかはあまりにも多すぎるのでこの話しは

割愛させてもらおう。


 「ま、まあとりあえず話しだけでも聞いてくれよ、なっ?」


 「聞くだけ聞いてやるから話してみろ」


 溜息を一つ吐き、続きを促す真。その言葉に安心したのか笑顔で続きを話そうとする慧。

 

 「まあ、話しは単純なんだけどな。蒼空ちゃんと一日二人で遊んでもらうだけなんだけどな」


 「却下」


 「それでおまえの変化を知ろうと思うんだよ」


 「却下!」


 「もう、蒼空ちゃんには約束は取り付けてあるから、後はおまえが行くって言ってくれればすぐにでもいけるぞ」


 「却下だ!!」


 「そんな頭ごなしに否定しなくてもいいだろうが」


 「否定もするわ!! 途中でなんかあったらどうするんだよ。気絶なんかしたら蒼空さんに迷惑かけるだけだろうが」


 「そこはちゃんと俺等のの方でフォローするから」


 「俺等ぁ……?」


 あきらかにしまったと言う顔で口を押さえる慧。

 そんな行動を見た真は更に目つきがきつくなる。そして、あきらかに機嫌が悪くなってきたのだろう拳を握り締めていた。


 「そこのところしっかり説明してくれるんだろうな?」


 「あ、ああ」


 真の怒気を感じ取ったのだろう、あきらかに恐怖の表情を浮かべ体を震わせている。

 短気と言うこともないのではあるが、どうしても慧に対しては怒りのメーターが早くなる真。

 大抵、面白がっていることが多い慧だからこそそうなってしまうのは致し方ないところだ。

 真面目にしていればそんなことはあまりないのだが、真の事に対してはなぜか面白がって話しもしてくることが普通なっている。

 今までも何回か怒らせては叩かれたり、怒鳴られたりしているのだがなぜか懲りずに繰り返しており、学習することがないのである。

 

 「と、とりあえず、落ち着け。なっ!」


 「話し聞いて判断するから早く話せ」


 「わ、わかった」


 そう言って説明する慧。

 まずは、フォローをすると言っていた人物は慧と七海の事であった。実際のところ蒼空に約束を取り付けるのに梓も絡んではいるらしいのだが、当日は来ないらしい。

 そして、当日は、まあ今のところは出かける予定ではあるが、後ろから見守る予定になっている。

 なにかあれば慧と七海が対応してくれるらしい。

 話しを聞いていた真はふと疑問に思う。

 慧はまだわかるのだが、なぜ七海が一緒になって対応するのだろうと思い、慧にそのことを聞いてみることに。

 

 聞いた真は驚くことになる。

 なんと、七海は真の病気の事を知っていると聞いて思わず慧を二度見してしまう。


 「何で知ってるんだ? もしかしておまえ教えたのか?」


 何で知っているかと言うよりも慧が教えたんじゃないかという疑問にが勝ったようだ。

 かなりの勢いで慧を問い詰める真。


 あまり知られたくない真の病気、特に異性にはあまり知られたくないと常々思っているのだ。

 小学校の頃に発病してからというもの中学、高校と過ごしてきたが、異性であまり知っているものはいない。

 小学校の頃は幾度となく気絶してた、しかし、中学や高校ではしっかりと対策しており知られることはなく過ごしてきたのだ。

 

 なぜ、ここまで知られるのを嫌うのか。それは単純な事で、小学校の時に苛められていたからに他ならない。

 小学校の時なんかはそんな些細なことで苛めなどはよくあることで、それを体験してきた苦い記憶があるから嫌っているのだ。

 まあ、その体験が格闘技を習う切欠でもあり、格闘技が上達する糧になったのだから悪いことばかりではない。

 それがあったとしても苦い記憶には変わらないのではあるが。


 「お、教えてないって。落ち着けって」


 「落ち着けるわけないだろうが! じゃあ何で知ってるのよ?」


 更に食って掛かる真を宥めようとするがその程度では無理のようだ。

 

 「教えるから本当に落ち着けよ!」


 「……わかった」


 しぶしぶであるが納得した真をみて慧も息を吐き出す。慧の表情はかなりの安堵の表情を浮かべている。

 息を吐き呼吸を整える慧。


 「実は――」


 慧に教えてもらい真の顔が面食らって口を開けた状態のままぽかんとしている。

 なぜかと言うと聞いた話しが予想だにしていなかったからだ。

 話した慧はしっかりと真を見据え、今までにないくらいの真面目な顔だった。

 

 なぜそうなってるのかというと、七海は小学校の頃よく一緒のクラスになったことのある知っている人物だったと言うことを聞かされたからだ。

 実は七海は小学校六年生になる前に転校して行った、旧姓、本名七海ほんなななみであったのだ。

 その事を聞いた真は聞いていた初めは疑っていたのだが、徐々に思い出したのであろう最後のほうでは先程の表情になっていた。


 転校した理由は苗字が変わっているのでわかるとおり家庭の事情と言うやつだ。

 その後は会うこともなく八年後の現在、全くと言っていいほど昔の面影は残っていなかったのだから真が驚くのは仕方がないところであろう。

 

 実際、慧も一番最初に会ったときは気がつかなかったのだ。

 話しかけられようやく気がついたレベルなのだ。

 なぜ、慧が今まで黙っていたのかと言うと単純に面白がってと言うわけではなく、七海のほうから口止めされていたからに他ならない。

 そこには理由がありなぜかと言うと、小学校の頃苛められた真をよく助けてくれたり庇ったりしていたのは七海だったのだが、なぜそんな事をしてくれていたかと言うのも理由がある。


 七海は真を初めて気絶させた異性であったからだ。

 それを起こしたとき場所は小学校の教室で帰りのHRの時だったのだ。

 ようは、苛められる切欠を作ってしまったのが七海なのである。

 その時の罪悪感があったのだろう、頑なに真に会うことを拒否していたのだ。


 大学に入って一年が過ぎ夏休みに入った時に真の事故により眼の力の覚醒である。それを慧は利用して七海を説得し、真と対面させたのであった。

 七海は七海で初対面を装い、真は何も知らずに久しぶりの対面を果たしたのだが、真の態度をみて言い出す切欠がなかったのである。

 次にあった時教えてやろうと思っていた慧であったが、梓と七海を連れて真の家に行ったのだがその時は蒼空が真の家にいると言う事件があったので慧も言うタイミングを見失ってしまいずるずると引き延ばして

しまったのだ。


 何で慧はこのタイミングで教えたのも訳があった。

 真の勢いと恐怖心から教えてしまった感は否めないのだが、真に七海の事を今ではどう思っているのかを知りたかったからである。

 慧の予想ではあまり気にしては無いと思っているのだがはっきりと聞いたわけではないので自信はもててはいなかった。

 だから今こそ聞いてみたかったというわけだ。


 当の真は驚きのあまり口をパクパクしてるだけで言葉が

出てこないようだ。

 真がどう思っているのか聞きたいのだが、なかなか話せる状況にはならないのでしばらく待つことにする慧。

 

 数分後。


 「お、おまえ、それ本当のことなのか?」


 「ああ」


 「何で言わなかったのよ?」


 「それは七海に止められたからって言ったよな……」


 どうみてもいつも以上の呆れの成分の含み、まるで残念な人でも見るような顔だ。

 あまりのショックで所々説明したところが抜け落ちているようだ。


 「とりあえず混乱してるのはわかったから結論だけでも教えてくれ」


 「うーん……。あんまり気にしたことはないかな。子供の頃だったし、俺の病気の事なんて子供にわかるわけないじゃん。それにどちらかと言うと助けてもらって言う意識が強いから怨むとかよりは、助けてもらって感謝してるって感じの方がしっくりくるかな」


 「……そうか」


 真の答えに嬉しそうに微笑んでいる慧。

 実際のところ真の答えを聞くまでは不安で仕方なかったのだが、満足のいく答えが聞けて安心の微笑みだ。


 「今度会ったときは七海の不安を解消してやれよ。話し聞いたときは昔の事気にしてて結構思いつめていたから……」


 「わかってるって」


 「頼んだぞ」


 話しもひと段落し、立ち上がりコップと飲み物をテーブルに

持ってくる真。

 コップに入れた飲み物を飲み一息ついたところで急に何かを思い出したのであろう、声を上げる慧。

 

 「落ち着いてる場合じゃないわ!」


 「急にどうしたのよ? ビックリしたわぁ」


 「七海の話しがメインじゃないだろ!? 出かけるのどうするんだよ?」


 「……ああ。そういえばそんな事話してたっけな」


 「『ああ』じゃねえわ! とりあえずどうするか今この場で決めてくれ」


 「いきなりだな、おい」


 「蒼空ちゃんには約束取り付けてあるって言っただろ」


 「そんなことも言ってたな……」


 「で、どうする?」


 「行くわけないだろ」


 考えることもなく即答する真。

 普通に考えればいくことがないのは目に見えてる。しかし、慧はそういうのはわかっていたらしく断られたのにもかかわらず気にする様子がなかった。

 その様子を見ていた真はあまりよくない予感をおぼえる。


 「まあ、そう言うだろうと思っていたんだよなぁ」


 どう見ても悪役が悪いことを考えてるしかないような顔の慧。その顔を見た真はすぐに顔を逸らして違う方向を見てしまった。


 「なあ、真?」


 「何だよ?」


 頑なに顔を向けようとしない真に話しかける慧。

 そんなことも気に留めず話しを進める。


 「おまえ、俺に借りがあったよなぁ?」


 「なっ!?」


 「おまえが行くって言ってくれれば無しにしてもいいんだけどなー」


 「卑怯だぞ!!」


 「ああ、そうだな。俺は卑怯者だな」


 どう考えてもそんなことなど思っていないだろうと思うも、返す言葉がなく押し黙ってしまう真。

 借りは確かに一つあるのだ。真にとってはかなりの大きな借りで確かに感謝はしている。

 しかし、こんなところで出してくるとは思いもよらず動揺してしまう真。

 慧のほうは更に追加の止めを刺してくる。


 「それに、おまえが行ってくれれば七海も少しは気が楽になるんじゃないかなぁ」


 「……」


 「あーあ。七海の悲しむ顔が思い浮かぶわ」


 「…………いく…………」


 「んっ? なんか言ったか?」


 「行くって言ったんだよ!! 行けばいいんだろ行けば!!」


 「行ってくれると信じてたぜ」


 どこの三文芝居の役者だと言わんばかりの慧の演技に溜息しか出てこない真。

 そんなことなど気にもかけていない慧はすぐに予定の説明を始める。


 「実は、もう蒼空ちゃんにはお願いしてあるからいつでもいける状態なんだよ。とりあえずいつがいい? 明日か? 明後日か?」


 「手際よすぎだな、おい」


 「そうかぁ?」


 どう見てもとぼけているのは丸わかりなのだが、諦めるしかないだろう。


 「……もういいわ。とりあえず、明日と明後日は用事あるからそれ以降だな」


 「じゃあ、明々後日な。決定」


 「もう、好きにしてくれ……」


 「わかった。好きにするわ」


 そう言うと携帯を取り出しどこかに連絡してるようだ。

 会話の内容を聞いていると、どうやら連絡の相手は七海のようだ。


 その会話を聞いていくにつれどんどん真の顔が悪くなる。

 時々、真に内容を聞かせないように小声で喋っている時があるが、気にしても仕方がないので諦めることにした。


 「じゃあ、そういうことで明々後日よろしくな」


 通話もおわりいやらしい笑顔で携帯をしまう。


 「とりあえず纏まったわー」


 「何が?」


 「いやいや、明々後日のことだろ?」


 「わかってるって」


 ちょっとした真の反抗だったのだがあまり効果は無かったようだ。

 

 「とりあえず――」


 明々後日をどうするか説明をしてくれたのだが、真にとっては最悪の説明だった。

 予定としてはご飯を食べて、買い物をしてとありふれた内容を教えてくれたのだが、どうもそれだけではないだろうと予想はしている真。

 しかし、決まってしまったことにも取り返しはつかないので、そこは当日自分で何とかするしかないだろうと誓う真であった。


 その後、細かい予定などを聞いてその日はそのまま慧は帰っていった。

 出て行くときに、


 「楽しみにしてるわ」


 と最悪な一言を残して。





 そして話しは冒頭に戻る。


 「まあ、それなりには早く着たけど……」


 そう言うしかないない真。

 実のところ、早めに来たのは慧と七海の指示なので自分の意思は全くなかったりする。

 今日のお出かけはデートなどしたことなどない真の為に、慧と七海の完全プロデュースでほとんどが二人の指示で動いていくと言うわけなのだ。

 なので、今回のデートはほぼと言っても過言ではないくらい真の意思はない。


 「とりあえずどこか行くんでしょ? あんまりこういうところ好きじゃないから……」


 本当に嫌なのだろう、顔を顰め移動を促す蒼空。

 これほどの様々な視線にさらされれば嫌にもなるだろう。

 憧れや羨ましさなど羨望の眼差しは女性達から、下心のある視線などは男性達から送られてきている。

 まあ、ついでなのだが真も視線には晒されいてはいる。

 その視線は全て憎悪や妬みなどの負の視線だけなのだが。

 それを感じ取っている真は蒼空と同じくここに居たくないのは一致していたので、頷きそそくさと移動を開始することに。

 少し歩いたところで


 「とりあえず何処に行くの?」


 「ご飯を、食べに行こうと思うんだけど、大丈夫?」


 「大丈夫」


 行く場所が決まり、その場所に向けて歩み始める二人。

 こうして、苦行の真のデートが幕を開ける。


お読みいただきありがとうございます

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