第18話 アーカイブ 02
はい、というわけでワークショップ終わりましたー。参加者の皆さんが帰り始めてます。私は……ちょっとトイレに行きますねー。それじゃあ録画ここでいったんオフ。
……っていうのは建前で。
これ配信してないです。自分の記録用。証拠になるかもしれないから回しとく。ウェアラブルカメラ、つけといてよかったー。まあ配信するかもだけどね! 大スクープの可能性あるし。
あの講演、なーんか胡散臭かったんですよ。保護してます保護してますって言いながら、NPOにしては金回りがよすぎる。非営利団体でしょ
低温処理技術も、あれ小学生の子の研究成果なのに、なぜか自分たちの成果みたいに喋ってた。だから、ちょっと見てきます。れっつごー。
はい、私が進んでいるのはー、あの古い曲がり家から繋がっているー、新しく併設されたっぽい建物っすねー。
廊下の奥、白い壁が古くなってきましたー。
むっ、ドアがあります。あやしいです。開くかな。
……開いた。やっぱ鍵かかってないじゃん。
入るか。入るよな。入りまーす。
階段がありますねー。地下か。降りてみます。
蛍光灯ついてる。失礼しまーす……誰かいない、誰もいないですね。棚が並んでる、金属の棚。ガラスのケースが……。
な……。
これ……蚕、だよね。緑色……天蚕ですよね。さっきの体験コーナーで見たやつ。
……繭を作りかけてる状態で固定されてて。糸が引き出されてて。
生きてる。
生きたまま糸を引き出されてる。
ちょっと待って。さっき言ってたじゃないですか鍋倉さん。煮殺さない養蚕ですって。命を奪わない養蚕ですって。でもこれ……殺さないだけで、生きたまま糸を引き出し続けてる。ずっと。ずーっと。
これ、地獄じゃないっすか。
いやそもそも、こういうのって……出来るの? 繭ってそういうものだっけ?
品種改良……? いやいやいやいや、それにしてもこれは。
別の棚に機械があります。でかい。表のワークショップで見たやつの何倍もある。これ全部、生きたまま糸を採り続けてるってこと?。
奥にもっと棚がある。進んでみます。
……壁に、写真がありますね。いくつも並んでます。
白黒の写真。古い。少女が写ってます。白い着物着て、目を閉じて、静かに座ってる。すごく白い。肌が、髪が長くて――
……あれ。これ。
弥子、ちゃん?。
違う。弥子ちゃんじゃない。でも……めちゃくちゃ似てる。瓜二つって言っていいくらい。日付が書いてある。昭和。昭和か。じゃあこれは……誰?。
弥子ちゃんのおばあちゃんとかそんなんかな。
……奥にもドアがある。開けてみます。
資料室みたいな感じ。ファイルが大量に並んでる。一冊開いてみます。
写真。糸に……糸に巻かれたものの写真。これ形が人間っぽい。でも全部糸で覆われてて。ミイラみたい。人間? 違う? 違うよな? 違うといいんだけど。
別のファイル。記録……天蚕や家蚕を生きたまま食べさせる。呪術儀式。陰陽師。なにこれ、いきなりオカルト? 陰陽師って言われても……いやそういうネタ好きっすよ? でもいきなりリアルで出されると引くっていうかー。
こっちは……クローン。クローンって書いてある。今度はSFに行っちゃったよ、節操ないなー。なになに……?
まゆ……まゆの、髪と皮膚から遺伝子を取り出して……。
やばい。
これ、やばい。保護してるって言いながら殺してた。そして……まゆさんの墓を掘り起こしてた。間違いない、羽賀さんの推測とも一致するじゃん。そういうことか。そして、クローン作ろうとしてた。死体を使って。あのー倫理観って言葉知ってますかオイオイオイ。この少女は何。あの写真は誰。やばいやばいやばいやばいやばい。
落ち着け私。落ち着く。撮る。証拠として全部撮る。先生に送る。
よし撮った。全部撮った。とにかくこれを――
「困ったお嬢さんだ」
っ……っ!
え、えっと……あはは。
「どこから入ってきたんですか、お嬢さん」
あ、えっと、トイレ探してたら迷っちゃって。
スマートフォンで撮影しながら迷っていたんですね。
「……。
それは少し、困りますね。撮影禁止ですよここは」
い、いや——。
先生に連絡しないと。先生に——指、震えて打てない、押せない——送った。送れた。先生、来て。早く来て。
「お嬢さん、落ち着いてください。話し合いましょう。さあ」
その声が一番こわいんですよ……。
早く来て、先生。




