第17話:魔力修行と老人魔導師ザックル
村の老人たちは、三人に強く頼み込んだ。
「頼む……しばらくこの村にいてくれんか」
若者がいなくなったこの集落にとって、三人の存在は希望のようなものだった。
山の上から生き延び、魔石を持ち、ワイバーンを従える少年少女たち。
そんな者たちがこの村に来たこと自体が、奇跡のように思えたのだ。
アリュウたちは顔を見合わせた。
山の上の村には帰れるが、ここにはザックルという魔石のことを知る人物がいる。魔力の扱いを学ぶには絶好の機会だった。
「……じゃあ、しばらく世話になります」
その一言で、村は大騒ぎになった。
その夜、小さな歓迎会が開かれた。
豪華とは言えないが、村人たちは保存していた肉や野菜を持ち寄り、焚き火の周りに集まった。
老人ばかりの村に、久しぶりの賑やかな声が響く。
そして、三匹のワイバーン――アルフェリス、ブモー、スノウィルも大人気だった。
子どものように目を輝かせる老人たちに囲まれ、ワイバーンたちは少し得意げだ。
アルフェリスは胸を張り、ブモーは翼をばさばさ動かし、スノウィルはちょこんと座って首を傾げる。
「触ってもいいのかの?」
恐る恐る手を伸ばす老人。
アルフェリスは少し考えた後、鼻先を近づけた。
「おおお……温かい……!」
その瞬間、村中に歓声が広がった。
翌日から、魔力の特訓が始まった。
ザックルの家の裏には、小さな空き地がある。そこが修行場となった。
「まずは呼吸じゃ。魔力は息と共に流れる」
ザックルは杖を地面につきながら言う。
話を聞くと、ザックルは若い頃、王都の魔法師団に所属していた魔導師だったという。
老いて村に戻り、静かに暮らしていたが、その知識は今でも確かなものだった。
三人は武器に魔石をはめ込み、集中する。
何度も、何度も、魔力を流そうと試みる。
最初はまったく反応がなかった。
だが数時間後――
「……光った!」
アリュウの剣先が、バチッと小さく弾けた。
黄色の魔石がかすかに輝き、剣に電気が走る。
まるで冬の日の静電気のような、小さな火花だった。
しかし確かに、帯電していた。
シリューとユウが目を丸くする。
「やったじゃんアリュウ!」
「すごい!」
だがザックルは腕を組み、静かに首を振った。
「うむ……確かに成功じゃ」
三人の顔が明るくなる。
しかしザックルは続けた。
「だが、それではまだ1割にも満たん」
「え?」
「魔力の流れが粗い。力の9割が無駄に散っておる」
三人は固まった。
あれほど集中し、やっと出た火花が、まだ一割以下。
「魔石は本来、雷を剣にまとわせるほどの力を持つ。今のお前のは……まあ、冬のドアノブじゃな」
ザックルはニヤリと笑った。
悔しさと、驚きと、興奮が三人の胸に混ざる。
「つまり……」
アリュウは剣を握り直す。
「もっと強くできるってことだよな」
ザックルは満足そうに頷いた。
「その通りじゃ。魔石の力は、お前たちの想像より遥かに大きい」
空ではアルフェリスが旋回し、ブモーが翼を広げ、スノウィルが小さく鳴いた。
三人は再び剣と弓を構える。
本当の魔石の力を引き出す修行が、今まさに始まったのだった。




