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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第1章

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夜の森

夜の21時になり、ジーマは無線で話した。


「ジーマです。定時連絡の時間だけど…聞こえる?」


アシードは腰につけていた無線機が突然鳴ったので、驚いた。


「おお!そうだ! 無線機とやらをレインから預かっていたのを忘れておった!」


レインは獣化するときに無線が邪魔になるので、移動中にアシードに渡しておいた。ちなみに獣化するとき、服はライオンのサイズに伸びたり縮んだりする特別形状記憶製のものを使っているので、人になったら真っ裸という事態はなくなった。初期の頃はそれで醜態を晒しており、戦いが終わるたびにこそこそ着替えるのが面倒になったので、ベーラに特注で作ってもらったらしい。


「おーい。大丈夫? 聞こえてる? 戦闘中?」


ジーマはずっと彼らに呼びかけている。

しかし、アシードは無線機の使い方を、聞いていなかった。


「ん? これどうやって使うんだったかの?」

「あれ〜? レイン? どうしたの? 誰が持ってるの? おーい」

「うるさいな全く! 動物たちが起きるじゃろ」


ジーマは部屋で無線機を持って何度も呼び掛けるが、応答がない。


(あれ…。何かあったのかな)


「聞こえてるー? 僕だよ。ジーマだよ」

「わかっとるわ! この! 機械! 説明書をはっとかんか!全く!」

「おーい! どうしたのー? 大丈夫ー?」


アシードが騒いでいると、森の奥からガサガサと誰かがやってきた。


「誰だ?! こんな時に!」


アシードが怒鳴りつけると、3人の人間が現れた。

白髪の可愛い子供、紅色の髪の美人、そしてバンダナをつけた男…ん? この男? どこかで見たような? うーん、誰だったかの。忘れたな。


「おじさん! 生きていたんだな! 良かった! 本当に良かったよ!」


バンダナの男は何故だか嬉しそうだ。


「誰かは忘れたが、わしはいつでも元気だ!」

「おお! 本当によかった!」

「ゼクト喜んだ! わーい! ならイースも嬉しい!」

「おい! 騒ぐな! 動物たちが起きるぞ!」


紅色の美人が怒っていた。


「ちょっとー! 21時だけど、何してるの? 戦闘中なら一言だけでいいから教えてよ。心配だよ〜」


無線機も未だにうるさくなり続ける。


「そうだ!君たちちょうどよかった! この無線機とやらの使い方を知らないか?」

「そこのボタンを押しながら話をするんだ」


リバティは彼に教えた。


「そうだったのか! 感謝する。ではやってみるとしよう」


アシードは言われた通りに無線機を使った。


「待たせたな我が同士よ!」

「なんだ、アシードか。良かった無事で。他の二人は?」

「それが、ドラゴンに襲われてはぐれてしまったのだ」

「そうなの?! 大丈夫なの?! だったら早く連絡してよ」

「いやいや! 使い方を知らなかったのだ! 無理に決まっとろう」

「何で無線預かる時レインに聞いてないの? 君はいつもそうだよね」

「こっちは説教してもらう余裕はない! お前も、返事がないからと、何回も何回も喋るな。動物たちが起きるではないか」


その後、なんとか今日の経緯をジーマに話した。

その間ゼクトたちは、この上半身裸のおっさんを見ながら、呑気に晩御飯を食べ始めていた。


「そういうわけで、アンジェリーナは帰らせたから、しっかりと手当をしてやってくれたまえ」

「ベルは獣医じゃないんだけどな…まあ、わかったよ。レインたちを早く見つけて、また報告してよ」

「わかっておる」


全くジーマのやつ…、部隊を結成してから随分丸くなったかと思えば、わしに対しては未だにこれだ。若僧たちには優しくしおって、けしからんやつめ。


「おじさん! 話は終わったのか?」

「ああ、すまない。君たちのおかげで助かったよ」


森に着陸し、何故か勝手に人型に戻ったイースは、なぜここに来たのかも怒っていたのかも、忘れてしまったようだ。

ドラゴンに戻るのも何故だか嫌がり、仕方なくこの熱帯雨林を散策していたところ、騒がしいおじさんを見つけたというわけだ。


「まあしかたねえ。おじさんも一緒に食おうぜ」

「うむ。ではありがたく頂戴しよう。我が名はアシードだ。君、どこかであったことがあったかな?」


アシードは缶詰を一つもらって、食べながら聞いた。


「あーいや、忘れてんならいいんだ! うん! はじめましてってことで」

「うむむ? まあいいだろう。若僧たちよ。ここで会ったのも何かの縁だ! 名前はなんという?」


アシードは三人の顔を見回した。


「イースだよ! アシードのおじしゃん!」


白髪の子供が元気よく答えた。


「うむ。君は女の子…なのかい?」

「イースはね、男でも女でもないの! ドラゴンだから!」

「こら! イース!」

「がっはっは!そうかそうか! わしも子供の頃ドラゴンに憧れたものだよ!」

「イース本当にドラゴンだもん! でも今は、なりたくないの!」

「がっはっは! それじゃあ気が向いたらその姿見せてもらうとするよ!」


アシードは高笑いしていた。


良かった…このおじさん、アホそうで…。


ゼクトはほっとした。イースがドラゴンだとわかれば、また賊に奪われるかもしれない。それだけはごめんだ。


「俺はゼクト。よろしくな」

「うむ。せっかく出会ったのだ! 仲良くしようではないか!」


アシードは手をさしのべ、ゼクトもその手を握った。

このムキムキおじさん、見た目通りのすごい力で握ってきたので、手が潰されそうだ…。


「私はリバティ。お前は一体何者なんだ?」


リバティはいかにも怪しいという目でアシードを見ていた。


「わしは、国家精鋭部隊の隊員だ。このサバンナで巨大生物が暴れていると聞いて、その鎮圧に参上した次第である」


国家精鋭部隊ときいて、ゼクトとリバティは顔を見合わせる。

二人は鉱山に毒をまいた犯罪者、バレたら即刻、牢獄行きだ…。


「君たちこそ、ここは危険なサバンナだ。子供まで連れて、どうしてこんなところに?」

「えっと…俺たちは…その…」


ゼクトの言葉が詰まったので、リバティが答える。


「研究隊だ。グザリィータの野生動物生態研究会」

「おお! 聞いたことがあるぞ。なんだ、君たちがそうか」

「ああ。巨大生物が現れたときいて、調査にやってきた。この子はまだ子どもだが新人で、今回は勉強のために私達に同行してきた」

「なるほど、そうだったのか! しかし巨大動物は非常に乱暴で危険である。よし、わしが君たちのために動物たちを捕獲してやろう」

「え?」

「なあに。わしに任せておけばいい。その研究とやらで、巨大生物の謎を是非解明してほしい!」


断ることもできず、このおじさんは俺達に同行することになった。まあ下手なことを言うよりも、研究隊員を貫いておさらばしよう。イースも頑なにドラゴンになろうとしないし、そんな巨大動物が暴れてるなんて、危険すぎるからな…。

それにしても、野生何とか研究会なんて、リバティよく知ってたな。


旅を重ねるゼクトたちはテントを持っており、アシードも一緒に中に入れてもらい、眠りについた。

おじさんのイビキはうるさくて、正直明日にはおさらばしたいと、ゼクトは思った。




「アシードのやつ…本当に大丈夫か…」


ジーマは無線を睨みつけて呟いた。


「眉間にシワが寄ってるぞ」


ジーマはハっとして、無線を落とすところだった。


「べ、ベーラ?! びっくりした…。いつからいたの」

「アシードと話をしているところからだ」

「ハァ…そうだったの…」


ジーマはため息をついた。

ベーラは彼の部屋の椅子に座って足を組んだ。


「アシードに対しては、お前も変わらんな」

「うん、ごめん…彼の前ではどうもね…気が緩むというか…なんというか」

「私は嫌いじゃないけどな。昔のお前も」

「はは…忘れてよ、昔のことは…」


ジーマはそう言いながら、一本の黒い刀を磨いていた。


「その刀、持っていくのか」

「うん。本当は使いたくなかったんだけど…皆を守らないといけないからね」

「ふ…だからあの子を向こうに行かせたのか」

「あの子って…?」

「シエナに決まってるだろう」


ジーマは驚いたようにベーラを見た。


「別に深い意味はないよ…。あの三人は経験も豊富だし、任せられると思って、行かせたんだよ」

「ふ…その刀を持つお前を見たら、あの子はどう思うだろうな」

「面白がらないでよ…」


ジーマは刀を磨き終えると、鞘にしまった。


「それにしても、驚いたよ。お前は姫様にしか興味がないと思っていたからな」

「はは…セシリアのことは、とっくに諦めてるよ…」

「…本気なのか、あの子のこと。まだ14歳だぞ?」


ジーマは少し黙り込んだあと、答えた。


「正直、僕なんかが本気になっていいものかって、葛藤はあるよ…。でも、本当は誰にも渡したくない…。だから時間をもらった。彼女が大人になるまで」

「変わったな…お前も」

「…そうかな」


昔の僕を見ても、彼女は僕を好きだと言ってくれるだろうか。

本当はそれも、少し怖い。

僕が死ぬまでに、彼女以上に僕を愛してくれる人にはもう二度と出会えないだろう。

そう感じた時、彼女を手放したくないなんて思ってしまった。

僕には不釣り合いの彼女のことを、もし自分のものに出来たらなんて…。

でも、自信がなくて、曖昧にしている。


「私は嬉しいんだよ。またお前が誰かに恋できたことがな」

「それはどうも…。ベーラは誰かを好きにならないの?」

「私…?」


ベーラはクスっと笑っていった。


「私は、ならないよ」


女の人ってよく恋をするのかと思っていたけど、ベーラは違うんだね…。付き合いは長いけど、ベーラはいつも一人だった。

まあ、そういう人間も、いるのかもしれないね。


「そういえば、何か用があったんじゃないの?」

「ああ、アンジェリーナが帰還した。右の翼が損傷していた」

「え?! 早く治療しないと!」

「私とベルで応急処置は済ませた。あとはもう休ませるだけだ。報告をしに来ただけだよ」

「そっか…。ありがとう」

「お前も、少しは休め。もう若くないんだからな」


ベーラは最後にそう言って、部屋を出た。


そうだね…。今日はもう休もう。

ベーラが変なこと言うから…またシエナのことを考えてしまった。

今はウォールベルトとの戦いに集中しないと…。

明日もヌゥ君の相手しないといけないし…。

もう昔みたいに身体も丈夫じゃないしな…。


そうして、彼も、ベッドに横になると、眠りについた。


















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