表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

後編


 オレは地図の中に落とされたのだが、全身が地図の中に落ちた瞬間にすぐに足がついた。

 思わず拍子抜けした。こんな簡単に異世界に来れるものなのか?

 そして顔を上げた瞬間、正面から人がぶっ飛んできたので反射的に横に避けた。


「うぉ!!」


 ぶっ飛んできた人はそのまま勢いよく地面にぶつかってからごろごろと転がり、自然と仰向けになって止まった。

 飛んで来た人は190cmはあるガタイのいい外人のおっさん。ヘルメットはつけてないが鎧を着けているので中世ヨーロッパの映画に出てきそうな人だった。

 ぐったりと動かないおっさんが大丈夫なのか心配になったオレは、そろりと近づいて様子を見てみることにした。

 しかしおっさんの姿を見てオレは血の気が引いた。

 おっさんは全身からだらだらと血を流していた。目から、鼻から、口から、耳から、爪から……。隙間があればそこから血が吹き出ていただろう。

 血液が全身から吹き出そうとしているらしく、おっさんは内出血で体がむくれて皮膚の色は変色していた。


「うわあああ!!!」


 オレが勢いよく後ずさりすると、ドスンとぶつかった。


「ひぃ!!」


 驚いて悲鳴を上げたが、後ろを見たらそれが兄貴で心底安心した。


「大丈夫か?」

「大丈夫じゃねえよ! なんでいきなり死人が飛んでくるんだよ!」

「え? あー……多分この人は」

「カイト!」


 兄貴が説明をしようとしたところで、高くてやわらかい声が兄貴の名前を呼んだ。声のした方向へ向くと、オレは言葉を失った。


 透き通るような白い肌、輝く黄金色の髪に深いアクアマリンの瞳、そして挑発的だが円らな瞳をしていてまさに天使。この子が兄貴の言っていた沙耶さんの妹……件の末っ子だとすぐ分かった。

 オレは思わず見とれている間に末っ子は兄貴に駆け寄った。


「サヤねえは?」

「ここにいるぞ」


 舌ったらずの末っ子の質問に兄貴が沙耶さんの妹に日本刀を見せると、以前のように白刃にキスをして沙耶さんは人型になった。


「サヤねえ! おかえりなさい!」


 末っ子はだっこをねだって沙耶さんに両手を伸ばして背伸びとぴょんぴょんとジャンプを繰り返した。その姿を見て沙耶さんは苦笑しながらも妹をだっこした。


「ただいま。良い子にしてた?」

「うん!」


 妹は元気に返事をすると沙耶さんにぎゅっと抱きついた。なんだこの美女と萌えっ子のセットの破壊力は!!

 オレは心の中でもだえながらも必死で平静を装った。


「今日は何してたの?」

「きょうはね、もりでクマンモスとたたかって、それからもっとおくにいってモジャモジャをたおしてからおうちでたらこスパゲティをたべたの!そしたらね、わたしのあるじになりたいって人が来たからころしちゃった」


 そう言って妹はそこに倒れている人を指差した。人を指差しちゃいけませんとかのレベルじゃない。彼女の日常がバイオレンス過ぎる!

 沙耶さんは溜息をついていた。


「また殺したの?」

「うん! けどね、わたしだってジョーホしたのよ? イヤっていったけどあのひとえらそーなひとだったし、まわりにケライがいたからしかたなくわたしをもたせてあげたの」


 そうして末っ子が指したのは、死んでいるおっさんと似たような鎧を着た6人の男達。

 恐らくあれが家来達らしいのだが、末っ子が恐ろしいのか全く動いていない。


「その時は触らさせずに駄目ですって断らなきゃ」

「だってせかいをすくうためだから、おれといっしょにきてくれ言うし、いってもつうじなさそうだからもたせたほうがはやいかなぁっておもって」

「だからってすぐに殺しちゃ駄目でしょ?」

「あるじにふさわしくなかったらしんじゃうよ!っていったもん! それにおひげがもじゃもじゃでイケメンじゃないし、わたしをみてニヤニヤしてハアハア言ってるしきもちわるいんもん。わたしはわるくない」

「まったく……」


 口をへの字にする妹をとんとんと叩いて宥める沙耶さん。誰かを殺したのに『ピーマン残しちゃ駄目でしょ?』みたいなやりとりしているのがすごい。


「ところで末っ子の主になろうとしたのは誰なの?」

「しらない!」


 沙耶さんの質問に末っ子はぷいっと顔を背けた。沙耶さんは仕方なく後ろに行く家来に話しかけた。


「貴様らは何者だ。答えよ」


 沙耶さんのまとう雰囲気が冷たく鋭いものになり、口調も偉そうなものに変わっていた。その様にオレはびっくりしたが、おっさんの家来の人はビビッていた。そして気を取り直した家来の中でも一番偉そうな人が沙耶さんの質問に答えた。


「わ、我らはディノ・クオウス・リビ王国の者だ!」

「この愚か者は何だ?」

「このお方は我が国の王位継承第三位のハンバード殿下にあられる!」

「王族か……」


 沙耶さんは溜息をついてちょっと叱るように末っ子の凭れ掛かっている左肩をちょっと上げた。末っ子は知らないというように顔を沙耶さんの肩にぐりぐりと押し付けた。


「貴様らの用件は何だ?」

「我が王国にも心怨の脅威が拡がりつつある。故に未だに主のおられない第五心器のお力を借りようかと」

「貴様らは第三心器からの許可をもらっているのか?」

「ああ。書面だが、確かにジークフリート様から許可を頂戴している」

「何と書かれていた?」

「『命を捨てる覚悟があるのなら行くがよい』……と」

「貴様らはそれを覚悟した上で来たのだな?」

「あ、ああ…… 」

「では、貴様らの主君がこのような結果になろうとも不満は無いな?」

「…………」


 沙耶さんの問いかけに、家来は黙り込んだ。自分の主君を殺されて普通は納得出来ないだろう。恐らくこの人たちは末っ子がおっさんのソウル・アーマーになると思っていたんだろう。

 それなのに殺された理由が理由だけにやるせないだろうに。オレは家来達に同情した。


「立ち去れ。貴様らの主は第五心器の主になれる器じゃなかった。ただそれだけだ。我ら心器は唯の武器ではないことを肝に命じておけ」

「……は」


 家来達は倒れたおっさんを担いで、とぼとぼと去っていった。

 その様子を見て末っ子はあっかんべーをしていた。


「わたし、あのひときらい」

「わたくしも嫌いよ。わたくし達をただの道具としてしか見ない傲慢な愚か者たち。だけど彼は仮にも王族。むやみやたらに殺せば問題も起きやすいの。そうするとソウル・アーマーの管理をしているにジークフリートに迷惑が掛かるから我慢なさい」

「だけどこんかいのはゼッタイにジークがあのひときらいだからわたしのところにこさせたんだよ! ジークのいじわる!」

「そう言わないの」

「ふん!」


 不機嫌そうな妹は頭をコテンと傾けオレを見た。非常に可愛らしいのだが、さっきの惨状を見ただけにオレは殺されるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていた。


「このひとだぁれ?」

「俺の弟の空也だ」

「クーヤ? カイトのおとうと?」

「ええ。あなたの主候補として連れてきたの」

「じゃあわたしのあるじになるかもしれないひと?」


 妹は不機嫌そうな表情を一変させ、顔をキラキラさせてオレを見た。やべぇ超絶かわいい!!

 殺されるかもしれないなんて不安は一気に吹き飛んだ。妹は下ろしてと言うように手足をわたわたさせて沙耶さんに下ろしてもらい、オレの側に近づいてきた。

 嬉しそうにオレをじっと見て、くるくるオレの周りを回っているのが子供っぽくてかわいい。


「うん! かっこいい! みためはごうかく!」

「あ、ありがとう……」

「うん!」


 相変わらずのキラキラ笑顔でオレはにやけるのを必死で抑えた。ここで不信感をもたれたくない。さっきの男みたいに殺されたくないからな!

 妹はもっとオレの近くに寄ってきてほぼ90度でオレを見上げた。この見上げ加減がたまらなくいい!


「あなたつよい?」

「え、いや……戦った事がないから弱いよ」

「えー? よわいの?」


 妹は期待に答えられなくて非常に辛いが、口を尖らす妹が可愛すぎて和む。そこで見守っていた沙耶さんがフォローをしてくれた。


「だけど感じるでしょう?彼はまだ無色だし、貴女を無理やり武器にしようとしていないわ」

「……うん」


 沙耶さんの言葉に尖らせていた唇を元に戻し、だんだん笑顔が戻ってきた。そしてくるりと沙耶さんのほうを向いて尋ねた。


「ねえねえ! サヤねえ! ためしてもいーい?」

「空也様に聞いてごらんなさい」

「ためしていーい?」


 再びオレを見上げて末っ子は尋ねてきた。


「試すって何を?」

「わたしのあるじにふさわしいか、ためすの! クーヤはころさないからだいじょうぶだよ!」

「そ、それならどうぞ……」

「うん!」


 末っ子は返事をするや否や、光に包まれて武器の姿になった。沙耶さんの説明してくれた通り、形状としてはベースが剣で、刃に銃が埋め込まれその反対側には着脱可能な小さな盾がついており、柄の近くにトリガーと柄の先に丸い金属がついていた。

 何だこれ?っと思ったら末っ子が教えてくれた。


『それはくさりだよ。ひっぱるとのびるの!』

「え!?オレ口に出てた!?」

『ううん。ブキになればクーヤのきもちわかるの!」

「マジで!?」

『うん!』


 ちょっとそれオレの気持ちとか全部ばれちゃうんじゃないのか!?


『ううん。まだクーヤとそんなになかよくないからゼンブはわかんない。だけど、こんなにわかるひとはクーヤがはじめて!』

「そ、そう?」

『うん!』


 嬉しそうに言われてなんだかオレは照れた。はじめてっていい響きだ……。オレが浸っていたら、末っ子は美少女の姿に戻った。うん、可愛い。


「ねぇねぇ、クーヤ! わたしといっしょにシンエンとたたかいたい?」


 末っ子は天使の笑顔でオレに尋ねた。ものすごく期待している。だけどオレは、すぐに返事を出来なかった。何も言わないオレを不審に思ったのか、末っ子はオレを急かした。


「ねぇ!クーヤ!」

「……くない」

「え?」

「戦いたくない」


 オレの否定に、末っ子は大きな目をさらにまん丸に見開いた。そして怒ったように、瞳が潤んできた。そして必死で睨みつけているが、顔は全然怖くない。だけど、段々空気が重たくなってきてじわじわと恐怖が湧き上がってくる。


「なんで!? わたしはサイキョーのソウル・アーマーだよ! せっかくわたしがあるじにしてもいいかなっておもってるのに!」

「ご、ごめん、主にもなりたくないんだ」

「なんで!? クーヤがよわいから!?」

「それもあるけど…」

「わたしがたたかうからだいじょうぶだよ?」

「だからイヤなんだって!」

「なんで!?」


 妹は泣く一歩手前で瞳にいっぱい涙を溜めて、泣かないように顔をくしゃっと歪めている。罪悪感が半端ない……。

 オレは気持ちを落ち着けると、しゃがみ込んで末っ子と視線を合わせて出来るだけ冷静に優しく話しかけた。


「君みたいに小さいくて可愛い子に戦ってほしくないんだ」

「たたかってほしくない?」

「ああ」

「なんで?」

「やっぱり戦いって痛かったり辛いだろ?傷ついてほしくないんだ。出来れば、もっと平和な日常を楽しんでほしい。それに……」

「なぁに?」

「あ……主ってなんか犯罪っぽいし」


 言いづらくて思わず顔を背けた。小さい子に主って言われるとなんか罪悪感がある。いや、本当はちょっと興奮するけど、やっぱり駄目だって理性がオレを押しとどめる。だから主にはなりたくない。


「はんざい? なにがはんざいなの? じゃああるじははんざいだとわたしはずっとやくたたずなの? ひとりぼっちなの?ずっとなまえないの?」


 再び泣きそうになる妹を、オレは慌てて必死で宥めた。


「そういう意味じゃなくて! あー、泣かないでくれよ」

「う‥ぇ…うぇええ!!」


 妹はとうとう泣き始めてしまい、沙耶さんのもとへ戻っていった。沙耶さんは残念そうに妹を慰めていた。


「私たち心器は、心憎を滅ぼすために存在しています。そして主が居なければ真の力を発揮する事が出来ません。それ故、末っ子は兄弟から煙たがられることがしばしばあるのです」

「…………」


 じゃあオレ、彼女…いや、彼女達の事を全否定してしまったのか…。


「知らなかったとはいえごめん…」

「いえ、私は大丈夫です。初めてカイトに会ったときに言われました」

「兄貴が?」

「はい」


 沙耶さんがクスリと笑うと、兄貴も釣られて苦笑した。


「お前と同じでやっぱり戦って欲しくない。だけど、戦わなければこの世界に平和はない。彼女達との平和な世界を築き上げるためにも、俺は沙耶と一緒に戦い続ける。だから末っ子の力が必要なんだ」

「…………」


 兄貴の固い決心が俺にも響いた。兄貴はいつだって優しかった。優しいからこそ強いんだ。いや、強くなれたんだ。


「なぁ、兄貴」

「何だ?」

「オレも…強くなれるかな?」


 オレの問いかけに、兄貴はにっと笑って認めてくれた。


「ああ、もちろんだ!お前は根気もあるからな。きっとなれる」

「そっか…」


 兄貴の言葉に押され、オレの気持ちも固まった。俺は、この子の主になろう。そして、この子が笑って過ごせる世界を作る手伝いをする。

 オレは沙耶さんに泣きついている妹の側にいって、しゃがみこんだ。


「ひどいこと言ってごめん」

「ひっく! ひっく!」

「オレ、君の主になるよ」

「ヒック! あるじはっはんざいだから、ひっくっイヤなんでしょ?」

「そういう意味じゃなくて……」

「わたしのあるじにならないクーヤなんてキライ!」

「うっ!!!」


 キライ発言が胸に刺さる。だけどここでへこたれてたらずっと仲良くはなれない! 堪えろ、オレ!


「オレは主というよりも君と対等で居たいんだ。どっちが偉いとかじゃなくて、一緒にいたい」

「いっしょにいたい?」


 妹は泣き止み、オレのほうを不思議そうに見た。


「ああ。君と一緒に…みんなと一緒に世界を平和にして、君が戦わずにいられる世界を作りたい。だから君の力を発揮できるんなら主にはなるけど、オレのことを主じゃなくて空也として見てくれないか?」

「…………」


 妹はオレをボーっと見つめていた。泣いたからちょっと目が赤くなってる。悪い事しちゃったな……。

 涙を拭いてあげたい。ていうかぷにぷにほっぺとかすっげー触りたい。絶対にやわらかくて気持ちいいだろうな。

 全然関係ないことを考えながらも、オレは妹の返事を待った。


「……じゃあクーヤは、ずっといっしょにいてくれる?」

「ああ」

「わたしをあいしてくれる?」

「もちろん」


 可愛いは正義だからな。イヤってくらいに愛でたい。オレの返事に妹の顔は晴れやかな笑顔になった。


「じゃあクーヤ! わたしといっしょにいていいよ!」

「ありがとな」

「なまえちょーだい!」

「うーん……どんなのがいいかな」

「かわいいの!」

「可愛いのかぁ……」


 末っ子は目をキラキラさせて楽しみにしている。ここまで期待されると気に入られなかったらどうしよう……。オレ、そんなにセンスあるほうじゃないし、見た目通りでいいや。


「アンジェラ」

「アンジェラ?」

「うん。天使って意味。天使みたいに可愛いし、何か祝福をもたらしてくれるといいと思って」

「アンジェラ……」


 アンジェラは嬉しそうに満面の笑顔になると、沙耶さんに向かって大声で報告した。


「サヤねえ! わたしアンジェラ! てんしってイミだって!」

「ええ、いい名前をもらったわね」

「うん!」」

「よかったな、アンジェラ。これでお前も一人前だ」

「うん!!」


 アンジェラはオレの方に向き直ると、力いっぱい抱きついた。


「アンジェラ! クーヤのソウル・アーマー! ずーっとだいすき! クーヤもアンジェラのことすき?」

「うん、大好き」

「やったー! アンジェラもだいすきだよ!」


 ぎゅーっと力強く抱きしめてくるアンジェラが愛おしくて溜まらない。これからずっとアンジェラと一緒かぁ。幸せすぎる。オレもう、アンジェラなしじゃ生きていけないわ。

 優しく抱き返すと、アンジェラは手を緩めてオレにキスした。しかも唇。

 オレはただ呆然とした。いま、何が起きた?

 固まっているオレとは反対に、アンジェラは嬉しそうだった。


「どうしたのクーヤ?」

「いや、だって今、キス…」

「うん! あのね、だいすきなひとはキスするんだよ! カイトとサヤねえもしてるの! だからアンジェラもクーヤにいっぱいするね!」

「あー! ちょっと待て!」

「あぅっ!」


 オレは再びキスしようとするアンジェラを高い高いして引き離した。しかしアンジェラは不満そうにほっぺを膨らました。


「なんで? クーヤはアンジェラのことキライなの?」

「キライじゃない! だけどな、口はやめような?」

「なんで? カイトとサヤねえはいっぱいしてるよ。ベロがつながっちゃうんじゃないかってくらいしてるよ!」

「兄貴! 沙耶さん!」

「あ……はは」

「……すみません」


 あんたらのせいでアンジェラが穢れちまうだろうが!! 子供は意外と見てるんだからな!この容姿でべろチューしてたら泣けてくるんだけど!

 大体兄貴はともかく沙耶さんにはもっと慎ましやかにしてもらいたい!!!

 オレは二人を思いっっきり睨んでからアンジェラに笑いかけた。


「アンジェラ、口にするのはアンジェラがもうちょっと大きくなってからしような?」

「えー? なんでー?」

「えーっとなぁ……。確かにキスは大好きな人としかしちゃいけないんだが、実は大きくならないとしちゃいけないんだ」

「なんで?」

「あー……大きくならないと体に悪いんだ」


 特にオレがな。良心が痛む。


「そうなの?」

「ああ」

「じゃあ口じゃないならいいの?」

「うーん……たまになら?」

「たまにってどれくらい?いっぱいしちゃだめなの?」

「えーっと……」


 もうなんていえばいいのか分からん!

 オレは無言で兄貴と沙耶さんに助けを求めた。大体あんた達が場所を弁えずにやってたせいでもあるんだからな!

 オレの怒りが伝わったのか、二人はフォローをしてくれた。


「アンジェラ。とりあえずいっぱいしたら空也様も困るから、空也様がやめてっていったらやめてあげるのよ?」

「そうだぞ。たくさんされると空也が苦しくなっちゃうからな」

「むぅー……分かった」

「ありがとな」


 アンジェラが渋々ながら納得してくれたので降ろそうとしたら、アンジェラはオレの胸元に抱きついてきた。


「じゃあクーヤもキスしてー!」

「え!?」

「クーヤもアンジェラのことすきなんでしょ? だからキスするの! そしたらきょうはもうキスおわり!」


 えへへ!といった感じで茶目っ気たっぷりでオレに提案してくる。


 もうなんなんですかねこの子! オレを犯罪者にしたいんですか!? それともオレを萌え殺したいんですか!? こんな可愛い子に手を出すなんてよくないと思いつつもやましい思いも段々出て来るんだよ!

 アンジェラは急かすようにオレを揺するのだが、その力は幼女じゃない。すごい揺れる。

 その様子を楽しそうに兄貴と沙耶さんが見ている。


「アンジェラは一度言い出したら聞きませんから」

「ここで断ったらしばらく口利いてもらえないぞ」

「うっ!」

「ねぇークーヤー!」


 アンジェラの機嫌も徐々に悪くなってきたのか、オレを揺する力も強くなってきた。


「わかった! わかったから!」

「ほんと?」

「ほんとほんと」


 …とりあえず兄貴と沙耶さんには見られたくないので、見えないようにくるりと反対を向いて軽くおでこにキスをした。


「むぅ……ものたりないけどクーヤがくるしいならガマンしなきゃね」

「あはは……」


 アンジェラは思っていたよりもおしゃまさんだった。それも可愛いけどな。苦笑しながらアンジェラの頭を撫でれば少し機嫌が良くなった。


「ねぇねぇ! もうちょっとおおきくってどれくらい?」

「えーっと……沙耶さんくらいかな?」

「だーめ! いつになるかわかんないー!」

「え? 何で?」

「我ら心器は生まれた頃より外見年齢は異なります。そして心の成長により容姿が変わりもっとも力が成熟した状態で成長が止まります故、その容姿になるまでどれくらい掛かるかは分かりかねます。もしかしたら、アンジェラはずっとその容姿のままかもしれません」

「それは……」


 超いい! ずっと天使じゃないか! アンジェラには悪いがずっとそのままでいて欲しい。


「ねぇー? いーつー?」

「……そのうち大きくなるよ。今のアンジェラでも十分可愛いから焦らず育てばいいさ」

「えー?」


 アンジェラは不満タラタラだったが、オレは全然文句無かった。むしろこのままでいてください。


 その後オレと兄貴は高校に通いながらも異世界を行き来しながらの生活となった。なんだかんだで親にも沙耶さんとアンジェラのことは紹介して、家に居るのも許可してもらった。まぁアンジェラがオレの部屋でうるさくしていたからバレてしまったというのが正しいけどな。

 同居生活は最高だった。ご飯を食べるときも寝るときも、お風呂はちょっと遠慮してもらったけどいつでもアンジェラがいる。(一方的な)ケンカもしたり色々と振り回されたが毎日が楽しかった。


 そしてアンジェラはすくすくと成長し、何故か2年後には10代後半の絶世の美少女に成長してしてしまった。いや、別に好きなんだけど、精神年齢が幼いのにやたらオレにべたべたくっついてきてオレは理性との戦い続ける羽目になったのはキツかった。しかしアンジェラのおかげでオレは他の子にあまり興味が無くなり、子供は可愛いと思うがロリコンは卒業できたのだった。


 これでもう、変態じゃないよな?















 変態と幼女を書きたくて書いた駄文にお付き合いいただき有難うございました!

 ちょっとアンジェラのツンデレのツンがなくなってしまいましたが書けて満足です。

 イケメンと可愛いは正義!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ