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口は災いの元

「何を考えているのやら…」

フローレンスさんが心底冷たい声を出す

「この経緯の中で稽古をつけろという事は、髪で殴られる練習をしたいということでしょうか?」

「いや、そうではなくて…」

「ベス様は決して武力に優れた方ではありませんよね、むしろズブの素人

そんな女性が魔力暴走の後、不用意なダリウス様の発言であのような事態になったというのに

厚かましくも、もう一度あの事態を起こして、自分だけの利益の為に働けと?」


「えっ?」

ダリウスが、本気で驚いている

彼としてみれば、武を磨くことこそ本意で、周囲もそのように求め、実際そうやって認められてきたのだろう


「ダリウス様」

私も、気持ちだけ述べとく

「ダリウス様に、けがを負わせた事は申し訳なく思いますが、

この髪を使う目的はダリウス様が願う方向とは違うのです

私は、髪を武器にする怪人になりたい訳ではありません」

「怪人⁉︎」

口が滑った…!特撮物の見過ぎだー!

「あの状況は、最早化物と言って差し支えないかと…」

少し自嘲的に話すが、対ダリウス効果を狙っての事だ

私の中にはダリウスをぶん殴った時のワクワクは、正直あるのだけどね


「私の目標は、鬘を作る事です

売り物になる髪に傷をつけるような愚を冒す事はできません」


その言葉に、αβが

「ダリウス殿、武を磨く方法は他にもきっと見出せる筈だ」

「目の前の、特殊で目新しい物に心動かされるより、地道な努力も必要」


どの口が言う?

それとも、血の滲むような地道な努力の結果か?


「ダリウス様にとってみれば、手軽な訓練用の器具か何かのように思われたのかもしれませんが、

私にとっては、今後、ベス様のお髪は、一本たりとも疎かに扱う事のできない物です

そう、生涯をかけて研究し、お客様の心に寄り添う鬘を作る運命に導かれた物なのです」

フローレンスさん、ちょっと何言ってるか分からないです…


その瞬間、盛大な拍手が起こる

αβは分かるが、αβのほかにもいるじゃないか?

お父さんお爺さんに、ハゲがいるのかい?

ハゲの家系ですか?自覚症状ありですか?

フェルト様も控えめに拍手?

『Brava!』の歓声が聞こえてきそうだ

鬘屋のご主人と弟、なぜ涙ぐむ!


ダリウスが、がっくりと項垂れて膝をつく

「私は、こんなにも人の気持ちを理解出来ない男だったのか?」


βが酷薄そうな顔で、ギリッと奥歯を噛み締める

やめて、βさん髪だけでなく歯も抜けるよ?そっちは専門外だ

いや、ハゲ専門でもない


ダリウス、今の発言で敵作ったんじゃないか? 

そんな、『ハゲは、俺には無関係』みたいな事言って

知らんぞ!





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