PAST 13:矛盾の存在
変わらぬ朝はいつも通りにやってきた。分け隔てもなく、悲しみも嬉しさも恨みも怒りも全て受け入れる朝が。
隆はつまらなそうに小石を川へと投げていた。昨日のことが受け入れられなかった。
「隆……さん」
少女の声が聞こえた。
振り向くと、そこには申し分なさそうに美来が俯いて立っていた。
「昨日は……その……ごめんなさい」
「ん、なんの話だ?」
「……きついこと言って、ごめんなさい」
隆は漸く何に対して謝罪しているのか分かった。「ああ」と気がついたように言って、
「あんときか。別に気にしちゃいない。俺の方こそ勝手に怒ったりして悪かった」
行いを恥じるように笑った。隆が笑うと、美来もニッコリと笑った。
「えっと、美来だっけ?」
美来はコクリと頷く。
「修二とはどのくらい一緒にいるんだ?」
美来は迷って、
「一週間くらい……かな」
と言った。隆は何かを見抜くように「フッ」と笑う。
「本当にそれだけか? 俺にはもっと前から修二を知っているように見えるんだけどな。まあ、急に知り合って仲良くなるパターンもあるから、別に咎みはしねえけどよ」
言って、隆は立ち上がる。そして美しい水が流れ、黎明を反射してキラキラと炯然と輝く川面を見ながら、
「お前、案外いい奴じゃん」
「へ? 私が?」
「そうだ。俺なんかに比べたら七万倍くらいいい奴だ」
「……そんなことない」
「いいや。お前は大切な人を見捨てたりはしねえだろ?」
隆は言った。美来がどこか怪訝そうに見つめる。美来は即座に昨夜の出来事を思い出す。
「あの、私の勝手だと思うん、だけど。昨日、見つけた女性に隆さんは何か思い入れがあるような気が、する」
「ねえよ。気のせいじゃねえのか?」
「いや、そんなはず、ない。隆さん、とても苦しそう、だった。……私も、同じ経験をしたから分かる。彼女と会う前に何が、あったん、です、か?」
恐る恐る美来が言ったのを聞いて隆は「フッ」と笑った。美来の洞察力には叶わないと言わんばかりに隆は頭を掻いた。
「まあ、確かに、悩み事は『一人で考え込むな』とは言うが。お前がどうしても聞きたいなら、話してやってもいいが?」
「聞きたい、な」
「その替わり、お前の悩みも聞かせてくれないか?」
隆が言うと、美来が驚いたように目を丸くした。
「見抜かれてないとでも思ったのか? 昨日、修二が寝静まったあと、月を見て泣いてたろ。ずっと」
「……」
美来は気まずそうに目を背けた。
「見てたんだ……」
「悪いな」
隆が言うと、美来は意を決したように隆を眺めた。
「決まりだな」
隆はその場に座り込んで、手頃な小石を手にとって、川へ投げた。
「まずは俺からだ。あの日は……」
と切り出して、隆は話を進めた。
漆黒に包まれた空がオレンジ色に染まる。メラメラと燃え上がる街並み。その街を背に、俺達は居た。
「おい! 確りしろ!」
俺は今にも命が尽き果ててしまいそうな空奈に向かってそう叫んでいた。
空奈は銃弾が腹部を貫通し、多量出血していた。その血液が空奈の傷口を抑えている俺の手を辿り、地面へと落ちた。
「おい、空奈! 空奈!!」
俺は必死で呼びかけた。
「隆……」
二人の状態の差が奏でるのは、死を彩った鎮魂歌だった。
空奈は苦しそうに吐血するだけ。情けないことに、俺はそんな空奈を見ていることしかできなかった。俺は何もできないまま固まって、悔しそうに空奈を見つめた。支える手が恐怖と怒りで震え始める。
周囲には誰もいない。助けてくれる人なんていない。俺は『もし空奈の代わりに自分が犠牲になれるなら代わってやりたい』とずっと思っていた。
空奈の震える手が俺に伸びた時。空奈の手には何か握り締めているように思えた。
空奈はそれを俺に渡そうとしていようだった。
「……」
俺は震える彼女の腕を無我夢中で右手で握った。すると、彼女の体温で温められた金属が俺の手の中に収められた。手を開いて見てみると、ペンダントだった。
「行って……」
彼女はそう言った。目の前にいる彼女は一緒にゲリラとして活動した仲間。これまでに何度も何度も助けられた恩人。俺はそんな彼女を置いていくことができるはずがない。
彼女の弱々しい眼差しを見ていると思い出す。
小さい頃、家庭の問題でいじめにあっていた俺を助けてくれたこと。
彼女は動体視力がすごくて、リード射撃(動く標的に銃弾を当てること)が得意だったこと。
両親を失った時には俺を慰めてくれたこと。
そして、ゲリラ軍として一緒に活動したこと。
まるでその出来事が走馬灯のようによみがえった。しかし、空奈は
「隆、行って」
と、期待を裏切るようにそう言うだけだった。
俺は何も言う気になれなかった。現実を受け入れたくない気持ちがそうさせたのだろう。
「行って!!」
驚いた。空奈は怒ったようにそう言ったからだ。
「行って……」
今度は驚いた俺に彼女は笑ってそう言った。
もうどうしていいか俺には分からなかった。悔しさのあまり、俺はペンダントを持っている右手の拳を強く握った。
目の前に居るたった一つの大切な命も救えない自分の弱さに嫌気もさした。
俺は静かに彼女を地面に置き、奥歯を噛みしめた。
「生きてね……隆」
と彼女は最後にそう言って瞳を閉じた。
俺は悟った。
空奈は死んだのだと。
俺は怖くなって、彼女に背を向けると全力で走った。とにかくその場から離れたい一心で……。
気が付けば目頭が熱くなっている。だが、決して振り向いたりはしない。
残酷な世間は言う。
時には仲間を見捨てなければならないこともある。
例えそれがどんなに深い絆で結ばれていたとしても。
と。
右手に残された遺品を俺はもっと強く握り締めた。
生きて必ずこの世界を救済すると誓った。
そして、同じ意思を持つ仲間が現れると信じ、敵の目を欺いて静かに暮らした。
いつかこの世に、
『平和を届けるため』に。
「だが、誓を裏切るように彼女は戻ってきた。存在が矛盾してんだよ。だから、相手を空奈と認めるべきなのか、殺すべきなのかわからんのさ」
と隆は言った。回顧を巡らせた隆はそれだけで疲れているようだった。美来はカクンと頭を下げた。美来は頭を抱えてしんみりと隆の話を受け入れていた。
「結局、あの女性のことはどう思ってるの?」
「俺は敵だと思う」
隆は地面に寝そべった。美来は視線を川面へ向けて、
「どうして?」
と、隆に訊く。隆は「フッ」と鼻で笑って、
「もう、すでにあいつは死んでるんだ。空奈として受け入れる方が難しいっての」
「じゃあ……?」
「少しは信じたいさ。再開は嬉しいからな」
言って隆は青い空を眺めた。
「最後はどうするか決めてる。敵だったら殺す。……いや、殺せないな。瀕死まで追い込んで二度と立ち上がれねえようにしてやる」
「敵に対しても優しいんだね。……隆さんは」
「……優しくねえよ。敵に銃を向けている以上は」
言って、隆は体を起こし、川へ視線を向ける。
「で、お前の悩みってのはなんなんだ?」
と隆は美来に言った。美来は少し苦しそうな顔をする。話したくないのが彼女の本心。
「私は……」
と言って、ぎこちなく会話を続けた。川面に嫌な風が吹いたような気がした。
「……」
隆は言葉を失う隆。
美来は黙ったまま、目から溢れ出す涙を拭った。
「可哀想だな……」
隆は同情するようにそう言った。そして、川へ向けて一つ小石を投げた。
「なんていうか……。ひどい現実の中、よくお前は生きてられたよな。こんなひでえ話、聞いたことねえぜ。帝国のやろうの考えてることが分からないぜ。修二には言ったのか?」
「まだ……。でも絶対、シュウ君にだけは言わないで……」
美来は涙声でそう言った。隆はまた小石を投げる。
「そっか。俺は誰にも言うつもりはねえよ。二人だけの秘密だ。……だが少し、お前の体調の方が心配になるけどな。大丈夫か?」
「平気……」
「ホントか? でも、いずれお前は修二にそれを明かすんだろ?」
美来は涙を拭いながらコクリと頷いた。隆は「フッ」と笑って、更にもう一つ小石を掴んで川に投げた。
「すっかり暗くなっちまったな、この空気……」
「ごめんなさい……」
「お前のせいじゃねえだろ」
と隆は美来に小石を渡した。美来は不思議そうな顔をしてそれを受け取る。
「お前も投げてみろよ。少しは気が楽になるぜ」
隆に言われ、美来は小石を川へ投げた。力は極力抜いて、優しく投げた。
着水と同時に心地いい音がして、水面には漣が現れる。美来はそれを見て少し落ち着いた。
「さて、そろそろ、行くか」
と隆は立ち上がって背伸びしをした。
「見張り役に修二は少し不安だ。ひとりよりも二人。ふたりよりも三人。行こうぜ」
美来は「うん」と頷き、二人はその場を後にした。
緩やかに流れる川面が太陽の光を眩しく反射させていた。
「遅かったね。何してたの? 二人とも?」
修二が訊くと、「フッ」と隆が笑う。修二は不思議そうに隆を見た。
「仲直りしてたんだよ」
言って隆は石に座った。美来もぎこちなく微笑んで修二の前の石に座った。
三人で昨日、漂流してきた女性を囲う。緊張感を醸し出していた。
女性が目を覚ます。眩しい光に声を漏らして、目を窄め、周りの人間を確認する。
「こ、こは?」
「川ですよ」
女性の声に、美来が答えた。瞬間、女性の視線が美来を向いた。女性は美来と目を合わせると半分体を起こし、目の前に居た隆と目があった。
隆はすぐに目をそらし、背中だけを彼女に向けた。ショートヘアーで釣り目の女性は少し悲しそうに隆を見ていた。美来と修二は互いに顔を見合わせた。
「あなたたちは?」
と女性は二人に訊いた。
「僕は修二、そしてこの子が美来、それで、前にいるのが……『隆』だ」
修二は少し緊張してそう言うと、女性は『隆』という言葉に異常に反応した。美来の顔が少し悲しそうになる。
「隆……?」
茫然とした声で彼女はそう言った。しかし、隆は見向きもしない。
「ところで、アナタのお名前はなんですか?」
美来が慌てて話題を変える。隆を妙気遣っているようだった。
「あたしは、『空奈』。字は大空の『空』に、『奈』は『大』きいの下に『示』すと書くわ」
と言って、空奈は立ち上がった。Tシャツの上にタクティカルベスト、下はキュロットパンツ。そして足にはブーツ。薄着で動きやすそうな格好だった。
「隆……?」
彼女はもう一度確かめるようにそう言った。しかし、隆は素直に振り向かず、よそ見を続けるだけだった。
すると、隆の視界に彼女の顔が入ってくる。その時、隆は空奈と目があった。
「隆。やっぱり隆なんでしょ?」
不安そうだった顔から一気に喜びと安堵の笑顔が飛び出す。
「ザケンなテメェ!」
攻撃されていないのに隆は空奈を押し倒した。空奈は「ヒャッ!」と悲鳴を上げて尻餅をつく。
美来は唖然とする。
「何をするんだ隆!」
修二が叫んだ。幸いにも、空奈に傷は無いようだった。
「いった~……何するのよ?」
次の瞬間、
彼女の理想郷は一撃で破壊された。
頭には銃が突きつけられていた。突きつけているのが隆と知って、彼女は愕然とする。
美来と修二はその光景を見たまま静止する。
「貴様、何者だ? これ以上、空奈の真似を続けたら撃ち殺すぞ!」
「何を言ってるの? どこをどう見たら赤の他人と思うわけ?」
「その格好もやめやがれエテ公!」
「やめろって言われても、これがあたしの私服なんだけど?」
「舐めやがって……」
隆の怒りはエスカレートしてゆく。目の前の存在を受け止めきれない。空奈は顔を青ざめさせている。隆は愕然としている空奈をにくいような目で見ると、
「ふざけんじゃねえっつってんだろうが!!」
と言って、隆はトリガーを引く。その時、美来が動いた。
「止めて! 隆さん!」
温かい朝に冷たい銃声が轟いた。
空虚に消えてゆく銃声。
銃弾は美来の邪魔をくらい目標がずれ、石に当たった。けが人は出なかった。
隆の視界に美来の悲しそうな顔が映る。美来は残念そうに首を横に振った。途端に、隆は居た堪らなくなって、舌打ちをしてその場から逃げ出した。
「隆……どうしたんだ?」
「空奈さんの事がずっと心配で、たまらなかったんだと思う」
「それで発砲か?」
「……」
修二の言葉に美来は言葉を失って、俯いた。
殺されそうになった空奈は苦しそうに脇目で石を睨みつけていた。
「あなたたち、隆とお友達?」
脇目もふらず、空奈は尋ねた。さらに続けて、
「隆に何か吹き込まなかった?」
と言った。怖い視線が二人に突き刺さる。
困惑するのは修二の方だった。
「僕達は隆の友達……というか、隆に助けてもらった。でも、何か吹き込むようなマネはしてないし、それに、隆自身も空奈さんのことは心配した」
と修二は言った。
空奈は少しムッとした表情を浮かべていたが、嘘でないと気付き、はっとなる。
「ごめんなさいね……あたしも、あなた達に疑いをかけるなんてどうかしてたわよね。さっきの事は謝るわ。それと、あなた達に……いや、あなた達のように隆に付いていきたいの。その、出会っていきなりで悪いんだけど……」
と言った。
「でも、どうして川に?」
「それは、とある街で戦闘していたら崖から落ちてしまって……助けてくれてありがとう」
彼女は礼を言った。まるでこの展開が分かりきっているようだった。
修二と美来は顔を見合わせた。お互いに困惑していて微妙な表情をぶつけ合う。
「それと、あなた達にいい話を持ってきたわ」
言って、空奈は修二と美来に長々と語った。
空奈の話通り、ことを進めてゆくといつの間にか一行は、どこかの寂れた町が見える茂みまで来ていた。空奈の話によれば、あの街のどこかに『帝国側の秘密を握るデータ』があるらしい。
隆に話をして連れてきてくれと言われ、ダメ押しで話したところ、一発で快く指示を受け入れてくれた。そこは、ホッと胸をなでおろしたものの、空奈との距離感は埋るには至らなかった。見えない帳が空奈と隆を隔てているようだった。
修二は隆に手渡された双眼鏡を使って、街の様子を視察する。
「敵の数は?」
空奈の質問。周囲を隈なく見渡すが敵は見当たらない。周囲が曇っていて見づらいが、誰もいないと判断する。
「……ここから見る限りだと居ない」
修二は言って、双眼鏡を目から離し、隆に返そうとした。が、隆はとてつもなく不満げに腕を組んで地面を睨みつけているので思いとどまった。
(これじゃ、まるで呉越同舟だ)
修二の顔からは不自然な苦笑いが飛び出す。苦笑いを見た隆は、怒ったように武器の詰まったカバンを修二に放り投げた。
隆は「てめえらの顔なんて見てらんねえよ」と言わんばかりに外方向いて、ヘソを曲げていた。
「隆……」
「……」
修二のさもしい声に隆は黙ったままだった。ひっそりと佇む街を睨んで、口を利こうとしない。
「シュウ君……」
美来が不安げに修二を見ていた。
「大丈夫だよ。きっと」
と修二は言って、美来を安心させようとした。チーム全体は不穏な雰囲気に包まれる。空奈も隆の態度に答えるように不満げだった。
「さ、行きましょう。早く準備して」
空奈はきっぱりそう言って、街を睨む隆を不満げに見ていた。身近で繰り広げられる冷戦にやりきれない思いでいっぱいになる。
修二は手頃なアサルトライフルを手に取ると、残弾を確認して、マガジンをポケットに詰め込んだ。
「シュウ君。もっと多めに武器を用意しておいたら?」
と美来は黒いライフルを手にもって言った。
「うん。そうするつもりだけど……美来はライフルだけでいいの?」
美来は正真正銘の狙撃手ということはさっきの戦闘でも知っているが、これは強襲じみた作戦だ。いくら狙撃手でも接近戦に対応できる武器を持たないと危険なのではないだろうか。
美来は修二に見つめられて、少し照れくさそうに、
「大丈夫だよ。どうせ敵から奪えるし」
と言った。修二は訝しさを覚えたが、特に追求することはなかった。それは多分、隆が愚民を見下すような目でこちらを睨んできたからかもしれない。
「おい、てめえ。こっちには怪我人がいる。それにまだ戦闘経験が浅い奴だっているんだぞ。なんだって『紛争地帯』を横切ってまで、わざわざ高い塔を目指さなくちゃなんねえんだ? 俺は戦場を迂回するルートを選ぶのが妥当だとは思うがな」
隆は修二と美来を挟んでずっと隆を見ている空奈に向けて皮肉をいった。
ここが紛争地帯だと聞かされていなかった修二は喫驚する。紛争地帯なら混戦を避けたほうがいい。こぼれ弾にあたって死ぬなんて情けないの極みだ。
「迂回するルートを選んでも、どの道、帝国の軍隊との衝突は避けられないわ。それに、真っ向衝突するよりも、帝国軍が敵軍に気を取られている隙に、一気に突入するのがどう考えても妥当じゃない? 隆?」
空奈の言葉は説得力がありすぎた。この人数で戦うとなると、正面衝突より交戦状態の危険地帯を潜るほうが生存確率がいいように思える。
「てめえ、その名前でよぶんじゃねえ! 偽物が! 汚らわしいんだよ!」
「なんですって!?」
口論に発展する前に、修二と美来が仲介に入り二人を落ち着かせた。
熱が治まった二人はフンと顔を背けて目も合わせようともしなかった。犬猿の仲だ。
「とっとと行きましょう、あんな馬鹿放っておいて」
空奈はリボルバーが付いたハンドガンを持って、茂みを踏み分けて荒野へと足を踏み入れる。
「て、てめえ! 馬鹿とはなんだ! 待ちやがれくそったれ!」
隆がムキになって空奈を追いかける。空奈を追い越すと、空奈の前に立ちふさがった。
「なによ! 邪魔なんですけど!」
「てめえこそ偉そうに仕切ってんじゃねえぞくそったれ!」
「なによ! どうせあんたなんかが指揮をとっても軍隊が壊滅するだけよ!」
「なんだと! そっくりそのままてめえに返してやるよ偽物!」
「偽物じゃないわよ! 本物よ! あんた目が悪いんじゃない!?」
……と、結局口論になってしまった。
しかし、遠目で見ていると、仲が良さそうな喧嘩だった。中々に相性がよさそうだ。
「シュウ君……? 私たちもいかない?」
「そうだね」
修二は武器がある程度抜かれて少し軽くなった旅行バッグを背負い、呑気に美来と歩いていった。口論している二人の前に立つのは何となく剣呑な気がするので、取りあえず、ここはあえて空奈の側について、街の方へ向かうことにした。
「おい! てめえら! 何やってんだよ!」
予想通り、隆の矛先がこちらにむいた。
「ほおら見なさい! 私の言ったとおりでしょ?」
「ふざけんな糞尼!」
「なんですって!?」
空奈と隆は依然として互いに啀み合ったまま。仲介として仕方なく修二と美来が入り、漸く口論は治まった。何故か、論戦に参加していないこちらもかすかな徒労を感じた。
そして漸く隆も心を折ってくれたようで、「空奈の信頼性を図ろう」ということで合意した。
こうして、四人の反乱兵が砂が荒れる静寂の街へと足を進めた。




