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第一話 異世界転移しただと...

 光り輝く都市の影には様々な悪意が渦巻いている。私欲と自己利益を貪ろうとする者、他者を陥れ悦楽に浸る者、人の命を奪う者......超能力のあるこの社会においてそれは案外容易に出来てしまう。


能力者(超能力を使用できる者)は近年増加しつつあり、能力を用いた犯罪もそれに伴い増加している。だからこそ、それを止める人間が必要となる。





 天崎あまさき 時哉ときやという名のこの男は、能力犯罪を防ぐ組織『プレヴァント』に所属する能力者であり、最強の能力者として数々の能力犯罪者を捕まえてきた。彼は能力犯罪の警戒のため深夜に見回りをしていた──



 とある暗い路地裏で、俺はある二人組を見つけた。一人は全身に布を纏っていて顔がよく見えないが、もう一人は制服を着た高校生の少女だった。少女の方はずっとオドオドとして落ち着きがなかった。布を被った人物が少女に何かを告げると少女は非常に喜んでいる様子だった。


 すると、布を纏った人物は少女の方に手を向けて魔法陣のようなものを空中に展開した。



布を纏った人物が少女に能力を使おうとしていると感じ、即座に飛び出し、俺の能力を使って止めようとした。しかし、その時なぜか俺の能力が発動しなかった。

二人組はこちらに気づき、少女は驚いた表情をしていたのが一瞬見えた。


すると突然、魔法陣から放たれる白い光に包まれてしまい、視界が見えなくなってしまった──





 視界が晴れると、荘厳な雰囲気の大きな部屋で大勢の人間に囲まれていた。


目の前には王冠を被った人間。周りには中世ヨーロッパの貴族服を着た人物たちと先ほどの二人組がいた。


「ここは、どこだ......?」

まるで意味がわからない。能力のある社会で生きてきた俺にとってもこの状況は不可解だった。


「おう、そなたが()()様か! 我々を救いにきてくださり誠に感謝しております......しかし、なぜ勇者様がお二人もいらっしゃるのですか?」と目の前の王冠を被った人物が言った。


すると魔法陣を出した人物が焦った様子で言った。

「お待ちください、王。この者は()()()()に勝手に割り込んで来たのです!」


 魔法という聞き慣れない単語になおさら謎が深まった。


「何だと! 了承を得られていないのか......」と王と呼ばれた人物は頭を悩ませているようだった。


 割り込んだということからして、俺が近づいたせいで巻き込まれたといったところなのだろうか?


王は少し悩んだ後に話し始めた。

「......巻き込んでしまったことをまずは謝罪させてほしい。私はディメンティア王国の国王『アイゼント=フォース=ディメンティア』と言う。誠に申し上げにくいが、君は()()()からこの世界に転移してしまった」


「......い、異世界!? 何かの能力じゃないのか!?」

俺は幻や夢を見せる能力にでもかかっているのでは無いかと考えたが、以前にかけられたものよりも遥かにこの世界は詳細で、朧げな様子も無かったためこれが現実だと直感的にわかった。


王は混乱している俺に語りかけるように言った。

「混乱してしまうのも無理は無い。君の世界には能力と呼ばれるものがあったそうなので、これも能力によるものと勘違いしてしまうのでしょう。しかし、ここは正真正銘の異世界。証拠としては、そうですね......貴方がたの世界では能力を発動する時に身体が発光するそうですが、この世界の魔法ではそれは起きません。試しに見てください」


 王は手のひらに魔法陣のようなものを作り、そこから小さな炎や水、電気を生み出し回転させた。それは能力の発動とは違い身体が発光するオーラに覆われるようなことも無かった。


さらに言えば、人間は能力を稀に二つ持つ者がいるが、それ以上多くの能力を持てば脳が負荷に耐えらないため三つ以上能力を持つ者はいない。しかしながら、あの王は炎、水、電気の三つを同時に出して操った。これは能力で実現できることでは無いだろう。


「......なるほど、確かにここは異世界のようだ......申し訳ないですが、詳しい話をお聞かせ願いますか?」


「勿論だ。君には知る権利がある」


 それから、王は様々な事情を説明してくれた。


 この世界は現在、魔神と呼ばれる存在により危機に瀕しており、魔神を倒す力を持つ存在である"勇者"を外の世界から連れてくる必要があった。


そして魔法陣を出したあの人物は俺のいた世界から勇者の素養をもつ人物を探しており、そして素養を持つ少女から了承を得られたたので異世界転移の魔法を実行したらしい。


その時に偶然俺が割り込んでしまい、異世界転移に巻き込まれたということだった。



「......大体の事情は把握しましたが、魔神を倒すというのは彼女にその戦闘させるということですか? それとも後方支援として彼女の力を借りるといったことですか?」俺は王に対して言った。

未成年の少女をそんな危険な目に遭わせることは大人として、ダメだ。


「その質問に対する答えなら、彼女には直接戦ってもらうのでは無く、むしろ魔神を倒した後に力を貸してもらう。魔神は倒しても復活するので、その封印を行って貰うのだ。ゆえに負傷するといったことはまずありえない。安心してくれ」と王は言った。


 王の言葉は真実のようにも感じたが、何か裏があるようにも感じた。少し怪しいが、ここまで来たなら一度少女の話を聞いてみることにした。

「.......君は、了承したと言っていたが、それで良いんだね?」


「はい......この世界の方が困っていると言っていましたし、私がその力になれるなら力を貸したいんです」と少女は言った。


 少女は本心からそう言っているようで、俺はそんな彼女の決意を無駄にしたくは無いと思った。


自分にも出来ることはやりたい。


俺は一度能力が使えるかどうかだけ試してみると、先ほどとは違い能力は使えた。


「.......国王、俺にも魔神を封印するの手伝わせてください」


「手伝いか......とは言え、君はあくまで巻き込まれただけで......」


「俺は元の世界では"最強の能力者"でした。この世界でも能力は使えるので、役に立てるはずです」


王は俺のことを吟味するように見た。

「ふむ............ならば勇者様の護衛を任せよう」


「ご判断感謝します」


「君の力に期待しているよ」




 そしてしばらくして王との話が終わり、勇者の来訪を祝した夕食会が開かれることになった。



 その間に聞き耳を立ててこの世界の状況を知ったところ、どうやらこの世界の大半は魔神によって支配され、草木も生えない不毛の土地となってしまっているようで、この王国もジリジリと土地を失いつつあるようだ。


そして国王はその状況を打開すべくいくつかの世界へ魔神の封印が可能な者を探していたところ、ついにあの少女を発見したとのことだった。


 あと、国王はかなりの強者で、魔神に近しい実力をを持つらしい。しかしながら、不死性を持った魔神には敵わないとのことだった。





夕食会の折、俺は同郷の少女に近づき軽く挨拶した。

「そういや名前、言ってなかったな。俺は天崎 時哉だ。君は?」


「あ、初めまして。私は【鳥宮 咲月】と言います」


「鳥宮さんか、まさか異世界に来るとは」


「......はい......でも、天崎さんは私のせいでこっちの世界に......」


「気にすんな。あれは不可抗力だ......そう言えば、鳥宮さんは未成年に見えるが親御さんとは話とかしたのか?」


「はい、話しましたよ......」と少女は小さく言った。しかし、それが嘘だと顔を見ればすぐにわかった。


「.......世界の外へ家出ってわけか」


少女はドキッとした様子でこちらを睨んだ。

「.......天崎さんって、警察みたいな組織の人なんですよね? やっぱり、怒りますか?」


「本当ならそうした方がいいんだろうが、俺は怒らない。というより、怒れないな」


「......それって、どう言うことですか?」


「俺はまだ君が家出した理由を知らないし、この世界を救うために来たって言うんならそれはある意味褒められたことだ。だから今のところ俺は君を怒らない......どうして家出したのか教えてくれないか?」


鳥宮ははぐらかすように笑った。


「......親と喧嘩してしまって、家を飛び出したら、この世界を救って欲しいと頼まれたんです。それで、私が救えるなら、助けてあげたいなって思って......」


「それなら、親御さんに心配かけないように早く帰らないとな。国王に聞いたら元の世界に帰還する方法もあるみたいだし」


「............はい。そう、ですね」


「まあ安心しとけ、何があっても俺が絶対守る。こう見えて、戦闘だけなら最強の能力者だからな」


「なんか頼もしいですね。そう言えば、時哉さんって何の能力を......」と少女が言いかけた時、突然王宮の上空から緋色の火球が放たれた。


それは真っ直ぐこちらに向かって来ており、狙いは横にいる少女だと直感でわかった。


火球は大人一人ほどの大きさで、真っ直ぐこちらに向かって来ているが王宮の者は国王以外は気づいていない。



火球に気づいた少女は悲鳴を上げて咄嗟に防御する姿勢になった。しかしその程度では防げないだろう。


 俺は少女の前に立ち、迫り来る火球に素手で触れた。するとその火球は一瞬で消失し、小さな緋色の火の粉が辺りに散った。


周りの者たちもただ事でない事が起きたと気づき、俺たちの方を見た。



「どうやら、魔神が先に仕掛けて来たようだな」



 王の言葉を聞き、夜空を見上げると、火球の飛んできた先の雲の上から巨大な赤龍の首が飛び出した。人間よりも遥かに巨大な体躯に真っ赤な鱗を全身に纏わせた怪獣のような存在が現れたのだ。


赤龍の咆哮により雲が吹き飛び、星が顔を見せた。雲が消え去り、見えた夜空には赤龍の他に、コウモリの翼を持つ無数の黒い人型の化け物がいた。


赤龍は急下降し、口を大きく開いて炎のブレスを吐いた。


炎が迫り、俺は王に尋ねた。

「あの赤龍は撃退してもいいよな?」


「構わんよ」


俺は赤龍に向かって走り、炎のブレスを浴びながら跳んだ。

そしてブレスを抜けて赤龍の顔に触れた。


 その瞬間、赤龍の体が透き通るような空色の光に覆われ、その巨軀きょくが一瞬で消滅した。


「な、赤龍を、一撃で倒しただと......!?」と周りの者たちがざわめいた。


俺は再度能力を発動した。


世界が静まり返り、周囲のあらゆるモノが静止した。沈黙の世界で空を駆け上がり、動かない化け物どもに片っ端から触れた。


世界が再び動き出し、俺が触れた化け物は全てその場から消えた。



鳥宮は俺の方を驚いた表情で見つめていた。


「一体、何をしたんですか!? 化け物が消えて......」

「元いた場所に返しただけだ」

「え............あの、天崎さんの能力って、一体なんですか? あんな凄いことが出来るなんて......」


「......ああ、俺の能力は【テレポート】だ。さっきのは、奴らを元いた場所へ返した」


「そんなすごい能力があるなんて......」


(まあ、これは嘘だ。流石にこんな人目のある場所で能力をバラすわけにはいかない)


すると、王が俺の目の前までやってきた。

「天崎くん、君の力は素晴らしい。ぜひ、魔神討伐にも協力して欲しい」

「それは構いませんが、その代わり、この子も俺もなるべく早めに元の世界に帰してくださいよ」

「もちろんだとも。勇者様含め、二人は必ず元いた世界に送り返す」


(そう言えば、鳥宮の能力ってなんだ? 魔神の封印に使えるからこっちの世界に呼ばれたんだよな?)



こうして、祝宴は解散となった。


魔神を封印する準備期間として一週間与えられ、その間に封印作戦の改良と鳥宮の能力の訓練が行わることになり、俺は鳥宮の訓練を近くで見守る役目を与えられた。同じ能力者だからアドバイス出来ることもあるだろうという国王の判断だ。


後日、訓練場で二人になるタイミングがあったので話をすることにした。


「鳥宮の能力はなんだ?」


「私の能力は【結びつけ】です。モノとモノを結びつけて離れないように出来ます。この力で魔神を封印結界というのに結びつけて拘束し続ける予定です」


【結びつけ】か、思いの外強そうな能力だ。

ただ、能力者でも能力の本質を理解しないと思っていた能力とズレていることがある。特に若い連中はそういうのが多い。


この能力が実際に魔神を封印できるものなのか、しっかり検証すべきだな。



鳥宮は訓練に励み、【結びつけ】の能力を上手く活用していた。鳥宮の話では【結びつけ】の能力は能力発動時にオーラで触れている複数の対象を不可視の切れない糸で結ぶ力があるらしい。


糸の長さは自由自在に変えられるため、糸の長さを長くすれば結びつけられてもある程度は自由に動かせるし、逆に短くすればくっついて離れないようになる。


たとえば、りんごとペンを0.01センチの糸で結びつけるとりんごにペンが刺さって、アッポーペンにすることもできる。


どんな能力も使い方次第では人を傷つけうる。それが俺たちの世界の常識だ。



そんな時、一人の青年が俺に近づいてきた。


「貴方が、異世界転移に巻き込まれたという少年かな?」


青年は凛々しい雰囲気で騎士のような出立ちをしていた。


「そうだが、どちら様?」

「私は騎士団の一員でマルコスと言う。君に、話したいことがあるんだ。少しの間、私と二人きりになってくれないか?」

「構わないですよ」


マルコスに連れられ、王城の一室で二人きりになったところでマルコスが話し始めた。


「早速で悪いのですが、貴方はこの世界のことをどう思っていますか?」

「どうって......科学技術よりも魔法?という技術が発達していて、魔神という未知の脅威が存在する物騒な世界ってとこだな」

「まあ、それは合っていますね。なら、魔神という存在はなんなんだと思いますか?」

「......人類を脅かす悪の存在だと国王からは聞いている」


青年は残念そうな顔をした。

「やはり、みなそう思っている。いや、そう思わされている」

「どういう意味だ?」

「この世界は、"滅びるべき"なんです。だからこそ、魔神様は瘴気を払う邪魔をしている」


マルコスの姿はまるで狂信者のように見えた。


「お前、魔神の手下か?」

「そのとおりです。もし、貴方たち異世界人が私たち魔神に手を貸すならば、我々が責任を持って貴方たちを元の世界へ返しましょう。そもそも、貴方たちにこの世界を救う義理はないのですから、協力してください」


協力するか、それともしないか......2択が迫られる。だが、そんなことは関係ない。


「とりあえず、話を聞いてからだな。知っていることを全て話せ。出来ることは全てやってやる」





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