鬼が出るか蛇が出るか?
何はともあれ王宮である
呼ばれたから来た
追放したのに何故呼ぶ?という困惑の顔を貼り付けてはいるが、私には断罪劇の時からしか記憶がないので、困惑と言えば困惑だが、牽制と言えば牽制だ
多分、乙女ゲーム的には断罪劇ではなく、リベンジされてざまあされた、そんな感じか?
それなら、断罪した側にも言い分はあるだろう
私がどこまで付き合えるのかは言い分次第だ
『この子は悪さをしたのね
ならば私が償います』って、誰が思うか⁉︎
異国の衣装のまま、ハリーくんの美しいエスコートに従い、
知り得た礼儀と、かつての礼儀を取り混ぜた流儀で王宮に立つ
流儀は知らなくても、基本は背筋を真っ直ぐに立ち
誰も見た事がないサリーのドレープが如何に美しく見えるか、その事だけに集中し
『私はトルソー、私はトルソー』と、心の中で繰り返す
表情はアルカイックスマイル
かつては中学の教科書にも載っていたらしい用語
仏様の微笑み、ギリシア文明に通ずるとされたやつ
気持ちはそんな穏やかなものではないけどな
さて、完全アウェイである
廃嫡王子に対しては、それでも良い方なのだろうか?
罪人だしな
王子を廃嫡させる問題を引き起こした私は、針の筵?的な感じになっているはずなのだけれど
そこはしぶとく、知らぬ存ぜぬ
フェルト様が王宮にどこまで話を通しているかにもよるが、それと今回、私とハリーくんへの対応をどうしてくるかは別ものだ
イメージとしては、廃嫡王子を王家が再び迎え入れるとか何とか、そこらへんを条件に鬘やら教育関係の利益を取りたいのだろうな
クソピンクjrは、鼻高々に伝えてはくれたが如何せん、元々飛ばした条件が『来るな』と言って来た主犯の確定で、しかも、ちゃかちゃか五月蝿い関西弁擬の早口で… 癇に触る
本場の人たちが聞いたら、もっとイラッと思うけど、そういうウザキャラ?として許容するのだろうか知らんけど
クソピンクjrが持って来た情報は、想定内の事だった
言葉に出して言われると辛い事もあるけど、
「そんなん、上手くいけば傀儡にしようとしてやってたんやん?」
とか
「死んだら死んでええねんと思ってはるな」
とか
「利用するだけしか考えてないのが多いな、しかし」
とか
そして、悪気はないのだろうけれど、フェルト様はこれを良い条件だと思っている…
フェルト様がどう思おうが勝手だし、ハリーくんが王家に戻るのはハリーくんが決める事だ
ぶっちゃけその事と、私と何の関係があるのだろう?
物々しい警戒の中謁見の間に入る
ずらりと並ぶ、お偉いさん?お偉い役職をお持ちの方々
上手にドーンと控えていらっしゃるのは王様?ハリーくん似のおじさんがゴージャスな椅子にゴージャスな格好で座っていた
フェルト様はその横に立っている
私の衣装に一瞬目を見張ったが、すぐ何食わぬ顔に戻った
「久しぶりだな、ヘンリー」
あら、素敵なバリトンボイス
王様の言葉から、始まるのは茶番の続きかありがたいお言葉か…
ハリーくんは黙って臣下の礼をとる
王様、顔が微妙です
『父上!助けて!』とか言うと思っていたのかな?
ハリーくんの無言に業をにやしたのか、1人のおじさんが声を上げる
「そこにいる女と共に、何やら企んでいるという噂が流れて来ているが、何か申し開きはあるのか?」
申し開け?
洗いざらい吐けと言うこと?
有益な情報なら、使ってやると…そう言うことね?やれやれ…ハイエナかよ?ハイエナに謝れ
ハリーくんが微笑む
「発言をお許し願えますか?」
王に問う
「構わん」
「では…発言させて頂きます
何も企んではおりません」
ハリーくん、煽ってる?そういうとこあるよね




