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土竜・オブ・ザ・シティ  作者: 九木圭人
目覚めし者の夢
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目覚めし者の夢17

 フェンスの向こうで、全てが炎に包まれていく。

 装甲化外骨格は次々にコンテナや建物の中に入り、ここからは見えないその中を掃討しているのだろう、そいつらが出てくると、すぐに次のコンテナの中に入っていく。


 そしてその後ろからついてくるようなマクロファージ。大食細胞の名が示す通り、たった一機だけで、立ち上がって来たレジスタンスの戦闘員たちを蹴散らしていく。

 機銃が薙ぎ払い、四本の巨大な脚部が質量兵器として叩きつけられる。


「……ッ!中だ!中に逃げろ!!」

 余りの状況に呆気に取られていた俺たちの中で、最初にその声を発したのはツナギの男だった。

「皆殺される!!逃げるんだ!!」

「何を言っている!同志たちを見捨てる気か!!」

 ショットガンの男=バウカーが叫び返し、彼の肩を掴む。

 その手に握られている12ゲージのショットガンは、恐らくあそこにいる全ての敵に効果が無いだろう。

 そしてその手を渾身の力で振り払い、ツナギの男は震える声で叫び返す。

「無茶言うな!!勝てる訳ないだろう!!?」

 多分、仮に彼が戦車に乗っていても、核兵器の発射ボタンを持っていてもその答えは変わらないだろう。

 彼は震えていた。バウカーの両腕を振り払った彼の手は、そのまま自分の頭を覆った。


「嫌だ!嫌だ!!」

 子供のようにそう叫び、飛び出して来た新東棟に駆け込む。

 俺たちもそれに続き、エルウィン氏を前後で挟んで連れていく。駆け出したツナギの男の内心は知る由もないが、行動だけで見れば彼の方が正解だ。

「うわぁっ!!?」

 だが、その先頭を行く男は廊下の真ん中で腰を抜かした。

 廊下の突き当り、恐らく新東棟内の店舗か、通路かに面していたのだろう扉が爆音を立てて吹き飛び、それまでそこにあった、観音開きのスイングドアをうず高く積まれた――というより上から崩落して来た瓦礫に変えた。


「こっちだ!」

 代わりにエルウィン氏が叫び、そして飛びついたのは、先程までいた談話室の向かい側の扉。恐らく元は何かの店舗のバックヤードだったのだろうそこ。

 彼の前に回り、後ろ蹴りでドアをぶち破る。同時にエリカが彼を拘束する。万が一にでも飛び込んで、中の敵と鉢合わせたりした日には目も当てられない。


「逃げろ!!」

 その隙にツナギの男が飛び込み――そして、予想された通りの結果をもたらした。

 バックヤードの中、左手側にある扉が開け放たれ、そこから顔を出したLD兵と彼が鉢合わせた。

 そしてその瞬間、彼の体は宙に浮いた。

「クソッ!!」

 叫びながら引き金を引く。

 もんどりうって倒れるツナギの男。彼の体が床に崩れ落ちて動かなくなる前に、彼を撃ったLD兵を扉の向こうに吹き飛ばす。


「ここに隠れて!」

 エリカが叫び、俺の後に続いて室内へ。

 同時に倒れたLD兵の後ろから、同じようにLD兵が二体。

「「ッ!」」

 その二体にそれぞれ銃弾を撃ち込んで返り討ちにし、襲撃が途絶えたところで倒れた男への蘇生処置を試み――ようとして中止する。

 一目見ただけでもう手遅れなのは分かった。


「ッ!!」

 それに再び二体のLD兵が飛び込んできて、彼の後を追わないために奴らの撃つより速く撃たねばならなかった。


「入って!」

 今度こそ始末した。そう判断してエルウィン氏を室内へ。

「CPよりアルファ!モールの周辺の主要道路は全て封鎖され、モールには全ての方向から警備部隊が侵入している!!脱出ルートを発見するまで待機せよ!」

 それがどれだけ無茶な命令なのかは、エルマさん自身が一番よく分かっているだろう。

 そしてそうとしか言えないという事も。

 それを言うのが彼女の仕事だという事は、俺もエリカも分かっていた。

「アルファ1了解。こちらでも探します」

 扉の向こうから目と銃口を離さずに返答。

 その探す担当は、今回は俺だ。


「この施設は包囲されつつある。通常の出入り口以外に脱出できるルートはありますか!?」

「確実とは言えないが……」

「何でもいい」

 自分の舌が頭の中より遅れている事をもどかしそうに、彼は発した。

「地下駐車場の管理室横の倉庫だ。あそこから下に降りられるはずだ。この前同志チェスターが見つけた」

「下とは?」

「多分……三層だ」

 三層。サイストックの最下層にして、本来のサイストック。

 ちらりとエリカを見る。警戒しながら、彼女も一瞬だけ目配せ――他に手はない。


「今から地下駐車場まであなたを護送します!場所を教えてください!」

 それだけ言って、答えも聞かずに前方に意識を戻した。

「よし、進もう」

 彼女がそう告げて、今度は自らがポイントマンに立つ。


「地下駐車場への道は?」

「中央だ。東棟と西棟のぶつかりあった――」

「よし。今から店舗を通って新東棟のメインストリートを抜け、そこに移動します。絶対に我々から離れず、我々の前に出ないでください」

 矢継ぎ早にそれだけ伝え、エリカの後に続く。

 扉の向こうはかつてはブティックだったと思しき場所。

 最低限のクリアリングでそこに滑り込む俺たち。


 エルウィン氏にはバックヤードで待つように伝え、同時にインカムに告げる。

「アルファよりCP。ダイヤから三層に出るルート情報を提供されました。ダイヤを護送してそちらに向かいますオーバー」

 返って来たのは落ち着いた――努めてそうあろうとしている声。

「CP了解。分かっていると思うが、アルファ両名の生還を大前提とする。CPアウト」

 それが何を意味するのかは分かっている。だがそれ以上考えるのは後回しだ。


 かつては買い物客で賑わっただろうブティック。勿論今では商品もマネキンもショーケースも、在りし日の姿は既になく、残されている僅かなインテリアと、かつてはそれさえ飾り立てて陳列に利用していたのだろう、一定間隔で並ぶ角柱だけ。


「前方に敵!複数!!」

 今は客もおらず、来るのは正面入口からなだれ込んできたLD兵だけだ。

「ッ!」

 手近な柱に身を隠し、同じく隣の柱に隠れたエリカと同時にそれぞれの柱から最小限に体を出して射撃。

 飛び出した瞬間目の前にいたLD兵が銃口を向けるよりも一瞬だけ早く、その頭を撃ち抜いて柱に戻る。


「ちぃっ!」

 止まることなく柱の左へ体ごと振り向く。回り込もうとかつてのカウンターの前を迂回したもう一体のLD兵と同時に発砲。

「ッ!!」

 一発が左頬を掠め、一発が柱にめり込む。

 そしてこちらの三発のうち二発が、奴の体をカウンターの向こうに叩き込んだ。


(つづく)

今日はここまで

続きは明日に

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