30話:小さな街での魔物使役
アリュー、シリュー、ユウの三人は、朝の青空の下でワイバーンに乗り、街道沿いをゆっくりと進んでいた。
空は澄み渡り、風は冷たくも心地よく、ワイバーンの翼の一振りごとに、三人の心は軽やかに弾んだ。
遠くに集落の屋根が見えてくると、彼らは徐々に降下し、街の外れにある広場に降り立った。
人口2千人ほどの小さな街で、周囲は穏やかな農地に囲まれており、煙突から立ち上る朝の煙が生活感を漂わせている。
ワイバーンから降り立つ三人を見て、通行人たちの目が一斉に見開かれる。
赤い翼のアルフェリス、白い翼のスノウェル、赤黒い翼のブモー――空を舞う姿だけでも珍しいのに、その背に三人の少年少女が乗っている。
子どもたちの目には驚きと羨望の入り混じった色が映り、大人たちは口をぽかんと開けて見上げる。
中には、遠くから聞きつけて駆け寄った人々もいて、街中が一瞬ざわめいた。
宿を探すために、三人は広場の一角で降り、ワイバーンたちは広場の端にしっかりと繋がれる。
宿の主人は最初、驚きと困惑を隠せないまま彼らを迎え入れ、特別な部屋を用意することになった。
三人は荷物を置き、宿の中で少しの間ほっと一息つく。
外の広場では、住民たちが興味津々にワイバーンを観察し、子どもたちが遠巻きに集まる。
アルフェリスは翼を広げてそよ風を巻き起こし、スノウェルは低く唸るような声で楽しそうに応える。
ブモーは大きな体を揺らして、のんびりと餌を食べている。
その姿はまるで、街の小さな祭りの一場面のようだった。
夕方近く、三人は街のギルドへ向かうことにした。
ここでは、魔物や討伐師の登録を行うことができると聞いたからだ。
街道沿いの商店や民家を抜け、石畳の道を歩く。
ギルドの建物は古めかしくも威厳があり、立派な木製の扉には「討伐師ギルド」の文字が刻まれていた。
中に入ると、広々としたホールに書類を整理する人々や、剣や鎧を持った中堅討伐師たちが行き交っている。
受付に立つ係員に三人は目的を告げると、係員は少し眉をひそめた。
「魔物を使役するには登録が必要です。そして討伐師としての活動も、まずテストを受けなければなりません。登録料は一人銀貨1枚。ただしCクラス以上と認められれば、登録料は不要です。」
と係員は言った。
「魔物の管理能力、戦闘力、協調性などを評価します。準備はいいですか?」
三人は互いに視線を交わし、力強く頷く。
アリューは剣を握る手に力を込め、シリューは風魔法の感覚を確かめ、ユウは弓の弦を軽く引きながら集中する。
受付は微笑みながら手続きを進め、テストの内容や方法を簡単に説明した。
まずは使役している魔物との連携を見せ、討伐※魔物を模したものか、木彫りの魔物風人形に鎧が施されている物へ攻撃を行う。
それに合格したら筆記と理論の確認があるとのことだった。
三人は、これまでの一年間で積み上げてきた力を試す絶好の機会だと感じた。
ワイバーンたちも彼らの意志を理解してか、翼を揺らして歓迎するかのように低く唸る。
準備を整えた三人は、胸の高鳴りを感じながら、ギルドの広間の中心に立った。
試験官が手を掲げ、模擬討伐が始まる。その瞬間、街の小さなホールは緊張感と期待に包まれた。
アリューは剣を帯電させ、シリューは風をまとわせ、ユウは魔力の玉を手にする。
ワイバーンたちも一斉に翼を広げ、まるで空と風の精霊たちが三人の背後で舞うかのように鳴き声を上げる。
街道沿いの穏やかな空気は、一瞬にして試練の舞台へと変わった。
三人の心は、恐れよりも興奮と誇りに満ちていた。
この先にどんな困難が待ち受けようとも、彼らは互いに力を合わせ、道を切り開く覚悟を決めていた。
街の人々は窓や通路からその様子を見守り、ワイバーンと若者たちの勇姿に目を奪われる。
小さな街が、今まさに冒険者たちの力と勇気で満ち溢れていく瞬間だった。
三人は、この街でのテストを乗り越えることで、新たなステップへと進む決意を胸に刻むのだった。




