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お母様にはマスコットだとかビスクドールとか言われてしまいましたが挫けませんよ、テンプレマスターは役を全うするのです!
しかし、悪役令嬢が垂れ目ってどうなんでしょう。
つり目の方が悪役っぽくないですかね。
成長したらつり目になってくるのでしょうか。
ならなかったらセーラみたいに眼鏡を掛けて知的美人を目指しましょう。
ところで、主役たちはどういった方達なのでしょう。
確か大公と大公婦人が国民から大人気過ぎるので、内乱の原因とならないように娘と王太子の婚約は生まれたときから決められている設定だったはず。
お父様はアホ勇者でしたが、イケメンで最強らしいので頼りがいがあるのは間違いありません。お母様は王女時代からカリスマが半端ないので言わずもがな。
国民人気も集めてしまいますね。
王太子はもう決められているのでしょうか。
同じ年のはずなので、まだ3歳ですから立太子していないかもしれません。
どんな人でしょう。
私気になります!
気になり出すと聞かずには居れません。幼女なので自制心がすこぶる弱いのです。
「お母様! 私の婚約者ってどんな人?」
「あらあら、気が早いのね。お父様と結婚するとか言わないのかしら?」
お母様は今日もニコニコです。
「言いません。嫌です。断固拒否します」
魔法少女成分が幼女成分を押しのけてマジトーンで答えていました。
いや、あれだけ手間暇かけて育て導いたのに、最後の最後で駄々っ子パンチで台無しにした勇者はお断りです。
お父様と言えば、先日の私の写真を肌身離さず持ち歩いているそうです。キモイですね。
でも、お父様を目の前にすると、私の中の幼女が暴走して、『お父様、大好き!』とか言ってしまうのです。恐ろしい。
「お母様、私、王太子と結婚するのでしょう?」
「えっ?」
「えっ?」
あれ? 違うのでしょうか。
「あらあら、スカーレットは王妃になりたいの? それならそうと言ってくれれば、良かったのに。じゃあ、すぐに王をすげ替えましょう。王妃と言わずに女王にしてあげます。
セーラ、旦那様に仕事帰りにちょっと王の首をとってくるように言っといてちょうだい」
「いやいやいや! 違う!」
お母様、何いきなり反乱しようとしてるんですか!
仕事帰りに大根買ってきてみたいな程度で王の首をとらないでください。
焦った私を見てお母様がニッコニコでシャッターを切ります。いつカメラを用意したのでしょうか。
どうやらからかわれたようです。
気軽に反乱できそうなのがリアルで怖いです。
お母様、からかい方が悪質ですよ!
「もうっ、お母様!?」
「焦った顔も可愛いわ! 新しいアルバムを買わなくてはいけませんね!」
「イエス、ユア・グレース!」
いや、セーラも何鼻の穴膨らませているんですか。また鼻血出ますよ。
「別に王位なんて要りません!」
「そう? 王位なんていつでも手に入りますから、気が変わったら言うのですよ?」
お母様こそ悪役令嬢っぽくなっておられます。
「そんな物騒なこと言わないでください、お母様!」
「別に物騒にしなくても、私の精神魔法でチョチョイのチョイです。
なんなら、他の国でもいいですよ。どの国が良いですか?」
いやいや、十分物騒ですよ。どこの覇王ですか。
「どの国も要りません!
自分の国は自分で手に入れます!
・・・じゃなかった!
お母様が気軽に『テイクアウトで』みたいな感じで王位簒奪してこさせようとするから、王太子の婚約者にされるんじゃないんですか!?」
「いいえ? 今のところそんな話は聞いていませんよ。確かにそういう話が出てもおかしくはありませんけど」
「そうなのですか?」
「そうですよ。ねえ、セーラ?」
「イエス、ユア・グレース!」
「あなた、そればっかりね」
セーラの中でユア・グレースがマイブームのようです。
しかし、おかしいですね。もしかして、もしかしてですよ、そもそも小説の世界でもないとか・・・
「違うわよ」
「えっ?」
「えっ?」
この天然魔法使い、心を読みましたね!?
「読んでないわよ」
「読んでる!」
お母様は可笑しそうに微笑みます。
「お嬢様、心の声が漏れておられます」
セーラがこっそり耳打ちしてくれます。まさか、また幼女成分が!
「ぐぬぬ」
これではまた厨二病認定です。厨二病魔法少女から厨二病幼女に格下げですよ。
「ぐぬぬってるのも良いわね!」
またしてもカメラママンになっておられます。
「イエス、ユア・グレース!」
「もうそれはいいです! 天丼はキライです!」
「あらあら、うふふっ」
幼女の精神力はゴリゴリ削られます。あまりからかったら泣きますよ?
「ごめんなさいね、スカーレット。あんまり可愛いもので」
絶対読んでる!
「読んでないわよ」
「読んでおられません。お声が漏れておられます」
もう、いいです。泣きますよ、うわーん。
「はいはい、いい子でちゅねー」
お母様がここぞとばかりにおちょくってきます。いつもでちゅねなんて言わないくせに、ホンワカして見えてお母様ドSです。
それでも抱っこされると、暖かくて柔らかくていい匂いがして、癒されてしまうのです。
「ぐぬぬ」
今回はまだプンプンですから、その大きなお胸の谷間に顔を埋めてグニグニしてやります。
「あらあら、うふふっ」
お母様は微笑みながら、私の背中をポンポンします。
はふぅ。い、癒されてしまいました。
幼女では魔法使いママンには敵いません。
「小説ってあれでしょう?
魔法少女スカーレットちゃんの愛読書だった、悪役令嬢シリーズとか異世界転生シリーズでしょう?
私も読みましたよ」
ギャーッ!
やっぱりこの人ドSです。
たたみかけるように黒歴史を抉ってきます。
「スカーレットも読んでいたのね。異世界の言語なのに誰かに読んでもらったの?」
もういいです!
スカーレットちゃんの精神力はゼロなのです!
もう暴露しちゃうのです!
「違うもん! 私が魔法少女スカーレットちゃんなんだもん!」
「キャーッ! うちの子が可愛すぎて死にそう!」
「イエス、ユア・グレース!」
もう、それいいから。
「この幸せを分かち合わねば! セーラ、旦那様を呼んで! ASAP!」
「イエス、ユア・グレース!」
返事をしたかと思うともうセーラの姿はありません。なんですか、セーラも魔法使いかチーターですか。
いいですよ、もう。
どうせ、私だけ凡人なんです。




