㉒アラリオン(Side)
目的の村に到着したが、あまりの惨状に動揺し村の手前で皆が立ち止まってしまった。この様な場を見慣れてる自分でも一瞬躊躇してしまったくらいだ。
それくらい凄惨な光景が広がっていた。
だが自分が立ち止まるわけにはいかない…
「誇り高き獣人族をこんな状態で野晒しには出来ない、辛いだろうが一刻も早く仲間を弔ってやろう…」
遺体を1ヵ所に集める者、破壊された家屋を整理する者、生存者を探す者などそれぞれに指示を出し動いてもらう。
見たところ殺された村人はほぼ年老いた男性だ、若い男性で亡くなっているのは果敢にも敵に挑み殺された者達だろう。
女子供、その他の男性は生きたまま連れていかれたはずだ。こうしてる間にも奴らは自国へと早急に向かっているだろう…しかし連れ去った獣人達は少なくとも20人はいる、だとしたらその人数を連れての移動はかなり難航するはずだ、兄上がルーンの森を捜索している間に発見出来ればいいのだが…
ここが落ち着いたら俺も捜索の方に合流するか…
そんな事を考えていると
1人ポツンと立っているエイルリス嬢が目に入る。
彼女は今にも泣き出しそうな顔をしながら固まったように棒立ちになっている。
無理もない俺達でさえ戸惑ってるんだ、こんな凄惨な光景を見たこともない貴族の令嬢が何か出来る筈がない。
酷い物を見せてしまったな…
確かに人間がやった事だ、しかし同じ人間だとしても彼女は奴らとは違う。
彼女に現実を受け入れろ、自分の目で確めろなどと良く言えたものだ…
あんな小さく細い体で勇敢にこの場所に立っている、目をそらさずに震えながらも堪えているエイルリス嬢を見ていたらとてつもない罪悪感を覚えると同時にたまらない愛おしさが募ってくる。
なんだこの感覚は…
とにかく、彼女をここから遠ざけたい。
彼女の元へ足早に行くと村長の家へ行ってほしいと切り出した。
だが彼女はなかなか行こうとしない、どうみても限界だろうにやけに頑なに拒む。
いったんここから離れさせないと心が壊れてしまう…
焦った俺はかなりの辛辣な言葉をぶつけてしまった、あれは言い過ぎた…しかしあれ位言わなければここから動かなかったと思う。
村長の家へ向かうエイルリス嬢の儚げな後ろ姿を見ていたら思わず駆け寄って大丈夫だ、と強く抱き締めたくなった。
おい、だめだ…何を考えているんだ。
寄り添ってやりたいが、今はだめだ…自分のやるべき事をする、それからだ。
しかし…あんな事を言った俺はもしかしたら嫌われてしまったかもしれない…
きつ過ぎたか………………。
***
彼女を初めて見たのは馬車が転落した事故現場だった。
獣人仲間のネリスがエイルリス嬢に覆い被さって完璧に守っていた。それがなければ彼女の命はなかっただろう…
ネリスの腕の中にいたエイルリス嬢はあまりに生気がなく真っ青な顔をしていたのでもしや…と息を飲んでしまった程だ
獣人にはない儚げな容貌と相まってまるで妖精のように見えた。とても美しかった…
だが、彼女が回復し対面してみれば見た目とは裏腹に意外に気が強くしっかりしているようでどこか抜けていて、それでいてなかなか勇敢な所もあってと、見ていて本当に飽きない。
こんなに興味を引かれる人間は初めてだ…
女性として好きとかではなく彼女の考え方、行動…とにかくわからないが俺の心を惹き付けるのだ。
もっと沢山話してみたい、彼女を知りたい。
何故そう思うのか自分でもまだわかってはいない。
だがきっと彼女と接してるうちにおのずと見えて来るはずた。
このモヤモヤした気持ちの正体を知った時、俺はどう変わっていくのだろう…




