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Chapter-36.5 Ver.C

「…………え?」


 その人物は、意外だった、予想していなかった、と言う感じの、悪意はないが、引きつった表情になる。


 俺は、構わず、両手で、その人物の、右手を握った。


「キャロル・ロゼ・ハリス・エバーワイン……俺、マイケル・アルヴィン・バックエショフと、結婚を、約束して欲しい」


「え、……え……」


 キャロは、目が回ったかのように、視点の定まらない表情を、俺に向けてくる。


「なんで…………」


 キャロは、ぜぇ、はぁ、と、深く、息をしながら、言ってくる。


「なんで……私なの!?」


 やっと、焦点が戻ってきた目で、俺を見つめながら、少し、困惑したように、言ってきた。


 確かに、キャロは、困惑したかもしれない。

 だって、俺は、付き合いの長い、キャロとエミよりも、ミーラに、一時期、心を奪われてしまったのだから。


 きっと、ミーラが正妻になる。


 キャロと、エミが、そう思っていたとしても、無理はなかった。


 背後の、ジャックや姉弟子も、意外そうな、軽く驚いたような、声を上げる。


「だめ……だったか?」

「そんなワケ……ないじゃない。うん、今更、嫌とか、言うわけ無いわよ」


 俺の言葉に対し、キャロは、しかし、どちらかと言うと、自分に言い聞かせるかのように、そう言った。


「でも、理由ぐらい、知りたい……本当にそれだけ、アルヴィンを責めたりするつもりじゃないから!」


 どこか、必死な様子にもなってしまいながら、キャロは、俺に、潤んだ、訴えかけるような目を、向けてくる。


「その……今の俺がある、そのきっかけが、キャロだから、かな」

「え……」


 俺の答えに、キャロは、一瞬、ぽかん、としたように、そう言った。


「だからさ……その、キャロが、俺を、強く望んでくれたから、ドラゴンとの戦いも、その後のミーラとの出会いも、あるんだって、そう考えたら、やっぱり、キャロを正妻にするべきかなって」


 そう。

 3人にも、言えないけど。


 キャロが、俺を、ルイズやユリアから、引き剥がしてくれたおかけで。

 今、俺は領地持ちの準男爵になり、ミーラとも、出会えたわけで。


 少なくとも、『転生したけど辺境貴族の末っ子でした』の主人公ではなくて。

 ()として、ここにあることが出来ているわけで。


 それを考えたら、キャロのことが、本当に得難い存在なんだと、思ってしまった。


 だから、そのキャロを、正妻にするのが、当然だと思った。


「もちろん、キャロを愛おしく思う。その気持ちに、偽りはないよ」


 そんなことを、誤魔化せるほど、俺は器用な人間じゃない。


「そっか……そうなのね……うん、そうよね……」


 一瞬、キャロは、俯いてしまって、それが落ち込んだようにも見えて、俺は困惑してしまったのだけど。

 キャロは、そう、呟いて。自分に言い聞かせるようにして。


 やがて、顔を上げて、俺に、笑顔を、

 涙が少し、滲んでいるけど、いつもの、輝くような笑顔を、向けてくれた。


「なります」


 キャロが、言う。


「私、キャロル・ロゼ・ハリス・エバーワインは、マイケル・アルヴィン・バックエショフの、伴侶になることを、誓います」


 ハッキリと、言ってくれた。


 パチパチパチパチ……

 最初に、拍手をしだしたのは、ミーラだった。


「おめでとうございます、アルヴィン、キャロ。きっと、神々も、2人を祝福なさるでしょう」

「うん、おめでとう、キャロ、アルヴィン」


 エミも、そう言って、拍手をしだした。


「よっ、おめでとう、お2人さん!」


 ジャックは、そんな、軽く囃し立てるような言葉をかけてきながらも、姉弟子共々、拍手をしてくれた。


「けど、アルヴィン」


 エミが、念を押すように、言う。


「さっきも言ったけど、私とミーラのことも、忘れたら、ダメだから」

「そうですね、今更、お別れだなんて、考えられません」


「ああ、解ってるよ」


 そうだ、こういう時は。

 男なら、こう言うしかないだろう。


「皆まとめて、面倒見るよ、嫌だと言っても、見させてもらう。だから、みんなも────黙って俺に、ついてこい!」


 照れ隠しの意味もあって、前世で見たB級映画のような言い回しで、俺は、格好をつけようとしてしまった。


「いよっ、この、お調子者!」


 むしろ、その格好をバッチリと決めてくれるかのように、ジャックが、そう囃す声をかけてきた。


 そうだ、もう、後悔なんかするもんか。

 何をクヨクヨするものか、ゆくぞこの道、どこまでも、だ!


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