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使えるものは何でも…

さすがに可哀想な雰囲気になってきたダリウスに、声をかけたのはハリーくんだった

「ダリウス様の先ほどの身のこなしは、鍛錬の賜物だと思います」

ダリウスは驚いて、ハリーくんの顔を見た

「私は、受けた教育の中で、剣技も体術も得意ではありませんでした

苦手ゆえに、きちんと向き合う事を放棄していたのだと、今とても恥じております」

ハリーは、素直だ

素直で、純真過ぎて王子には向かない気がする


童話の王子様は、爽やかに微笑んで美少女をいとも簡単にお妃様にするけど

どんな手管で家臣をたらし込むのか、お妃教育の無体を押し付けて形にするのか

実は、かなりの剛腕なのでは?と思ったりする

案外、脱いだらムキムキの痩せマッチョで、矢傷刀傷が身体中についていたりして

『ここまで攻撃を喰らうとは、歴代最弱…』とかこぼしていたりして、

そんな危ない国は嫌だけどな、戦国時代か?


「まことに不躾な要望ですが、私に武術を教えて頂けないでしょうか?」

ハリーくんは、ダリウスに言った


うん?素直…?

さっきもαβに、素知らぬ顔でハゲハゲ励むとか言っていたけれど、これ当てこすってる?

『お前がさっき言うてたんは、こういう事やで?』とか?

素直に屈折してるのか?


ダリウスは、何とも言えない顔をしている

反応難しい?

そこでハンスくんが

「私も常々、同じ事を思っていました

出遅れた形になってしまいましたが、私にも武術を教えて頂けないでしょうか?

きっと、私たちだけではないと思います!」

ダリウスを中心に

「私も!」

「俺も!」

と声が上がり、ダリウスは目を閉じた

泣いてる?うわぁ

この世界の男は泣き虫か?


「ダリウス、人に教えるという事は、自分の稚拙さに気付かせて貰う良い機会だと思う」

フェルト様が、ダリウスに言い聞かせるように話す

「はい…」

「こうやって、後輩たちに慕われているのは、日頃からの鍛錬を彼らが見てきた証拠だ

一度、教える側にまわってみてはどうだ?」

フェルト様の声が優しい

「しかし…!私のような若輩者が、人に物を教えるなど、烏滸がましくはないでしょうか…」

「そんな事はない

むしろ、自分の稚拙さ未熟さを知るための修練なのだ

お前がもっと先に進む為には必要な事だとは思わんか?」

ダリウスは

「分かりました」

と頷いた、結構力強く

「教える時は、何故出来ないかを自分への問いかけとして、

どの様にしたら出来るきっかけを作れるのかを、教える側も教わる側も共に学んでいくように」

フェルト様が告げる

「はい!」

また地鳴り…でも、フェルト様の言う事は正しいと思う

(ハリーくん、何かしめしめって顔してない?大丈夫?腹黒い?)


それはともかく、

う〜ん…

気になった事がある

私はαβの頭に乗っけた後も、ゴタゴタしている中握りしめていた自分の髪を見る

ダリウスも、この髪の尋常ではない強さに目をつけたみたいだけれど

これって使えるのではないか?という事

付加価値としてのプロテクト機能

平たく言うと防災頭巾みたいな物にならないだろうか

耐火衝撃に有効とか…?


「何かお考えなのですか?」

フローレンスさんが思案げに黙り込む私に話しかけてきた

「実はですね…」

私は、漠然とした考えを伝えてみる事にした

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