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過去の負債を今こそ思う
サクサクサク と髪が切られていく
ピンク色の髪に故郷の桜を思ったりするけれど、あの色はこんなピカピカじゃない
慎ましやかな薄紅だ
心地よい髪の切られる音に、うとうとしそうになりながら、桜の季節はとうに過ぎたのだろうかと思う
通っていた大学の近くには、桜がたくさん咲いていて、散り始めると、風に吹かれて舞い落ちて
道路にたまった桜の花びらが、薄紅の波のようにさざめいていた
人ひとりくらい、この花びらの渦の中に消えそうなくらい、あの世とこの世の境い目が分からなくなる様なそんな季節があった
多分、若干病んでいたのだろう
夕暮れの空き地のタンポポの穂綿も、白くぼんやり光を包んでいる様で、魂の欠片みたいに思えた時も、ちょっと病んでいたのだろう
そんな微睡を、あるひらめきがぶち壊す
『ちょっと待てよ』と気付いた事があった
ハリーくん
婚約者いなかった?
ビクンとしたのだろう
フローレンスさんが
「どうしました?」
と聞いてきた
「…貴族って、小さい頃から、婚約者とか決まっているんじゃないのかな?って…」
恐る恐る、口に出してみる
「いらっしゃいましたね」
今更だ




