第33話 常識外れの三人、ギルド騒然
ギルドの試験室。
試験官と職員が机を囲み、その前にアリュー、シリュー、ユウの三人が並んで立っていた。
筆記試験ができないため、急きょ口頭試験になったのだが、どうにも雲行きが怪しい。
試験官は咳払いを一つして、質問を続けた。
「では、さっきの続きだ。ゴブリンの危険度は?」
三人は顔を見合わせる。
そして、アリューが自信満々に答えた。
「怖くない」
シリューが続く。
「弱い」
ユウがうなずく。
「余裕」
試験官の手が止まった。
「……そうか」
微妙な沈黙が流れる。
職員の一人が、横で小さくため息をついた。
試験官は気を取り直し、次の質問を出す。
「では次。オークの危険度は?」
三人はまた同じように答えた。
「怖くない」
「弱い」
「余裕」
職員が頭を抱えた。
試験官のこめかみに、ぴくりと青筋が浮かぶ。
「……では攻略法は?」
三人は少し考えた。
そしてユウが真面目な顔で言った。
「豚肉でとても美味」
アリューが腕を組んで頷く。
「焼くとうまい」
シリューも続けた。
「煮ても美味しい」
試験室に、深いため息が落ちた。
職員の一人は机に突っ伏している。
試験官は天井を見上げた。
「……君たちは、討伐師の試験を受けに来ているんだよな?」
「はい」
三人は元気よく答えた。
試験官はしばらく黙り込み、最後の質問を出した。
「……では最後の問題だ」
三人の視線が集まる。
「グリフォンとは何だ?」
今度はアリューが先に答えた。
「来る途中、二体倒した」
試験官が固まる。
シリューが続ける。
「空を飛ぶ」
ユウが補足する。
「風魔法を使う」
試験室が静まり返った。
試験官はゆっくりと聞き返す。
「……君たち、本当に倒したのか?」
「はい」
三人は即答した。
さらにアリューが思い出したように言う。
「そのあとオーガとも戦った」
「一騎打ちでした」
「でも余裕で勝ちました」
職員たちの表情が凍る。
しかし試験官は、ふっと笑った。
「ははは」
「またまた。冗談だろう」
「グリフォンを倒して、オーガに勝つ? 新人が?」
職員たちも苦笑している。
「さすがに盛りすぎだ」
「子供の武勇伝みたいな話だな」
するとシリューが、腰の袋をごそごそと探り始めた。
「これです」
机の上に、青と緑の混ざった魔石を置く。
ごとり。
室内の空気が一瞬で変わった。
職員の一人が、震える声で言う。
「……これ」
試験官が手に取る。
光を透かし、目を見開いた。
「……本物だ」
「しかも……かなり大きい」
職員たちがざわめき始める。
「六センチ級だぞ……」
「上級魔物の魔石だ」
「嘘だろ……」
さらにが袋を開ける。
「これも」
机の上に、もうユウ一つの深紅の魔石。
今度は火属性。
試験官の顔色が変わる。
「……こ・この魔石」
室内は騒然となった。
驚き。
恐れ。
そして――嫉妬。
職員の中には、長年討伐師をしていてもこんな魔石を見たことがない者もいる。
試験官はゆっくり椅子に座り直した。
三人を見つめる目が、完全に変わっていた。
「……なるほど」
静かに言う。
「君たちは、嘘を言っていなかった」
三人は首をかしげる。
試験官は立ち上がり、大きな声で宣言した。
「ギルド規定により――」
職員たちが姿勢を正す。
「アリュー、シリュー、ユウの三名を」
「討伐師ランクBとして認定する!」
どよめきが広がった。
新人でいきなりBランク。
前代未聞だ。
三人は顔を見合わせる。
「Bってすごいの?」
「たぶん」
「すごそう」
職員たちは慌てて走り回り始めた。
「表彰の準備だ!」
「ギルド長を呼べ!」
「街中に知らせろ!」
試験官は苦笑しながら言った。
「君たちはとんでもない新人だ」
そして続けた。
「今夜、簡単な表彰式を行う」
「街の人たちにも紹介しよう」
三人はきょとんとする。
しかし外ではすでに噂が広がり始めていた。
ワイバーンに乗る三人の若き討伐師。
新人でBランクの怪物たち。
静かな街は、この日――
大きな騒ぎになるのだった。




