閑話休題 ハンスくん目線 その3
ニマニマしながら、箱を作り上げたエベスさんは
「見て!」
とご機嫌で、その全容を見せてくれた
うん、箱です
両手で抱える位の大きさで、そのひとつの面の中央に、木の葉の形に切り落とされた部分がある
ダリウス様と顔を見合わせるが
『?』
である
「これを、こうして…」
先程、何かを描いていた、球形の灯りをセットしている
「はい!」
『…』
何だこれ?
光り輝く大きな目が、こちらを見ている
そして、その目がゆらりと視線を変える
「「うわっ!」」
思わず叫ぶ
「あらら、動いちゃう?固定させた方がいいのかな?」
そう言うと、エベスさんは中の灯りを取り出して、満足気にこちらに見せた
「目玉行燈〜!」
「「うわぁ〜」」
巨大な光る眼球が、こちらを向いた瞬間、私たちは腰を抜かした
エベスさんは、不思議そうな顔で
「あれ?」
と、言った
「…で、なぜこの様な面妖な物を作られたのだ?」
騒ぎを聞きつけたフェルト様の事情聴取である
「これは『有明行燈』と言って、風流を愛する人たちに人気の物です」
と、エベスさんは普通に答える
「風流な人間が、なぜこんな本物そっくりの眼球を作る必要があるのだ!
ご丁寧に、赤い筋まで描き入れて…
だいたい、眼球そのものの形をどうして知っているのだ⁉︎実物を見たことがあるのか⁉︎」
エベスさんは、素知らぬ顔で
「実物は見たことないですよ」
と言った
「では何故⁉︎」
少しばかり、フェルト様の声が大きくなる
「別に私が知っている国が、眼球ゴロゴロ飛び出してる状況にある訳ではないですよ?むしろ逆
平和ボケと言われて久しかったもの…というわけで、強いて言うなら教養の範囲内です!」
「悪趣味だ!」
フェルト様が吐き捨てると
「何ですと?写実的と言うんですよ、これは!」
エベスさんも負けていなかった
それを、不毛な争いと思う自分は、教養が足りていないからだろうか…
「とにかく、これは人目につかないようにしまっておくように!」
フェルト様が、話を終わらせる
「分かりました!時期尚早ということですね?」
時期が来たら、お披露目する気なのだろうか…
両者、顔を背ける様にして、フェルト様はその場から立ち去った
その後、楽しそうに何かを作る、エベスさんとフローレンスさんを見かけた
まさかと思い様子を窺うと…
板の切れ込みの周りに、睫毛をつけて、無邪気にはしゃいぐ2人の姿がそこにあった
女って…?いや、アレは特殊なのだろうか?
この事が後々、睫毛エクステの流行に…なわけないか
次話より本文に戻ります




