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邪神騎士、ハグされる?

邪神騎士、ただ今パニック中です。


「じゃじんぎじざまー、おまぢじでおりまじだー」

青い森亭の主人は俺を見るなり、ダッシュ!抱きついてきたかと思うと号泣……異世界初ハグがおっさんだなんて俺の方が泣きたいわ!


「落ち着いて下さい。私が来たからには、もう大丈夫ですよ。それと今はモブ・ボッチと名乗っているので、お願いしますね」

 まずは落ち着かせよう。見知らぬ男に抱きついて号泣する父親……好感度だだ下がりじゃん。


「すいません。でも、このままでは店が潰れてしまうんです」

青い森亭の主人の依頼はソーレをなんとかして欲しいってものだった。ソーレはワインと昼飯で三時間位居座るらしい。しかも、その間、他の客を入れさせないそうだ。

 改めて聞くと、すげー嫌な客だよな


「領主や騎士団は助けてくれないんですか?」

これでもピューラファイの権力者には顔が利く。向こうが騎士の威光を持ちだすのなら、もっと強い力でねじ伏せるのみ。


「仲間から聞いたと思いますが、今各地で魔族が目撃されています。領主様も騎士団も、その対応で忙しいらしく……」

留守を任されているのが、ソーレの父親ケメンらしい。そりゃ好き勝手できるよね。


「領主に面会出来る方法か……今の俺を見て邪神騎士だと信じてくれるかな」

 ローブさん達は自ら俺を召喚したから、俺が邪神騎士だと疑わなかった。


「冒険者のランクを上げれば領主様に会えると聞きました」

 魔族に対抗する為、有為の人材を探しているらしい。


「あの……立ち聞きしてすいません。私達を……お店を助けて下さい」

 お茶を運んできた娘さんが俺にすがりついてきた。やだ、おじさん脈ありだって、勘違いしちゃいそう。

 娘さんの名前はリカーナ・ブルー。垂れ目が魅力の美人さん、御年十九歳。かなりの巨乳さんである。


「任せて下さい、とりあえず店に沈静の結界を張っておきますね」

 ソーレが変な気を起こさない様に、かなり強めに掛けておこう……結果、俺の性欲も沈静。リカーナさんを口説く気も霧散しました。


◇

 宿屋に戻って、今後の対策を考える。


「やっぱりランクを上げるのが手っ取り早いか」

 ソーレたちを叩きのめすのは簡単だ。昔の俺ならそうしていたと思う。


「ソーレ達を懲らしめれば良いのではないか?昔のお前ならそうしていた筈じゃ」

 俺は遅かれ早かれ、チュチュ―ルを出て行く。次のローブさんが待っているだろうし。俺がチュチュ―ルからいなくなったらどうなる?チュチュ―ルの治安維持はソーレの父ケメンの手に握られている。

ソーレはケメンに泣きつき、ある事ない事言うだろう。

青い森亭は営業停止、晴れて娘さんはソーレの物へ……考え過ぎかも知れないけど、関わったからには、最後まで責任を持ちたい。


「とりあえずコペル君と一緒に依頼をこなしながら、ランクを上げていくよ」

 依頼を達成すれば、ギルドの信頼が厚くなる。そこから領主への道を作れれば、良いんだけど。

(ソーレを追い出すだけじゃ意味がないんだよな。青い森亭の客足も回復させないと)


◇

 コペル君と待ち合わせをして、冒険者ギルドへ。

異世界(サークレ)初待ち合わせも野郎ですか……創作界隈で異世界物ってハーレム多い。

しかも俺はかつての英雄だ。ラノベなら“邪神騎士様、素敵!抱いて”ってなるんだろうけど、現実は厳しいです。


「ボッチさん、おはようございます。今日からご指導よろしくお願いします」

 コペル君が礼儀正しく挨拶をしてくれた……偽名なのに、心を抉られるのは、なんでだろう。


「おはようございます。まずはギルドに依頼を受けに行きましょう」

 コペル君は昨日の依頼でDランクに上がったらしい。領主のスカウトが来るのはCランクからとの事。

(Cランクに上がるのって、地味に大変なんだよな)

 プロの冒険者として扱われるのは、Cランクからだ。特典も多い分、審査も厳しい。


「新しい依頼はっと……ザンサーラ商会から行方不明者捜索の依頼が出てますね」

 そりゃ、出るよね。早めに証拠《ばしゃ》を隠滅しておこう。


「条件が良いのに手付かずですね」

 報酬は破格だし、ランクの制限もない。奪い合い必至の依頼だと思うんだけど。


「サンサラー商会だからだと思いますよ……良くない噂も多いですし」

 まあ、あれだけブラックなら悪い噂も経つよね。


「経験してみたい依頼とかありますか?」

 討伐、採集、人探し、護衛、どれも一通りの経験がある。一番美味しいのは護衛だけど、正体がバレてしまう危険性が高い。


「槍鹿《スピアゴート》の討伐がありますよ。鹿狩りはした事があるので、これにしませんか?」

 スピアゴートは角が槍の様に鋭く尖っている鹿の魔物だ。肉は美味いし、角や皮は素材として使える。

 ただ住んでいるのが、岩山とかで高所恐怖症の俺としては避けたい依頼だ。


「あ、あれが住んでいる場所は秘中の秘とされています。そこを特定するより、別の依頼を受けた方が、効率的ですよ」

 そう、効率が大事だ。決して高いとこに行きたくないって訳じゃない。


「それなら大丈夫ですよ。うちの一家が狩場にしている軟山にスピアゴートが住んでいますので」

 猟師はそれぞれ縄張りを持っており、余所者が入る事を嫌う。でもコペル君は身内だから問題はない……おじさんは、粗探しをしたいです。

(スピアゴートの肉を持って行けば、青い森亭の娘が喜ぶぞ)

 ベーロウさん、ナイスアイディア。これはスピアゴートを狩りにいかねば。


「それじゃ必要な物を買いに行きますよ……腕の良い鍛冶屋を知りませんか?」

 これ以上怒気術をコペル君の前で使うのはまずい。でも岩山みたいな足場の悪い所で、剣《ベーロウ》だけで戦うのは危険だ。

 何より遭遇しても逃げられる危険性がある。きちんと仕込みをしておこう。

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