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ゲームつよつよ系Vtuberはレティクルの向こうに何を見るのか  作者: 畑渚


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夜更け

「はい、こんばんは。音と画面と大丈夫でしょうか」


<こん>

<わこつ>

<あれ?ララちゃん泊まってたんじゃないの>


「私もいるよ~」


<声遠くて草>

<感じる……部屋という空間ってやつを>

<上級者おるな>


「今日はララちゃんもいるので、せっかくなので2人でできるゲームをやろうと思います」


 私はゲーム画面を映し出し、サムネイルも用意していたものに変える。


「というわけで協力型のゲームです」


<協力……?>

<バトロワなんですが>

<協力要素どこ……?ここ……?>


「今回は誰が何と言おうとも協力型だよ!」


 これは60人くらいの部屋で、ゴールまで障害物を超えて行くタイプのバトルロワイヤルゲームだ。まるでお菓子のような見た目のキャラたちが、血みどろの王冠争奪戦を繰り広げる様は話題を読んだ。


「ちなみに妨害はありです」


「えっ?筑紫ちゃん?」


 もちろん、チームを組んだからとて有利になることはない。むしろ配信者の中では、足を引っ張り合うほうがウケがよいという認識がされている。


「ララちゃん、世界はそんなに甘くないですよ」


「うそうそ!やだぁ!」


 などと言いながら、体は正直である。完全に目の色が、狩るものに豹変している。


「というわけでゲームスタートです」



❍✕△❑



「えっ、ゲーム配信?」


「はい。せっかくほぼ毎日続けていることなので、今日もやりたいと思って」


 お風呂から上がった私たちは、ダイニングでお茶をしながら話した。


「う、うん。全然いいよ?私のことは気にしないで」


「そうはいきませんよ」


 客人を無視してゲームをするなど、私はできない。というか、後ろから見られているとプレイに集中できなくなるので苦手ということもある。


「型落ちのものですが、軽いゲームなら動くのでこれで何かやりましょう?」


 昔使っていたノートパソコンをララちゃんに渡す。型落ちしているとはいえ、グラボも積んだゲーミングノートパソコンなので多少のゲームは動くはずだ。


「う、うん。わかった。ゲームは?」


「ああ、それならもう決めてあります。リクエストが多いけれど1人じゃあまりやりたくなかったゲームがありまして……」


 たとえ何があろうと、鐡ララは視聴者からララちゃんでいることを求められる。そのファンの期待を裏切ってしまうことが、今何より避けたいことだ。


「あ〜、でもこのスペックだと配信はツラいかも」


「私の方で枠はとります。何なら今回の収益に関しても——」


「いやいや!いいの!むしろ持ってって!お世話になってるのは私の方だから!」


「そうですか」


 遠慮するとこも彼女らしい。


「それじゃあ始めますよ」


「う、うん……。筑紫ちゃんはこんな時でもいつも通りなんだね」


「……?こんな時、ですか?」


「いや、その……私は結構勇気出して話したんだけど、拒絶されても仕方がないと覚悟しながら」


 まあ確かに、客観的に見ればストーカーを連れて友達の家まで来ているわけだ。迷惑極まりない。


「でもララちゃんはただの友達じゃないですから」


「えっ……?それってどう言うこと!?」


「唯一の同期ですからね。こんなことで突き放すほど冷酷な人間じゃないです私」


「あ、うん。そうだね。そういうことね」


「とにかく、いつも通り目一杯ゲームを楽しむこと。今夜ララちゃんに私が求める対価はこれだけです」


「うん、わかった。じゃあ私頑張るよ!」


 いつも通りのハイテンションな声に戻ったララちゃんを見て、私は安堵の息をつく。とりあえずこちら側は大丈夫だ。あとは兄さんたちがどれくらい早く対処してくれるかを待つだけである。



❍✕△❑



「筑紫ちゃ〜〜〜ん!!!」


「あっ、お先に失礼しますね」


「やだ!待っておいていかないで!」


<つくララてぇてぇ>

<ララちゃんついてないなぁ>

<筑紫ちゃんも笑ってながら声がマジなの笑う>


 白熱したバトルがそこにはあった。少しの予習でするするとゴールまで向かう私と、その私の背中に何度も掴み掛かろうとしているララちゃんとの戦いだ。


「よし、捉えた!」


「このタイミングで来ると思ってましたよ!」


 ゴール間近の障害物。ヘタをするとスタート地点まで帰されるその場所で最後の争いが始まった。


「くっ……ようやく捉えましたよ」


「掴みかかる射程は同じ。つまりは反応勝負なわけですが」


「ふふふ、私は一つ、筑紫ちゃんの弱点を知っている!」


「ほう、その弱点とは?」


「反射神経勝負なら私にも分があるってこと!」


 掴みかかってくるララちゃんに対して、私はワンテンポ遅れて反応する。しかし、計算内だ。


「残念ながら、この距離なら私の反射神経でも避けられるんです」


「なっ!?そんな……」


 皆には見えないが、背後にいるララちゃんが手を床につく。


<筑紫嬢、白熱してるとこ悪いけどゴール人数後1人だよ>


「あっまずいですね」


 このゲームはゴールに辿り着く先着制。間に合わなければ脱落となる。


「くっくっく……行かせないよ」


「なっララちゃん!?潔く負けを認めて私にゴールをさせてください」


「ヤダ!2人で脱落して一緒に次のゲームに行く!」


「離してください!ああもう、制限時間まで迫ってきたじゃないですか!」


 まずい。このゲーム、一度掴まれたら掴んだ側が非常に有利である。そして、当のララちゃんは離す気がない。


「あっ」


「あーっ」


<あっ>

<野良の方ぁ!>

<空気読み全一おるな>


 揉み合いの争いに発展している中、その脇をするりと通っていった野良の人がゴールする。

 画面に映る『Game Over』の文字をしばらく無言で眺めたあと、どちらからともなく笑い声が共鳴する。


「あー、おかしい。野良にラスト一枠とられるなんて」


「全部無駄だったじゃないですか。やっぱり協力ゲーですよこれ」


「とかいって最初に落とそうとしてきたの筑紫ちゃんでしょー?」


「記憶にございません」


「えーひど〜い!」


 夜は更けていく。階下で起きている騒動も気にせずに。


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