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【第四章 防具をゲットしてみよう!】- 1/3

来てくれてありがとうございます! よろしくお願いします!


さあ、いよいよ「コレクターズ・エディション限定」という話の最終章が始まります!! 私たちの主人公は、ゲーム箱でもう書いた原始を回避できるのだろうか? それとも、前世と同じように、ヒーローを待ちながら、貧しく孤独なまま過ごすことになるのだろうか。


あるいは、彼女の行動がすでに雪崩を引き起こし始めているのかもしれない?

 前世の記憶中、ニーナが私を呼び覚まsて、一日の支度を始めるよう促した。母様にあの「知恵のコイン」を渡してからすでに数日が経過したが、何らかの行動を起こす様子は、まだ見かけていない。ちなみに、前世の記憶を取り戻してからちょうど1ヶ月になるまで、あと2日あると思う。ビデオゲームの中でそれがどれほど重要な意味を持つのかはわからないが、家族がまだ完全に安全だとは言い切れないという気持ちが拭えない。。


 とはいえ、現状のままでは、私にできることはこれ以上ほとんどない。何しろここは前世とは全く異なる世界であり、エレイン1.0はこれまで、自身の屋敷やヨーク王子の城の壁の外へほとんど出たことがないのだ。つまり、外の世界には数多の危険が待ち受けているということだ。前世のこの年齢の頃の私は、少なくとも孤児院をこっそり抜け出しては、あちこち探検していたものだ......。例えば、コールに憑りついていた悪魔は倒したかもしれないが、もしその悪魔の怒ってる兄弟のような存在がやってきて、我々を襲ってきたらどうする?


 ニーナが数分間外に出た隙に、魔法空間から「幸運のコイン」を取り出した。母がもう一枚のコインの魔法を使い果たした瞬間、消滅してしまったのだ。カイロ王子は、これの魔力が少しずつ漏れ出していると言っていたが、それでもまだ無事なようだ。馬鹿げた考えかもしれないけれど、このコインが手元にある限り、私はまだこの状況から無事に抜け出せていないような気がする。残念ながら、身を守れる武器って、これしかてない。この世界で、銃が手に入るわけじゃないし。まぁ、『知識は力なり』と言うのなら、カイロとクスコの家にいるあの先生、攻略本の一ページを手に持っている。


「お嬢様、馬車が回ってまいりました~」と、ニーナは突然部屋に戻ってきて言った。「出発いたしましょうか? クスコ王女の招待状には、そこで朝食が食べられると書かれていましたが、よろしいでしょうか?」

「はい、は~い! あ、そうか、ちょっと待って!」

 前夜に思いついたある考えが、頭をよぎって、私はスカートをたくし上げると走り出した。

「あれ? どこに?」


 何も説明せずに、義弟の部屋へと向かった。彼が魔導大聖堂へと連れて行かれて以来、その部屋はそのまま残されていた。素早く鍵を開けて中へと駆け込んだ。ニーナもすぐ後ろについてきているはずだと思うし。


 ものすごく久しぶりに、キツネさんの声が届いた。

【ピッキングが上手になったよ、エレイン。いつか、練習したの?】

 その褒め言葉に微笑んだが、首を横に振った。

「おはよう、キツネさん。でも、練習してないよ。最近、キツネさんの記憶は.....あ! まだある! よかった!」


 話の途中で、コールの机へと駆け寄った。そこには、盗んだ下着をぬいぐるみの中に隠すために彼が使っていた裁縫道具が、そのまま出しっぱなしになっていた。


【それは、何のため?】とキツネさんが聞いた。

「後で説明するけれど、透明な布でマントを作りたいんだ。」

【透明マント⁈ なんと便利じゃん!!.....ゴホン、それより、裁縫はできるか?】

 私は急いで裁縫セットを魔法空間にしまい、足を引きずるようにして廊下へと戻った。

「できないけど、前世で君が縫ってること、ぼんやりとした記憶がある。クちゃんを説得して素材を分けてもらえるかどうかは分からないけど、もしもらったら、このセット持って行って、次のページを盗み出せるかもしれない。」

【あれ? もう一枚見付けたか? すごい、エレインちゃん......でも、ウチが何を縫っていたのかは覚えていないの?】

「覚えてない。でも、自分の指ならできるという感覚はある。」

【まぁ、そうなら、よかった。】


 私は自分の部屋へ、そしてニーナのもとへと駆け戻った。

「準備はよろしいですか、お嬢様?」

「はい、は~い! 行きましょう!」


 馬車に乗り込み、街を横切って進んでいる中、ふと「エレイン1.0」が目覚めたような感覚を覚えた。

【すご~い、この区は、どこ?】



 *********



 僕の名前はカイロ・ロードです。

 16歳。王位継承順位第12位の王子で、魔法学園の1年生。土魔法の使い手。私の妹の名前はクスコ・ロードです。彼女は王位継承順位第19位である。クちゃんは、最後に配置される王女。父は王ですが、僕たちの母にはもちろん、何の権力もない。僕の異母兄弟の多くと同じように、母様は王の側室だった。


 その事実を不幸だと呼ぶ人は多いが、僕はそれを恵みだと思う。我が家、何一つ不自由なく暮らしているが、特別な儀式を除けば、僕たちにはほとんど何の期待もない。

 そのおかげで、母は日々をのんびりと過ごせているし、僕は学校で気楽に立ち回ることができ、それに、妹のあの恥ずかしい事情も、誰にも知られずに済んでいる。正直なところ、兄弟たちに対して羨ましいと思ったことが唯一あるとすれば、それはヨーク王子のように、父と共に城で暮らしている者が、いつでも好きな時に王立図書館へ行けるということだ。


 そういった事情から、妹はまだ幼すぎて気づいていないかもしれないけれど、今日は記念すべき、非常に重要な一日なんだ。


 屋敷の扉が開き、かつての王家の一員であるエレイン・ハミルトンが一人で迎え入れられた。公の場で振る舞うことに慣れていない妹は、興奮のあまり、その子のもとへと駆け出した。正直なところ、玄関に立っているこのボーイッシュな少女が、あのエレイン・ハミルトンだなんて、いまだに信じられない。長年、僕の弟ヨークと結婚するのではないかと噂されていた、あのエレイン・ハミルトンが。彼女の母親はよくこっそり僕たちを訪ねてくるのだが、クちゃんが正式にエレインを招待したということが知れ渡ってしまったら……。


「カイロ様もいますね! どうして学園にいないの?」

 僕は彼女に向かって、ゆっくりと頷いた。

「ハミルトン令嬢、我がささやかな住まいへ、再びようこそおいでくださいました。」

「ぐっ。」彼女はぎこちなくカーテシーをした。「お招きいただき、ありがとうございます、陛下。」

 僕は再びうなずいた。笑い声をこらえるのがやっとだった。

「さて、挨拶はこれくらいにして……。僕が学校に行っていないのは、妹の守護者として、彼女のもとに公式な来客がある際にはここにいなければならないからなんだよ。」

「......公式な来客?」彼女はクちゃんの方を向いた。「クスコ様、今日は偉い人が来ているんですか? 私、邪魔になっていませんか?」

 妹の顔に驚きの表情が浮かび、それから手で口元を覆って笑い出した。


 次、クちゃんは、指でエレインの胸を突いた。

「エレイン様、その偉い来客は、貴(・)方(・)様(・)でしょう」と、僕は通訳した。「さあ、こちらへどうぞ。庭にお茶と朝食をご用意しております。」

 僕たちは彼女を案内し、小さな邸宅を通り抜けて裏庭へと連れ出した。


 二人が席に着くと、僕は姉のために買っておいた新しいノートを渡し、二人に向かって一礼してから、彼女らがその時間を楽しめるようにその場を後にした。彼女が見つけた「知恵のコイン」について話したり、妹の悩みを解決してくれたことへ改めてお礼を伝えたりしたい気持ちはあるけれど、妹がようやく手に入れた友だち関係の邪魔はしたくないんだ。それに、若い女の子たちのお茶会に僕がいるのも、少々場違いというものでしょう。当面は、使用人たちに任せておけば十分だと思う。


 その場を立ち去る際、僕の手は自然とポケットの中へと伸び、エレインがくれたのに触れた。

 実は、同世代の裕福な家の子たちの間で、エレインに関する噂を何年も前から耳にしていたんだ。兄弟姉妹からもね。おそらく、彼女への一番の恩返しは、彼女に友達ができるよう手助けしてあげることだろう。


 家の中に戻ると、驚いたことに、母がドアのそばに立って、窓から二人の少女の様子を眺めている。

「お疲れ様、カイロくん。二人、大丈夫そう?」と母は聞いた。

「うん。二人、元気だよ。」

「よかった、よかった。エレインはこれから頻繁に顔を出すことになると思うので、みんな仲良くしておいたほうがいいかな~。」

 僕は眉をひそめた。

「そう? なぜ? 我が家へのプレッシャーがさらに強まることになりませんか? 王族たちの間で。」

「あ~、そういう意味じゃなくて……。まあ、気にしないで」と答えて、それから、自分自身に静かに「サファイアちゃんは、ま(・)だ(・)決断を下していないんじゃないかな~」と言った。


 僕はその意味が分からないけど、「そういえば彼女も来なかったんだね。ちょっと意外」と言った。

「誰? あ、サファイアちゃん? 実は、私の可愛いな後輩が、今ちょっと大変な時期を過ごしているんです。彼女とエレインが、また馬車に一緒に閉じ込められるような状況にならない方が、おそらく賢明でしょうね。」

「ど、どういう意味、お母さん?」

 なぜハミルトン家には何らかの問題があるように見えたのだろうか?


 そういえば、クーちゃんが、ハミルトン公爵夫人がエレインに対して奇妙なことを言っているのを耳にした、と言っていたっけ。彼女はまた、ハミルトン公爵夫人が、母と一緒に我が家にいる時と、エレインと一緒の時とでは、まるで別人のようだったとも言っていた。実のところ、僕も少しそんな一面を目にしたような気がするけど......。


「あの、ところで、前にも聞いたかもしれないけど、お母さんとエレインの母親はどうやって出会ったの? いつも「後輩」って言ってるけど……。」


 母の目に遠くを見つめるような表情が浮かび、答えなかった。

「学園で?」

 急に彼女はくすっと笑った。

「息子から、なんとも素敵な褒め言葉......。けど、彼女ほど若くはありません。サファイアちゃんが入学した頃には、私はすでに卒業していましたからね。以前、もっと若かった頃にも尋ねたことがあったけれど、もう一度教えてあげるね。エレインのお母さんは、私の幼馴染なんだよ。エレインちゃんの祖母の家と君の祖母は、向かい合っていましたよ。」

「え⁈ マジ!!」そんなことを尋ねた覚えは、全くありません!「じゃあ、その家族は今も祖母ちゃんと祖父ちゃんの家の向かいにいるの?」


 あ~、悪い......。もしそのことを知っていたら、あのひどい噂に対して、エレインの名誉をもっとしっかり守ってあげればよかった。


 母は微笑みながらうなずいた。

「でも、カイロくん。多分、エレインちゃんが、まだそれを知らないかも。」

「え? じゃあ、どうして今までエレインはここに連れてこられなかったの? 僕たちの家族はずっとすごく親しい仲なのに。」


 母は手首に結びつけていた扇子をパッと広げ、顔の下半分を覆った。だが、その目は笑っていた。

「それは......ごめんね、カイロくん。もうすぐ大人になる君だとはわかっているけれど、その会話は息子と少し不適切だよ。」

「は?」

「ちなみに、母親としての私の務めとして言わせてもらうわ。エレイン・ハミルトンにプロポーズすることは、断じて許さない。」


 私は衝撃を受けて背筋を伸ばし、頬が真っ赤に燃えるのを感じた。母が時折不適切な発言をすることには慣れていたが、これはかなり奇妙なことだった。


「お母さん、そんな気持ち悪いことを言わないで! 子供なんてっ!」

 彼女は手を挙げて私を制した。

「はい、はい。でも、カイロ、君がいい息子。いつも私や妹のことを気にかけてくれている。それに、これから数年間はエレインがよく顔を出すことになると思う。もしかすると、いつ君が家格を上げようと考えたとき、彼女が最も都合のいい選択肢だと思いつく日が来るかもしれない。だからこそ、それが始まる前に、警告しておかなければならないのです。」

「おい、何言ってる、お母さん。」

「約束して。」

「分かった、分かった。ただ、この話やめて。恥ずかしいよ。」

 母は窓の外にいる二人の少女に目をやり、それから私の方を見た。

「約束して」と、彼女は心配そうな表情を浮かべて、もう一度言った。

「はい、約束します。でも、なぜ?」

「彼女は......いや、彼女とサファイアちゃん、トラブルを引き寄せる磁石のようなものだ。あの娘と結婚したら、私たち、命を落とすことになるはず。」


 僕はただそこに立ち尽くし、困惑していた。もちろん、エレインにそんな興味もないけれど、母が一体何を言っているのか、今は気になって仕方がない。『私たち、命を落とす』って⁈ 明らかに何かとても奇妙なことが起こっているのだ。


 僕がまだ答えられずにいると、近くの扉が開き、全く見覚えのない人物が入ってた。メイドだろうか? だが、その制服は我が家の誰のものよりも手入れが行き届いており、ずっと豪華だった。それに奇妙なことに、彼女は僕と同年代くらいに見えたうえ、使用人にしてはあまりに高い魔力を秘めていた。正直に言うと、茶色の地味な髪や瞳にもかかわらず、彼女はとても美しいと感じた。彼女は私たちの方へ歩いてくると、片方の眉を上げて僕をちらりと見て、上から下までじろりと眺めてから、母に向かってお辞儀をした。


「ニ、ニーナ⁈ すっ」母の声は興奮に弾んだが、次の瞬間、彼女は動きを止めた。「カイロくん? 実は、先生が今日、君と少し話をしたいと言っていました。クちゃんが忙しくしている間に、そっちへ行って話をしてきてくれませんか?」


 僕は綺麗なメイドと母の顔を交互に見て、一礼してからその場を後にした。

 気づくまでに少し時間がかかったが、そのメイド服はハミルトン家のものだ。

 やっぱり、ここでは、本当に何か怪しいことが起きている。


 母の頼みで、僕はそのままクスコちゃんの先生の書斎へと向かった。


 彼女のドアのところでノックをし、それから中に入った。

「あ、カイロくん。ちょうど、荷造りの合間に休憩を取ろうとしていたところでした。」


 僕は老教師にお辞儀をした。

「お母さんは 僕と話したいことがあると言ったけど?」


 教師は、本や書類の入った箱のそばから立ち上がると、腕を組んで机にもたれかかった。

「そうです。もっと時間があると思っていたんだが、クスコ様の問題が解決した以上、私にここでできることはもうほとんどない。」

「はい。去ってしまうのは、皆にとって悲しいことです。」


 それは間違いなく真実だ。今でさえ、このおばあさんが、姿の見えない妹を絶えず追いかけ回すことのない日々がどんなものになるのか、想像すら難しい……。


「私も悲しいですよね。正直なところ、あと数年はここにいるつもりでいたんだ。しかし、貴方のお父様は……まぁ、今日は、カイロくんの将来について話したいです。」

「え? 僕の?」

「そうですね。もし、自分の将来について、何か考えたことはありますか?」

「あまり? でも、歴史や研究が……。」

 老女は微笑んで、うなずいた。

「やっぱり、お母さんが予言した通りだ。」

「お母さん?」

「しかし、カイロ。貴方様が王位に興味がないことは分かっているけれど、王子であることを忘れてはいけないよ。一生を埃っぽい図書館にこもって過ごしたいというのなら、それも悪くはないけど......。別の道も提示してみたいんだ。」

 よくわからなかったけれど、わかったようなふりをして頷き、彼女の話を続けさせた。

「第12位って、非常に微妙な立場に置かれていますよ。王位に就くことは決してあり得ませんが、万が一、父上に何かあった場合、貴方様と妹君は他の兄弟姉妹と比べても、より危険にさらされやすい状況にあります。かといってどこかに身を隠してしまえば、最悪の事態が起きたとき、母上や妹君を助けることもできなくなってしまうでしょう。」


 僕は顔をしかめ、首を振った。

「先生、おそらく起こらないであろうことについて、まるで事実であるかのように語っていますね。」

「カイロ。歴史、好きだよね? 王様が年を重ねるごとに、君と18人の兄弟姉妹、そしてあのハミルトン家の娘との間で、厄介な事態が生じる可能性がまた一歩近づいていくのよ。王国中の歴史家や学者は皆、何が起こるかを知っている。カイロにも、きっと見えているはずだ。結局のところ、あの悪魔が見つかった時、貴方様はハミルトン家にいたんだよ。もしあいつがその家族を殺していたら……。」


 僕は肩をすくめた。

「じゃあ、僕はどうすればいいと思う? 戦士なんてではない。策士でもない。」


「フム、私が所属しているのと同じ「魔法調査機関」に加わることを検討してみてはどうでしょうか? 貴方様には生まれつきの好奇心、それなりの影響力、そして強力な魔法の力で、すぐに、部門全体を任されるような立場になれるはずですよ。言い換えれば、魔法調査官になるのです。王国にとって「使い捨て」の存在ではなく、なくてはならない貴重な人材となるのです。」


 彼女の提案について考えながら、僕はため息をついた。

 つまり……図書館をオフィスと交換する、ということか。


 先生は続けた。

「 また、組織のバックアップがあれば、最悪の事態に陥ったとしても、君の優しいご家族は守られるはずですね。貴方様を迎え入れたい部署なら、いくらでも思い浮かびますよ。例えば、ダンジョン探索部とか……魔法アイテムの回収とか......遺跡改修部も......。」


 僕はまたポケットに手を入れ、エレインがくれた古い硬貨を指でこすった。

 卒業まではまだだいぶ先のことだが、彼女の提案はなかなか面白そうだ、と認めざるを得ない。


「ありがとうございます、先生。悪くないアイデアですね。考えておきます。」

 彼女は温かく微笑み、頷いた。

「それは、よかった。まだ1年生だということは分かっているけれど、もしインターンに興味があるなら、私の同僚たちを紹介してあげてもいいよ。」

「え? なんでそこまで?」

「あれ、王子のために、大したことないよ。私たちは常に、新たな調査員を募集しています。たいていの場合、軍や魔法教会が、有望な新兵候補をすべてさらってしまう。それに、そのどちらの派閥も、すでに貴方様の他の兄弟姉妹を自分たちの陣営に引き入れようと動き出しているよ。ローマ様、モスクワ様、ベルリン様とか......。」

「た、確かに......」私は身震いしながら言った。

「早ければ来週にも、面接の段取りを組めるかもしれませんが......。正直に早めに参加してもらうのがいいと思いますね。」


 速い! えっと、えっと、どうすれば......。ポケットからエレインの古いコインを取り出し、手のひらの上でその輝く面を見つめた。普段なら、歴史や学びに対する自分の関心なんて否定していただろう。友人や兄弟姉妹は、そんなことには全く興味がなかったからだ。ずっと、この先一生、ひとりで図書館に座って本を読んで過ごすのだろうと思っていた……でも、エレインは歴史が好きだ。彼女はまだ子供だけど、味方が一人見つかったのは嬉しかった。それに、同じような志を持つ学び手たちが集まる組織まで......。


「カイロ様? そのコインはどこ見付けたの?」

 僕はそれを隠そうと、素早く手のひらを閉じた。

「こ、これはエレイン様からの贈り物なんだ。」


 その老教師は、僕に奇妙で、読み取ることのできないような視線を向けた。

「そのハミルトン令嬢......か?」

「あ、はい。クちゃんを助けてくれた子ですね。」

「その硬貨、私に預けて見てみてもらったほうがいいかもしれませんね。もしかすると、何らかの呪いがかけられているかもしれませんから。」

「申し訳ありませんが、それは無理です。壊してしまうリスクは負いたくない。でも、なぜ彼女をそんなことで非難しますか? 結局のところ、クちゃんのように彼女はいい子ですよ。物などに呪いをかけるといったやり方を、間違いなく知らない。」

 教師は一瞬、唇を引き締めた。

「そうとも言い切れないんじゃないかな。何しろ、彼女の母親は……。」


 え? また、ハミルトン公爵夫人? 彼女は僕のコインと何の関係があるのか?


「カイロ、もう一つ、アドバイスを。あの公爵夫人は、全世界最強の闇魔法使いだ。なぜ君の母親を許容しているのか理解に苦しむが、彼女に関わるものには常に警戒しておいたほうがいい。例えば、そのコインは盗聴器かな? 居場所を追跡している可能性もある。」


 えっ、本当に? そんなこと、これまで全く聞いたことがない。学校で話題になったり、授業で教わったりしてもよさそうなものだけど……。ちょっと待って、先生は「全世界」って言ったじゃない? 王国だけじゃなくて? ヨークくんは王国最強の火の使い手であり、彼の誕生日は国民の祝日となっていた。でも、 ハミルトン公爵夫人は......。


「えっと、先生? この話は、本当に同じ女性のことなのだろうか? もし彼女がそれほど危険な人物なら、母がこれほど頻繁に彼女をそばに置くとは思えない。」


 先生は「もちろん。あの女性を他の誰かと見間違えるなんて、あり得ないことだ。私、本当に『顔のない蜘蛛』が君のお母さんと友人だったと知ったときは驚いた。まあ、彼女が噂通りの人物だったとは、必ずしも言えないけど......。」と言った。


「 顔のない蜘蛛⁈ なにそれ? 彼女をまるで悪女か何かのように言っているじゃない?」


 先生は、慌ただしく手を振った。

「あ、すみません、カイロくん。そうするつもりではありませんでした。何というか、彼女はとても謎めいた人物なんです。どこで育ったのか、家族が誰なのか、それを知る者は誰もいない。ただ、数年前、街を闇で覆い尽くすほどの魔法を持ってる彼女は魔法学園の門に一人で現れ、登録するよう要求した。わずか数年のうちに、彼女は旧王室の最後の生き残りと結婚した。とても有名な話だ。」


先生はそう口にすると、困惑したような表情を浮かべ、うわの空で指先を唇に触れさせた。

彼女は「なんで今、あんなことを言っちゃったんだろう」と、小さくつぶやいた。


 その話は事実ではないと反論しようと口を開きかけた――つい数分前、僕の母が、彼女の家の向かい側で育ったと言っていたから――その時、廊下から大きな足音が近づいてきた。


 恐怖に怯えた使用人が、書斎の入り口に姿を現した。

「先生、大変だ! クスコ様、またいなくなっちゃった!!」

「そうなの? 落ち着いて、それはもう大したことじゃない。彼女をまた私のところに連れてくればいいだけだ。」

「違う! いつもと様子が違うんだ。彼女、普通みたいに返事をしてくれない。それに……それに……ハミルトン令嬢まで姿を消しちゃった!」


 教師は、ついに、きびきびと姿勢を正した。

「何⁈ 彼女らが最後に目撃された場所へ連れて行ってくれ。それからカイロ、クちゃんが普段遊んでいる場所を探してみてください。」


 一緒に走り出した。



 *********



 クーちゃんをぎゅっと抱きしめながら、私たちがカイロ様とその先生が書斎から駆け出して行くのを見つめていた。この王女の魔法のおかげで私たちは完全に姿を隠せていたが、ほとんど身動きがとれなかった。彼らが去ると、クちゃんは心配そうな様子で私を見つめたが、ただ、力なく微笑み返した。彼女の首を包み込むようにした自分の手の中で、指の間に挟んだラッキーコインにちらりと目をやった。


 やっぱり、この『情報収集』は、本当に好きではない。

読んでくれてありがとうございます。

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