護国獣 3
すでにそういう想定がされているのか囚人拘束用のベルトにルツキは座席に固定されており、暴れ疲れ落ち着きを取り戻した彼女は床を見つめ項垂れている。
それでも彼女はメノウの問いかけに頷いたり簡単な返事を返すなど反応を見せていた。
倉庫の上に作られた護祈の宿舎の屋上への帰還と同時に拘束具を解かれ、ルツキはメノウとユウスイの付き添いのもと階段を降りて自室へと運ばれていく。
ティルトローターを降りたレオはどこかに連絡をとり階段を下って、そのまま護祈の宿舎から出ていった。
「お疲れハクマ君、ルツキ暴れてたけど怪我は無かった?」
「引っ掻かれましたけど、まぁ軽症です。護国獣になるっていうのは大変なんですね」
「他の護祈はそうでもないみたいだけどね。ルツキちゃんは特別みたい、お酒に酔って攻撃的になる人いるでしょ、アースライト酔いとでもいうべきなのかなそういうのらしいよ、あれ。力がいる人が必要な理由わかったでしょ」
「そうですね。最初は疲労で立てなくなるから運ぶとかそういうのだと思いましたけど、錯乱状態の人を強引に運ぶと考えるのなら。それなりの体の丈夫さと力は必要だと思います」
「本当に疲労で動けないときもあるけどね。今回は2対1で戦えてそこまで疲れなかったみたいだね。もう一人の方は結構攻撃を受けていたから心配ではあるけど。えーと、僕はもう少し残るからハクマ君は先に部屋に戻ってていいよ」
カヅキは先に下に降りるように言いハクマも階段を降り部屋へと向かう。
戦闘後はルツキは体調不良で休んでいるが他のメンバーは何事もなかったのようにいつもの仕事に戻った。
翌日、少し遅い時間ではあったが昼前ごろにルツキが起きてくる。
寝起きだからかまだ疲れがあるのか少し猫背で声に元気はない。
「おはようみんな、もう動けるから今日からまたよろしく」
「おはよう、体は大丈夫?」
「無理しないで休んでいてもいいのよ~。ご飯はちゃんともっていくから~」
軽い挨拶を交わしルツキは仕事を始めた。
昼食を食べて少し経った頃にレオがやってくる。
「皆そろっているな。ルツキもいるな、もう体はいいのか」
「動ける程度には、前回はエイアお姉さまに楽させてもらったから」
「礼は言ったのか?」
「通話で済ませました、また健康診断で会いましょうって」
隊長であるレオの入室とともに皆が立ち上がって整列し背筋を伸ばす。
皆がそろっているのを確認するとレオはすぐに口を開いた。
「つい数時間ほど前、他国にスケール4相当の巨躯が現れた。すでに現地の防衛組織によって討伐されているが皆その資料には目を通しておくように」
スケール4との言葉にルツキの顔が一瞬強張る。
了解と返事を返しその後軽く挨拶が交わされ皆デスクに戻った。
「スケール4の巨躯ねぇ、今年はまだ二例目だっけ~」
「一匹目はぎりぎりエネルギー量が下回っていたから格下げされたんじゃなかったっけ? 僕の認識違い?」
「あってるけどその後また格上げされた。うちの国では限りなくスケール4に近いスケール3とされてる。スケールって世界統一規格にしているのにわざわざ変える意味が分からないけど」
「観測された巨躯内の総アースライト量であって脅威度ではないからよくわからないね」
「アースライト量が多ければそれだけ能力の強化や体が酷く丈夫だったりする。都市のアースライトを狙っているからどちらも戦うには不利。都市の存続危険性や戦闘の地形被害範囲や復興性に違いはあれど脅威度には結び付くよ」
「かといって細かく分けだすと、いろいろ厄介なのよね。スケールの分類分けがさらに細かくなっちゃう」
めったに現れないスケール4の巨躯の出現に皆が意見を交わす。
「この間の脈晶砕地ってやつはどれくらいの強さだったんですか?」
ハクマの質問にユウスイとルツキが少し考える。
「観測されたアースライトの量的には至って想定内のスケール3程度の量。その中では、中の下くらい? 見てた感じそれぐらいじゃなかった? どう、ルツキ?」
「もう少しあった気もするけど、過去のデータや記録から見ると中の中ではなかったわね。全周囲砲撃と能力が厄介ではあったけど意外と攻撃通ったし。データを集める時間をかけてよければエイアお姉さまの正龍爆拳と防衛隊の攻撃だけでも倒せていたとは思えるわ」
行っている作業の手を止め皆がユウスイの方を見た。
「んじゃ、スクリーンでみんなで報告書でも眺めますか。ユウスイ、準備して」
「やるよ、わかってる。今やろうとしてたとこ」
「お茶用意するわね~」
皆がデスクから離れてテーブル席に移動する。
モニターに共有されている巨躯のデータが映し出された。
報告書にまとめられているスケール4は四足獣タイプで背中側に大小さまざまな石柱が生えている。
「全長80メートルサイズ。小さいわね」
「それだけアースライトの密度が高かったのかな」
提供されている映像は限定的で報告書の文字を読みながら画像を切りかえる。
画像は遠方からとったものらしく巨躯の周囲の景色も収められていた。
市街地を移動する様子を映したもの、護国獣と思われる別の巨躯と対峙している様子、背中の石柱から攻撃を行っている様子と動画はなくいずれも画像のみ。
「背中と頭の石柱は爆発し火山弾みたいに降り注ぐタイプみたいねぇ?」
「僕には焼夷弾と混ざったショットガンに見えるんだけど、飛んでった岩一つ一つが線上に燃やしてすごい広範囲が燃えてる」
「4体がかりの討伐だったみたい、その前に2体やられてる。結構向こうの防衛隊も民間人にも負傷者が出たみたい」
メノウとカヅキがお茶を飲みながらつぶやき、ユウスイが紙パックのジュースを飲みながら捕捉を加える。
「護国獣ってやられたらどうなるんですか? その、死んだり……?」
「いいえ別に護国獣の体がばらばらにされても死にはしないわ。変身用のペンダントにはバリアーを発生する機構も組み込まれているから。助けが来るまで見つからないよう隠れてしのげば、巨躯が居なくなり次第退却はできるわよ」




