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赤翼のワイダー  作者: 忍絵 奉公


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第73話 見えない力


翌日、放課後。

三人は池の前に立っていた。

すぐに飛び込む……はずだった。

だが今日は違う。

アリューが腕を組む。

「作戦会議だ」

シリューも頷く。

「あの三匹目、普通じゃない」

ユウが考え込む。

「どうやったら……」


その時、背後から声。

「後一匹はな」

三人が振り向く。

師匠だ。


「キングムネンガという魔物だ」

あっさり言う。


沈黙。


ユウが言う。

「……え?」

シリューも続く。

「聞いてない」

アリューも眉をひそめる。

「言ってないだろ」


師匠は気にしない。

淡々と続ける。

「レベルが違う、力も速さもな」

少し間。

「おそらく、それだけでは捕らえられん」


アリューが聞く。

「じゃあどうすればいい」


師匠は一言。

「それがヒントだ」


そしてそのまま、くるりと背を向ける。

歩いていく。

向かう先は温泉。


ワイバーンたちがくつろぐ中、

師匠は何事もなかったかのように湯に浸かった。


三人は取り残される。


「どういう事だ?」

アリューが呟く。

シリューが考える。

「力と速さ以外……」

ユウも続く。

「他に何がある?」


沈黙。

風が吹く。

水面が揺れる。


その時。

ユウがぽつりと言う。

「……魔力?」


二人が見る。


ユウが続ける。

「水の中でさ、魔力使った時あったじゃん」


アリューの目が変わる。

「……ああ」

シリューも気づく。

「あの時か」


意識を沈めた時。

宇宙と繋がる感覚。

あの状態。


アリューが言う。

「やってみるか」


バシャッ!!

三人は飛び込む。


水の中。

目を閉じる。

意識を沈める。


魔力を感じる。

体の内側。

流れる力。

それを纏う。


その瞬間。

ユウが驚く。

「なにこれ……!」

体が軽い。

いや違う。

強い。


アリューが拳を握る。

水が押し返される。

「いける……!」


シリューが動く。

一歩。

踏み出す。


消えた。


ユウが目を見開く。

「速っ!?」


シリューが止まる。

自分でも驚いている。

「……これか」


一度掴む。

コツ。

それは難しくない。

ただ知らなかっただけ。


三人は同時に動く。


キングムネンガ。

あの異質な気配。

動く。

速い。

だが

「見える!!」


アリューが追いつく。

シリューが回り込む。

ユウが上を押さえる。


前と同じ形。

だが。

中身が違う。


速度。

反応。

すべてが上がっている。


魚が突っ込む。

だが。

シリューが止める。

押されない。


アリューが詰める。

逃がさない。


ユウが手を伸ばす。


ガシッ!!


捕まえた。

キングムネンガ。


暴れる。

激しく。

だが無駄だ。


ユウが笑う。

「いけた!」


三人が浮上する。


バシャァッ!!


水面。

そして。

完全捕獲。


陸へ上がる。

師匠がちらりと見る。


「……ふむ」


そして言う。

「身体強化の魔力の使い方はわかったか?」


三人が固まる。


ユウが言う。

「身体強化……?」

シリューが理解する。

「そういうことか」


アリューが呟く。

「水中だけじゃないのか?」


試す。

陸上で。


魔力を体に纏う。

集中。

その瞬間。


「……!」


力が溢れる。

筋肉が応える。

世界が軽い。


シリューが動く。

横へ。

サイドステップ。

消えた。

ユウが叫ぶ。

「見えない!?」

次の瞬間。

シリューは別の場所にいた。


「……やばいなこれ」


アリューも拳を握る。

空気が震える。

ユウも弓を引く。

弦の音が鋭くなる。


師匠が小さく笑う。

「やっと気づいたか」


三人は理解した。

本当の力。

それは魔力による身体強化。


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