移り変わるもの
しばらくして、王宮の方からも
『毛根は死んでなかったよ?』程度に、チョロっと?ふわっと?毛が生えてきたという連絡がきた
スーさん、すごいね
エンジェルなんじゃない?少しだけ…ほんの少しだけ、力のある祟り神みたいだけれど…という言葉は呑み込んでおくよ
しかし、皆んなして、チョロっと、ふわっとでは格好がつかないという事か?
鬘の注文も同時に来た
王を含む、国のトップクラス、ほぼ全員からだ
『私は顔に自信があるので、今回はハゲのまま、全面的にこの顔でいきます!』という、気骨のある奴はおらんのか?
むしろ、外交に全員、鬘で臨む国って…
そういえば、元いた世界でも、中世の肖像画に訳分からん髪型のおっさんたちが並んでいて
あれは、鬘のひとつの歴史なんだろう
そういえば音楽室でも見かけたなー
どんな趣味しとるんだ?と思ったのは私だけではないはず…
でもな〜武士の月代を、国の一つの時代の文化としてすんなり受け入れるなら
本来そんな髪型してなかったという話なのに、○○○○ハゲとか、ペンギンの顔に見えるとか何とか
あの方を笑ってはいけないよな
身体の色んなところを切り刻まれて、本体はインドに安置されている聖人なのに申し訳ない
あれは、歴史の教科書のせいです
そして、何世代も、いたいけな子供達は調子のってました、すみません
というわけで
「フローレンスさん、じゃんじゃん切りましょう
この髪尽きるまで、鬘作りましょう!」
私は、嬉々として提案する
「職業柄、ベス様のやる気は心強い限りですが…」
フローレンスさんは、ため息をつきながら言う
「何と申しますか…」
『なぁに?』って首を傾げて促すと
「人として、心配です」
そうですか〜?
「でもね、フローレンスさん?
急いで作っても、結局、イケスカンオッサンとかは間に合わないんじゃないかなぁって」
「確かにそれは、あり得る事です」
「そうなると、きっと
『量産型』の鬘を、染める事もなく、ピンクのままで、
チョロっとしか生えてない頭の上に、ちょこんとヘアーピースみたいに乗る事を想像すると…
Hahaha!ゲホゲホゲホな気持ちにもなるってもんですよ」
フローレンスさんは呆れて、ハサミの確認を始めた
「それ、どんな気持ちですか?」
うーん、そうだな
ちょっと前と気持ちは変わってきてるんだよね
「気に入らないオヤジの頭を踏み付けて、ドヤ顔しているエンジェル・スーに、喝采を送っている気持ち?」
『ぷっ』
フローレンスさんだって笑うじゃない




