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ゲームつよつよ系Vtuberはレティクルの向こうに何を見るのか  作者: 畑渚


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ララちゃんの事情

「こんララ〜!」


<こんララ>

<こんこん>

<わこつ>


「はーい、VeG所属、鐡ララです。というわけで今回は雑談枠予定だね」


<いつもと音質違うな>

<マイク変えた?>

<まさかスマホ配信!?>


「おっと、勘のいい人たちが多いねぇ。そう、今日は私の家じゃないところから配信してるよ!」


<ホテルかどこか?>

<俺にはわかる、あそこだな>

<ふむ、とりあえずテイスティングからよろしいか?>


「よくわからないコメントやめてぇ!まあ、ヒントを出すと誰かの家に泊まりにきてるよ」


<なにっ!>

<ぐふぅ>

<おい!今の情報だけで何人被害者が出た!>

<これもてぇてぇのための仕方のない犠牲だ>


「えっと?予想ではハルちゃんのところが1番多いかな」


<大会でめっちゃ仲良くなったからな>

<てか泊まりに行く約束してたし答えでしょ>

<ファイナルアンサー!>


「ブブー!ハズレだよ。でもちゃんと今度泊まりに行く日程まで決めてるから乞うご期待」


<ハルちゃんじゃない……だと?>

<VeGの誰か?>

<ここは大穴でtoreddo氏で>


「toreddoさんとこに泊まったら大問題でしょ!?流石に違うよ!正解は〜」


「ララちゃん、お米はどのくらい食べます?」


「……」


<やはりつくララ>

<あったんやな、こんな世界が>

<言っただろう?俺にはわかると>


「あれ?タイミング悪かったですか?」


「いや、まあ良いけど、その……」


「……?何ですか?」


「エプロン似合ってるなぁと」


<エプ……ロン?>

<筑紫ちゃんのエプロン姿?>

<ガタッ!>


「そうですか?兄さんからのプレゼントなんですよねこれ」


<兄?>

<筑紫ちゃん妹属性マ?>

<どけ!俺が兄さんだ!>


「あー、センスありそうだったもんね……顔も服もカッコよかったし」


<悲報 俺ら勝てる要素ない>

<やはり筑紫ちゃん家の観葉植物がワイらの天職や>

<じゃあワイは床で>


「そうそう。それでどれくらい食べますか?」


「えっと、普通に1人前でお願い」


「わかりました。もうすぐできるので机の上片付けといてください」


「はーい」


<だめだ鼻血出てきた>

<先生!てぇてぇの過剰摂取により重傷者が!>

<もう手遅れだ……残念だが>


「コメント欄もノリノリだね」


「それは良かったですね。はい、簡単に作ったものですけど」


「いや、めっちゃ綺麗じゃん。ちょっと待って、写真取るから」


「はい、どうぞ」


「いや、そうじゃなくて……筑紫ちゃん写ってたらSNSに上げられないでしょ?」


「ああ、そうですね。失礼しました」


「といいつつパシャリ」


<俺たちは何を見せられているんだ>

<俺たちここにいてもいいのかな>

<もはや盗聴してる気分になってきた>


「それじゃあいただきまーす。……んーーー!美味しい!」


「それは何よりです」


「案の定料理上手いじゃん」


「そうですか?意外と簡単ですよ」


「あとで教えてよ~」


「いいですよ?何を教えられるかはわからないですけど」


<だめだ、俺ももう終わりらしい>

<待て!まだだ、まだ倒れる時ではない!>

<でも艦長!これ以上は体が持ちません!>


「あ、ほっぺについてますよ」


「ほんと?取って~」


<あっ>

<あっ>

<みっ>



❍✕△❑



 とりあえず配信を終了して食事をして、後片付けまで終わらせる。ララちゃんも手際よく家事をしてくれたおかげで、いつもより早く片付けが終わった。今は湯船にお湯を溜めながら、適当に時間を過ごしている。


「筑紫ちゃんってさ」


「はい?」


「いや、聞いていいのかなこれ」


「何ですかいきなり」


「筑紫ちゃんって、筑紫ちゃんになる前のことどう思ってる?」


「……?どういう質問ですか?」


 わかりづらい質問をしてくる。


「もしかして、ez名義の頃の話ですか?」


「うん。あの頃のこと、今はどう思ってる?」


「まあ、過去のことですね」


 あそこまでゲームだけにうちこめたのも、過去だからできたことな気がする。


「そうだけど……えっと」


「もしかして前世のことで悩んでますか?」


 ララちゃんは、無名の配信者だった。顔を出して雑談メインで視聴者と会話するタイプの、リアルをネットにさらけ出していたタイプだ。


「最近……ちょっとね」


 一時期に比べれば沈静化しているように見える前世騒動だったが、どうやらそうでもないらしい。確かに私も未だにアンチスレなどで叩かれてはいるが、ララちゃんは別の形らしい。


「話してください。できる限り力になりますから」


「いや、でも……その」


「同期の悩みなんです。聞かせてください」


 手を握ってそう返せば、ララちゃんは重たい口を開く。


「実は……」


 ララちゃんの口から聞かされた話は、想像を絶するものだった。


 簡単に言うならば、前世からのファンの粘着行為が過激になっているという話。しかし、その粘着は次第にネットからリアルへと発展している。そして最近では、外に出るたびに変な視線を感じ、とうとう家のポストに直接手紙が届き始めたということ。


「ごめんなさい……私もう無理で」


「なるほど。事情はわかりました。それに、その明らかに多量な荷物の理由も」


 ストーカーされながら家に来たことを咎める気にもなれない。むしろ、変に立ち向かわずに逃げてきてくれたことに感謝すらしている。


「とりあえず安心してください。ここのマンションのセキュリティは一般人が通れるようなものでもないので」


 なんて言ったって、私の兄姉が私のために建てたマンションなので、24時間365日、厳重な警備体制が敷かれている。


「とりあえず、兄さんたちに連絡しておくので先にお風呂どうぞ」


「う、うん……ごめんね」


 着替え等を持たせてお風呂へとララちゃんを送り出し、私はベランダに出て電話をかける。高層階なだけあって、見晴らしは最高な点だけがうちのベランダの取り柄だ。


「ああ、兄さん、私。急にごめん。違う、愛のメッセージじゃない」


 こうやって明らかに緊急なときでもふざけるのは、兄さんの悪いとこだ。


「うん、さっきの友達なんだけど。そう、ストーカーされてるみたいで。特殊部隊?何を言ってるの、そんな大事でもないでしょ」


 よくわからないスケールの冗談はやめてほしい。反応にこまるし、なにより兄ならもしかするとなんて私が考えてしまうから。


「うん。というわけで私の部屋の隣なんだけど、使わせてもらうね」


 兄さんに連絡したのは、つまりはそういうことだ。残念ながら私の家はそう広いものでもないので、事態が解決するまではとりあえず隣に住んでもらおうということである。よくある手狭な部屋だが、仮の住まいとしては十分すぎるほど整っている。


「姉さんたちにも連絡しておいてくれる?うん、ありがとう。それじゃあ、私もしばらく家から出ないから。うん、いろいろとよろしく」


 連絡は滞りなく終わった。なんだかんだ理解の早い兄さんで助かる。あとは……


「きゃ、きゃあっ!」


「……っ?ララちゃん!?」


 バーンと急いでお風呂を開けると、後ろ向きに倒れてる真っ裸のララちゃんがえへへと頭をかいてこちらを見てきた。


「ごめんごめん、ちょっとぼーっとしてて石鹸で滑っちゃった」


「まったく、危険ですから気をつけてくださいよ」


「あはは、大丈夫大丈夫。私こう見えて頑丈だからさ」


 これは、思った以上に重症かもしれない。配信をつけている時は普段と変わりなく見えていたが、仕事熱心なのだろうか、そのスイッチが切れてしまうとこうだ。


「まったく……」


「ごめんごめ……?なんで筑紫ちゃんも脱いでるの?」


「出しっぱなしのシャワーで濡れたから、どうせなので私も入ります」


 濡れたまま外で待たされるのも癪なので、ご一緒させていただくことにする。すこし広めの風呂で助かった。


「えっ、あっ、えぇ?」


「……あまりジロジロみないでくださいよ」


「ああ、ごめん」


 変な空気のまま、私は今日の風呂を終えた。




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