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護国獣 2


ティルトローターは海岸から離れた丘の下に降り立ち戦闘が終わるのを待つ。

巨躯同士の戦闘の轟音が雷や花火の音のように遠くから響いてきていた。

レオやメノウが眼鏡型のデバイスをつけ戦場の様子を確認しカヅキはぼんやりと空を見ている。


『こっちの支援は今のところ必要ないみたいだし、時間もあるし巨躯の説明でもするかな。巨躯にはいくつかアースライトを使った能力があるのは知ってるね』

「……いや、まったく」


ハクマはユウスイからの通信を聞きながら眼鏡型のデバイスを装着した。

画面には遠くから巨躯を追いかけていた観測機の映像が映る。

正龍爆拳が攻撃を受け止め動きを止めたところに、走ってきた影刃青輝が背中の鱗を突き立てるように体当たりをくらわす。


『まず基本的に現れる巨躯と護国獣はほぼ同じものと考えてもらって構わない。違いは護国獣は現れた巨躯のデータから作られた量産品で、アースライトの適合率を人為的に上げた護祈が操る。なら現れる巨躯は何なのか。生き物が何らかの形でアースライトに触れて生まれているのではないかと思われているけど、何十匹と巨躯と戦って現地を調べてもそれらしい生き物の姿は無し。っと話がずれた、巨躯と護国獣は似たようなもんでおんなじ力を持っている』

「なら巨躯が撃つようなビームとかも撃てるのか?」


脈晶砕地の体に生える結晶が再び輝きだして無数の光弾を正龍爆拳に向かって放つ。

光弾が着弾した箇所に次々と巨大な結晶が生え巨大な体を覆っていく。


『撃てるよ、ただダメージが低いし避けられたら被害が出る。あとアースライト消費量が大きいから撃つなら足の速い巨躯か接近が困難な巨躯に使う場合が多いかな、時と場合。ビームと違うけどバリアーもある、戦車とかヘリとか都市の防衛機構に組み込まれているどんな攻撃からも守れる障壁。アースライトを使った見えない壁で攻撃を防ぐ力で、巨躯や護国獣が使う場合は弱点部を補う際に使用する』


影刃青輝にも光弾は迫るが瞬間的に後ろに下がり攻撃を躱す。


『アースライトの密度、変換する素材によって柔軟性や強度が変わる。だから守りたい部分は硬質な物質になってるし目なども弱点にはならない、爪や牙のある腕や頭は基本硬いかな、今回の巨躯は知らん。サブの攻撃手段となっているビームの発射口は脆くそういった部分はエネルギーが漏れ出て発光器官になっていることが多い』


勢いをつけ脈晶砕地が結晶で体を覆われ動きが鈍くなった正龍爆拳へと体当たりをくらわし、体当たりを受けた護国獣は大きく吹き飛ぶ。


『最後は能力、今見えてる脈晶砕地が派手に結晶を生やしているけどあれも能力。凍る雷や巨躯の周りを浮遊する岩、あれらは巨躯の持つ個性をアースライトで増幅した感じ。劣勢だから見れるかわからないけど正龍爆拳の能力はダメージの蓄積、殴ったところにエネルギーを溜めて本人の意思で爆破させる。子雲海は防戦一方だからむつかしいかな』


追撃を行なおうとする巨躯の背後から、背中の尖った鱗の一枚を抜き取った影刃青輝が飛び掛かった。

飛びつくと同時に鱗を振り下ろし火花を散らし岩のような体に鎌のような鱗が突き刺さる。


『ルツキ、影刃青輝の力は再生力。鱗を引き抜いても再生するし、あの鱗のアースライトの密度は結構高い。だからああやって巨躯の体に突き刺さる』


その間に戦車隊が正龍爆拳へとむけて主砲を動かすと結晶に狙いをつけ砲撃で結晶を砕く。

結晶を砕いてもらい身動きが取れるようになった正龍爆拳は起き上がり刺さった鱗を引き抜こうとする脈晶砕地へと迫るとその拳を体に叩き込み一段と激しく火花が散る。

風もないのに草木が揺れ、遅れてハクマたちのもとへと衝撃波が届く。


『カヅキ、回収用意。もう戦闘は終わる』

「おっと、先生の解説を聞いていたらそんな時間か。立ち会わせ場所には少し早くついているのが僕の流儀なのに、いけないいけないっと」

「今回は攻撃を受けずに終わったみたいね~、無事でよかったわぁ」


高速でプロペラを回し始めティルトローターは再び上空へと舞い上がる。

すでに戦闘のながらは変わっており二体の護国獣によって脈晶砕地はバリアーを張り身を守るだけとなっていた。

そこへ影刃青輝の攻撃でできたひび割れに戦車隊と自走榴弾砲からの集中砲火が加わり、引き上げていた戦闘ヘリが戻ってくる。


宙に浮いていた巨体は地面に落ち、体に複数のひびが入り最後に正龍爆拳が力のこもった咆哮を脈晶砕地へと向かって上げるとその体が爆発し粉ぐ何砕け散る。


『戦闘終了。各部隊は周囲の警戒をし報告を上げ、引継ぎ部隊が到着し次第順次撤収するように』


戦闘が終わり脈晶砕地の姿は無数の岩の欠片へと変わる。

二体の護国獣はお互いに手を振り小さな声で泣き合うと別々の方向へと向かって歩き出す。


『今ルツキには合流地点を指示した。そっちにも座標を送ったから指定位置へと向かって』

「了解だよ」

「それじゃぁ、ハクマ君の仕事の時間ね戦闘後で気が立ってるだろうからしっかりと頼むわね」

「はい、行ってきます」


戦闘ヘリは脈晶砕地の残骸の上を飛び回り戦車隊はそれを包囲するように陣形を整える。

上空では観測機が帰投し、海上では指揮船が高速船を引き連れ港へと戻っていく。


「戦闘は終わったのに戦車隊とヘリは何をしているんですか?」

『スケール1の巨躯が潜んでいないか調べているの。防衛隊のできる前は倒したと思った巨躯から無数のスケール1が現れて大混乱になったんだから』

「巨躯から市民を守る都市計画と防衛隊発足になった事件だな。ああ、巨躯に対して無知な頃で散々だった。あの戦いで私も同僚を多く失ったな」


予定ポイントに近づき合流地点へと向かう影刃青輝の上を飛ぶ、すでに正龍爆拳は眩い光を放ちその姿を消している。

遅れて影刃青輝も公園へと到着しその巨体が光とともに消えポツンと一人白い服の女性がその場に立っていた。

降下したティルトローターからハクマが降りると小走りで彼女のもとへと向かう。


「迎えに来たぞ、歩けるか? 無理そうならまた俺が……」


蹲り両腕をさするルツキ。


「寒いのか?」


ハクマが手を伸ばすと彼女はその腕を勢いよく叩き落とす。


「なんだよ」


息を荒く吐き彼女はハクマを睨みつける。


『極度の興奮状態。構わないから連れ帰ってきて、あんまり時間ないよ』

「このままだと怪我するぞ、無茶苦茶に暴れてる」


『いいからいけ』


ユウスイに言われるがままにルツキを担ぎ上げた。

抵抗し彼女は暴れてハクマに殴り蹴りを入れるが、力はか弱く振るった力で彼女が怪我をしないが心配しながらティルトローターへと向かう。


「届けた。暴れるからバランスが取れなくてふらふらして転びそうに……」

「飛ぶよ!」


急いでいるのか急上昇し帰路に就く。

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