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END,まだ遠くとも、いつかは来る春

 いよいよ完結ですが、大分無理やりになってしまいました。そして、最後までベタです。

「「「かんぱ〜い!」」」


 文化祭も無事に終わり、僕達は教室でささやかな打ち上げを行っていた。


「疲れた〜…。」


「お疲れ裕二!」


 僕が隅っこでペンギンの着ぐるみと座っていると、親友の宮沢裕之と関口真美が隣に座って来た。この2人は本当に仲が良いようで、今もお互い手を握り合っている。


「いや〜、お前大人気だったな!」


「大人気だったのはこのペンギンの着ぐるみだよ…。誰も僕だって気付いてないよ…。」


 悲しきかなこのクラスの面々以外、ペンギンが僕である事に気付いた人間はいなかった。


「それにしても、無事歌えて良かったね。会場大盛り上がりだったし。」


「そうそう、お前って英語で歌えるんだな。」


「う、うん…。まぁね…。」


 のど自慢大会なのだが、何とか歌いきり恥をかかずに済んだ。優勝できたかどうかは、当然できるわけもなく、かといって最下位というわけでもなく、5位にランクインした。

 しかし、どこの誰が僕を参加させたのだろうか?しかも、何故か英語の曲だったし…。

 全く、いい迷惑だ!


「ところで、あの歌って何の歌?」


 関口のその言葉を聞いた途端、僕と裕之の動きが一瞬止まった。それもそのはず、まさかあの歌を知らない人がいるとは、夢にも思わなかったからだ。


「「知らないの!?」」


「え…?何…?2人して…?」


 ついつい声が被ってしまったが、それ程ショックだったのだ。


「あれは有名なゲーム、『ノイズホスピタル』の主題歌じゃん!」


「何それ?エロゲー?」


「違う違う!あれはアクションホラーゲーム!」


 『ノイズホスピタル』とは、その筋には大人気のアクションホラーゲームである。病院とあるが、実はその病院のある町が舞台になっており、かなりスリリングで気味の悪いゲームである。


「どんなゲーム?」


「あのね、事の発端は主人公の少年が入院している病院で不思議な少女に出会うんだ。家族もいない孤独な主人公は、同じく家族もいない孤独なその女の子と仲良くなって行き、お互い恋をするんだ。ところがある日、その少女が突然いなくなってしまい、不思議に思った主人公は病院中を探し回るんだ。そんな中、病院にて行われていた奇怪な儀式を発見してしまう…。」


 僕は柄にもなく、ゲームについて熱く語った。

 流石に引いたのか、関口の顔が引きつっている。


「えっと…、怖いの…?」


「怖いというか…、怖いっちゃ怖いけど、不気味で気味悪い、日本のホラー映画みたいなゲームさ。」


 裕之もこのゲームの大ファンで、一緒に熱く語り合った仲だ。


「なんか…、よくわかんない。」


 確かに、言葉ではイマイチ伝わらないだろうし、伝えきれるわけもない。

 と、そんな時。裕之がこんな事を言い始めた。


「んじゃ、今度うちに来るときやってみる?」


「うん!やってみたい!」


 恐らく関口はゲームがやりたいとかではなく、ただ単に裕之の家に行ける事が嬉しいのであろう。

 僕はそんな事を考えながら、2人を暖かい目で見つめる。


「春だね〜…。」


 すると、僕は無意識にそんな言葉を発していた。

 当然、裕之と関口はハテナマークを浮かべる。


「春?」


「おいおい、冬はこれからだぜ?」


「あ、いや、気にしないで。あ、僕ちょっとトイレ行ってくるね。」


「あ、うん…。」


 別にトイレに行きたいわけではなく、気を利かして身を引いたのだ。後は若い2人に任せます!

 さて、僕が去ってから、裕之はこんな事を言い始めた。


「なんかアイツ、様子が変だな…。つらそうというか、なんというか…。」


「疲れたんじゃない?ずっと着ぐるみの中だったし、いきなり大勢の前に立ったりしたし…。」


「だと良いが、今朝は元気だったのに、なんかな…。」


 裕之が心配するように、舞台が終わってからか僕の調子が悪い。体中がダルいし、視界が霞む気もする。なんといっても、頭が痛い。恐らく、ずっと着ぐるみの中だったし水分もあんまり取らなかったから、脱水症状になったのかも知れない。


「自分の軟弱さが泣けて来るな…。取りあえず、顔洗って今日はもう帰ろ…。」


 そう言って僕は兎に角トイレへ向かうが、どの位行っただろうか、突然膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れた。


「あ、あれ…?ちょっと、マズいかな…?」


 何とか立ち上がろうとするが、どうやっても起き上がれない。挙げ句、徐々に視界が薄れて行く。


「何で…だろう…。だ…誰…か…。」


 廊下には人影1つなく、各クラスから盛り上がる声が聞こえるのみだった。


「僕…は…。」


 何か言い掛けたが、遂には呼吸が浅くなってきた。


「裕二君?裕二君!」


 薄れ行く意識の中、その声のみが木霊した。


 良かった。誰か通り掛かってくれたようだ。女の声のようだが、誰かはわからない。でも、コレで安心出来るかな…。このままじゃ、つらい。猫のスンにもあってないし、先生との約束もある。冴子さんとも仲良くなったばかりだし、美羽さんともこれからもっと仲良くなって行けるはずだ。桜ちゃんとも会ってない…。このままじゃ、本当に辛い…。

 それに、まだ春が来てない。希望の春。裕之君と関口さんに来た春。僕の春はまだ遠くても、いつかは来るであろう春。


 そこで思考が途切れた僕は、呼吸が止まり意識が遠退いた。

 今まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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