第9話
なぜこうなったのか自分でも書いていてわからなくなりました。
いつもより若干短くなります。
真は顔のいたるところが引き攣っていた。
現在いるのはちょっとしたカフェテリア形式のお店。そこの椅子に座ったまま動けずにいた。
何がそんなに動けなくなっているのかと言うと、周りに座っている八割方はカップルしかおらず、残り二割も女同士の客しかいないのだ。
早い話がこの店には男性はカップルで来る客以外は全員が女性しかいなかった。
入った当初はそれほど人もいなくまばらだったのだが数分もしないうちのどんどん席が埋まっていき現在の状況が生まれた。
因みに、店は満席で入口のところには列を作って待っている状況だ。
真は今、危険地帯に何も装備もなく歩いているに等しい状況なのである。
カフェテリアなので料理を取りに行こうにも料理をおいてある場所には多くの女性がおりなかなか取りにいけないのだ。
真は今現在かなりの空腹なのだ。普通なら緊張のあまり食べ物など喉を通らないくらいの精神状態と思うだろうがそれは違う。
実は、真の緊張は状態は話しが決まった三日前からすでに始まっており、この三日間は碌にご飯を食べておらず、あまりの張り詰めた心が当日になって壊れたのだ。
早い話が開き直ったと言っても過言ではないのだが。
そして、待ち合わせ場所に行って後悔をし、お店に入って行動することを妨げられてしまいどうすることもできずにいた。
どうしようか考えを巡らせて、溜息をすることしかできなくなってしまった真のお腹が盛大な音を立てて鳴った。
その音は真の向かい側の席に座っている蒼空にも聞こえたらしくきょとんとした顔で真の顔を見つめている。
「そんなにお腹空いたの?」
あまりの音の大きさに恥ずかしくなり俯いてしまう真だったが、蒼空の質問には俯きながらも何とか頷いていた。
「じゃあ、取ってきてあげる。何か欲しい物はある?」
「そ、そんな自分で行きますからいいですよ」
「真。言葉」
「あっ、ごめん」
「わかってくれてるならいい。で、何が欲しい?」
「本当にいいって」
「遠慮はしないでいい。それに、なんか真取りに行きずらそうにしてるから私が取りに行く」
その言葉に真ははっとなり顔を驚愕にそめあげる。
何にそんなに驚いてるのかと言うと、あまり人の事など見ていなそうだなと思っていたのが崩れていったからだ。
「な、なんで、……そうおもっ、たの……」
あまりの動揺に言葉がつかえてしまう。
「うーん……。私が学んでることってそういう事が主だったりするからかな」
「学んでること?」
「居酒屋に行った時に言わなかった?」
「そいえば……」
居酒屋での自己紹介を思い出す真。
覚えていなかったのは、あの時の真は眼の力で一杯一杯だったからに他ならないのだが。
「だからなんとなくわかる」
「そういうもんなんだ」
感動の度合いが強いのかすごい羨望の眼差しをおくっている。
「まあ、その話しはおいといて、取りに言ってくるからなにがいい?」
「じゃあ、お言葉に甘えて適当でいいんで頼みます」
「適当でいいの?」
「いいですよ。お任せします」
「わかった」
席をたち二人分の食事を取りに行く蒼空。
真はお願いしますと声をかけて蒼空を見送る。
そんな二人を遠くの席から見ている視線が二つあることに気がつかない真と蒼空であった。
真と蒼空が待ち合わせをしている場所から少しはなれたところにその二人はいた。
慧と七海である。
「なんか普段着なのにすごい目立ってるな蒼空ちゃん」
「そうだねー。それよりも真の顔のほうがすごいことになってるけどね」
笑いながら真のほうを見ている七海。
慧のほうは蒼空の登場のほうに目を向けている。
どちらも異性のほうに視点を向けている二人。
それは別に興味があるというわけではなく単純に楽しんでいるからに他ならないのだが、その中心にいるのは蒼空ではなく真だ。
慧は、真の事は長い付き合いによりある程度はわかっているので、蒼空の一挙手一投足をみて真がどうな反応をするのか楽しみにしており、七海の真の事をまだまだ知らないところがあるので単純に真の様子を楽しんでいるのである。
「それは初めてなんだから仕方ないだろ」
「それに、前にも思ったんだけど、かけているグラサン? 眼鏡? どっちかわからないけどあれってあんまり真に似合ってないと思うんだけど……」
「それも諦めてくれ」
慧にはそう言うしかなかった。
女性恐怖症のほうは知っている七海ではあるが眼の力までは知ってはいない。
その事はしっかりと真に口止めされているので慧も話すことはない。そこはきちんと真との友情を守っている。
実際は、話そうものならどういうことになるかわかっているからでもあるのだが。
「おっ。移動するみたいだぞ」
「みたいだね」
「じゃあ、後をつけますか」
「そうだね」
真の蒼空の後をいやらしい笑いを浮かべながらつけていく二人。
その後姿からは真を心配する気配など微塵も感じられなかった。
「本当に適当に持ってきたけどこんなのでよかった?」
持ってきた食事を見て真は驚く。何にそんなに驚いているのかと言うと持ってきたのがカレーとラーメン、そしてコーヒーを持ってきたからだ。
持ってくるのはありがたいのだが、どう考えても蒼空が持ってくるイメージなど全くなかった。
「何で、カレーとラーメン?」
「……私が好きだから?」
「なんで疑問系になってるの? そこは普通に好きだからでいいんじゃない?」
「あんまり私もよくわかってない。好き嫌いがないから」
「そうなんだ」
「それで、良く食べるものを持ってきたんだけど駄目だった?」
「駄目ではないけど……なんかイメージが……」
「イメージは他人が決めたもの。私を決めるのは私自信」
まさしく蒼空の言っていることは間違いではないと納得顔になる真。
イメージとは心に浮かべるる物であるがそのものの経験がなければその事柄に対して思う浮かべることはなく、思い浮かべられたとしてもそれはその物に対して思うことであり、本質まで捉えるものではないのだ。
本質そのものを知るにはそのものを実際に見たり、触れたり、感じたりしてわかるものであるので、イメージは考える人の中に間違った知識ではないのではなかろうか。
イメージを持つことは悪いことではないが、いいことではないのも確かであろう。
「言おうとしてることはなんとなくわかるよ。その通りだね」
「わかってくれればいい。とりあえず食べよう」
「そうだね」
その言葉でとりあえず食べることにする二人。
話し合いにより、カレーは真が、ラーメンは蒼空が食べることになった。
二人はこれと言った会話もなく黙々と食べている。
特に真はお腹が減っていたので一心不乱に食べていた。
カレーを一杯だけでは足りなかったようで、蒼空に頼んで今度はラーメンを持ってきて凄まじい勢いで食べつくした。
それを微笑ましそうに蒼空は見みていた。
カレー、ラーメンと食べ終わり満ち足りた表情でお腹をさすっている真。
よほど空腹だったのだろう、食べている間は目の前に座っていた蒼空のことなどすっかり忘れていた。
そのことに気がついたのは食べ終わり満腹感に満ち足りて
いたときだった。
あまり感情を出すことがなかった蒼空が微笑んでいるのをみて驚きもあったが、いままで感じたことのない感情が湧き上がってきておりそれに戸惑いを隠せなかった。
どうしていいかわからず蒼空を見つめるしかできなくなってしまう真。
それを見ていた蒼空も真をみてどうしていいのかわからなくなってしまっているようだ。せっかくの微笑みは一瞬でしかなかった。
「どうしたの?」
「い、いやなんでもない」
「そう、ならいいけど」
「と、とりあえずここは出ようか?」
「そうね」
店を出ることにしたので二人は立ち上がり会計の場所までいく。
ここではなんだかんだしながらも一時間程いた様で他の客もまばらになってきており真でもなんとか出られるようにはなっていた。
そのまま会計を済ませ、店を出て次の場所に向かう。
「見たか!?」
「見た!!」
同じ店の違う場所に座っていた慧と七海は驚きの顔で向き合っていた。
何を見たと言うのは蒼空の微笑である。
二人とも蒼空と接点を持ってからは二回ほどしか話した機会はなかった。その二人も蒼空の微笑には驚いていたのである。
前回、前々回とともにそれなりに長い時間いたのだがここまで表情が変わっている蒼空は見ていなかった。
梓であれば何度も見ているのであろう表情なのだが、二人にとっては初めての事なのだ。
大学でも接点はなかったので蒼空の事などは噂話しだけが先行してしまい人となりを知らなかったのだが、初めて会った時は噂どおりで納得していたのである。
それが今となっては霞んでしまうくらいなのだ。
慧にいたっては熱い視線を送るほどである。
その顔は魔顔といってもさしつかえはないだろう。
「なーに見とれてるのよ」
「悪いかよ」
「その気持ちはわかるけどねー。女の私でも流石にあれはくるものがあるわね」
「そうなのか?」
あの微笑みは間違いなく男にとっては一目ぼれしてもおかしくないレベルなのは間違いないだろう、だが七海までやられてしまうほどと聞かされて蒼空の事を改めなければならないだろう。
そんな事を話していると真と蒼空は店を出るようだ。
伝票を手に持ち立ち上がり会計の方へ歩いていく。
「よし、俺達もでるぞ」
「そうだね」
同じく伝票を持って店を出る準備を始める慧と七海。
真達が会計が終わるのを確認して二人は立ち上がり会計のところへ行くのであった。
店をでた真と蒼空は次の目的地に向けて歩いている。
もちろん何処に行くかは事前に慧から聞いているところに向かっているわけなのだが、行き先は公園である。
定番過ぎるところではあるが、真の事を考えれば仕方のない
ことではある。
暗い映画館は何かあったときにわからなくなるのでNG。ショッピングなんかは真の好みしかわからず、その真の好みもある意味偏りすぎているのでNG。ドライブは免許があっても車というものがなく狭い空間なのでNG。あとは水族館や動物園などもあるが近くにはないのでNG。
となれば公園しか選択肢がなかったのであった。
因みに、食事も広い場所のカフェテリアであったのだが予想に反して人が多かったのは慧にとっても誤算だったのだそこは仕方がないところである。
何故混んでいたのかは、前日から始まったランチフェアのせいであり、仕組んでいたことではないことを慧の名誉の為に説明しておこう。
公園は食事をしていた店から歩いて五分程のところにあり、その間痛いくらい視線に晒されて真は若干げんなりとしていた。
しかし、それはどうしようもないことなので諦めるしかないだろう。
現に蒼空は気にせず黙々と歩いているのだから。
実のところ、蒼空は気にしてないわけではなく慣れてしまっているだけなのだが待ち合わせのときに言っていたようにあまり好ましくはない。
二人はまたもや会話もなく歩いているだけなので公園にはすぐについいてしまう。
今、二人がいる公園は街中にある有名な公園だ。
かなり広く、噴水がありそこの周りには暑さの為か人が集まっており、子供達が噴水を浴びてはしゃいでいる。
他には露天も出ており、かき氷などが売られている。
芝生には日光浴を楽しんでいる人達もチラホラ見えておりのんびりとした空気が流れている。
他にはそこまで大きなものではないが池がありボートに乗っているカップルなんかも見受けられる。
見てもわかるとおり街の人達にとって憩いの場になっているのは見て取れる場所なのである。
そんな場所で何をするでもなくただブラブラと歩いている真と蒼空。
手をつないで歩いていれば間違いなくカップルに見られること間違い無しなのだが、そこは真ができるはずもない。
のんびりと歩いていた二人だが流石に暑かったのであろう、池の傍にある東屋で休憩することにしたようだ。
途中で露天のかき氷を買い東屋にあるベンチに座る蒼空。真はかき氷を手に持ったまま一緒には座らず屋根のあるところで立っていた。
「聞きたいことあるんだけど聞いていい?」
座るとすぐに聞いてきた蒼空。しっかりと真を見据えている。
「何聞きたいの?」
「真の事。見てるとなんか真は女の子と距離をとってるように感じる。前の居酒屋でもそんな感じだったけどどうして?」
蒼空の質問に真はビックリして息が止まりそうになるくらい驚いている。
あまりの観察眼に言葉を失っているようだ。
「な、な、なんでそう思ったの?」
「さっきも言ったと思うけど私が学んでいる心理学は言葉使いとか態度とかで人の心理を読み解いていくのを専攻しているから見ていればわかる」
「…………そっか」
「それで、どうして?」
「あんまり答えたくはないんだけど言わないと駄目かな?」
「できれば話して欲しい」
「逆に聞くけど、どうして知りたいの?」
「なぜそうするか学術的に興味が湧いたから。それにそんな事をしている真にも興味が出てきたからかな」
「そうなんだ……」
真はどうしようか迷っているようだ。
あまり人には知られたくないものだと真は常々思っていた。知られてもいいことなどない、どちらかと言えばからかわれるのがおちだと思っている。
まあ、その一番の筆頭が慧ではあるが。
しかし、心理学を学んでいることは真の病気にもある程度の理解はあるだろうとも思っていた。
真は今でもカウンセリングには通っている。
中学から通っているものの、未だに治る見込みはなく真自身半ば諦めている。
大学に行くに当たりカウンセラーも変わったが、病気は変化など起こらない。
カウンセラーからは今のままでも日常生活は気にしていれば大丈夫だと言われている。それ以外に言われていることもある。
これ以上先に進むには乗り越えていく変化が必要だとも言われていた。
そんな事を思い出しながら目の前の人物に目を向ける真。
自分の中では一瞬の考えであったのが蒼空には一瞬ではなかったようだ。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そう」
蒼空は心配そうに眺めていたが、それに気がついた真は安心させるために笑顔でかえした。
そして、真の中でも何かの決心がついたようだった。
「さっきも言ったけど、あんまり話したいことではないから全部を話せないけどいい?」
「いいよ」
大きく息を吸い込みゆっくり吐き出す。
そして、話しすることを決意する。まあ眼の力の事は話そうとは思ってはいない。
真は語りだす。
「心理学を学んでいればたぶんわかると思うけど、昔の出来事がトラウマで女性恐怖症になっちゃったんだよね。そこまではいいかな?」
頷いて続きを促す蒼空。
「その女性恐怖症の症状としては、基本的な大きなことが一つ、女性に接触したら気絶しちゃうんだよね俺。だからいつもならべく女性に近づかないようにしてるんだよ」
「そういうことだったんだね」
真の言葉を聞き、何か納得しているようだった。
「その事を知ってるのは慧以外では蒼空さんが初めてかな……」
実のところ七海も知っていることなのだがしっかり忘れている真である。
そんな深刻な話をしてるとは露とも思っていない七海。
「なんか二人で話し合ってるみたいだけど、何話しているんだろうね」
「さあな……」
上の空のような感じで相槌をする慧。
感じからして何を話しているのかわかっているような感じであるが七海は突っ込むのを躊躇ってしまう。
その表情は本人は気がついていないようだが、どうも怒っているような呆れているよな曖昧な表情をしているからだ。
下手に声をかけると爆発しそうなしなさそうな感じでどうしていいのか七海には判断できなかった。
実のところ、なぜそんな表情をしているのかは訳がある。
蒼空には今日のデートの事は詳細は詳しく話しておらず、単純に真が会いたがっているとしか伝えていなかった。
実験的な事をしているので内心は怒られるのではないかと思っており、それを暴露しているであろうと予測をたててこの後の事を心配しているだけなのだ。
真の話していることは自分自身の病気の事だけであり、その心配は無用なのだが話している内容は聞こえていないので仕方がないことであろう。
そんな自分の間違いは気がつかず、自分の心配をしてしまっている慧。
考えこむ慧を尻目に七海はどうしていいのかわからず、ジッと真と蒼空のことを眺めているしかなかった。
「――と言うことなんだけど」
ある程度の説明を終えた真がそう言葉を締めくくった。聞いている蒼空は頷くだけで何も言わなかった。
「実際のところ今でも蒼空さんが近くにいるからかなり緊張はしているけどね」
「それは仕方ないことだと思う。けど一つ気になっているところがあるのだけど聞いてもいい?」
「答えられることなら答えるけど、何かな?」
「今でもカウンセリングに通っていると言ってたけど、それはどこ?」
「うちの大学の病院だけど、それがどうしたの?」
なぜそんな事を聞いたのか全くわからず聞き返してしまう真。
まあ、蒼空の表情から読み取れないほど感情表現が乏しいから仕方がないことではあるが。
「行こう、真」
「はっ!? どこに?」
答えを待っていた真なのだが、聞きたい答えなどすっとばされ立ち上がるとどこかに一緒に行こうと言う蒼空。
「いいからついてきて」
目的地など一切言うことなく来て欲しい事だけしか言わない蒼空にどうして言いかわからず困惑している真。
そんな真の様子など気にも留めずついてくるように促す蒼空。
その顔ははじめてみると言っても過言ではないくらい真剣な表情だった。
そんな顔を見てしまい真はどうすることもできず、仕方なくついていくことにするのであった。
お読みいただきありがとうございました。




