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青の亡霊ー真実を暴かない探偵は、正しさを後悔している―  作者: 天水 こうら
第六章 名前のない気持ち

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心にかかる雲

人生初クレカを作りました

翌日。


秋の空は高く、昨日より少しだけ涼しい風が吹いていた。


文化祭が終わってから二日。


学校はすっかりいつもの空気を取り戻していた。


昼休み。


教室では、相変わらず文化祭の写真を見せ合って盛り上がっている。


そんな中、僕はスマホを眺めながら小さくため息をついた。


『今度、どっか遊びに行かない? 二人で』


昨日の白石の言葉。


結局、まだ返事はできていない。


断る理由があるわけじゃない。


嫌なわけでもない。


それなのに、なぜか決心がつかなかった。


「東雲、どうした?」


隣の席の男子が不思議そうな顔をする。


「いや、なんでもない」


そう誤魔化しながらスマホをしまう。


その時。


「東雲!」


振り向く。


主役の衣装の面影なんてもうない。


制服姿の白石が、笑顔でこちらへ歩いてきていた。


「この前の返事、まだ?」


「今度の休みの話!」


そう言った時だった。


「先輩!」


別の声が重なる。


教室の後ろのドア。


そこには、いつもの笑顔を浮かべた深冬ちゃんが立っていた。


……けれど。


僕の隣にいる白石と、彼女の言葉。


そして。


『今度の休みの話』


という一言を聞いた深冬ちゃんの表情が、ほんの少しだけ固まった気がした。


「今度の休み、返事待ってるから!」


深冬ちゃんが現れる。


「先輩、お昼一緒に食べませんか?」


笑顔はいつも通り。


でも、


「白石先輩とお出かけするんですか?」


と少し気になる様子。


東雲は


「いや、まだ返事してないよ」


深冬ちゃんは


「そうなんですね」


と笑うが、どこか元気がない。






自分で思う、最近の自分は変だと。


先輩と文化祭を一緒に回ってからより変な感じがするようになった。


なぜだかわからない。


ベッドに寝転びながら、


『今度の休みの話!』


という白石さんの言葉を思い出す。


「……なんで気になるんだろ」


「先輩が誰と遊ぼうが、関係ないのに」


なのにどうしてか胸が痛む。








遊びに誘われたことは嫌ではない。


でも乗り気になれない。


白石への返事を考えるたびに深冬ちゃんの顔が浮かぶ。


彼女は関係ないはずなのに。


そんなことを考えながら目をつぶる。






「東雲! 考えてくれた?」


昼休み。


白石が机に身を乗り出すようにして笑う。


「今度の休み!」


「返事、聞かせてよ」


僕は一瞬だけ言葉に詰まる。


本当は、まだ迷っていた。


白石と遊ぶのが嫌なわけじゃない。


むしろ、助けたいと思ったし、一緒にいて楽しいと思う。


それなのに。


頭のどこかで、深冬ちゃんの顔が浮かぶ。


文化祭で笑っていた顔。


夕暮れの中庭。


『先輩と一緒なら、何でも楽しいですよ』


あの声。


「東雲?」


白石が不思議そうに顔を覗き込む。


「……ああ、ごめん」


「ちょっと考え事してた」


悩んでいても仕方ない。


答えの出ないことを考え続けても、前には進めない。


心にかかった雲から目を逸らすように。


僕は、小さく笑った。


「今度の休み、空いてるよ」


「一緒に行こうか」


一瞬。


白石の目が大きく開く。


そして——


「ほんと!?」


ぱっと花が咲くように笑った。


「やった!」


「じゃあ、映画見て、そのあと買い物して……」


嬉しそうに予定を話し始める白石。


その笑顔を見ながら、僕も笑う。


……なのに。


なぜだろう。


胸の奥に、小さな違和感だけが残っていた。


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